0. この記事でわかること
本記事では、アマゾン・ドット・コム(AMZN)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 世界最大のEC・クラウド企業として、AWS・AI基盤への1,000億ドル超投資、広告事業の急成長、食料品・ラストマイル配送の強化が成長戦略の中核です。
- 事業内容と成長戦略: EC(オンラインストア)、AWS(クラウドコンピューティング)、広告、Prime会員サービスを展開。EC事業は売上の5割超だが、AWS(売上の15%)が営業利益の6割超を稼ぐ収益の柱です。
- 競合との差別化: EC事業ではウォルマート・楽天、クラウドではMicrosoft Azure・Google Cloudと競合しつつ、Prime会員エコシステムとAWSの高利益率で差別化しています。
- 財務・配当の実績: 2025年Q2純売上高1,677億ドル(+13%)、営業利益192億ドル、EPS 1.68ドル。現在無配で、成長投資(AWS・物流・AI等)に利益を再投資しています。
- リスク要因: AWS成長鈍化、関税・中国依存リスク、FTC独占禁止法違反訴訟、競争激化(クラウド・AI市場)に注意が必要です。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の投資推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
1. なぜアマゾン・ドット・コム(AMZN)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
アマゾンは、世界最大のEC・クラウド企業として、以下の3つの成長戦略で投資家の注目を集めています。
AWS・AI基盤への大規模投資 2025年にAWSインフラとAI能力に主に1,000億ドル超を投資予定で、CEO Andy Jassyは「現在、需要が供給を上回っている」と述べ、特にAWSで需要が供給を超過している状況です。AWS(Amazon Web Services)とは、アマゾンが提供するクラウドコンピューティングプラットフォームで、企業がサーバー・ストレージ・データベース等のITインフラを自前で構築せずに利用できるサービスです。AWSは売上の約15%にすぎませんが、営業利益の6割超を稼ぐ高収益事業で、今後2年以内に営業利益1,000億ドル超への貢献が見込まれています。
広告事業の拡大 広告ビジネスは2025年Q3に前年比21.5%成長を見込み、Prime Videoの広告時間を1時間あたり4-6分に増加させることで2025年までに広告収益を35-40億ドルへほぼ倍増させる計画です。Amazonの広告事業は、検索連動広告(ユーザーが商品検索時に表示される広告)とPrime Videoの動画広告が柱で、Google・Metaに次ぐ第3の広告プラットフォームとして成長しています。
食料品・ラストマイル配送の強化 Same-Day Serviceを通じた生鮮食品への拡大により消費者支出のより大きな部分を獲得し、76か所のSubSameDayフルフィルメントセンターネットワークを活用してコスト効率を改善しています。ラストマイル配送とは、物流の最終区間(配送センターから顧客宅までの配送)を指し、ECの最大のコストがかかる部分です。生鮮食品の即日配送を強化することで、食料品市場(年間数兆ドル規模)でのシェア拡大を狙っています。
(2) 注目テーマ(生成AI・自動運転・統合エコシステム)
アマゾンは、以下の3つのトレンドキーワードで投資家の関心を集めています。
生成AI・Nova AIモデル 2024年12月発表のNova AIモデルはAmazon Bedrock経由で独占提供され、ChatGPT競合の価格効率的オプションとして注目されています。生成AIとは、テキスト、画像、コード等を自動生成する人工知能技術です。AmazonはBedrockというプラットフォームで、Nova AIモデルを含む複数の生成AIモデルを企業向けに提供しており、AWS顧客の生成AI活用を支援しています。
自動運転・Zooxロボタクシー 子会社Zooxが2025年末までに複数市場でロボタクシーを開始し、年間10,000台超の生産能力を持つ計画です。Zooxは2020年にアマゾンが買収した自動運転技術企業で、完全自動運転タクシーの開発を進めています。配送用の自動運転車両としても活用が期待されており、ラストマイル配送のコスト削減につながる可能性があります。
eコマース・クラウド・AIの自己強化エコシステム 効率性・顧客ロイヤルティ・企業採用を相互に促進する統合基盤が特徴です。EC事業で蓄積した顧客データをAWSとAIで分析し、商品推薦・在庫最適化・配送効率化に活用しています。Prime会員(年会費制のサブスクリプションサービス)は、配送無料・Prime Video・Prime Music等の特典により顧客を囲い込み、EC・広告・AWS・AIの各事業が相互に強化し合うエコシステムを構築しています。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家は、アマゾンの長期的な成長性に関心を持つ一方で、短期的な課題にも注目しています。
関心点
- アナリスト50社の平均目標株価は269.26ドル(レンジ203-306ドル)で、現在株価から24.22%の上昇余地を示す「強い買い」のコンセンサス評価
- AWSは今後2年以内に営業利益1,000億ドル超への貢献が見込まれ、収益は年率9.6%、EPS(1株利益)は年率14%成長が予想される
- 長期的には2030年までに株価476.20ドルに達する予測もある
- 10年間の複合年間成長率(CAGR)は25.68%を達成(2025年時点)
懸念点
- 2025年Q2営業利益ガイダンス(130-175億ドル)が市場予想(178億ドル)を下回り、関税・経済混乱が消費を圧迫する懸念
- トランプ政権の関税政策により中国発送品を多く扱う小売業務に影響、独立系中国セラーがアマゾン倉庫から撤退すると物流・高利益広告ビジネスが損傷する懸念で2025年の株価は約13%下落
- 2025年Q1のAWSは前年比17%成長だが期待を下回り、AI投資が他のテック大手ほど業績向上につながっていない不満
- FTC(連邦取引委員会)が独占禁止法違反で訴訟中
短期的には関税・規制リスクとAWS成長鈍化が懸念材料ですが、長期的にはAWS・AI基盤への大規模投資と広告事業の急成長が成長を牽引すると期待されています。
2. アマゾン・ドット・コムの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(EC・AWS・広告・Prime)
アマゾンは1994年創業(ジェフ・ベゾス)で、以下の4つの主力事業を展開しています。
オンラインストア(EC) 書籍から家電・ファッション・食料品まで幅広い商品をオンラインで販売しています。売上の5割超を占めますが、利益率は低い(薄利多売モデル)です。第三者販売サービス(Amazonマーケットプレイス手数料)も含めると、EC関連事業が売上の大半を占めます。
AWS(Amazon Web Services) クラウドコンピューティングプラットフォームで、売上の約15%にすぎませんが、営業利益の6割超を稼ぐ高収益事業です。2025年Q2のAWS売上高は前年比17.5%増の309億ドルで、今後2年以内に営業利益1,000億ドル超への貢献が見込まれています。企業がサーバー・ストレージ・データベース等のITインフラを自前で構築せずに利用できるサービスで、世界No.1のクラウドプラットフォームです。
広告 検索連動広告(ユーザーが商品検索時に表示される広告)とPrime Videoの動画広告が柱で、2025年Q2の広告収益は前年比23%増の156.9億ドルに達しています。Google・Metaに次ぐ第3の広告プラットフォームとして成長しており、2025年までにPrime Video広告収益を35-40億ドルへほぼ倍増させる計画です。
Prime会員サービス 年会費制のサブスクリプションサービスで、配送無料・Prime Video・Prime Music・Prime Reading等の特典を提供しています。Prime会員は購入頻度・購入金額が非会員の数倍に上り、顧客ロイヤルティの中核となっています。
(2) セクター・業種の説明(Broadline Retail)
アマゾンは**一般消費財セクター(Consumer Discretionary)の総合小売業種(Broadline Retail)**に分類されます。
総合小売業種には、幅広いカテゴリーの商品を取り扱う小売企業が含まれます。ウォルマート、ターゲット、コストコなどが同じ業種に分類されます。ただし、アマゾンはEC中心でAWS・広告・Primeなど多角化しており、伝統的な総合小売企業とは大きく異なります。AWSの高収益率がアマゾンの独自性であり、「小売企業」というより「テック企業」としての側面が強いと評価されています。
(3) ビジネスモデルの特徴(顧客中心主義・長期思考)
アマゾンのビジネスモデルの最大の特徴は、顧客中心主義と長期思考です。
4つの経営原則
- 顧客への執着(Customer Obsession)
- 発明への情熱(Passion for Invention)
- 業務卓越性へのコミットメント(Commitment to Operational Excellence)
- 長期思考(Long-Term Thinking)
これらの原則に基づき、短期的な利益よりも長期的な成長を重視し、範囲・価格・利便性を競争優位の中核としています。2024年のR&D(研究開発)投資は730億ドル超で、複数領域での技術リーダーシップを維持しています。
Prime会員エコシステム Prime会員(年会費制)は、配送無料・Prime Video・Prime Music等の特典により顧客を囲い込み、購入頻度・購入金額を大幅に引き上げています。Prime会員の年間購入額は非会員の数倍に上り、顧客生涯価値(LTV: Lifetime Value)を最大化するモデルです。
成長投資重視(無配方針) アマゾンは現在無配で、利益を成長投資(AWS・物流・AI・自動運転等)に再投資しています。配当を支払わず成長投資に資金を回すことで、長期的な株価上昇を狙う戦略です。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(ウォルマート・Microsoft・Google)
アマゾンの主要競合企業は、事業領域ごとに異なります。
EC事業: ウォルマート、楽天 ウォルマートは米国最大の総合小売企業で、実店舗とECの両方を展開しています。実店舗網を活用した即日配送やピックアップサービスで、アマゾンに対抗しています。楽天は日本最大のECプラットフォームで、楽天ポイント経済圏を武器に顧客を囲い込んでいます。
クラウド(AWS)事業: Microsoft Azure、Google Cloud Microsoft Azureは世界No.2のクラウドプラットフォームで、Microsoftの企業向けソフトウェア(Windows、Office等)との統合が強みです。Google Cloudは世界No.3で、AI・機械学習技術と検索エンジンのインフラを活用しています。
広告事業: Google、Meta Googleは検索広告で圧倒的なシェアを持ち、Metaは SNS広告(Facebook、Instagram)で強みを発揮しています。アマゾンはEC上の購買意欲が高いユーザーに広告を表示できる点で、コンバージョン率(広告から購入に至る率)が高い特徴があります。
(2) 競合優位性(AWS利益率・Prime会員エコシステム)
アマゾンの競合優位性は、以下の2点です。
AWSの高利益率 AWSは売上の約15%にすぎませんが、営業利益の6割超を稼ぐ高収益事業です。EC事業は薄利多売モデルで利益率が低いのに対し、AWSは営業利益率が30%超と極めて高く、アマゾン全体の収益を支えています。今後2年以内に営業利益1,000億ドル超への貢献が見込まれており、長期的な成長の柱です。
Prime会員エコシステム Prime会員は、配送無料・Prime Video・Prime Music・Prime Reading等の特典により、顧客の購入頻度・購入金額を大幅に引き上げています。Prime会員の年間購入額は非会員の数倍に上り、顧客ロイヤルティが極めて高い点が競合優位性です。EC・広告・AWS・AIの各事業が相互に強化し合うエコシステムにより、他社が模倣困難な競争力を構築しています。
(3) 市場でのポジショニング(世界最大のEC・クラウド企業)
アマゾンは、世界最大のEC・クラウド企業として市場でポジショニングしています。
EC事業では、書籍から家電・ファッション・食料品まで幅広いカテゴリーを取り扱い、「何でも揃うワンストップショップ」として顧客の利便性を最大化しています。ウォルマート等の実店舗型小売と比較して、在庫回転率が高く、価格競争力があります。
クラウド事業(AWS)では、世界No.1のシェアを持ち、Microsoft Azure・Google Cloudを大きく引き離しています。企業のITインフラ投資がオンプレミス(自社サーバー)からクラウドへ移行する長期トレンドが追い風となっており、AWS・AI基盤への1,000億ドル超投資により、さらにシェアを拡大する見込みです。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(2025年Q2決算)
以下は、アマゾンの最新決算情報です(2025年Q2時点)。
指標 | 2025年Q2 | 前年比 |
---|---|---|
純売上高 | 1,677億ドル | +13% |
営業利益 | 192億ドル | +31%(前年同期147億ドル) |
EPS(1株利益) | 1.68ドル | 予想1.33ドルを上回る |
広告収益 | 156.9億ドル | +23% |
AWS売上高 | 309億ドル | +17.5% |
(出典: Amazon.com Announces Second Quarter Results, SEC EDGAR)
2025年Q2のハイライト:
- 純売上高は1,677億ドルに13%増加(前年同期1,480億ドル)
- 営業利益は192億ドルに31%増加(前年同期147億ドル)
- EPS 1.68ドルが市場予想1.33ドルを上回る
- 広告収益は前年比23%増の156.9億ドルで急成長
- AWS売上高は前年比17.5%増の309億ドルだが、市場予想を下回る
AWSは前年比17%成長だが期待を下回り、AI投資が他のテック大手ほど業績向上につながっていない不満が投資家の懸念材料となっています。一方で、広告事業は前年比23%増と高成長を維持しており、新たな収益源として注目されています。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はAmazon.com公式IRページ(https://ir.aboutamazon.com)をご確認ください。
(2) 配当履歴(現在無配・成長投資重視)
アマゾンは、現在無配です。
- 配当利回り: 0%(無配)
- 配当性向: 0%(利益を成長投資に再投資)
- 成長投資の内訳: AWS・物流・AI・自動運転(Zoox)等
無配方針の理由 アマゾンは、配当を支払わず利益を成長投資(AWS・物流・AI・自動運転等)に再投資する方針です。2025年にAWSインフラとAI能力に1,000億ドル超を投資予定で、2024年のR&D投資は730億ドル超に達しています。配当を支払わず成長投資に資金を回すことで、長期的な株価上昇を狙う戦略です。
キャピタルゲインが主な投資収益 アマゾン株は、配当によるインカムゲインではなく、株価上昇によるキャピタルゲイン(売却益)が主な投資収益となります。10年間の複合年間成長率(CAGR)は25.68%を達成しており、長期保有による株価上昇が期待できます。
日本人投資家向けの注意点: アマゾンは無配のため、外国税額控除は現時点では関係ありません。ただし、将来的に配当を再開する可能性もあります。また、NISA口座での投資が有利です。NISA口座では株式の値上がり益が非課税となるため、アマゾンのような成長株投資に適しています。
(3) 財務健全性(営業利益・キャッシュフロー)
アマゾンの財務健全性は、以下の指標で評価できます。
営業利益: 2025年Q2は192億ドル(+31%)
- EC事業は薄利だが、AWSの高利益率が全体の営業利益を牽引
- AWSは営業利益率が30%超と極めて高く、今後2年以内に営業利益1,000億ドル超への貢献が見込まれる
キャッシュフロー
- AWSの高収益により、潤沢なキャッシュフローを確保
- 成長投資(AWS・物流・AI・自動運転等)に積極的に資金を投入
バランスシート
- 無借金経営ではないが、AWSの高収益により財務健全性は高い水準
- 長期思考に基づき、短期的な利益よりも長期的な成長を重視
アマゾンは無配で成長投資重視のため、配当投資家には向きませんが、長期的な株価上昇を期待する成長株投資家に人気の銘柄です。
(出典: Amazon.com Q2 2025 Earnings Release, SEC EDGAR)
5. リスク要因
(1) 事業リスク(AWS成長鈍化・関税政策)
AWS成長鈍化とガイダンス未達 2025年Q1のAWSは前年比17%成長だが期待を下回り、Q2売上高ガイダンス1,590-1,640億ドルが投資家期待より軽く、AI投資が他のテック大手ほど業績向上につながっていない不満が投資家の懸念材料となっています。CEO Andy Jassyは「需要が供給を上回っている」と述べていますが、AI・クラウド市場での競争激化(Microsoft、Google等との競合)により、AWS成長率が鈍化するリスクがあります。
関税・中国依存リスク トランプ政権の関税政策により中国発送品を多く扱う小売業務に影響が出ており、独立系中国セラーがアマゾン倉庫から撤退すると物流・高利益広告ビジネスが損傷する懸念があります。2025年の株価は約13%下落しており、関税・経済混乱が消費を圧迫する懸念が投資家の売り材料となっています。
(2) 市場環境リスク(中国依存・規制リスク)
中国関連セラーの撤退リスク 中国関連セラーの撤退リスクが物流・広告ビジネスに悪影響の可能性があり、サードパーティサービス収益成長が大幅鈍化しています。Amazonマーケットプレイス(第三者販売サービス)は、中国からの出品者が多く、関税政策により中国セラーが撤退すると、手数料収益と広告収益が減少するリスクがあります。
為替リスク(日本人投資家向け) 日本人投資家がアマゾン株に投資する場合、為替変動リスクに留意する必要があります。円高ドル安になると、ドル建ての株価が上昇しても円建てでは損失となる可能性があります。為替手数料についても、証券会社ごとに異なります(SBI証券は2024年12月に為替手数料を無料化)。
(3) 規制・競争リスク(FTC訴訟・反トラスト法)
FTC独占禁止法違反訴訟 FTC(連邦取引委員会)が独占禁止法違反で訴訟中です。アマゾンは、ECプラットフォームとして圧倒的なシェアを持ち、第三者販売者に対する手数料や、検索結果の優遇措置などが反トラスト法(独占禁止法)違反にあたる可能性が指摘されています。規制強化により、事業モデルの変更や罰金が課されるリスクがあります。
競争激化(クラウド・AI市場) クラウド・AI市場での競争激化(Microsoft、Google等との競合)により、AWS成長率が鈍化するリスクがあります。Microsoft AzureはMicrosoftの企業向けソフトウェアとの統合が強みで、Google CloudはAI・機械学習技術で差別化を図っています。AWS・AI基盤への1,000億ドル超投資により競争力を維持する計画ですが、他社の追い上げにより、シェアが低下する可能性があります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(AWS高収益・多角化・技術力)
アマゾン・ドット・コムの強みは、以下の3点です。
AWSの高収益率 AWSは売上の約15%にすぎませんが、営業利益の6割超を稼ぐ高収益事業です。営業利益率が30%超と極めて高く、今後2年以内に営業利益1,000億ドル超への貢献が見込まれています。EC事業は薄利多売モデルで利益率が低いのに対し、AWSの高収益がアマゾン全体の収益を支えています。
多角化(EC・AWS・広告・Prime) EC、AWS、広告、Prime会員サービスの4つの主力事業により、収益源が分散されています。広告事業は2025年Q2に前年比23%増の156.9億ドルに達し、新たな収益源として急成長しています。Prime会員エコシステムにより、EC・広告・AWS・AIの各事業が相互に強化し合う構造が、他社が模倣困難な競争力を生み出しています。
技術投資力(R&D 730億ドル超) 2024年のR&D投資は730億ドル超で、AWS・AI・自動運転(Zoox)・生成AI(Nova AIモデル)など複数領域での技術リーダーシップを維持しています。長期思考に基づき、短期的な利益よりも長期的な成長を重視する姿勢が、持続的な競争力の源泉となっています。
(2) リスク要因(再掲)
一方で、以下の3つのリスク要因に留意が必要です。
AWS成長鈍化とガイダンス未達 2025年Q1のAWSは前年比17%成長だが期待を下回り、AI投資が他のテック大手ほど業績向上につながっていない不満が投資家の懸念材料となっています。クラウド・AI市場での競争激化により、AWS成長率が鈍化するリスクがあります。
関税・中国依存リスク トランプ政権の関税政策により中国発送品を多く扱う小売業務に影響が出ており、独立系中国セラーの撤退により物流・広告ビジネスが損傷する懸念があります。2025年の株価は約13%下落しています。
FTC独占禁止法違反訴訟 FTCが独占禁止法違反で訴訟中であり、規制強化により事業モデルの変更や罰金が課されるリスクがあります。
(3) 向いている投資家(成長株志向・長期保有)
アマゾンは、以下のような投資家に向いています。
成長株志向の投資家 アマゾンは無配で、利益を成長投資(AWS・物流・AI・自動運転等)に再投資する方針です。配当によるインカムゲインではなく、株価上昇によるキャピタルゲイン(売却益)が主な投資収益となります。10年間の複合年間成長率(CAGR)は25.68%を達成しており、長期保有による株価上昇が期待できます。
長期保有の投資家 長期思考に基づき、短期的な利益よりも長期的な成長を重視する経営方針が、長期保有の投資家に適しています。AWS・AI基盤への1,000億ドル超投資、広告事業の急成長、食料品・ラストマイル配送の強化など、複数の成長ドライバーが長期的な株価上昇を牽引すると期待されています。
テック企業・クラウド・AIに関心がある投資家 AWSは世界No.1のクラウドプラットフォームで、企業のITインフラ投資がオンプレミス(自社サーバー)からクラウドへ移行する長期トレンドが追い風となっています。生成AI・Nova AIモデル、自動運転・Zooxロボタクシーなど、最先端技術への投資に関心がある投資家に向いています。
免責事項 本記事は情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の投資推奨ではありません。財務データは四半期ごとに更新されるため、最新の10-Q・決算発表で確認してください。Amazonは現在無配のため、キャピタルゲイン(株価上昇益)が主な投資収益となる点に注意してください。為替レート(ドル円)の変動により実質的な投資収益が変動するリスクがあります。関税政策・規制リスク(FTC独占禁止法違反訴訟、中国関連セラー撤退リスク等)が株価に影響する可能性があります。AI・クラウド市場での競争激化(Microsoft、Google等との競合)とAWS成長率鈍化リスクに留意してください。投資判断はご自身の責任で行ってください。
※2025年10月時点の情報です。最新情報はAmazon.com公式IRページ(https://ir.aboutamazon.com)、SEC EDGAR(https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001018724)をご確認ください。