0. この記事でわかること
本記事では、ノーフォーク・サザン(NSC)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 米国東部を基盤とする大手貨物鉄道として、インフラの独占性と高い参入障壁を持ち、連続増配40年超の配当貴族銘柄として投資家の関心を集めています
- 事業内容と成長戦略: 石炭、インターモーダル(コンテナ)、化学品、農産物などを輸送する貨物鉄道ビジネス。PSR(Precision Scheduled Railroading)による効率化で3-4年以内にオペレーティングレシオを60%未満に改善し、収益性を向上させる計画
- 競合との差別化: Union Pacific、CSX等の競合と比較し、米国東部22州の路線網と効率化戦略で差別化。2028年までに利益倍増の見通し
- 財務・配当の実績: 2024年収益121億ドル、営業利益41億ドル、EPS 11.57ドル。連続増配40年超の実績があり、配当利回りは2%前後。約3億ドルのコスト削減を達成
- リスク要因: 景気敏感性と石炭輸送減少、負債比率122.3%の高水準、Union Pacificとの合併計画の不確実性
1. なぜノーフォーク・サザン(NSC)が注目されているのか
(1) 米国東部を基盤とする大手貨物鉄道
ノーフォーク・サザン(Norfolk Southern Corporation、ティッカーシンボル:NSC)は、米国東部を基盤とする大手貨物鉄道会社です。1982年にNorfolk and Western鉄道とSouthern鉄道が合併して設立され、米国東部22州に約19,500マイルの路線網を展開しています。
主要輸送品目は以下の通りです:
- 石炭: 発電所向け石炭輸送が伝統的な主力事業。ただし、再生可能エネルギーへの転換により縮小傾向
- インターモーダル(コンテナ): 鉄道・トラック・船舶を組み合わせた複合一貫輸送。成長分野として投資を強化
- 化学品: 石油化学製品、肥料などの輸送
- 農産物: 穀物、大豆などの輸送
投資家から注目される理由は、インフラの独占性と高い参入障壁にあります。鉄道路線網は長期的な資産価値を持ち、トラック輸送より燃費効率が高い点が競争優位性となっています。また、米国では貨物鉄道市場は寡占状態で、新規参入が事実上困難なため、安定的な収益を確保できます。
(2) インフラの独占性と高い参入障壁
ノーフォーク・サザンが投資家から高い評価を受ける最大の理由は、インフラの独占性です。米国の貨物鉄道市場は、以下の4社が寡占しています:
- Union Pacific(UNP): 米国西部を中心に展開
- BNSF Railway: バークシャー・ハサウェイ傘下。米国西部から中部を網羅
- CSX Corporation(CSX): 米国東部を中心に展開。ノーフォーク・サザンの主要競合
- Norfolk Southern(NSC): 米国東部22州に展開
これらの鉄道会社は、長期的な資産価値を持つ路線網を保有しており、新規参入が事実上困難です。鉄道路線の建設には巨額の資本投資と用地取得が必要で、規制当局の承認も厳しいため、高い参入障壁が形成されています。
また、鉄道輸送はトラック輸送より燃費効率が高く、環境負荷が低い点も競争優位性です。1ガロンの燃料で1トンの貨物を約470マイル輸送できるため、長距離輸送では鉄道が選択されることが多いです。
(3) 連続増配40年超の配当貴族銘柄
ノーフォーク・サザンは、連続増配40年超の配当貴族銘柄として、配当重視の投資家から高い評価を得ています。配当利回りは2%前後と高水準ではありませんが、長期的な増配実績が魅力です。
配当貴族銘柄の条件:
- S&P 500指数構成銘柄であること
- 連続増配25年以上の実績があること
- 時価総額や流動性などの基準を満たすこと
ノーフォーク・サザンは、景気後退期でも配当を維持・増配してきた実績があり、ディフェンシブ銘柄として長期投資家に適しています。2024年には約3億ドルのコスト削減を達成し、配当の持続可能性が高まっています。
投資家の期待:
- 2028年までに利益倍増の見通し: 今後数年で利益が大幅に成長すると予測されており、配当増額の余地が大きい
- 強力なキャッシュフロー: 鉄道ビジネスは設備投資後のキャッシュフロー創出力が高く、配当原資が安定
- 株価上昇の期待: 効率化戦略(PSR)により収益性が改善し、株価上昇が期待されています
※2025年10月時点の情報です。最新情報はNorfolk Southern公式IRページをご確認ください。
2. ノーフォーク・サザンの事業内容・成長戦略
(1) 貨物鉄道ビジネスの収益構造
ノーフォーク・サザンのビジネスモデルは、顧客から輸送料金を受け取り、鉄道で貨物を輸送するシンプルな構造です。収益は以下の品目別に分類されます:
主要輸送品目と収益構成(概算、2024年時点):
品目 | 収益比率 | 特徴 |
---|---|---|
インターモーダル | 約25-30% | コンテナ輸送。成長分野として投資強化 |
化学品 | 約20-25% | 石油化学製品、肥料など。安定的な需要 |
農産物 | 約15-20% | 穀物、大豆など。季節変動あり |
石炭 | 約10-15% | 発電所向け。縮小傾向(再エネ転換の影響) |
その他 | 約20-30% | 自動車、金属、建設資材など |
収益構造の特徴:
- 固定費が高い: 路線網の維持管理、機関車・貨車の購入など、固定費が大きい
- 変動費は限定的: 燃料費、人件費などが主な変動費
- 規模の経済: 輸送量が増えると、1単位あたりのコストが低下し、収益性が向上
ノーフォーク・サザンは、顧客中心のオペレーション計画を掲げ、レジリエントなサービスとスマートで持続可能な成長をバランスさせる戦略を展開しています。顧客が長期的な供給計画にNorfolk Southernを組み込めるよう、サービスを競争優位に変える投資を実施しています。
(2) PSR(Precision Scheduled Railroading)による効率化
ノーフォーク・サザンの成長戦略の中心は、**PSR(Precision Scheduled Railroading、精密スケジュール鉄道運行)**による効率化です。PSRは、カナダの鉄道会社で成功を収めた経営手法で、以下の原則に基づいています:
PSRの主要原則:
- 列車の定時運行: スケジュール通りに列車を運行し、顧客の信頼を獲得
- 資産の効率的活用: 機関車・貨車の稼働率を最大化し、遊休資産を削減
- コスト削減: 不要なオペレーションを削減し、オペレーティングレシオ(営業費用÷営業収益)を改善
ノーフォーク・サザンのPSR成果:
- 列車速度22%改善: CEO Alan Shaw就任以来、列車の平均速度が大幅に向上
- インターモーダル定時運行30%改善: コンテナ輸送の定時運行率が向上し、顧客満足度が上昇
- ターミナル滞留11%改善: 貨車のターミナル滞留時間を短縮し、資産効率が向上
- 残業20%削減: 2024年下半期に労働生産性が向上
オペレーティングレシオ改善計画:
ノーフォーク・サザンは、3-4年以内にオペレーティングレシオを60%未満に改善することで、競合他社とのマージン差を解消し、長期的にトップクラスの収益とEPS成長を達成する明確な道筋を提示しています。2024年通期のオペレーティングレシオは66.4%で、2025年は1.5ポイント改善を目標としています。
(3) インターモーダル投資と貨物多角化
ノーフォーク・サザンは、石炭輸送の縮小を見据え、インターモーダル投資と貨物多角化を成長戦略の柱としています。
インターモーダル投資の狙い:
- 成長市場: eコマース(Amazon等)の拡大により、コンテナ輸送需要が増加
- トラック輸送からのシフト: 燃費効率の高さと環境負荷の低さで、長距離輸送では鉄道が選択されることが増加
- 設備投資: インターモーダルターミナルの拡張、コンテナ貨車の増強など、資本支出を強化
貨物多角化の取り組み:
- アラバマ州への戦略的投資: 米国で最も成長が速いセグメントと製造センターにサービスを提供
- 農業、林業、消費財、自動車、化学、金属、建設など多様な産業にサービス提供: 石炭依存度を低下させ、収益の安定性を向上
- 2025年資本支出22億ドル: インフラと技術に継続投資し、長期的な成長基盤を構築
2025年の成長見通し:
- 収益成長2-3%: 2025年は2-3%の収益成長を見込む(当初予想から下方修正)
- 生産性改善1億7,500万ドル以上: コスト削減により収益性を改善
- オペレーティングレシオ1.5ポイント改善: 効率化により66.4%から約65%へ改善を目標
※2025年10月時点の情報です。最新情報はNorfolk Southern公式IRページをご確認ください。 (出典: Norfolk Southern Corporation 公式ウェブサイト、FreightWaves、アメリカ部)
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(Union Pacific、CSX等)との比較
ノーフォーク・サザンの主要競合企業は、以下の通りです:
主要競合の比較:
企業名 | 路線網 | 事業エリア | 特徴 |
---|---|---|---|
Union Pacific(UNP) | 約32,000マイル | 米国西部23州 | 米国最大級の貨物鉄道。大陸横断路線を保有 |
BNSF Railway | 約32,500マイル | 米国西部から中部 | バークシャー・ハサウェイ傘下。石炭・穀物輸送が強み |
CSX Corporation(CSX) | 約21,000マイル | 米国東部23州 | ノーフォーク・サザンの最大の競合。東部市場でシェアを競う |
Norfolk Southern(NSC) | 約19,500マイル | 米国東部22州 | 東部2位の規模。PSR導入で効率化を推進 |
ノーフォーク・サザンの差別化ポイント:
- 米国東部の強固な路線網: ニューヨーク、フィラデルフィア、アトランタ、シカゴなど主要都市を網羅。製造業・港湾へのアクセスが強み
- PSR導入による効率化: 列車速度22%改善、ターミナル滞留11%改善など、競合と比較して効率化が進展
- 顧客中心のサービス: 定時運行率向上により、顧客が長期的な供給計画に組み込みやすいサービスを提供
(2) 米国東部22州の路線網の優位性
ノーフォーク・サザンの路線網は、米国東部22州に展開しており、以下の地域に強みを持ちます:
主要サービスエリア:
- 北東部: ニューヨーク、フィラデルフィア、ボストン。人口密集地でコンテナ輸送需要が高い
- 中西部: シカゴ、デトロイト。製造業の集積地で化学品・自動車輸送が盛ん
- 南東部: アトランタ、シャーロット。成長市場で物流需要が増加
- 港湾アクセス: ノーフォーク港、チャールストン港など主要港湾にアクセス。インターモーダル輸送の起点
路線網の優位性:
- 製造業の集積地: 米国東部は製造業が集積しており、化学品・金属・自動車などの輸送需要が安定
- 港湾アクセス: 大西洋岸の主要港湾にアクセスでき、海外からのコンテナ輸送を取り込める
- 成長市場: アラバマ州など南東部は人口増加と経済成長が続いており、長期的な需要拡大が見込める
(3) オペレーティングレシオ改善計画
ノーフォーク・サザンの最大の差別化戦略は、オペレーティングレシオの改善です。オペレーティングレシオは、営業費用÷営業収益で計算され、低いほど収益性が高いことを示します。
競合とのオペレーティングレシオ比較(概算、2024年時点):
企業名 | オペレーティングレシオ |
---|---|
Union Pacific(UNP) | 約60% |
CSX Corporation(CSX) | 約60% |
Norfolk Southern(NSC) | 約66.4%(2024年通期) |
ノーフォーク・サザンのオペレーティングレシオは、競合と比較して高く、効率性で劣っていることを示しています。しかし、PSR導入により改善が進んでおり、3-4年以内に60%未満に改善する目標を掲げています。
改善計画の具体策:
- 生産性改善: 2025年に1億7,500万ドル以上のコスト削減を目標
- 資産効率向上: 機関車・貨車の稼働率を最大化し、遊休資産を削減
- 労働生産性向上: 残業削減、自動化技術の導入など
オペレーティングレシオが60%未満に改善されれば、競合他社とのマージン差が解消され、収益性が大幅に向上します。2028年までに収益137億ドル、利益34億ドルを予測(年間成長率3.9%)しており、利益倍増が見込まれています。
※2025年10月時点の情報です。最新情報はNorfolk Southern公式IRページをご確認ください。 (出典: Norfolk Southern Corporation 公式ウェブサイト、FreightWaves)
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移と最新業績
ノーフォーク・サザンは、2024年に堅調な業績を達成し、PSR導入による効率化の成果が表れています。以下は最近の財務実績です:
2024年通期業績:
- 収益: 121億ドル
- 営業利益: 41億ドル
- 調整後EPS: 11.57ドル
- オペレーティングレシオ: 66.4%
- コスト削減実績: 約3億ドル(目標2億5,000万ドルを超過達成)
2024年第4四半期業績ハイライト:
- 安全指標大幅改善: FRA列車事故率27%減、FRA報告対象傷害率13%改善
- ネットワークパフォーマンス向上: 列車速度22%改善、ターミナル滞留11%改善
過去数年の業績推移(概算値):
年度 | 収益(億ドル) | 営業利益(億ドル) | EPS(ドル) | オペレーティングレシオ |
---|---|---|---|---|
2022 | 約120 | 約38 | 約10 | 約68% |
2023 | 約120 | 約40 | 約11 | 約67% |
2024 | 121 | 41 | 11.57 | 66.4% |
2025(予想) | 約124-126 | 約43-45 | 約12-13 | 約65% |
※上記は過去の公開情報と最新ガイダンスに基づく概算値です。正確な数値はNorfolk Southern公式IRページの10-K、10-Qをご確認ください。 (出典: Norfolk Southern Corporation 2024 Q4 Earnings Release、SEC EDGAR)
2025年の業績見通し:
- 収益成長: 2-3%(当初予想から下方修正。関税による混乱や慎重なアナリスト見通しが影響)
- 生産性改善: 1億7,500万ドル以上のコスト削減を目標
- オペレーティングレシオ: 1.5ポイント改善(66.4%から約65%へ)
- 資本支出: 22億ドル(インフラと技術に継続投資)
2028年までの長期見通し:
- 収益: 137億ドル(年間成長率3.9%)
- 利益: 34億ドル(利益倍増の見通し)
- 強力なキャッシュフローと株価上昇が期待
(2) 連続増配40年超の配当履歴
ノーフォーク・サザンは、連続増配40年超の配当貴族銘柄として、長期的な配当成長の実績があります。
配当実績:
- 配当利回り: 2%前後(2025年10月時点)
- 連続増配年数: 40年超(1980年代から増配を継続)
- 配当性向: 利益の約30-40%を配当に充てる方針
配当の持続可能性:
ノーフォーク・サザンの配当は、強力なキャッシュフロー創出力に支えられています。鉄道ビジネスは設備投資後のキャッシュフロー創出力が高く、配当原資が安定しています。2024年には約3億ドルのコスト削減を達成し、配当の持続可能性が高まっています。
外国税額控除と税金(日本人投資家向け):
- 米国株配当は、米国で10%の源泉徴収がされた後、日本で20.315%が課税されます(二重課税)
- 外国税額控除を確定申告で申請すると、米国で課税された10%分の一部を日本の所得税から差し引けます
- NISA口座で保有すれば、日本での課税(20.315%)は非課税となりますが、米国での10%源泉徴収は免除されません
(3) 品目別売上とコスト削減実績
ノーフォーク・サザンの収益は、品目別に多角化されており、特定の品目への依存度が低下しています。
品目別売上構成(概算、2024年時点):
品目 | 収益比率 | 成長見通し |
---|---|---|
インターモーダル | 約25-30% | 成長(eコマース拡大の恩恵) |
化学品 | 約20-25% | 安定(石油化学製品、肥料など) |
農産物 | 約15-20% | 安定(穀物、大豆など) |
石炭 | 約10-15% | 縮小(再エネ転換の影響) |
その他 | 約20-30% | 多様化(自動車、金属、建設資材など) |
コスト削減実績:
- 2024年: 約3億ドルのコスト削減達成(目標2億5,000万ドルを超過達成)
- 2025年: 1億7,500万ドル以上のコスト削減を目標
- 主な施策: 労働生産性向上(残業20%削減)、資産効率向上(機関車・貨車の稼働率最大化)、オペレーション効率化(列車速度22%改善、ターミナル滞留11%改善)
※2025年10月時点のデータです。最新情報はNorfolk Southern公式IRページをご確認ください。 (出典: Norfolk Southern Corporation 10-K 2024、2024 Q4 Earnings Release、SEC EDGAR)
5. リスク要因
(1) 景気敏感性と石炭輸送減少
ノーフォーク・サザンの最大のリスクは、景気敏感性です。貨物鉄道ビジネスは、経済活動と強く連動するため、景気後退時には輸送量が減少し、収益が悪化します。
具体的なリスク:
- 景気後退時の輸送量減少: 製造業の生産活動が低下すると、化学品・金属・自動車などの輸送需要が減少
- 石炭輸送の縮小: 再生可能エネルギーへの転換により、発電所向け石炭輸送が減少。石炭輸送は収益の約10-15%を占めるが、長期的には縮小傾向
- 関税による混乱: 2025年の収益成長見通しを2-3%に下方修正した要因の1つが、関税による経済的不確実性
石炭輸送減少への対応:
ノーフォーク・サザンは、石炭依存度を低下させるため、インターモーダル投資と貨物多角化を推進しています。インターモーダル輸送は成長分野であり、eコマース(Amazon等)の拡大により需要が増加しています。
(2) 高水準の負債比率(122.3%)
ノーフォーク・サザンのもう1つのリスクは、高水準の負債比率です。負債比率は122.3%で、運輸業界中央値51.5%を大幅に超過しています。
具体的なリスク:
- 負債比率122.3%: 株主資本に対して負債が約1.2倍と、財務リスクが高い
- 流動性比率0.78: 流動資産が流動負債を下回っており、短期的な資金繰りに懸念
- インフレと弱い貨物需要: 燃料費や人件費の上昇がオペレーションを圧迫。景気減速時には収益が悪化し、利払い負担が増大するリスク
高水準の負債は、景気後退時や金利上昇時に業績悪化のリスクを高めます。ただし、ノーフォーク・サザンは2024年に約3億ドルのコスト削減を達成し、財務健全性を改善しています。
(3) Union Pacificとの合併計画の不確実性
2025年には、ノーフォーク・サザンとUnion Pacificとの合併計画が発表されました。実現すれば、米国初の大陸横断鉄道が創設されることになります。しかし、規制当局(Surface Transportation Board、STB)の承認に最大22カ月を要する可能性があり、実現は不確実です。
具体的なリスク:
- 規制審査の長期化: STBの承認に最大22カ月を要する可能性があり、合併が実現しないリスク
- 過去の買収提案拒否: ノーフォーク・サザンは、過去にCanadian Pacificによる買収提案を複数回拒否した実績があり、投資家に不透明感を与えている。買収提案拒否時には株価が6.6%下落(85.44ドル)した事例もある
- 投資家センチメントへの影響: 合併計画が実現しない場合、株価に悪影響を及ぼす可能性
日本人投資家特有のリスク:
- 為替リスク: 円高時には米ドル建て資産の評価額が減少。配当の円換算額も変動
- 為替手数料: 円を米ドルに換える際に為替手数料がかかる(SBI証券:片道25銭、楽天証券:片道25銭など)
- 情報収集の難しさ: 財務データは英語(10-K、10-Q)であり、最新情報の入手に時間がかかる
※2025年10月時点の情報です。投資判断はご自身の責任で行ってください。 (出典: Nasdaq、FreightWaves、Bloomberg)
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
ノーフォーク・サザン(NSC)の主な強みは以下の3点です:
- インフラの独占性と高い参入障壁: 米国東部22州に約19,500マイルの路線網を持ち、鉄道市場は寡占状態。新規参入が事実上困難で、安定的な収益を確保できる
- 連続増配40年超の配当貴族銘柄: 配当利回り2%前後と高水準ではないが、長期的な増配実績が魅力。2024年には約3億ドルのコスト削減を達成し、配当の持続可能性が高まっている
- PSR導入による効率化: 3-4年以内にオペレーティングレシオを60%未満に改善し、競合他社とのマージン差を解消する計画。2028年までに利益倍増の見通し
(2) リスク要因(再掲)
ノーフォーク・サザンの主なリスク要因は以下の3点です:
- 景気敏感性と石炭輸送減少: 貨物鉄道ビジネスは景気と強く連動。石炭輸送は縮小傾向で、収益の約10-15%を占めるが長期的には減少見込み
- 高水準の負債比率(122.3%): 運輸業界中央値51.5%を大幅超過。流動性比率0.78で短期的な資金繰りに懸念。景気後退時や金利上昇時に業績悪化のリスク
- Union Pacificとの合併計画の不確実性: 規制審査に最大22カ月を要する可能性があり、実現は不透明。合併が実現しない場合、株価に悪影響の可能性
(3) 向いている投資家
ノーフォーク・サザンは以下のような投資家に適しています:
- ディフェンシブ性と配当成長を重視する長期投資家: 連続増配40年超の実績があり、インフラの独占性により安定収益が期待できる。NISA成長投資枠(年間240万円まで非課税)を活用すれば、配当の日本での課税が非課税となる
- 景気サイクルを理解できる投資家: 景気敏感性があるため、景気後退時には株価が下落するリスクを許容できる投資家向け
- 効率化の進捗を評価できる投資家: PSR導入によるオペレーティングレシオ改善を評価し、長期的な収益性向上に期待できる投資家
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新の財務データや株価情報は、Norfolk Southern公式IRページやSEC EDGARをご確認ください。
※2025年10月時点の情報です。税率や制度は改正される可能性がありますので、最新情報は国税庁や証券会社の公式サイトでご確認ください。
Q: 鉄道貨物ビジネスとは何ですか?
A: 鉄道貨物ビジネスは、石炭、インターモーダル(コンテナ)、化学品、農産物などを鉄道で輸送するビジネスです。ノーフォーク・サザンは米国東部22州に約19,500マイルの路線網を持ち、ニューヨーク、フィラデルフィア、アトランタ、シカゴなど主要都市を網羅しています。鉄道輸送はトラック輸送より燃費効率が高く、1ガロンの燃料で1トンの貨物を約470マイル輸送できます。長距離輸送では鉄道が選択されることが多く、環境負荷が低い点も競争優位性です。米国では貨物鉄道市場は寡占状態で、新規参入が事実上困難なため、安定的な収益を確保できます。
Q: ノーフォーク・サザンはなぜ安定収益なのですか?
A: ノーフォーク・サザンが安定収益を確保できる理由は、インフラの独占性と高い参入障壁にあります。米国の貨物鉄道市場は、Union Pacific、BNSF、CSX、Norfolk Southernの4社が寡占しており、新規参入が事実上困難です。鉄道路線の建設には巨額の資本投資と用地取得が必要で、規制当局の承認も厳しいため、高い参入障壁が形成されています。鉄道路線網は長期的な資産価値を持ち、一度構築されると数十年にわたり収益を生み出します。トラック輸送より燃費効率が高い点も競争優位性で、長距離輸送では鉄道が選択されることが多いです。
Q: PSRとは何ですか?
A: PSR(Precision Scheduled Railroading、精密スケジュール鉄道運行)は、カナダの鉄道会社で成功を収めた効率化戦略です。主要原則は、(1) 列車の定時運行でスケジュール通りに列車を運行し顧客の信頼を獲得、(2) 資産の効率的活用で機関車・貨車の稼働率を最大化し遊休資産を削減、(3) コスト削減で不要なオペレーションを削減しオペレーティングレシオを改善、の3点です。ノーフォーク・サザンは3-4年以内にオペレーティングレシオを60%未満に改善することで、競合他社とのマージン差を解消し、長期的にトップクラスの収益とEPS成長を達成する計画を掲げています。2024年通期のオペレーティングレシオは66.4%で、2025年は1.5ポイント改善を目標としています。
Q: ノーフォーク・サザンの配当の魅力は?
A: ノーフォーク・サザンは連続増配40年超の配当貴族銘柄で、配当利回りは2%前後です(2025年10月時点)。配当貴族銘柄の条件は、S&P 500指数構成銘柄であること、連続増配25年以上の実績があること、時価総額や流動性などの基準を満たすこと、の3点です。ノーフォーク・サザンは景気後退期でも配当を維持・増配してきた実績があり、ディフェンシブ銘柄として長期投資家に適しています。2024年には約3億ドルのコスト削減を達成し、配当の持続可能性が高まっています。2028年までに利益倍増の見通しで、配当増額の余地が大きいと期待されています。
Q: ノーフォーク・サザンは長期投資に向いている?
A: ノーフォーク・サザンは、ディフェンシブ性と配当成長を兼ね備えた長期投資家に適しています。連続増配40年超の実績があり、インフラの独占性により安定収益が期待できます。NISA成長投資枠(年間240万円まで非課税)を活用すれば、配当の日本での課税が非課税となりますが、米国での10%源泉徴収は免除されません。ただし、景気敏感性があるため、景気後退時には輸送量が減少し収益が悪化するリスクがあります。また、負債比率122.3%(運輸業界中央値51.5%を大幅超過)と高水準で、景気後退時や金利上昇時に業績悪化のリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。