0. この記事でわかること
本記事では、コルゲート・パーモリーブ(CL)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 2030年戦略でAI・データ分析を成長に活用、3年間生産性プログラムでオペレーション合理化、広告費を売上高の13.6%に増加(30ベーシスポイント増)してブランド投資を強化
- 事業内容と成長戦略: グローバル日用品大手(歯磨き粉・石鹸で世界トップクラス)。オーラルケア、パーソナルケア、ホームケア、ペットケアの4事業を展開。売上高の70%が国際市場(45%が高リスク地域)
- 競合との差別化: Procter & Gamble(P&G)、Unilever、Church & Dwightなどと競合。歯磨き粉で世界シェア41.1%、歯ブラシで31.6%を占め、オーラルケア分野で世界首位
- 財務・配当の実績: 2025年Q2にEPS 0.92ドル(予想0.90ドルを上回る)、売上高51.1億ドル(予想50.3億ドル超)。61年連続増配の配当貴族。配当利回りは2.0~2.5%程度
- リスク要因: 為替変動と国際事業リスク(売上高の70%が国際市場)、高いPER(104.52)による割高感、関税・原材料コスト増加(2025年に2億ドル増加見込み)
コルゲート・パーモリーブは、配当貴族(61年連続増配)として知られるグローバル日用品大手です。P&Gより高い新興国比率を持ち、ディフェンシブ配当成長株の代表格として注目されています。
1. なぜコルゲート・パーモリーブ(CL)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
コルゲート・パーモリーブは以下の3つの成長戦略を推進しています:
2030年戦略:AI・データ分析を成長に活用
グローバルブランド浸透、AIとデータ分析、高インパクト文化を通じて成長を加速しています。AIを「効率化だけでなく、事業成長のために活用」と明言し、収益管理・広告・イノベーション領域に注力しています(出典: Colgate-Palmolive at Barclays Conference、2025年10月時点)。また、2022年にサステナビリティチームを成長・戦略チームに統合し、排出削減とプラスチック削減を成長計画の一部に位置づけています。
3年間生産性プログラム
組織構造を戦略的優先事項に整合し、グローバルサプライチェーンの最適化、間接費削減によりオペレーションを合理化しています。生産性向上により、イノベーションとブランド投資に資金を振り向ける戦略を採用しています。
イノベーション・ブランド投資
科学的根拠に基づく優れた製品の市場投入に注力しています。2025年Q1に広告費を売上高の13.6%に増加(30ベーシスポイント増)し、ブランド健全性と世帯普及率向上に投資しています。
(2) 注目テーマ(AI・データ分析活用・サステナビリティと価値創造・高機能オーラルケア製品)
コルゲート・パーモリーブは、以下のテーマで投資家の注目を集めています:
- AI・データ分析活用: AIを収益管理・広告・イノベーション領域に活用し、事業成長を加速
- サステナビリティと価値創造: サステナビリティチームを成長・戦略チームに統合し、排出削減とプラスチック削減を成長計画の一部に位置づけ
- 高機能オーラルケア製品: 科学的根拠に基づく優れた製品の市場投入により、ブランド健全性を向上
(3) 投資家の関心・懸念点
関心点
- 2025年Q2にEPS 0.92ドル(予想0.90ドルを上回る)、売上高51.1億ドル(予想50.3億ドル超)を達成したこと
- 2025年通年で調整後EPSは前年比11.2%増の3.59ドルと予測されていること
- アナリストのコンセンサス評価は「Moderate Buy」(23名中、強気買い11、中立9)であること
懸念点
- 過去52週間で株価は2.2%上昇のみで、S&P500の21.8%に大きく劣後していること
- 有機的売上成長率3~5%の予想が投資家を失望させ、弱い低1桁成長を示唆していること
- 平均目標株価が93.11ドルから90.74ドルに引き下げられ、強力なブランドへの楽観と収益成長の鈍化懸念のバランスを反映していること
2. コルゲート・パーモリーブの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(オーラルケア・パーソナルケア・ホームケア・ペットケア)
コルゲート・パーモリーブは、4つの主力事業を展開しています:
オーラルケア
歯磨き粉、歯ブラシ、マウスウォッシュなどを提供しています。歯磨き粉で世界シェア41.1%、歯ブラシで31.6%を占め、オーラルケア分野で世界首位です。主要ブランドは「Colgate」「Total」「Optic White」などです。
パーソナルケア
石鹸、ボディウォッシュ、デオドラントなどを提供しています。主要ブランドは「Palmolive」「Softsoap」などです。
ホームケア
食器用洗剤、洗濯用洗剤などを提供しています。主要ブランドは「Ajax」「Palmolive」などです。
ペットケア
ペット用栄養食品を提供しています。主要ブランドは「Hill's Science Diet」「Hill's Prescription Diet」などです。
(2) セクター・業種の説明(Consumer Staples - Household Products)
コルゲート・パーモリーブは、Consumer Staples(生活必需品)セクターのHousehold Products(家庭用品)業種に分類されます。生活必需品セクターは、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブセクターです。日用品は景気後退局面でも需要が安定しており、景気変動の影響を受けにくい特性があります。
(3) ビジネスモデルの特徴(グローバル展開と新興国比率の高さ)
コルゲート・パーモリーブの最大の特徴は、グローバル展開と新興国比率の高さです。売上高の70%が国際市場(45%が高リスク地域)であり、新興国市場での成長性が高い一方、為替変動の影響を受けやすい特性があります。
P&Gと比較すると、コルゲートは新興国市場の売上比率が高く、オーラルケアに特化しています。P&Gは先進国比率が高く、製品カテゴリーがより多様です。コルゲートはより高い成長性を持つ一方、為替リスクも高くなっています。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(Procter & Gamble、Unilever、Church & Dwight等)
コルゲート・パーモリーブの主要競合企業は以下の通りです:
Procter & Gamble(P&G)
世界最大の日用品メーカー。オーラルケア(Crest)、パーソナルケア(Gillette、Olay)、ホームケア(Tide、Ariel)など幅広い製品カテゴリーを展開します。先進国比率が高く、ブランドポートフォリオが多様です。
Unilever
欧州系のグローバル日用品メーカー。パーソナルケア(Dove、Lux)、ホームケア(Omo)、食品(Knorr)など幅広い製品を提供します。新興国市場に強みを持ちます。
Church & Dwight
米国中心の日用品メーカー。オーラルケア(Arm & Hammer)、パーソナルケア(Batiste)などを展開します。コルゲートより規模は小さいですが、米国市場で競合します。
(2) 競合優位性(グローバルブランド、新興国市場での強み、オーラルケア世界首位)
コルゲート・パーモリーブは以下の競合優位性を持ちます:
グローバルブランド
「Colgate」ブランドは世界中で認知されており、歯磨き粉で世界シェア41.1%を占めます。ブランド力により、プレミアム価格を維持できます。
新興国市場での強み
売上高の70%が国際市場(45%が高リスク地域)であり、ラテンアメリカ、アジア、アフリカなどの新興国市場で強固なポジションを持ちます。新興国の人口増加と中間層の拡大により、長期的な成長が期待されます。
オーラルケア世界首位
歯磨き粉で世界シェア41.1%、歯ブラシで31.6%を占め、オーラルケア分野で世界首位です。オーラルケアに特化することで、研究開発とマーケティングのリソースを集中できます。
(3) 市場でのポジショニング(歯磨き粉世界シェア41.1%、歯ブラシ31.6%)
コルゲート・パーモリーブは、オーラルケア分野で世界首位のポジションを持ちます。歯磨き粉で世界シェア41.1%、歯ブラシで31.6%を占め、P&Gの「Crest」ブランドを大きく引き離しています。
一方、ホームケアやパーソナルケアでは、P&GやUnileverに規模で劣りますが、オーラルケアでの圧倒的なシェアにより、安定した収益基盤を持ちます。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(2025年Q2の業績含む)
コルゲート・パーモリーブの財務状況は以下の通りです(2025年Q1・Q2決算時点):
2025年Q1業績
項目 | 2025年Q1 | 前年比 |
---|---|---|
広告費対売上高比率 | 13.6% | +0.3ポイント |
2025年Q2業績
項目 | 2025年Q2 | 予想比 |
---|---|---|
EPS | 0.92ドル | +2.2%(予想0.90ドル) |
売上高 | 51.1億ドル | +1.6%(予想50.3億ドル) |
有機的売上成長率 | 2.4% | - |
2025年通年見通し
- 売上高: 低い1桁台成長
- 有機的売上成長率: 2~4%
- 調整後EPS: 前年比11.2%増の3.59ドル
2025年Q2はEPS 0.92ドル(予想0.90ドルを上回る)、売上高51.1億ドル(予想50.3億ドル超)を達成しました。有機的売上成長率2.4%で、北米とアフリカ・ユーラシア地域の改善が牽引しました。ただし、過去52週間で株価は2.2%上昇のみで、S&P500の21.8%に大きく劣後しています(出典: ainvest.com、2025年10月時点)。
(2) 配当履歴(61年連続増配の配当貴族)
コルゲート・パーモリーブの配当状況は以下の通りです:
- 配当利回り: 執筆時点で約2.0~2.5%程度
- 連続増配年数: 61年連続増配(2024年時点)
- 配当貴族: S&P500構成銘柄で25年以上連続増配した企業。61年連続増配は配当王(50年以上連続増配)の水準
同社は61年連続増配を誇る配当貴族として、安定した配当成長を実現しています。長期投資家の信頼を獲得しており、配当の安定性が高いと評価されています。
※米国株の配当は、米国で10%、日本で20.315%の二重課税が発生します。外国税額控除を利用することで、米国で課税された10%の一部を日本の所得税から差し引くことができます。詳細は国税庁のウェブサイトをご確認ください。
(3) 財務健全性(営業キャッシュフロー、債務超過の扱い)
コルゲート・パーモリーブの財務健全性は以下の通りです:
- 営業キャッシュフロー: 安定した営業キャッシュフローを生み出しており、配当と自社株買いに充当
- 債務超過: 負債総額が資産総額を上回る債務超過の状態ですが、安定した営業キャッシュフローにより株価は堅調に推移
- 粗利益率: 原材料コストや製造効率を反映し、適切な水準を維持
債務超過は懸念材料ですが、安定した営業キャッシュフローと配当成長により、財務健全性は概ね良好と評価されています。
5. リスク要因
(1) 事業リスク(為替変動、国際事業リスク、関税・原材料コスト増加)
為替変動と国際事業リスク
売上高の70%が国際市場(45%が高リスク地域)であり、ラテンアメリカ・東南アジア通貨の弱体化がマージンを圧迫しています。為替変動の影響を受けやすく、業績が不安定になるリスクがあります。
関税・原材料コスト増加
2025年に関税影響が2億ドル増加する見込みです。原材料・包装コストも「若干」増加予測であり、価格引き上げによる対応が必要です。価格引き上げにより顧客離れが進むリスクがあります。
(2) 市場環境リスク(為替、高PER、S&P500への劣後)
為替リスク
米国株に投資する日本人投資家は、為替変動の影響を受けます。円高が進行すると、ドル建ての配当や株価上昇益が円換算で目減りするリスクがあります。為替手数料も証券会社により1ドルあたり0~25銭程度かかるため、取引コストを考慮する必要があります。
高PER(104.52)
PERが104.52と高く、短期的な割高評価への懸念があります。株価調整のリスクがあり、投資家心理が悪化すると株価が下落する可能性があります。
S&P500への劣後
過去52週間で株価は2.2%上昇のみで、S&P500の21.8%に大きく劣後しています。市場全体の上昇に比べ、株価パフォーマンスが低迷しています。
(3) 規制・競争リスク(フッ化物マーケティング調査、新興国市場の政治・経済リスク)
フッ化物マーケティング調査
テキサス州司法長官がフッ化物マーケティング慣行を調査しています。子供の過剰フッ化物曝露懸念に起因し、ブランド評判と売上に悪影響を与える可能性があります。
新興国市場の政治・経済リスク
売上高の45%が高リスク地域(ラテンアメリカ、東南アジアなど)であり、政治不安、経済不況、通貨危機などのリスクがあります。特定国の経済状況により、業績が大きく変動する可能性があります。
競合激化
P&G、Unileverなどの大手企業との競争が激化しており、価格圧力と利益率の圧縮が懸念されます。特に、オーラルケア分野ではP&Gの「Crest」ブランドとの競合が続いています。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(61年連続増配、グローバルブランド、新興国での成長性)
コルゲート・パーモリーブの強みは以下の3点です:
- 61年連続増配: 配当貴族として、61年連続増配を達成。配当王(50年以上連続増配)の水準であり、安定した配当成長を実現
- グローバルブランド: 「Colgate」ブランドは世界中で認知されており、歯磨き粉で世界シェア41.1%を占める。ブランド力により、プレミアム価格を維持
- 新興国での成長性: 売上高の70%が国際市場(45%が高リスク地域)であり、新興国の人口増加と中間層の拡大により、長期的な成長が期待される
(2) リスク要因(再掲)(為替変動、高PER、関税コスト増加)
リスク要因は以下の3点です:
- 為替変動: 売上高の70%が国際市場であり、ラテンアメリカ・東南アジア通貨の弱体化がマージンを圧迫
- 高PER(104.52): 短期的な割高評価への懸念があり、株価調整のリスク
- 関税コスト増加: 2025年に2億ドルの関税影響増加。価格引き上げによる顧客離れのリスク
(3) 向いている投資家(配当重視の長期投資家、グローバル生活必需品セクターに関心がある投資家)
コルゲート・パーモリーブは以下のような投資家に向いています:
- 配当重視の長期投資家: 61年連続増配を誇る配当貴族として、安定した配当成長を重視する投資家に最適
- グローバル生活必需品セクターに関心がある投資家: 景気変動の影響を受けにくいディフェンシブセクターで、グローバル展開と新興国での成長性を求める投資家に適している
- P&Gとの分散投資を検討する投資家: P&Gより高い新興国比率を持ち、オーラルケアに特化することで、ポートフォリオの多様化を図る投資家
ただし、為替変動、高PER、関税コスト増加などのリスクに注意が必要です。過去52週間で株価は2.2%上昇のみで、S&P500の21.8%に大きく劣後している点も考慮してください。投資判断はご自身の責任で行ってください。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。
Q: コルゲート・パーモリーブの配当利回りは?
A: 執筆時点で約2.0~2.5%程度です。61年連続増配を誇る配当貴族で、安定した配当成長が魅力です。最新の配当利回りは証券会社のサイトで確認してください。米国株の配当は米国で10%、日本で20.315%の二重課税が発生しますが、外国税額控除を利用することで米国で課税された10%の一部を日本の所得税から差し引くことができます。
Q: コルゲート・パーモリーブの主な競合は?
A: Procter & Gamble(P&G)、Unilever、Church & Dwightなどが主要競合です。コルゲートは歯磨き粉で世界シェア41.1%を占め、オーラルケア分野で世界首位です。P&Gの「Crest」ブランドと競合していますが、グローバル市場でコルゲートが優位に立っています。
Q: コルゲート・パーモリーブのリスク要因は?
A: 売上高の70%が国際市場(45%が高リスク地域)であり、為替変動の影響を受けやすい点、高いPER(104.52)による割高感、2025年に2億ドルの関税コスト増加などが挙げられます。また、為替リスク、フッ化物マーケティング調査、新興国市場の政治・経済リスクなども考慮する必要があります。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。
Q: コルゲート・パーモリーブは長期投資に向いている?
A: 61年連続増配を誇る配当貴族として、配当重視の長期投資家に向いています。グローバル生活必需品セクターの安定性と新興国市場での成長性を求める投資家にも適しています。ただし、為替変動、高PER、関税コスト増加などのリスクに注意が必要です。過去52週間で株価は2.2%上昇のみで、S&P500の21.8%に大きく劣後している点も考慮してください。投資判断はご自身の責任で行ってください。
Q: コルゲート・パーモリーブとP&Gの違いは?
A: コルゲートは新興国市場の売上比率が高く(70%が国際市場)、オーラルケアに特化しています。歯磨き粉で世界シェア41.1%、歯ブラシで31.6%を占めます。一方、P&Gは先進国比率が高く、製品カテゴリーがより多様です(オーラルケア、パーソナルケア、ホームケアなど)。コルゲートはより高い成長性を持つ一方、為替リスクも高くなっています。投資家のリスク許容度と成長性への期待に応じて、選択することをお勧めします。