0. この記事でわかること
本記事では、ウォーターズ(WAT)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: BD社のBiosciences & Diagnostic Solutions事業買収(175億ドル)により市場規模を倍増、GLP-1治療薬検査・PFAS検査の急成長、高成長領域へのスケール拡大戦略により成長を目指しています
- 事業内容と成長戦略: 分析機器の世界的リーダーで、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)で世界トップシェアを持ち、全世界分析機器市場で20%シェアを確保しています
- 競合との差別化: UPLC技術・質量分析システム・熱分析装置で差別化を図り、Agilent、Thermo Fisher等の競合と競争しています
- 財務・配当の実績: 2025年Q2売上7.71億ドル(9%増)、非GAAP EPS 2.95ドル(12%増)と好調で、フリーキャッシュフローが2025年度7億ドル→2027年度14億ドルに増加予測です
- リスク要因: BD買収による統合リスク、バリュエーション懸念、投資家心理の弱さなどが懸念材料です
1. なぜウォーターズ(WAT)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
ウォーターズは2025年以降、以下3つの成長戦略を推進しています:
BD社のBiosciences & Diagnostic Solutions事業買収によるTAM倍増 BD社のBiosciences & Diagnostic Solutions事業を175億ドルで買収し、TAM(市場規模)を約400億ドルに倍増させました(年率5-7%成長)。統合後の2025年売上見込みは約65億ドル、調整後EBITDA約20億ドルとなり、ライフサイエンス・診断分野のリーダーに変貌します。
高成長領域へのスケール拡大戦略 化学ポートフォリオの大分子応用向けを2030年までに40%から50%に拡大し、eコマース採用と契約組織の成長を推進します。GLP-1治療薬、PFAS検査、ジェネリック医薬品に戦略的にフォーカスしており、高成長領域でのポジションをスケールしています。
3つの成長柱を実行 実行力の卓越性を埋め込む、先駆的イノベーションを提供する、高成長領域でのポジションをスケールするという3つの成長柱を実行しています。長期目標として有機成長率5-7%、高い1桁台成長を見込んでいます。
(2) 注目テーマ(GLP-1治療薬検査・PFAS検査・バイオテクノロジーブーム)
投資家が注目するテーマは以下3つです:
- GLP-1治療薬検査(前年比70%成長)とPFAS検査(前年比50%超成長): 糖尿病・肥満治療薬の急成長分野とパーフルオロアルキル化合物の環境汚染物質検出が急速に拡大しています
- バイオテクノロジーブーム対応: 製薬セグメントが低2桁成長を達成し、バイオテクノロジー業界の研究開発投資拡大に対応しています
- 複雑な機器をシンプルでアクセス可能にする変革: データインテグリティと分子複雑性追跡のソフトウェア統合により、顧客の操作性を向上させています
(3) 投資家の関心・懸念点
ウォーターズは2025年通貨一定ベース売上成長率を5.5-7.5%、非GAAP EPSを12.95-13.05ドルに上方修正しました。Q2 2025は売上7.71億ドル(9%増)、非GAAP EPS 2.95ドル(12%増)と好調で、LC・質量分析ポートフォリオが中位1桁成長、経常収益が11%増、製薬セグメントが低2桁成長を達成しました。アナリストはフリーキャッシュフローが2025年度の約7億ドルから2027年度には14億ドルに増加すると予測し、BD買収により製薬・バイオテクノロジー製造セクターでの大幅な拡大が見込まれています。
一方、BD買収発表後に株価が12%下落し、統合・成長懸念、レバレッジと実行リスクを反映しました。株価バリュエーション懸念として、年初来19.4%下落、52週高値(2025年1月の417.28ドル)から28.9%下落し296.67ドルで取引されています。決算で予想を上回ったにもかかわらず株価が5.27%下落するなど、投資家心理が弱い点が懸念材料です。
2. ウォーターズの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業
ウォーターズは以下3つの主力製品で事業を展開しています:
超高速液体クロマトグラフィー(UPLC) 液体を移動相として用いるクロマトグラフィーで、混合物を成分ごとに分離する分析手法です。ウォーターズは世界トップシェアを持ち、全世界分析機器市場で20%シェアを確保しています。500億ドルの全世界分析機器市場で110億ドル売上を達成しています。
質量分析システム(Mass Spectrometry) 分子の質量を測定して物質を同定・定量する技術であり、LC・質量分析ポートフォリオが中位1桁成長を達成しています。
熱分析装置(TA Instruments) 物質の温度変化による物性変化を測定する装置で、マーケットシェア19%で1位を確保しています。TA Instrumentsブランドで提供しています。
(2) セクター・業種の説明
ウォーターズはHealth Careセクター、Life Sciences Tools & Services業種に属します。分析機器業界は以下の特徴があります:
- 製薬・バイオテクノロジー業界への依存: 顧客の研究開発投資が減少すると、分析機器の需要も減少する可能性があります
- 高額設備投資: EBITDA(利払い・税金・減価償却前利益)が重要指標であり、装置製造業では設備投資が大きいため減価償却費を考慮した利益分析が必要です
- 技術革新の速さ: UPLC、質量分析、データインテグリティソフトウェアなどの技術革新が競争優位性を左右します
ウォーターズは35カ国以上で事業展開し、100カ国以上で製品販売しています。HPLC、UPLC、MS技術システム、クロマトグラフィーカラムなどを提供し、TA Instruments製品ライン通じて熱分析・レオメトリー・カロリメトリー機器も提供しています。
(3) ビジネスモデルの特徴
ウォーターズのビジネスモデルは以下の特徴があります:
買収による成長戦略 BD社のBiosciences & Diagnostic Solutions事業を175億ドルで買収し、TAM(市場規模)を約400億ドルに倍増させました。買収により製薬・バイオテクノロジー製造セクターでの大幅な拡大が見込まれています。
経常収益(Recurring Revenue)の重視 消耗品・サービス契約などの安定収益源である経常収益が11%増を達成しており、安定したキャッシュフローを確保しています。
高成長領域へのフォーカス GLP-1治療薬検査(前年比70%成長)、PFAS検査(前年比50%超成長)、ジェネリック医薬品に戦略的にフォーカスしており、急成長分野での収益拡大を目指しています。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業
分析機器市場における主要競合は以下4社です:
Agilent Technologies(米国) 分析機器・診断機器の世界的リーダーであり、LC、MS、GCなど幅広い製品ラインでウォーターズと競合しています。
Thermo Fisher Scientific(米国) 科学機器・試薬・消耗品・ソフトウェアの世界最大手であり、分析機器市場でウォーターズと競合しています。
Shimadzu Corporation(島津製作所、日本) 分析機器・医用機器の世界的メーカーであり、LC、MS、GCなどでウォーターズと競合しています。
PerkinElmer(米国) 分析機器・診断機器の世界的メーカーであり、ライフサイエンス・診断分野でウォーターズと競合しています。
(2) 競合優位性
ウォーターズの競合優位性は以下3つです:
超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)で世界トップシェア 全世界分析機器市場で20%シェアを確保し、500億ドルの市場で110億ドル売上を達成しています。UPLC技術で差別化を図り、競合他社との技術優位性を維持しています。
熱分析装置でマーケットシェア1位 TA Instrumentsブランドで提供する熱分析装置で、マーケットシェア19%で1位を確保しています。物質の温度変化による物性変化を測定する装置として、研究開発・品質管理で広く利用されています。
BD買収によるTAM倍増と製品ポートフォリオ拡張 BD社のBiosciences & Diagnostic Solutions事業買収により、TAM(市場規模)を約400億ドルに倍増させ、製薬・バイオテクノロジー製造セクターでの大幅な拡大が見込まれています。
(3) 市場でのポジショニング
ウォーターズは分析機器の世界的リーダーであり、35カ国以上で事業展開し、100カ国以上で製品販売しています。2025年売上成長率5.5-7.5%、非GAAP EPS 12.95-13.05ドルの上方修正から、ライフサイエンス・診断分野の成長が期待されています。
アナリストはフリーキャッシュフローが2025年度の約7億ドルから2027年度には14億ドルに増加すると予測しており、長期的な成長が見込まれています。ただし、BD買収による統合リスクとバリュエーション懸念が投資家の不安要因となっています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移
以下は2025年Q2の四半期業績です(2025年10月時点):
項目 | 2025年Q2 | 前年同期比 |
---|---|---|
売上高 | 7.71億ドル | +9%(通貨一定8%) |
非GAAP EPS | 2.95ドル | +12% |
LC・質量分析ポートフォリオ成長率 | - | 中位1桁成長 |
経常収益成長率 | - | +11% |
製薬セグメント成長率 | - | 低2桁成長 |
2025年通期ガイダンス(上方修正):
- 通貨一定売上成長率: 5.5-7.5%
- 非GAAP EPS: 12.95-13.05ドル
将来見通し: アナリストはフリーキャッシュフローが2025年度の約7億ドルから2027年度には14億ドルに増加すると予測しています。BD買収により製薬・バイオテクノロジー製造セクターでの大幅な拡大が見込まれており、統合後の2025年売上見込みは約65億ドル、調整後EBITDA約20億ドルとなります。
(出典: Waters Corporation Q2 2025 Earnings Call, SEC EDGAR)
(2) 配当履歴
ウォーターズの配当利回りは約0.3%程度(2025年時点)と低めですが、フリーキャッシュフローが2025年度の約7億ドルから2027年度には14億ドルに増加すると予測されており、将来的な配当増額や自社株買いの余地があります。
配当実績:
- 配当利回り: 約0.3%(2025年時点)
- フリーキャッシュフロー(2025年度予測): 約7億ドル
- フリーキャッシュフロー(2027年度予測): 14億ドル
日本人投資家向け注意点: 米国株配当は米国で10%源泉徴収されます。NISA口座でも米国10%源泉徴収は免除されないため、配当利回りは実質的に約0.27%(10%源泉徴収後)となります。特定口座(源泉徴収あり)の場合、米国10%源泉徴収後、日本で20.315%課税されるため、外国税額控除の活用を検討してください。
(3) 財務健全性
フリーキャッシュフローの急増予測 フリーキャッシュフローが2025年度の約7億ドルから2027年度には14億ドルに増加すると予測されており、配当増額や自社株買いの余地が拡大しています。
経常収益の安定成長 消耗品・サービス契約などの安定収益源である経常収益が11%増を達成しており、安定したキャッシュフローを確保しています。
EBITDA 装置製造業では重要指標であり、統合後の調整後EBITDAは約20億ドルとなります。利払い・税金・減価償却前利益として注目されています。
5. リスク要因
(1) 事業リスク
BD買収による統合リスク BD社のBiosciences & Diagnostic Solutions事業を175億ドルで買収しましたが、発表後に株価が12%下落しました。統合・成長懸念、レバレッジと実行リスクが投資家の不安要因となっており、統合が計画通り進まない可能性があります。競争上の堀が弱まる懸念もあります。
バリュエーション懸念と投資家心理の弱さ 年初来19.4%下落、52週高値(2025年1月の417.28ドル)から28.9%下落し296.67ドルで取引されています。決算で予想を上回ったにもかかわらず株価が5.27%下落するなど、投資家心理が弱い点が懸念材料です。
(2) 市場環境リスク
製薬・バイオテクノロジー業界の景気変動リスク 顧客の研究開発投資が減少すると、分析機器の需要も減少する可能性があります。製薬・バイオテクノロジー業界の景気変動により、売上が大幅に変動するリスクがあります。
為替リスク 100カ国以上で製品販売しているため、為替変動の影響を受けます。特に米ドル安円高局面では円ベースでの受取配当額が減少します。為替レート変動により円ベースでの受取配当額は変動するため、長期投資では為替リスクを考慮してください。
(3) 規制・競争リスク
競合他社(Agilent、Thermo Fisher、Shimadzu)の動向 Agilent Technologies、Thermo Fisher Scientific、Shimadzu Corporation(島津製作所)、PerkinElmerとの競争が激化しており、市場シェアが変動する可能性があります。技術革新の速さにより、競合優位性が揺らぐリスクがあります。
技術革新のスピード UPLC、質量分析、データインテグリティソフトウェアなどの技術革新が競争優位性を左右します。技術革新のスピードに追いつけない場合、市場シェアを失う可能性があります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
BD買収によるTAM倍増と製品ポートフォリオ拡張 BD社のBiosciences & Diagnostic Solutions事業買収により、TAM(市場規模)を約400億ドルに倍増させ、統合後の2025年売上見込みは約65億ドル、調整後EBITDA約20億ドルとなります。ライフサイエンス・診断分野のリーダーに変貌します。
GLP-1治療薬検査・PFAS検査の急成長 GLP-1治療薬検査(前年比70%成長)とPFAS検査(前年比50%超成長)が急速に拡大しており、高成長領域での収益拡大が期待されています。
経常収益の安定成長とフリーキャッシュフロー急増予測 経常収益が11%増を達成し、フリーキャッシュフローが2025年度の約7億ドルから2027年度には14億ドルに増加すると予測されています。安定したキャッシュフローと将来的な配当増額・自社株買いの余地が拡大しています。
(2) リスク要因(再掲)
BD買収による統合リスク 発表後に株価が12%下落し、統合・成長懸念、レバレッジと実行リスクが投資家の不安要因となっています。
バリュエーション懸念と投資家心理の弱さ 年初来19.4%下落、52週高値から28.9%下落し、決算で予想を上回ったにもかかわらず株価が5.27%下落するなど、投資家心理が弱い点が懸念材料です。
(3) 向いている投資家のタイプ
ライフサイエンス・診断分野の成長に期待する長期投資家 BD買収により製薬・バイオテクノロジー製造セクターでの大幅な拡大が見込まれており、ライフサイエンス・診断分野の成長に期待する長期投資家に向いています。
高成長領域を評価する投資家 GLP-1治療薬検査(前年比70%成長)、PFAS検査(前年比50%超成長)、化学ポートフォリオの大分子応用向けを2030年までに50%に拡大する戦略を評価する投資家に向いています。
成長性重視の投資家 2025年売上成長率5.5-7.5%、非GAAP EPS 12.95-13.05ドルの上方修正から、成長性を重視する投資家に向いています。配当利回りは低めですが、フリーキャッシュフローの急増予測により将来的な株主還元拡大が期待されます。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新情報はウォーターズ公式IRページおよびSEC EDGARをご確認ください。
Q: ウォーターズの配当利回りは?
A: 配当利回りは約0.3%程度(2025年時点)と低めですが、フリーキャッシュフローが2025年度の約7億ドルから2027年度には14億ドルに増加すると予測されており、将来的な配当増額や自社株買いの余地があります。米国株配当は米国で10%源泉徴収されるため、実質的な配当利回りは約0.27%となります。NISA口座でも米国10%源泉徴収は免除されないため、特定口座の場合は外国税額控除の活用を検討してください。
Q: ウォーターズの主な競合は?
A: 分析機器市場における主要競合として、Agilent Technologies(米国)、Thermo Fisher Scientific(米国)、Shimadzu Corporation(島津製作所、日本)、PerkinElmer(米国)があります。ウォーターズは超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)で世界トップシェアを持ち、全世界分析機器市場で20%シェアを確保しています。競合優位性は、UPLC技術での差別化、熱分析装置でマーケットシェア1位(19%)、BD買収によるTAM倍増(約400億ドル)の3つです。
Q: ウォーターズのリスク要因は?
A: BD買収(175億ドル)による統合リスク(発表後に株価12%下落)、バリュエーション懸念(年初来19.4%下落、52週高値から28.9%下落)、好決算後も株価が5.27%下落するなど投資家心理の弱さが主なリスクです。統合が計画通り進まない可能性があり、競争上の堀が弱まる懸念もあります。製薬・バイオテクノロジー業界の景気変動により、顧客の研究開発投資が減少すると分析機器の需要も減少する可能性があります。詳細はリスク要因セクションを参照してください。
Q: ウォーターズは長期投資に向いている?
A: BD買収によりTAM(市場規模)を約400億ドルに倍増(年率5-7%成長)、GLP-1治療薬検査(前年比70%成長)とPFAS検査(前年比50%超成長)の急成長、化学ポートフォリオの大分子応用向けを2030年までに50%に拡大する戦略が成長を牽引します。2025年売上成長率5.5-7.5%、非GAAP EPS 12.95-13.05ドルの上方修正から、ライフサイエンス・診断分野の成長に期待する長期投資家に向いています。配当利回りは低めですが、フリーキャッシュフローが2025年度7億ドル→2027年度14億ドルに増加予測から、将来的な株主還元拡大が期待されます。BD買収の統合リスクには注意が必要です。投資判断はご自身でご確認ください。