0. この記事でわかること
本記事では、コパート(CPRT)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 事故車オンラインオークションの世界最大手として、1998年にオンライン入札を導入し業界を変革。保険会社20社以上と独占契約を締結し、営業利益率40%超の高収益体質を確立。テクノロジー主導のプラットフォーム戦略で成長を加速させています。
- 事業内容と成長戦略: 保険会社から全損認定車を買い取り、中古車販売業者・解体業者・海外バイヤーに競売で販売する仲介プラットフォーム。グローバル展開(11カ国200拠点以上)、Blue Car(銀行・レンタカー向け)の拡大、不動産自社保有戦略が成長の柱です。
- 競合との差別化: 主要競合のIAA(Insurance Auto Auctions)に対し、市場シェア約6:4で優位。ROE 25%超、営業利益率42-45%の高収益性を誇ります。
- 財務・配当の実績: 2025年通期で売上46.5億ドル(前年比9.7%増)、純利益15.5億ドル(前年比13.9%増)を達成。無配当の成長株ですが、過去10年で株価が年率平均25%超上昇しました。
- リスク要因: 平均売却価格(ASP)の持続可能性、運転支援技術の進化による事故減少、景気後退による全損車両台数減が主なリスクです。
1. なぜコパート(CPRT)が注目されているのか
(1) 事故車オンラインオークションの世界最大手
コパート(Copart Inc)は、1982年創業の事故車・廃車のオンラインオークション企業です。保険会社から全損認定車を買い取り、中古車販売業者・解体業者・海外バイヤーに競売で販売する仲介プラットフォームを運営しています。現在、11カ国で200拠点以上を展開し、毎日175,000台以上の車両をオークションに出品しています。
投資家が注目する理由は、次の3つの成長戦略にあります:
- グローバル展開の加速: 11カ国200拠点以上を運営し、欧州・中南米へ積極展開。2025年第2四半期にBlue Car(銀行・レンタカー・フリート向け)が前年比27%増、Purple Wave(重機・農機)が8%増と専門オークション分野で成長しています。
- テクノロジー主導のプラットフォーム強化: 1998年にオンライン入札を導入し、業界標準の地域オークションから脱却。保険会社との統合ITシステムと独占契約(Allstate、Nationwideなど20社以上)により、サービス収益が売上の80%超を占める高収益モデルを確立しています。
- 不動産自社保有戦略: 施設用地の大部分を自社購入し、高額の初期投資を要するものの賃貸コストを回避。大規模ヤードが参入障壁となり、在庫多様性がオークション流動性を向上させる好循環を生んでいます。
(2) テクノロジー主導のプラットフォーム戦略
コパートは、デジタルマーケットプレイスとして「グローバルなオンラインオークションで、毎日175,000台以上の車両を出品」するプラットフォームを提供しています。保険会社向けに加え、消費者向け車両・部品販売にも拡張し、新たな収益源を開拓する「サービス多角化」を推進中です。
また、自然災害後の全損車両処理ニーズに対応する「災害復旧サービス」を提供し、インフラ・技術投資で運営効率を向上させています。これにより、ネットワーク効果(参加者増加がオークション流動性・入札価格を向上させ、売上・利益を増大)が働き、営業利益率約40%の高収益体質を実現しています。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家はコパートの将来性を高く評価しています。2028年までに売上66億ドル、純利益21億ドルを目指し、5年間の売上CAGR 16%、ROE 19%を目標とする成長計画が進行中です。アナリスト平均目標株価は63.5ドル(最低56.56ドル、最高69.3ドル)で、現在価格からの上昇が見込まれています。
一方で、懸念点も存在します。2025年第4四半期に保険車両の平均売却価格(ASP)が前年比5.4%増と好調でしたが、アナリストは高値水準の持続性を疑問視しています。Stephensは目標株価を50ドルから46ドルに引き下げ、「Equal Weight」を維持。株価は52週安値43.69ドルを記録し、過去1年で▲18.36%下落。運営費が15.1%増加(米国の施設関連コスト・管理費増)、ROEが18%から17%に低下し、投資家の慎重姿勢を招いています。
2. コパートの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業:事故車オークションと車両リマーケティング
コパートの主力事業は、次の3つに分けられます:
- 保険車両オークション: 保険会社から全損認定車を買い取り、オンラインオークションで中古車販売業者・解体業者・海外バイヤーに販売。出品手数料・落札手数料で収益を得る手数料ビジネスです。
- Blue Car(銀行・レンタカー・フリート向け): 銀行やレンタカー会社、法人のフリート車両をオークションで販売。2025年第2四半期に前年比27%増、年間15.3%増と高成長を記録しています。
- Purple Wave(重機・農機オークション): 建設機械や農業機械のオークション。2025年第2四半期に前年比8%増と堅調に推移しています。
コパートが属するセクターは「Industrials(資本財)」、業種は「Commercial Services & Supplies(商業サービス・用品)」です。事故車・廃車という特殊な市場で、仲介プラットフォームとして中間マージンを得るビジネスモデルが特徴です。
(2) デジタルマーケットプレイスのビジネスモデル
コパートのビジネスモデルは「保険会社→Copart→中古車業者/解体業者/海外バイヤー」の仲介プラットフォームです。保険会社は全損車の処分を委託し、コパートは保管・オークション・輸送をワンストップ提供します。
収益の80%超を占める「サービス収益」には、次の要素が含まれます:
- オークションプラットフォーム利用料
- 保険会社との統合ITシステム利用料
- 車両保管料・輸送料
この収益構造により、営業利益率42-45%と極めて高く、ROE 25%超を維持しています。1998年にオンライン入札を導入して以来、業界を変革し続けています。
(3) 2028年に向けたグローバル成長戦略
コパートは、2028年までに売上66億ドル、純利益21億ドルを見込む成長計画を掲げています(年間売上成長率13.1%)。主な戦略は次の3つです:
- グローバル展開と施設開発: 欧州・中南米を中心に拠点を拡大。2025年時点で11カ国200拠点以上を運営し、グローバル保険ボリュームは4.5%増。
- 保険会社との契約拡大: 保険会社20社以上と統合ITシステム・独占契約を締結し、新規契約の獲得を継続。
- テクノロジー投資: VB3(Virtual Bidding 3)プラットフォームで世界中から入札可能にし、オークション流動性を向上。
流動性60億ドル(現金48億ドル含む)を保有し、財務基盤は強固です。グローバルサービス収益が2025年第4四半期で6310万ドル増(7%増)、通期で4.077億ドル増(11.4%増)と好調です。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業:IAA(Insurance Auto Auctions)
コパートの主な競合は、IAA(Insurance Auto Auctions)です。IAAも事故車オークションを手掛ける企業で、北米を中心に展開しています。両社は保険会社との独占契約を競い、オークションプラットフォームの利便性・流動性で差別化を図っています。
その他の競合としては、地域密着型の小規模オークション事業者が挙げられますが、グローバル展開と技術投資の面でコパートとIAAが圧倒的に優位です。
(2) 不動産自社保有戦略とネットワーク効果
コパートの差別化ポイントは、次の2つです:
- 不動産自社保有戦略: 施設用地を自社購入することで賃貸コストを回避し、参入障壁を構築。大規模ヤードが在庫多様性を高め、オークション流動性を向上させる好循環を生んでいます。
- ネットワーク効果: 参加者増加がオークション流動性・入札価格を向上させ、売上・利益を増大。保険会社・買い手双方にとって魅力的なプラットフォームとなっています。
この2つの戦略により、競合IAAとの価格競争を抑制し、高い収益性を維持しています。
(3) 市場シェアと収益性の優位性
コパートとIAAの市場シェアは約6:4でコパートが優位です。営業利益率40%超、ROE 25%超の高収益性で競合を上回っています。2025年通期で売上46.5億ドル(前年比9.7%増)、純利益15.5億ドル(前年比13.9%増)を達成し、記録的な業績を達成しました。
ただし、競合IAAとの価格競争が価格決定力を圧迫しているとの指摘もあります。運営費が15.1%増加(米国の施設関連コスト・管理費増)、ROEが18%から17%に低下したことは、投資家の懸念材料となっています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移
コパートの売上高・利益は、過去5年間で堅調に推移しています。以下は、主要な財務指標の推移です(2025年10月時点のデータ):
年度 | 売上高(億ドル) | 純利益(億ドル) | 営業利益率 | ROE |
---|---|---|---|---|
2021 | 28.5 | 8.9 | 約40% | 22% |
2022 | 33.1 | 10.5 | 約41% | 24% |
2023 | 38.7 | 12.8 | 約42% | 26% |
2024 | 42.4 | 13.6 | 約42% | 25% |
2025 | 46.5 | 15.5 | 約43% | 25% |
※2025年10月時点のデータです。最新情報はCopart Inc公式IRページをご確認ください。
(出典: Copart Inc Form 10-K 2025, SEC EDGAR)
2025年第4四半期には、売上11.3億ドル(前年比5.2%増)、EPS 0.41ドル(予想0.37ドルを上回る)を達成。グローバルサービス収益が第4四半期で6310万ドル増(7%増)、通期で4.077億ドル増(11.4%増)と、サービス収益の成長が利益率向上に寄与しています。
(2) 配当政策:無配当の成長株
コパートは無配当です。利益を株主還元ではなく成長投資(グローバル展開、施設開発、テクノロジー投資)に優先配分する方針のため、配当を重視する投資家には向きません。
ただし、過去10年で株価が年率平均25%超上昇した成長株です。2025年第4四半期時点で株価は52週安値43.69ドルを記録し、過去1年で▲18.36%下落しましたが、長期的には高いリターンを提供してきた実績があります。配当よりもキャピタルゲイン(株価上昇)を期待する投資家に向いています。
(3) 財務健全性とROE
コパートの財務健全性は極めて良好です。2025年第1四半期時点で流動性56億ドル(現金44億ドル)を保有し、有利子負債は限定的です。自己資本比率は高く、財務リスクは低いと評価できます。
ROE(自己資本利益率)は25%超を維持しており、株主資本を効率的に活用して高い利益を生み出しています。2025年第4四半期にROEが18%から17%に低下したことは懸念材料ですが、依然として業界平均を大きく上回る水準です。
フリーキャッシュフロー(FCF)も潤沢で、成長投資に振り向ける余力が十分にあります。2025年通期のFCFは約13億ドルで、施設開発やテクノロジー投資に充当されています。
5. リスク要因
(1) 平均売却価格(ASP)の持続可能性
2025年第4四半期に保険車両の平均売却価格(ASP)が前年比5.4%増(米国5.7%増)と好調でしたが、アナリストは高値水準の持続性を疑問視しています。Stephensは目標株価を50ドルから46ドルに引き下げ、「Equal Weight」を維持。
ASPが低下すると、オークションの手数料収入が減少し、収益性に悪影響を及ぼします。中古車価格の下落や、全損認定車の品質低下がASP低下の主な要因です。国際在庫レベルの低下も懸念されており、グローバル展開の成長ペースが鈍化するリスクがあります。
(2) 運転支援技術の進化による事故減少
運転支援技術・自動運転技術の進化により、長期的には事故頻度が減少する可能性があります。事故が減ると全損車両の発生件数も減少し、コパートの取扱台数が減少するリスクがあります。
また、修理費上昇により全損率が低下する可能性もあります。保険会社が「修理可能」と判断する車両が増えると、コパートに委託される全損車両が減少します。自動車販売の軟化も、長期的なリスク要因です。
(3) 景気循環と中古車市場の変動
景気後退時には、新車販売・中古車価格・走行距離が減少し、事故車台数が減少するリスクがあります。また、中古車価格が下落すると、オークションの落札価格が低下し、手数料収入が減少します。
為替リスクも無視できません。コパートは海外展開を加速しており、為替レート(USD/JPY等)の変動により円ベースのリターンが大きく変動します。日本人投資家にとっては、為替ヘッジを検討する必要があります。
さらに、2025年第4四半期には運営費が15.1%増加(米国の施設関連コスト・管理費増)し、ROEが18%から17%に低下しました。競合IAAとの価格競争が価格決定力を圧迫しており、収益性低下のリスクが懸念されています。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
コパート(CPRT)の強みは、次の3点です:
- 事故車オンラインオークションの世界最大手: 11カ国200拠点以上を展開し、毎日175,000台以上の車両をオークションに出品。保険会社20社以上と独占契約を締結し、市場シェア約6:4で競合IAAを上回る。
- 高収益体質: 営業利益率40%超、ROE 25%超の高収益性。サービス収益が売上の80%超を占め、手数料ビジネスとして安定的に利益を創出。
- テクノロジー主導のプラットフォーム: 1998年にオンライン入札を導入し、業界を変革。VB3(Virtual Bidding 3)プラットフォームで世界中から入札可能にし、ネットワーク効果を発揮。
(2) リスク要因(再掲)
リスク要因は、次の2点です:
- 平均売却価格(ASP)の持続可能性: アナリストは高値水準の持続性を疑問視。中古車価格の下落や全損認定車の品質低下がASP低下の要因。
- 景気循環と中古車市場の変動: 景気後退時には事故車台数が減少し、取扱台数が減少するリスク。運転支援技術の進化により、長期的には事故頻度が減少する可能性。
(3) 向いている投資家
コパートは、次のような投資家に向いています:
- 成長株として長期保有を重視する投資家: 配当よりもキャピタルゲイン(株価上昇)を期待。過去10年で株価が年率平均25%超上昇した実績あり。
- ニッチ市場のリーディング企業に関心がある投資家: 事故車オークションという特殊な市場で、テクノロジー主導のプラットフォームが参入障壁となっている。
- 景気循環の影響を理解できる投資家: 景気後退時には事故車台数が減少するリスクを認識し、長期的な視点で投資判断を行える投資家。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断は自己責任で行ってください。最新の財務データ・株価指標は、Copart Inc公式IRページ、SEC EDGAR、証券会社の情報をご確認ください。
Q: コパートの配当利回りは?
A: コパートは無配当です。利益を株主還元ではなく成長投資(グローバル展開、施設開発、テクノロジー投資)に優先配分する方針のため、配当を重視する投資家には向きません。過去10年で株価が年率平均25%超上昇した成長株です。配当よりもキャピタルゲイン(株価上昇)を期待する投資家に向いています。
Q: コパートの主な競合は?
A: IAA(Insurance Auto Auctions)が主な競合です。市場シェアは約6:4でコパートが優位。営業利益率40%超、ROE 25%超の高収益性で競合を上回っています。不動産自社保有戦略とネットワーク効果により、参入障壁を構築し、競合IAAとの価格競争を抑制しています。詳細は「競合との差別化」を参照してください。
Q: コパートのリスク要因は?
A: 平均売却価格(ASP)の持続可能性、運転支援技術の進化による事故減少、景気後退による全損車両台数減が主なリスクです。2025年第4四半期は株価が52週安値43.69ドルを記録し、過去1年で▲18.36%下落。運営費が15.1%増加、ROEが18%から17%に低下しました。中古車価格の下落や全損認定車の品質低下がASP低下の要因です。詳細は「リスク要因」を参照してください。
Q: コパートは長期投資に向いている?
A: 成長株として長期保有を重視し、配当よりもキャピタルゲイン(株価上昇)を期待する投資家に向いています。ニッチ市場のリーディング企業で、テクノロジー主導のプラットフォームが参入障壁となっています。ただし、景気循環の影響を受けやすいため、景気後退時には事故車台数が減少するリスクを認識し、長期的な視点で投資判断を行える投資家に適しています。投資判断はご自身で慎重に行ってください。
Q: コパートの成長戦略は?
A: グローバル展開(11カ国200拠点以上)、Blue Car(銀行・レンタカー・フリート向け)の拡大(2025年第2四半期に前年比27%増)、テクノロジー主導のプラットフォーム強化が柱です。2028年までに売上66億ドル、純利益21億ドルを目指し、5年間の売上CAGR 16%、ROE 19%を目標としています。保険会社との契約拡大、VB3(Virtual Bidding 3)プラットフォームでオークション流動性を向上させる戦略を推進中です。詳細は「事業内容・成長戦略」を参照してください。