0. この記事でわかること
本記事では、メドトロニック(MDT)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 世界最大級の医療機器メーカー(ペースメーカー世界首位)として、パルスフィールドアブレーション(PFA)製品が低20%台成長でFY25売上10億ドル達成、ロボット支援手術(Hugo外科ロボットの泌尿器科適応でFDA申請予定)、腎除神経術(高血圧治療でCMS承認、2025年10月最終化見込み)などの高成長市場への資本配分強化
- 事業内容と成長戦略: 心臓血管・医療外科・神経科学・糖尿病の4部門で、AI・データ分析・新技術を最大活用したR&D戦略により未充足の臨床ニーズに対応、長期財務目標は年間オーガニック売上5%超成長(従来4%超から引き上げ)、調整後EPS年率8%超成長を掲げる
- 競合との差別化: Abbott Laboratories(ABT)、Boston Scientific(BSX)、Johnson & Johnson(JNJ)と競合する中で、糖尿病ケア部門のスピンオフにより低利益率セグメントを分離し、高成長・高利益率事業(PFA、TAVR、心臓リズム管理、神経調節、脊椎)に集中、1960年制定のミッション「人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす」が半世紀以上にわたり方向性を示す
- 財務・配当の実績: FY2025売上335億ドル(オーガニック4.9%成長)、GAAP EPS 3.61ドル(31%増)、Non-GAAP EPS 5.49ドル(6%増)、フリーキャッシュフロー51.9億ドル、配当貴族47年連続増配(配当性向FCFの65%に過ぎず増配余地あり)
- リスク要因: 500億ドルのCovidien買収後、大型製品リリース減少・R&D投資減少・株価低迷により10年間の成長鈍化が続く、アクティビスト投資家Elliott Investment Managementが大口株式取得しより収益性の高い成長を求める圧力、利益率圧縮(FY2025 Q2で粗利益率48bp縮小し64.9%)、為替逆風への高い露出、高債務、配当成長率1%台への鈍化
(335字)
1. なぜメドトロニック(MDT)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
メドトロニックは、世界最大級の医療機器メーカーとして、以下の3つの成長戦略を推進しています。
① ロボット支援手術・腎除神経術などの高成長市場への資本配分強化
ロボット支援手術では、Hugo外科ロボットプラットフォームの泌尿器科適応で2025年早期にFDA(米国食品医薬品局)申請を予定しています。Hugoはダヴィンチ(Intuitive Surgical社の手術ロボット)と競合する製品で、より低価格で導入しやすいシステムとして期待されています。
腎除神経術(Renal Denervation)は、高血圧治療の新しいアプローチで、CMS(メディケア・メディケイドサービスセンター)がカバレッジを承認し、2025年10月11日までに最終化される見込みです。これにより、高血圧患者に対する新たな治療選択肢が提供され、メドトロニックの成長ドライバーとなります。
② AI・データ分析・新技術を最大活用したR&D戦略
メドトロニックは、AI・データ分析・新技術を最大活用したR&D(研究開発)戦略により、未充足の臨床ニーズに対応するイノベーションを創出しています。内製R&D投資を増額し、小規模M&A(企業買収・合併)のペースを加速させています。
例えば、AI活用により心房細動検出と高リスク患者特定が80%精度を達成しました。また、2021年10月には「Medtronic Open Innovation Platform」を立ち上げ、9万人超の従業員と世界150カ国以上のネットワークを活用し、外部スタートアップとの協業を促進しています。
③ 糖尿病ケア部門のスピンオフによる高成長・高利益率事業への集中
糖尿病ケア部門のスピンオフ(独立分社化)により、低利益率セグメントを分離し、高成長・高利益率事業(パルスフィールドアブレーション、TAVR、心臓リズム管理、神経調節、脊椎)に集中する計画です。これにより、収益性向上と成長加速が期待されています。
(2) 注目テーマ(パルスフィールドアブレーション・ロボット手術・腎除神経)
投資家が注目するキーワードとして、以下の3つが挙げられます。
- パルスフィールドアブレーション(PFA)・TAVR・神経調節: PFAは不整脈治療で心臓組織を非熱的に焼灼する次世代技術で、FY25でPFA製品が低20%台成長を牽引し売上10億ドルを達成しました。TAVRは経カテーテル大動脈弁置換術で、心臓弁膜症の低侵襲治療として成長しています。
- ロボット支援手術(Hugoプラットフォーム)・腎除神経術: Hugoはダヴィンチと競合する低価格手術ロボットで、泌尿器科適応でFDA申請予定。腎除神経術は高血圧治療の新アプローチで、CMS承認により2025年10月最終化見込み。
- AI・機械学習・デジタル変革・バリューベースドヘルスケア: AI活用により心房細動検出と高リスク患者特定が80%精度を達成。バリューベースドヘルスケアは、治療結果(アウトカム)に基づいて報酬を決める新しい医療制度で、医療費抑制と質の向上を両立する取り組みです。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家の関心は、配当貴族47年連続増配と高齢化・慢性疾患増加の構造的成長にあります。FY2025通年で売上335億ドル(オーガニック4.9%成長)、GAAP EPS 3.61ドル(31%増)、Non-GAAP EPS 5.49ドル(6%増)を達成しました。長期財務目標は年間オーガニック売上5%超成長(従来4%超から引き上げ)、調整後EPS年率8%超成長を掲げています。
一方で、懸念点も存在します。500億ドルのCovidien買収後、大型製品リリース減少・R&D投資減少・株価低迷により10年間の成長鈍化が続いています。アクティビスト投資家Elliott Investment Managementが大口株式を取得し、より収益性の高い成長を求める圧力が高まっています。Elliott Investment Managementは潜在価値を引き出せていないと考える企業を揺さぶることで知られており、ウォール街はメドトロニックに対してより収益性の高い成長を要求しています。
また、業界全体のコスト増加(地政学的懸念、原材料・労働コスト高、原油価格変動、高金利による借入コスト増)により、FY2025 Q2で粗利益率は48bp(ベーシスポイント)縮小し64.9%となりました。為替逆風への高い露出も懸念されています。
アナリスト評価では、13人のコンセンサス評価「買い」、平均目標株価102.62ドル(8.93%上昇余地)とポジティブな評価が多く見られます。EPS予想は2026年5.62ドル、2027年6.03ドル、2028年6.55ドルで、年間EPS成長率21.4%(米国医療機器業界平均11.58%、米国市場平均15.22%を上回る)と期待されています。
2. メドトロニックの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(心臓血管・医療外科・神経科学・糖尿病)
メドトロニックは、4つの事業部門で幅広い医療機器を提供しています。
① 心臓血管部門(Cardiovascular)
心臓ペースメーカー(世界首位)、除細動器、カテーテル、心臓弁などを提供しています。パルスフィールドアブレーション(PFA)製品が低20%台成長を牽引し、FY25売上10億ドルを達成しました。TAVR(経カテーテル大動脈弁置換術)も成長しています。
② 医療外科部門(Medical Surgical)
手術器具、ロボット支援手術システム(Hugo)、患者モニタリング機器などを提供しています。Hugoは泌尿器科適応でFDA申請を予定しており、ダヴィンチと競合する低価格手術ロボットとして期待されています。
③ 神経科学部門(Neuroscience)
脊椎インプラント、脳神経外科機器、神経調節装置(パーキンソン病・慢性疼痛治療用)などを提供しています。神経調節は成長ドライバーの一つです。
④ 糖尿病部門(Diabetes)
インスリンポンプ、連続血糖測定器(CGM)などを提供していますが、低利益率セグメントとして、スピンオフ(独立分社化)が計画されています。糖尿病管理の自動インスリン送達システムは高い成長が期待されています。
⑤ 企業のミッション
メドトロニックは1960年に制定されたミッション「人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす」が半世紀以上にわたり方向性を示しています。このミッションは、医療機器メーカーとしての社会的責任を明確にしています。
(2) セクター・業種の説明(ヘルスケア・医療機器)
メドトロニックはヘルスケアセクター(Health Care)の医療機器業種(Health Care Equipment & Supplies)に属しています。医療機器業種の特徴は、高齢化・慢性疾患増加による構造的成長が期待できることです。
一方で、規制当局(FDA等)の承認遅延や臨床試験の失敗により製品発売が遅れるリスク、医療費抑制政策による価格圧力が存在します。米国では、バリューベースドヘルスケア(治療結果に基づく報酬制度)が推進されており、医療費抑制と質の向上を両立する取り組みが進んでいます。
メドトロニックは本社をアイルランド・ダブリンに置いています。2014年6月にアイルランドのCovidienを500億ドルで買収・子会社化し、本社を移転しました。アイルランドは法人税率が低いため、税務戦略上のメリットがあります。
(3) ビジネスモデルの特徴(高齢化・慢性疾患増加の構造的成長)
メドトロニックのビジネスモデルの最大の特徴は、高齢化・慢性疾患増加の構造的成長が期待できることです。
① 高齢化による需要増加
世界的に高齢化が進んでおり、心臓ペースメーカー、人工関節、脊椎インプラントなどの医療機器の需要が増加しています。特に米国では、ベビーブーマー世代(1946-1964年生まれ)が高齢化しており、医療機器市場の拡大が続いています。
② 慢性疾患増加による需要増加
糖尿病、高血圧、心臓病などの慢性疾患患者が増加しており、継続的な治療が必要です。メドトロニックは、インスリンポンプ、連続血糖測定器(CGM)、腎除神経術(高血圧治療)などで慢性疾患市場に対応しています。
③ イノベーションによる新市場創造
メドトロニックは、AI・データ分析・新技術を最大活用したR&D戦略により、未充足の臨床ニーズに対応するイノベーションを創出しています。パルスフィールドアブレーション(PFA)、ロボット支援手術(Hugo)、腎除神経術などの新技術により、新市場を創造しています。
米国の事業本部では、今後10年で技術開発等に計100億ドルを投資予定です。また、2021年10月には「Medtronic Open Innovation Platform」を立ち上げ、外部スタートアップとの協業を促進しています。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(Abbott・Boston Scientific・Johnson & Johnson)
メドトロニックの主要競合企業は以下の3社です。
① Abbott Laboratories(ABT)
医薬品・医療機器・栄養製品を展開する多角化企業で、心臓ペースメーカー、血糖測定器(FreeStyleリブレ)、血管ステントなどで競合しています。Abbottは連続血糖測定器(CGM)市場でシェアを拡大しています。
② Boston Scientific(BSX)
心臓血管・内視鏡・泌尿器科・神経調節などの医療機器を展開しており、心臓カテーテル、ステント、ペースメーカー、除細動器などで競合しています。Boston Scientificはパルスフィールドアブレーション(PFA)市場でメドトロニックと競合しています。
③ Johnson & Johnson(JNJ)
医薬品・医療機器・消費者向け製品を展開する多角化企業で、手術器具、整形外科インプラント、心臓血管機器などで競合しています。ただし、Johnson & Johnsonは2023年にMedTech事業を「Kenvue」として分社化しており、競合関係は変化しています。
これらの競合企業と比較すると、メドトロニックは世界最大級の医療機器メーカーとして、ペースメーカー世界首位、幅広い領域で製品提供している点が特徴です。
(2) 競合優位性(PFA製品低20%台成長・Hugo外科ロボット・AI活用)
メドトロニックの競合優位性は、以下の3点に集約されます。
① パルスフィールドアブレーション(PFA)製品が低20%台成長
PFAは不整脈治療で心臓組織を非熱的に焼灼する次世代技術で、従来のカテーテルアブレーション(熱焼灼)よりも安全性が高いとされています。メドトロニックのPFA製品はFY25で低20%台成長を牽引し、売上10億ドルを達成しました。Boston ScientificもPFA市場で競合していますが、メドトロニックは先行者利益を活かして市場シェアを拡大しています。
② Hugo外科ロボットの泌尿器科適応でFDA申請予定
Hugoはダヴィンチ(Intuitive Surgical社の手術ロボット)と競合する低価格手術ロボットで、モジュール式設計により病院が導入しやすいシステムとなっています。ダヴィンチは高価格(1台数億円)であるため、Hugoは中小病院への普及が期待されています。泌尿器科適応でFDA申請を予定しており、承認されればロボット支援手術市場での競争力が高まります。
③ AI活用により心房細動検出と高リスク患者特定が80%精度達成
メドトロニックは、AI・機械学習を活用して心房細動検出と高リスク患者特定が80%精度を達成しました。これにより、早期診断・早期治療が可能となり、患者の予後改善とコスト削減に貢献しています。AI活用は医療機器業界で競争優位性を確立する重要な要素となっています。
(3) 市場でのポジショニング(世界最大級医療機器メーカー・ペースメーカー世界首位)
メドトロニックは世界最大級の医療機器メーカーとして、以下のポジションを確立しています。
- ペースメーカー世界首位: 心臓ペースメーカー市場で世界首位のシェアを持っています。
- 世界医療機器シェア率トップ: 業界内売上トップで、幅広い領域で製品を提供しています。
- 糖尿病事業スピンオフによる高利益率事業への集中: 低利益率の糖尿病ケアセグメントを分離し、高成長・高利益率事業(PFA、TAVR、心臓リズム管理、神経調節、脊椎)に集中します。
これらのポジショニングにより、メドトロニックは世界最大級の医療機器メーカーとしての地位を維持しつつ、成長を加速させる計画です。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(FY2025売上335億ドル・オーガニック4.9%成長)
メドトロニックの財務実績は以下の通りです(FY2025通年、会計年度は4月末締め)。
項目 | FY2025 | 成長率 |
---|---|---|
売上高 | 335.4億ドル | 報告ベース+3.6%、オーガニック+4.9% |
GAAP純利益 | 46.6億ドル | +27% |
GAAP EPS | 3.61ドル | +31% |
Non-GAAP純利益 | 70.8億ドル | +2% |
Non-GAAP EPS | 5.49ドル | +6% |
営業キャッシュフロー | 70.4億ドル | +4% |
フリーキャッシュフロー | 51.9億ドル | 横ばい |
※出典: Medtronic IR発表(FY2025年次決算)、SEC EDGAR
オーガニック成長とは、買収・売却・為替の影響を除いた実質的な売上成長率を指します。FY2025は売上高が報告ベースで3.6%増にとどまったものの、オーガニック売上は4.9%成長しました。これは、為替の影響が売上高に対してマイナスに働いたことを示しています。
FY2025 Q4の実績
- 売上: 89.3億ドル(報告ベース3.9%増、オーガニック5.4%増)
- GAAP純利益: 10.6億ドル(62%増)、GAAP EPS: 0.82ドル(67%増)
- Non-GAAP純利益: 20.8億ドル(8%増)、Non-GAAP EPS: 1.62ドル(11%増)
- 心臓アブレーションソリューション売上: 約30%増(PFA製品が牽引)、FY25売上10億ドル達成
長期財務目標
- 年間オーガニック売上: 5%超成長(従来4%超から引き上げ)
- 調整後EPS: 年率8%超成長
メドトロニックは、CEOのJeff Marthaが「製品パイプラインは収益改善推進に適した位置にある」と述べており、心臓アブレーション・腎除神経・神経調節・糖尿病管理の自動インスリン送達システムで最も高い成長が期待されています。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はMedtronic公式IRページをご確認ください。
(2) 配当履歴(配当貴族47年連続増配・配当性向FCFの65%)
メドトロニックは株主還元を重視しており、配当貴族47年連続増配を達成しています。
配当貴族とは
配当貴族とは、S&P500構成銘柄のうち25年以上連続増配している企業を指し、約65社が該当します。メドトロニックは47年連続増配を達成しており、配当貴族の中でも長期的な配当成長実績があります。
配当性向
配当性向はフリーキャッシュフローの65%に過ぎず、今後も増配余地があります。ただし、最近は配当成長率が1%台に鈍化しており、成長の鈍化が懸念されています。
配当利回りの詳細は公式IRページや証券会社の株価情報でご確認ください。
配当の税金に関する注意
米国株の配当には、米国で10%の源泉徴収が行われ、さらに日本でも20.315%の課税が行われます(二重課税)。ただし、確定申告で外国税額控除を申請することで、二重課税の一部を軽減できます。詳細は国税庁「外国税額控除」ページをご確認ください。
NISA口座で保有する場合、日本での課税は非課税となりますが、米国での10%源泉徴収は免除されません。成長投資枠は年間240万円まで非課税で投資可能です。
(3) 財務健全性(FCF 51.9億ドル・営業CF 70.4億ドル)
メドトロニックの財務健全性は以下の指標で評価できます。
① フリーキャッシュフロー(FCF)
FY2025にフリーキャッシュフロー51.9億ドルを創出しました(横ばい)。Non-GAAP純利益からのフリーキャッシュフロー転換率は73%です。フリーキャッシュフローは、営業キャッシュフローから設備投資を差し引いた金額で、企業が自由に使える現金を示します。
② 営業キャッシュフロー
FY2025に営業キャッシュフロー70.4億ドルを創出しました(4%増)。営業キャッシュフローは本業からの現金創出力を示す重要な指標です。
③ 高債務
詳細な財務指標は10-K年次報告書(SEC EDGAR)で確認できます。2014年のCovidien買収(500億ドル)により高債務を抱えており、高金利環境下で借入コストが増加しています。これは利益率圧縮の一因となっています。
(出典: Medtronic 10-K FY2025, SEC EDGAR)
5. リスク要因
(1) 事業リスク(Covidien買収後の成長鈍化・R&D投資減少)
メドトロニックの最大のリスクは、Covidien買収後の成長鈍化です。2014年6月に500億ドルでCovidienを買収しましたが、その後、大型製品リリース減少・R&D投資減少・株価低迷により10年間の成長鈍化が続いています。
① 大型製品リリース減少
Covidien買収後、大型製品リリースが減少し、成長が鈍化しました。2022年決算では売上高が予想を下回り、通期1株利益見通しを下方修正しました。アナリストは「らくだの背を折る最後の藁」と表現し、投資家が長期成長実現能力を疑問視しました。
② R&D投資減少
Covidien買収後、R&D投資が減少し、イノベーション創出が鈍化しました。ただし、最近は内製R&D投資を増額し、小規模M&Aのペースを加速させています。米国の事業本部では今後10年で技術開発等に計100億ドルを投資予定です。
③ 株価低迷
Covidien買収後、株価は低迷しています。アクティビスト投資家Elliott Investment Managementが大口株式を取得し、より収益性の高い成長を求める圧力が高まっています。
(2) 市場環境リスク(医療費抑制・為替逆風・アクティビスト圧力)
メドトロニックは市場環境リスクも抱えています。
① 医療費抑制による価格圧力
米国では医療費抑制政策が推進されており、バリューベースドヘルスケア(治療結果に基づく報酬制度)が導入されています。これにより、医療機器メーカーは価格圧力を受け、利益率が圧縮されています。
② 為替逆風への高い露出
メドトロニックは世界150カ国以上で事業を展開しており、為替リスクへの露出が高いです。ドル高により、海外売上の円換算額が減少し、利益率が圧迫されています。
③ アクティビスト投資家Elliott Investment Managementの圧力
Elliott Investment Managementは潜在価値を引き出せていないと考える企業を揺さぶることで知られており、ウォール街はメドトロニックに対してより収益性の高い成長を要求しています。会社分割の憶測も渦巻いています。
(3) 規制・競争リスク(FDA承認遅延・利益率圧縮・高債務)
メドトロニックは規制リスクも抱えています。
① FDA承認遅延
医療機器業界は規制当局(FDA等)の承認遅延や臨床試験の失敗により製品発売が遅れるリスクがあります。Hugo外科ロボットの泌尿器科適応FDA申請は2025年早期に予定されていますが、承認までには時間がかかる可能性があります。
② 利益率圧縮
業界全体のコスト増加(地政学的懸念、原材料・労働コスト高、原油価格変動、高金利による借入コスト増)により、FY2025 Q2で粗利益率は48bp(ベーシスポイント)縮小し64.9%となりました。
③ 高債務
2014年のCovidien買収(500億ドル)により高債務を抱えており、高金利環境下で借入コストが増加しています。これは利益率圧縮の一因となっています。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(糖尿病事業スピンオフ・長期売上目標5%超・EPS成長8%超)
メドトロニックの強みは以下の3点です。
① 糖尿病事業スピンオフによる高利益率事業への集中
低利益率の糖尿病ケアセグメントを分離し、高成長・高利益率事業(パルスフィールドアブレーション、TAVR、心臓リズム管理、神経調節、脊椎)に集中します。これにより収益性向上と成長加速が期待されます。
② 長期財務目標は年間オーガニック売上5%超成長(従来4%超から引き上げ)
メドトロニックは長期財務目標を従来の4%超から5%超に引き上げました。心臓アブレーション(PFA製品が牽引し低20%台成長、FY25売上10億ドル)、神経調節、糖尿病、脊椎が成長ドライバーとなっています。
③ 調整後EPS年率8%超成長
調整後EPS年率8%超成長を掲げており、収益性向上と株主還元の強化が期待されます。配当貴族47年連続増配の実績があり、配当性向はフリーキャッシュフローの65%に過ぎず増配余地があります。
(2) リスク要因(再掲)
メドトロニックのリスク要因は以下の2点です。
① Covidien買収後の成長鈍化
500億ドルのCovidien買収後、大型製品リリース減少・R&D投資減少・株価低迷により10年間の成長鈍化が続いています。アクティビスト投資家Elliott Investment Managementが大口株式を取得し、より収益性の高い成長を求める圧力が高まっています。
② 利益率圧縮と高債務
業界全体のコスト増加により、FY2025 Q2で粗利益率は48bp(ベーシスポイント)縮小し64.9%となりました。高債務により高金利環境下で借入コストが増加しています。
(3) 向いている投資家(配当貴族重視・医療機器成長期待・長期保有志向)
メドトロニックは以下のような投資家に向いています。
① 配当貴族重視の投資家
47年連続増配の配当貴族として、長期的な配当成長実績があります。配当性向はフリーキャッシュフローの65%に過ぎず、今後も増配余地があります。ただし、最近は配当成長率が1%台に鈍化しているため、配当成長重視の投資家は注意が必要です。
② 医療機器成長期待の投資家
高齢化・慢性疾患増加による構造的成長が期待できます。パルスフィールドアブレーション(PFA)製品が低20%台成長、ロボット支援手術(Hugo)、腎除神経術などの新技術により、新市場を創造しています。
③ 長期保有志向の投資家
長期財務目標は年間オーガニック売上5%超成長、調整後EPS年率8%超成長を掲げており、長期的な成長を期待する投資家に適しています。アナリストのEPS予想は年間成長率21.4%(米国医療機器業界平均11.58%を上回る)と期待されています。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。財務データは最新決算(10-K、10-Q、IR発表)でご確認ください。税率・NISA制度は改正の可能性があるため、最新情報は国税庁・金融庁の公式サイトでご確認ください。為替レート変動により円換算の配当・株価が大きく変動するリスクがあります。
Q: メドトロニックの配当利回りは?
A: メドトロニックは47年連続増配の配当貴族です。配当性向はフリーキャッシュフローの65%に過ぎず、今後も増配余地があります。配当利回りの詳細は公式IRページや証券会社の株価情報でご確認ください。米国株の配当には米国で10%の源泉徴収が行われ、さらに日本でも20.315%の課税が行われます(二重課税)。確定申告で外国税額控除を申請することで、二重課税の一部を軽減できます。ただし、最近は配当成長率が1%台に鈍化しているため、配当成長重視の投資家は注意が必要です。
Q: メドトロニックの主な競合は?
A: Abbott Laboratories(ABT)、Boston Scientific(BSX)、Johnson & Johnson(JNJ)が主要競合です。メドトロニックはペースメーカー世界首位、パルスフィールドアブレーション(PFA)で低20%台成長を実現しています。PFA製品はFY25で売上10億ドルを達成しました。競合との差別化ポイントは、Hugo外科ロボット(ダヴィンチと競合する低価格手術ロボット)、AI活用により心房細動検出と高リスク患者特定が80%精度達成、糖尿病事業スピンオフによる高利益率事業への集中です。
Q: メドトロニックのリスク要因は?
A: 主なリスク要因は、Covidien買収後の成長鈍化(大型製品リリース減少・R&D投資減少・株価低迷により10年間の成長鈍化)、アクティビスト投資家Elliott Investment Managementの圧力(より収益性の高い成長を要求、会社分割の憶測)、医療費抑制による価格圧力、為替逆風への高い露出、利益率圧縮(FY2025 Q2で粗利益率48bp縮小し64.9%)、高債務(Covidien買収500億ドル、高金利環境下で借入コスト増加)です。詳細は本文の「5. リスク要因」セクションを参照してください。
Q: メドトロニックは長期投資に向いている?
A: 47年連続増配の配当貴族、高齢化・慢性疾患増加の構造的成長、長期売上目標オーガニック5%超(従来4%超から引き上げ)、調整後EPS年率8%超成長を掲げており、配当と成長性を重視する長期投資家に向いています。パルスフィールドアブレーション(PFA)製品が低20%台成長、ロボット支援手術(Hugo)、腎除神経術などの新技術により新市場を創造しています。アナリストのEPS予想は年間成長率21.4%(米国医療機器業界平均11.58%を上回る)と期待されています。投資判断はご自身でご検討ください。
Q: 糖尿病事業スピンオフの影響は?
A: 低利益率の糖尿病ケアセグメントを分離し、高成長・高利益率事業(パルスフィールドアブレーション、TAVR、心臓リズム管理、神経調節、脊椎)に集中します。これにより収益性向上と成長加速が期待されます。ただし、糖尿病管理の自動インスリン送達システムは高い成長が期待されているため、スピンオフ後も糖尿病事業の成長性には注目が集まっています。詳細は本文の「1. なぜメドトロニック(MDT)が注目されているのか」セクションを参照してください。