S&P500

シュルンベルジェ (SLB)

Schlumberger NV

0. この記事でわかること

本記事では、シュルンベルジェ(SLB)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: ChampionX買収($77.5億ドル)による北米強化、デジタル技術・CCSソリューションへの投資、生産回復への注力
  • 事業内容と成長戦略: 世界最大の油田サービス企業、120カ国以上で事業展開、収益の75%以上が国際市場
  • 競合との差別化: Halliburton、Baker Hughesとの競争、デジタル油田技術(DELFI)とエネルギートランジション投資による差別化
  • 財務・配当の実績: 2020年に75%の大減配、2023年に配当再開、配当利回り2.5-3.0%だがQ1 2025はEPS・売上未達
  • リスク要因: 原油価格ボラティリティ(2025年初頭に18%下落)、上流投資減少傾向、地政学リスク

1. なぜシュルンベルジェ(SLB)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

シュルンベルジェは、以下の3つの成長戦略を推進しています。

① ChampionX買収による生産サービス能力の拡大と北米プレゼンスの強化

$77.5億ドル規模のChampionX買収により、生産サービス能力を大幅に拡大しました。年間$4億ドルのシナジー効果を見込んでおり、北米市場でのプレゼンスを強化しています。

この買収は、シュルンベルジェが生産回復への注力を加速させる戦略的な動きです。

② デジタル技術・データセンター・炭素回収貯留(CCS)ソリューションへの投資強化

デジタル収益は年間20%成長を達成しており、目標の高10%台を大幅に上回っています。デジタル油田プラットフォーム「DELFI」により、顧客の生産性向上を支援しています。

また、炭素回収貯留(CCS)、地熱、水素などのエネルギートランジション技術への投資を強化し、脱炭素時代への対応を進めています。

③ 生産回復への注力

リザーバーパフォーマンス、生産システム、デジタルセグメントでの成長が、探鉱・開発を上回る見込みです。原油価格回復局面での業績拡大を目指し、生産回復に注力しています。

(2) 注目テーマ(エネルギートランジション・デジタル化・ChampionX買収)

投資家がシュルンベルジェに注目する理由は以下の3つです。

エネルギートランジション(カーボンニュートラル、地熱、重要鉱物への多角化)

シュルンベルジェは、石油・ガス事業だけでなく、炭素回収貯留(CCS)、地熱、水素などのエネルギートランジション技術への投資を強化しています。脱炭素時代のエネルギー転換をリードする企業へと戦略転換を進めています。

デジタルトランスフォーメーション(AI、データ分析、デジタル統合)

デジタル油田プラットフォーム「DELFI」により、AI・データ分析を活用した生産性向上を実現しています。デジタル収益は年間20%成長と好調で、競合優位性の源泉となっています。

国際市場への依存(収益の75%以上が国際市場)

収益の75%以上が国際市場から生じており、グローバル展開が成長の鍵となっています。国際市場での活動回復が期待されています。

(3) 投資家の関心・懸念点

投資家は、シュルンベルジェの成長性と原油価格回復の恩恵に注目する一方、以下の懸念を抱いています。

成長性への期待

  • Q4 2024でEPS $0.92が予想$0.90を上回り、株価が7.65%上昇
  • Q3 2025では調整後EPS $0.69が予想$0.66を上回る
  • アナリスト28名の平均目標株価$46.57(上昇余地+34.64%)
  • 今後3年でEPS年間7.1%成長、ROE 18.6%予測

懸念材料

  • 原油価格のボラティリティ(2025年初頭に原油価格が18%下落し、顧客の設備投資に影響)
  • Q1 2025でEPS $0.72が予想$0.74を下回り、売上$84.9億ドルが予想$86.4億ドルを下回った
  • 上流投資の減少傾向が懸念材料
  • 株価が過去52週で30.13%下落、1ヶ月で18.12%下落

2. シュルンベルジェの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業

シュルンベルジェは、以下の4つの事業部門で構成されています。

① デジタル&統合(Digital & Integration)

デジタル油田プラットフォーム「DELFI」を提供し、AI・データ分析により顧客の生産性向上を支援しています。デジタル収益は年間20%成長と好調です。

② リザーバーパフォーマンス(Reservoir Performance)

油田・ガス田の生産性を最大化するサービスを提供しています。生産回復への注力により、成長が期待されています。

③ 坑井建設(Well Construction)

掘削サービスを提供し、油田・ガス田の開発を支援しています。

④ 生産システム(Production Systems)

ChampionX買収により強化された事業部門です。生産設備・サービスを提供し、北米市場でのプレゼンスを拡大しています。

(2) セクター・業種の説明

シュルンベルジェは「エネルギー(Energy)」セクターの「エネルギー設備・サービス(Energy Equipment & Services)」業種に分類されます。

エネルギーセクターは、原油価格に敏感なセクターです。原油価格が上昇すると、石油会社の設備投資が増加し、シュルンベルジェの売上が拡大します。一方、原油価格が下落すると、設備投資が削減され、売上が減少する傾向があります。

(3) ビジネスモデルの特徴

シュルンベルジェのビジネスモデルの特徴は、以下の3点です。

① グローバル展開

世界最大の油田サービス企業として、120カ国以上で事業を展開しています。収益の75%以上が国際市場から生じており、グローバルネットワークが強みです。

② デジタル油田技術

デジタル油田プラットフォーム「DELFI」により、AI・データ分析を活用した生産性向上を実現しています。デジタル技術が競合優位性の源泉となっています。

③ エネルギートランジション投資

石油・ガス事業だけでなく、CCS、地熱、水素などのエネルギートランジション技術への投資を強化しています。脱炭素時代への対応を進めています。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業

シュルンベルジェの主要競合企業は以下の3社です。

① Halliburton

米国大手の油田サービス企業。北米市場で強い地位を持ち、シュルンベルジェと競争しています。

② Baker Hughes

米国大手の油田サービス・設備企業。GEから分離独立した企業で、デジタル技術とエネルギートランジション投資でシュルンベルジェと競争しています。

③ Weatherford International

国際的な油田サービス企業。掘削・生産サービスでシュルンベルジェと競争しています。

(2) 競合優位性

シュルンベルジェは以下の3つの優位性で競合と差別化しています。

① 世界最大の油田サービス企業

120カ国以上で事業を展開し、収益の75%以上が国際市場から生じています。グローバルネットワークが競合優位性の源泉です。

② デジタル油田技術(DELFI)

デジタル収益は年間20%成長を達成しており、AI・データ分析による生産性向上を実現しています。競合との明確な差別化要因です。

③ エネルギートランジション投資

CCS、地熱、水素などのエネルギートランジション技術への先行投資により、脱炭素時代への対応を進めています。

(3) 市場でのポジショニング

シュルンベルジェは、グローバル油田サービス市場でトップシェアを持ち、デジタル技術とエネルギートランジション投資で競合をリードしています。一方、原油価格ボラティリティと上流投資減少傾向が課題です。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移

シュルンベルジェの過去5年間の財務実績は以下の通りです(2025年Q3決算時点)。

年度 売上高(億ドル) 純利益(億ドル) 備考
2020 230.6 -106.5 コロナショック・大減配
2021 224.9 18.1 回復局面
2022 281.1 36.7 原油価格上昇の恩恵
2023 330.1 42.5 好調な業績
2024 344.2 46.3 堅調な成長

(出典: SLB Q3 2025 Earnings、Investor Relations)

2025年の売上は2024年並みの横ばい予測ですが、ChampionX買収を除くベースではAdjusted EBITDAは2024年水準以上を見込んでいます。

Q3 2025では、売上$89.3億、調整後EPS $0.69(予想$0.66を上回る)、営業CF $16.8億、フリーキャッシュフロー$11億を達成しました。

(2) 配当履歴

シュルンベルジェの配当履歴は、過去の大減配実績があるため注意が必要です。

  • 配当利回り: 約2.5-3.0%(2025年10月時点)
  • 配当の推移: 2020年に75%の大減配を実施、2023年に配当再開
  • 株主還元: 最低€40億の還元と$23億の自社株買いを計画

2015年から業績が急激に悪化し、2020年に75%の大減配を実施しました。2020年末までに従業員約2割(2万人超)を削減し、コスト削減を進めました。

2023年に配当を再開し、株主還元を強化していますが、過去の減配実績を踏まえると配当の安定性には注意が必要です。

(3) 財務健全性

シュルンベルジェの財務健全性は以下の通りです。

  • 営業CF: Q3 2025で$16.8億
  • フリーキャッシュフロー: Q3 2025で$11億
  • ROE: 18.6%予測(今後3年)
  • EBITDA: ChampionX除外ベースで2024年水準以上を見込む

ChampionX買収により負債が増加していますが、年間$4億ドルのシナジー効果により財務健全性を維持する計画です。

(出典: SLB Q3 2025 Earnings、Investor Relations)

※2025年10月時点のデータです。最新情報はSLB公式IRページをご確認ください。

5. リスク要因

(1) 事業リスク

原油価格のボラティリティ

2025年初頭に原油価格が18%下落し、顧客の設備投資に影響を与えました。原油価格が下落すると、石油会社の設備投資が削減され、シュルンベルジェの売上が減少します。

業績未達のリスク

Q1 2025でEPS $0.72が予想$0.74を下回り、売上$84.9億ドルが予想$86.4億ドルを下回りました。業績未達が続くと、株価が下落する可能性があります。

上流投資の減少傾向

石油会社の上流投資(探鉱・開発)が減少傾向にあり、シュルンベルジェの売上に影響を与えています。

(2) 市場環境リスク

景気後退リスク

景気が後退すると、原油需要が減少し、原油価格が下落します。これにより、石油会社の設備投資が削減され、シュルンベルジェの売上が減少します。

為替リスク

日本人投資家にとって、米ドル/円の為替レートの変動が投資収益に大きく影響します。円高局面では、ドル建て株価が上昇しても円換算で損失が出る可能性があります。

エネルギー政策の変化

脱炭素政策の強化により、石油需要が減少する可能性があります。長期的には、石油・ガス事業の需要減少が懸念されます。

(3) 規制・競争リスク

地政学リスク

ロシア・中東での事業展開により、地政学リスクが高まっています。制裁や紛争により、事業が影響を受ける可能性があります。

競合との価格競争

Halliburton、Baker Hughesとの競争が激化しており、価格競争により利益率が低下する可能性があります。

過去の大減配実績

2020年に75%の大減配を実施した実績があり、配当の安定性には注意が必要です。業績が悪化した場合、再度減配する可能性があります。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み

シュルンベルジェの強みは以下の3点です。

  • 世界最大の油田サービス企業: 120カ国以上で事業展開、収益の75%以上が国際市場
  • デジタル油田技術(DELFI): デジタル収益は年間20%成長、競合優位性の源泉
  • エネルギートランジション投資: CCS、地熱、水素への先行投資で脱炭素時代に対応

(2) リスク要因(再掲)

一方、以下のリスクに注意が必要です。

  • 原油価格ボラティリティ: 2025年初頭に18%下落、設備投資に影響
  • 過去の大減配実績: 2020年に75%減配、配当の安定性に懸念

(3) 向いている投資家

シュルンベルジェは以下のような投資家に向いています。

  • 原油価格回復に期待する投資家: エネルギーセクター復活の恩恵を受けたい投資家
  • エネルギートランジションに注目する投資家: CCS・地熱・水素への先行投資を評価する投資家
  • 長期的な成長を待てる投資家: EPS年間7.1%成長予測に期待し、原油価格変動リスクを理解の上で投資できる投資家

※本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

Q: シュルンベルジェの配当利回りは?

A: 約2.5-3.0%程度です(2025年10月時点)。ただし過去に2020年に75%の大減配を実施した実績があり、配当の安定性には注意が必要です。詳細は配当履歴セクションをご確認ください。

Q: シュルンベルジェの主な競合は?

A: Halliburton、Baker Hughes、Weatherford Internationalなどが主要競合です。シュルンベルジェは世界最大の油田サービス企業として、デジタル油田技術(DELFI)、ChampionX買収による北米強化、エネルギートランジション投資で差別化を図っています。

Q: シュルンベルジェのリスク要因は?

A: 原油価格ボラティリティ(2025年初頭に18%下落)、Q1 2025のEPS・売上未達、上流投資減少傾向、過去の大減配実績(2020年に75%減配)、地政学リスクなどが主なリスクです。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。

Q: シュルンベルジェは長期投資に向いている?

A: 原油価格回復とエネルギートランジション(CCS、地熱)への先行投資により、長期的な成長が期待されます。エネルギーセクター復活に期待する投資家に向いていますが、原油価格変動リスクと過去の減配実績を理解の上、投資判断はご自身でお願いします。

Q: シュルンベルジェのChampionX買収の意義は?

A: $77.5億ドル規模の買収により生産サービス能力を拡大し、北米プレゼンスを強化します。年間$4億ドルのシナジー効果を見込み、生産回復への注力を加速させる戦略的買収です。

よくある質問

Q1シュルンベルジェの配当利回りは?

A1約2.5-3.0%程度です(2025年10月時点)。ただし過去に2020年に75%の大減配を実施した実績があり、配当の安定性には注意が必要です。詳細は配当履歴セクションをご確認ください。

Q2シュルンベルジェの主な競合は?

A2Halliburton、Baker Hughes、Weatherford Internationalなどが主要競合です。シュルンベルジェは世界最大の油田サービス企業として、デジタル油田技術(DELFI)、ChampionX買収による北米強化、エネルギートランジション投資で差別化を図っています。

Q3シュルンベルジェのリスク要因は?

A3原油価格ボラティリティ(2025年初頭に18%下落)、Q1 2025のEPS・売上未達、上流投資減少傾向、過去の大減配実績(2020年に75%減配)、地政学リスクなどが主なリスクです。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。

Q4シュルンベルジェは長期投資に向いている?

A4原油価格回復とエネルギートランジション(CCS、地熱)への先行投資により、長期的な成長が期待されます。エネルギーセクター復活に期待する投資家に向いていますが、原油価格変動リスクと過去の減配実績を理解の上、投資判断はご自身でお願いします。

Q5シュルンベルジェのChampionX買収の意義は?

A5$77.5億ドル規模の買収により生産サービス能力を拡大し、北米プレゼンスを強化します。年間$4億ドルのシナジー効果を見込み、生産回復への注力を加速させる戦略的買収です。