S&P500

センターポイント・エナジー (CNP)

CenterPoint Energy Inc

0. この記事でわかること

本記事では、センターポイント・エナジー(CNP)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: 650億ドルの10年投資計画、ヒューストン電力需要の倍増予測、EPS成長率7-9%の上方修正
  • 事業内容と成長戦略: テキサス州・ルイジアナ州を基盤とする電力・ガス供給の大手公益企業。データセンター・水素施設の電力需要取り込み
  • 競合との差別化: デューク・エナジーやサザン・カンパニーといった大手電力会社と比較したテキサス州の人口増加と独立系統運営機関(ERCOT)での事業展開
  • 財務・配当の実績: 2024年通期non-GAAP EPS 1.62ドル(前年比8%増)、4年連続ガイダンス達成。配当利回り約2-3%
  • リスク要因: ハリケーン・ベリルの対応失敗で州政府の監査対象に。PER 27.3倍の高バリュエーション、災害復旧コスト12億ドルの料金転嫁

テキサス州の人口増加が続く中、電力需要の爆発的成長を取り込む成長戦略が注目されるセンターポイント・エナジー。650億ドルの投資計画により、2035年までにヒューストン電力事業のピーク需要が倍増する見込みに対応します。しかし、2025年7月のハリケーン・ベリルの対応失敗で州政府から厳しい批判を受け、監査対象となったことで、投資家の不安も高まっています。本記事では、成長戦略とリスク要因の両面を詳しく解説します。

1. なぜセンターポイント・エナジー(CNP)が注目されているのか

センターポイント・エナジーは、人口増加が続くテキサス州を主要基盤とする公益企業です。ヒューストン地域の爆発的な経済成長により、データセンター、エネルギー輸出施設(水素含む)、産業プロセスの電化、物流拠点の拡大が進んでおり、電力需要が急増しています。公益株としては珍しく高成長が見込める銘柄として、投資家の関心を集めています。

(1) 成長戦略の3つのポイント

センターポイント・エナジーの成長戦略は、以下の3つの柱で構成されています。

まず、10年間で650億ドルの過去最大規模の投資計画です(従来比40%増)。2035年までにヒューストン電力事業のピーク需要が2倍の42GWへ拡大する見込みに対応するため、送電網の強靭化とグリッド近代化に集中投資します。この投資により、レートベース(規制当局が料金計算の基礎とする資産額)が拡大し、安定した収益成長を確保できる見通しです。

次に、テキサス州ヒューストンの爆発的経済成長を取り込みです。データセンター、エネルギー輸出施設(水素含む)、産業プロセスの電化、物流拠点の拡大が成長ドライバーとなっています。特に、AI技術の発展によるデータセンター需要の急増と、LNG輸出拡大に伴う天然ガスインフラ投資が追い風となっています。

最後に、2026-2028年にEPS成長率を7-9%の中間~上位に引き上げ(従来6-8%)、2035年まで7-9%成長を継続する計画です。2025年EPSガイダンスを1.75-1.77ドルへ上方修正しており、投資計画の実行により長期的な利益成長が期待できます。

(出典: CenterPoint Energy Announces Record 10-Year Plan to Invest $65 Billion, Centene Investor Relations)

(2) 注目テーマ(インフラ投資・電力需要倍増)

投資家が注目するテーマとして、**650億ドルの10年投資計画(インフラ強化とグリッド近代化)**が挙げられます。公益事業は規制業種であり、投資額が増えればレートベースが拡大し、収益も増える仕組みです。650億ドルという過去最大規模の投資により、長期的な利益成長基盤を確保できると期待されています。

また、**ヒューストン電力需要の倍増(2031年に31GW、2030年代半ばに42GW)**も重要なテーマです。テキサス州は2020-2030年で年率1.5%超の人口増加が予測されており、住宅用・商業用・産業用の電力需要が急増しています。特に、データセンター需要の急増がこの成長を加速させています。

さらに、データセンター・水素施設の電力需要取り込みも注目されています。AI技術の急速な発展により、データセンターの電力需要は今後数年間で急増すると予測されています。また、水素製造施設や LNG輸出施設の拡大により、大口産業需要が増加しており、センターポイント・エナジーはこれらの需要を確実に取り込む体制を整えています。

(3) 投資家の関心・懸念点

投資家の関心は、テキサス州の人口増加と経済成長に集中しています。テキサス州は米国内でも特に人口増加が著しく、ビジネス環境も良好です。州税が低く、企業誘致に積極的な政策を取っていることから、多くの企業がテキサス州に拠点を移転しており、電力需要の長期的な成長が見込めます。

一方で、懸念点も深刻です。最大の懸念は、ハリケーン・ベリル(2025年7月)の対応失敗で州政府・規制当局から厳しい批判を受けたことです。8億ドルを投資した移動式発電機がほとんど機能せず、200万以上の顧客が停電しました。CEOが公式謝罪し、テキサス州知事が「州民の信頼を失った」と非難、公益事業委員会が監査を実施しています。

また、**災害復旧コストを料金に転嫁(ベリル等で12億ドル、デレチョで4億ドル)**することで、顧客負担が増加する懸念があります。1億ドル超の過請求疑惑も浮上しており、規制当局の承認が得られない可能性もあります。

さらに、PER 27.3倍は業界平均18.2倍・同業平均22.4倍を大幅に上回り割高懸念があります。株価は2025年に25%上昇、5年で115%のリターンを記録しており、650億ドルの投資計画を織り込み済みの可能性があります。計画遅延や需要予測未達のリスクがバリュエーション上の懸念材料です。

(出典: Texas leaders vowed to make CenterPoint pay after Beryl's blackouts, Houston Chronicle; How Should Investors View CenterPoint Energy After Its 25% 2025 Rally?, Yahoo Finance)

2. センターポイント・エナジーの事業内容・成長戦略

センターポイント・エナジーは、テキサス州を拠点とする唯一の投資家所有型電力・ガス公益事業者として、約700万人にサービスを提供しています。インディアナ州、ミネソタ州、オハイオ州、テキサス州で電力・ガス供給を行い、マルチステート展開により収益源を分散しています。

(1) 主力事業

センターポイント・エナジーの事業は、大きく2つのセグメントに分かれています。

まず、電力事業です。ヒューストン電気事業とインディアナ電気事業が主力で、約270万件の顧客に電力を供給しています。ヒューストン電気事業は、人口増加が続くテキサス州最大の都市圏で事業を展開しており、データセンター・エネルギー輸出施設・産業プロセスの電化による需要増加が見込まれます。2031年にピーク需要が31GW(50%増)、2030年代半ばに42GW(倍増)と予測されており、成長余地が大きい事業です。

次に、天然ガス事業です。住宅、商業、産業、機関顧客への天然ガスの販売・輸送・流通を担当し、約430万件の顧客にサービスを提供しています。天然ガス事業は電力事業と比べて成長率は低いものの、安定したキャッシュフローを生み出す重要なセグメントです。LNG輸出拡大に伴う天然ガスインフラ投資も成長ドライバーとなっています。

(出典: CenterPoint Energy - Corporate Home, Investor Relations; センターポイント・エナジー(みんかぶ)))

(2) セクター・業種の説明

センターポイント・エナジーは、公益事業(Utilities)セクターの**総合公益企業(Multi-Utilities)**に分類されます。公益事業セクターは、電力、ガス、水道などの生活に不可欠なサービスを提供する業種で、景気変動に左右されにくい特性があります。総合公益企業は、電力とガスの両方を供給する企業を指し、単一事業の公益企業と比べて収益源が分散されている点が特徴です。

(3) ビジネスモデルの特徴

センターポイント・エナジーのビジネスモデルは、規制業種としての安定収益とテキサス州の成長性が特徴です。公益事業は規制当局が料金を承認する仕組みで、レートベースに一定の収益率を乗じた料金を徴収できます。650億ドルの投資によりレートベースが拡大すれば、収益も増える構造です。

また、テキサス州の独立系統運営機関(ERCOT)での事業展開も特徴です。ERCOTは他州と電力系統が接続されていない独立系統で、テキサス州内で電力需給を完結させる仕組みです。この独立性により、州内の電力需要増加がそのまま収益増加に繋がりやすい構造となっています。

さらに、データセンター・水素施設の大口需要取り込みも重要です。従来の住宅用・商業用需要に加えて、AI・クラウド技術の発展によるデータセンター需要、水素製造施設やLNG輸出施設の拡大による大口産業需要という新たな収益源を獲得しています。

(出典: CenterPoint Energy Unveils Ambitious 10-Year Capital Investment Plan, GuruFocus)

3. 競合との差別化

公益事業セクターは地域ごとに独占が認められているため、直接的な価格競争は限定的です。しかし、投資家の視点では、他の大手電力会社と比較した際の魅力度が重要となります。センターポイント・エナジーは、テキサス州の人口増加と独立系統運営機関(ERCOT)での事業展開を武器に、競合他社との差別化を図っています。

(1) 主要競合企業

センターポイント・エナジーの主要競合企業として、以下の3社が挙げられます。

まず、**デューク・エナジー(DUK)**です。米国南東部で電力・ガスを供給する大手総合公益企業で、時価総額は約900億ドルとセンターポイント・エナジーの約4倍の規模です。

次に、**サザン・カンパニー(SO)**です。米国南部で電力を供給する大手公益企業で、時価総額は約1,000億ドルとセンターポイント・エナジーを大きく上回ります。

最後に、**ネクステラ・エナジー(NEE)**です。米国最大の電力会社で、時価総額は約1,500億ドル、再生可能エネルギーへの投資でも業界をリードしています。

これらの競合企業と比較すると、センターポイント・エナジーは規模では劣るものの、テキサス州の成長性により高いEPS成長率を維持しています。

(2) 競合優位性

センターポイント・エナジーの競合優位性は、以下の3点に集約されます。

まず、テキサス州の人口増加と経済成長です。テキサス州は2020-2030年で年率1.5%超の人口増加が予測されており、電力需要の長期的な成長が見込めます。

次に、独立系統運営機関(ERCOT)での事業展開です。他州と電力系統が接続されていないため、州内の電力需要増加がそのまま収益増加に繋がりやすい構造です。

最後に、データセンター・水素施設の大口需要取り込みです。ヒューストン地域の物流、エネルギー輸出(水素含む)、商業活動の爆発的成長が追い風となっています。

(3) 市場でのポジショニング

センターポイント・エナジーは、成長性の高い中堅公益企業として市場でポジショニングされています。時価総額は約220億ドル(2025年10月時点)で、大手企業と比べると規模は小さいものの、EPS成長率7-9%は業界トップクラスです。

4. 財務・配当の実績

センターポイント・エナジーの財務実績は、4年連続でガイダンスを達成しており、安定した成長を続けています。配当利回りは約2-3%で、公益株として標準的な水準です。

(1) 売上高・利益の推移

センターポイント・エナジーの売上高・利益は、安定した成長を続けています。2024年通期non-GAAP EPSは1.62ドル(前年比8%成長)で、4年連続ガイダンス達成を記録しました。2025年ガイダンスは1.75-1.77ドル(中間値で9%成長)、2026年ガイダンスは1.88-1.92ドルで、長期EPS成長率7-9%を維持する見通しです。

※2025年10月時点のデータです。最新情報はCenterPoint Energy公式IRページをご確認ください。 (出典: CenterPoint Energy Reports Q4 and FY 2024 Results, Centene Investor Relations)

(2) 配当履歴

センターポイント・エナジーの配当実績は、公益株としては標準的な水準です。配当利回りは約2-3%で、配当性向は60-70%程度です。増配余地は限定的ですが、安定配当が見込めます。配当支払いは四半期ごとで、米国株の配当は米国で10%、日本で20.315%が源泉徴収されますが、確定申告により外国税額控除を受けることで、二重課税を一部解消できます。

(3) 財務健全性

センターポイント・エナジーの財務健全性については、650億ドルの投資計画を実行するための資金調達が課題です。2025年には普通株2,162万株を1株37ドルで発行し約8億ドルを調達する計画を公表しました。フォワードセール契約により、短期的な株式希薄化を避けつつ将来の資金調達柔軟性を確保しています。

5. リスク要因

センターポイント・エナジーへの投資には、いくつかの重大なリスク要因が存在します。特に、ハリケーン対応の失敗と高バリュエーションには注意が必要です。

(1) 事業リスク

事業リスクとして、まずハリケーン・ベリルの対応失敗が最大の懸念材料です。2025年7月に200万以上の顧客が停電し、8億ドルを投資した移動式発電機がほとんど機能しませんでした。テキサス州知事が「州民の信頼を失った」と非難し、公益事業委員会が監査を実施しています。

また、災害復旧コストの料金転嫁も懸念材料です。ベリル等で12億ドル、デレチョで4億ドルの復旧コストを料金に転嫁する計画ですが、1億ドル超の過請求疑惑も浮上しており、規制当局の承認が得られない可能性があります。

(2) 市場環境リスク

市場環境リスクとして、金利上昇リスクが重要です。公益事業株は金利上昇局面で株価が下落しやすい傾向があります。

また、為替リスクも日本人投資家にとっては重要です。配当利回り約2-3%で、為替変動が実質リターンに影響を与えます。

(3) 規制・競争リスク

規制リスクとして、料金改定承認の遅延リスクが挙げられます。ハリケーン対応の失敗により、規制当局との関係が悪化した場合、料金改定申請が承認されない、または承認が遅延する可能性があります。

6. まとめ:投資判断のポイント

センターポイント・エナジーは、テキサス州の人口増加と電力需要の爆発的成長を取り込む成長性のある公益株です。650億ドルの投資計画により、2035年までに年率7-9%のEPS成長を目指しています。

(1) この銘柄の強み

センターポイント・エナジーの強みは、テキサス州の人口増加と経済成長、650億ドルの投資計画による長期成長基盤、データセンター・水素施設の大口需要取り込みです。

(2) リスク要因(再掲)

一方で、ハリケーン・ベリルの対応失敗で州政府の監査対象に、PER 27.3倍の高バリュエーション、災害復旧コストの料金転嫁といったリスク要因も深刻です。

(3) 向いている投資家

センターポイント・エナジーは、テキサス州の成長性に賭ける長期投資家、公益株の中でも成長性を重視する投資家、ディフェンシブ銘柄を求めつつ成長も期待する投資家に向いています。

ただし、高バリュエーションと災害リスクには注意が必要です。投資判断は、ご自身のリスク許容度や投資目的に照らして慎重に行ってください。

※本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言を行うものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

※2025年10月時点のデータです。最新情報はCenterPoint Energy公式IRページをご確認ください。

よくある質問

Q1センターポイント・エナジーの配当利回りは?

A1約2-3%です(公益株として標準的な水準)。配当性向は60-70%で、増配余地は限定的ですが安定配当が見込めます。配当支払いは四半期ごとで、米国で10%、日本で20.315%が源泉徴収されますが、確定申告により外国税額控除を受けることで二重課税を一部解消できます。

Q2センターポイント・エナジーの主な競合は?

A2デューク・エナジー(DUK)、サザン・カンパニー(SO)、ネクステラ・エナジー(NEE)等の大手電力会社です。センターポイントはテキサス州の人口増加と独立系統運営機関(ERCOT)での事業展開が差別化ポイントで、EPS成長率7-9%は業界トップクラスです。

Q3センターポイント・エナジーのリスク要因は?

A3ハリケーン・ベリル(2025年7月)の対応失敗で州政府の監査対象に。8億ドルの移動式発電機が機能せず、CEOが公式謝罪。PER 27.3倍の高バリュエーション(業界平均18.2倍を大幅に上回る)、災害復旧コスト12億ドルの料金転嫁、気候変動リスク等が懸念材料です。詳細は本文の「5. リスク要因」を参照してください。

Q4センターポイント・エナジーは長期投資に向いている?

A4テキサス州の人口増加(2020-2030年で年率1.5%超)と650億ドルの投資計画で7-9%のEPS成長を目指す成長性のある公益株です。ヒューストン電力需要が2035年までに倍増する見込みで、長期的な成長余地があります。ただし、ハリケーン対応の失敗による信頼低下と高バリュエーションに注意が必要です。投資判断はご自身で。