0. この記事でわかること
本記事では、フォックス(FOXA)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: Fox One DTCストリーミング(月額19.99ドル)のローンチ、Tubi AVOD(月間アクティブユーザー1億人超)の急成長、スポーツベッティング投資(FanDuel評価額31億ドル)
- 事業内容と成長戦略: Fox News・Fox Sports・Tubiの3本柱、スポーツ・ニュースに特化したビジネスモデル、議決権付きClass A株の意味とデュアルクラス構造
- 競合との差別化: Disney・Comcast・Warner Bros. Discoveryとの比較、スポーツ放映権(NFL等)の強み、Fox Newsの保守系視聴者基盤
- 財務・配当の実績: 2025年通期売上高17%増の160億ドル、EBITDA 26%増の36億ドル、Q3 2025で過去最高のFCF 19億ドル超、50億ドルの自社株買い枠増額
- リスク要因: 広告収益依存(全体の約40%)、ストリーミング競争の激化、ケーブルTV加入者減少、スポーツ放映権コストの上昇、マードック一族の支配構造
(約290字)
1. なぜフォックス(FOXA)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
フォックスは、以下の3つの成長戦略で投資家の注目を集めています。
① デジタルストリーミングへの転換
Fox Oneを月額19.99ドルで2025年8月にローンチしました。Fox NewsとFox Sportsへの直接アクセスを提供し、ケーブルTV契約を解約したコードカッター層を獲得します。ニュースは平日、スポーツは週末が視聴の中心となる設計で、ケーブルTV離れが進む中でも視聴者を維持する戦略です。
さらに、Tubi(無料広告型ストリーミング)は月間アクティブユーザー1億人超、総視聴時間17%増、収益32%増を達成しました。TubiはAVOD(Ad-Supported Video on Demand:広告付き動画配信)市場のリーダーで、6000万人のコードカッター層をターゲットにしています。
② バンドリング戦略
ESPN Bundleを月額39.99ドルで10月2日にローンチしました。主要スポーツコンテンツを提供し、他プラットフォームとの連携で消費者の選択肢を拡大しています。スポーツファンにとって魅力的なパッケージで、ストリーミング時代のスポーツ視聴需要を取り込みます。
③ スポーツベッティング投資
FanDuelの18.6%オプション(評価額31億ドル)とFlutterの2.5%株式(評価額11億ドル)を保有しています。2030年までにFanDuelオプションを行使予定で、スポーツベッティング市場の成長を取り込む戦略です。米国ではスポーツベッティングの合法化が進んでおり、フォックスはスポーツ放映権との相乗効果を狙っています。
(2) 注目テーマ(Fox One DTC、Tubi AVOD、スポーツベッティング)
Fox One(DTC:Direct to Consumerストリーミング)
Fox Oneは、ケーブルTV契約なしでFox NewsとFox Sportsを視聴できるサービスです。月額19.99ドルというリーズナブルな価格設定で、ケーブルTV離れが進む中でも視聴者を維持する戦略です。コードカッター層(ケーブルTV契約を解約した視聴者)は米国で6000万人以上と推定されており、この層を取り込むことが重要です。
Tubi(AVOD:広告付き動画配信の成長)
Tubiは無料で視聴でき、広告収入で運営される動画配信サービスです。月間アクティブユーザー1億人超、総視聴時間17%増、収益32%増と急成長しており、NetflixやDisney+などのサブスクリプション型サービスとは異なる収益モデルを確立しています。広告主にとっては大量の視聴者にリーチできるプラットフォームとして魅力的です。
スポーツベッティング(FanDuel・Flutter投資)
フォックスはスポーツベッティング市場への投資を拡大しています。FanDuelは米国のスポーツベッティング市場でトップシェアを持ち、フォックスのスポーツ放映権(NFL、MLB等)との相乗効果が期待されています。スポーツ中継中にベッティング情報を表示するなど、視聴体験とベッティングを統合する試みが進んでいます。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家の関心ポイント
- 過去最高の業績: 2025会計年度(通期)は売上高が前年比17%増の160億ドル、EBITDAが26%増の36億ドル、調整後EPSが39%増の4.78ドルに達しました。
- スーパーボウル59の成功: 総広告収益8億ドル超を記録し、スポーツ放映権の価値を証明しました。
- 政治広告収益: 過去最高の政治広告収益4億ドル超を達成しました(2024年は米国大統領選挙の年)。
- 株主還元: 50億ドルの自社株買い枠増額を発表し、株主還元に積極的です。
- アナリストの評価: アナリスト8人のコンセンサスは「買い」(強い買い5人、ホールド2人、売り1人)、目標株価は70ドル(BofAは65ドルから上方修正)。株価は過去1年で68.48%のリターンを記録しています。
投資家の懸念ポイント
- 広告収益依存: 全収益の約40%が広告収入で、広告市場の軟化が大きなリスクです。アナリストは広告環境の弱さを懸念材料として指摘しています。
- リニアTV事業の長期的課題: 視聴者のストリーミングシフトにより、従来型TVビジネスモデルに圧力がかかっています。潤沢な資金力を持つストリーミング競合(Netflix、Amazon Prime Video等)に対してスポーツ放映権を長期的に防衛できるか懸念があります。
- キャッシュフロー持続性への懸念: MoffettNathansonは2025年1月に「買い」から「中立」に格下げしました(目標株価は51ドルから52ドルに微増)。キャッシュフロー持続性への懸念が株価上昇を制限する可能性があると指摘しています。
2. フォックスの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(Fox News、Fox Sports、Tubi)
フォックスは、ディズニーへの資産売却後、スポーツ・ニュース・エンタメに特化したメディア企業です。以下の3つのセグメントで構成されています。
① Fox News
Fox Newsは米国最大の保守系ニュースチャンネルで、ケーブルニュース視聴者の中で高いシェアを持ちます。視聴者基盤が非常に忠実で、広告収入が安定しています。平日の夜のプライムタイム番組が人気で、政治ニュースを中心に報道しています。
② Fox Sports
Fox SportsはNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)、MLB(メジャーリーグベースボール)、FIFA ワールドカップなどの主要スポーツイベントの放映権を持ちます。スポーツ中継はライブ視聴需要が強く、広告主にとって魅力的なコンテンツです。スーパーボウル59では総広告収益8億ドル超を記録し、スポーツ放映権の価値を証明しました。
③ Tubi
Tubiは無料広告型ストリーミング(AVOD)サービスで、月間アクティブユーザー1億人超を達成しています。総視聴時間17%増、収益32%増と急成長しており、次世代の視聴者を獲得する重要なプラットフォームです。コードカッター層(ケーブルTV契約を解約した視聴者)6000万人をターゲットにしており、NetflixやDisney+などのサブスクリプション型サービスとは異なる収益モデルを確立しています。
(2) セクター・業種の説明(メディア・エンタメ業界)
フォックスは、Communication Servicesセクター、Mediaインダストリーに分類されるメディア企業です。
メディア業界の特徴
- 広告収益への依存: テレビ放送・ストリーミングの主要収益源は広告です。経済環境や広告市場の動向に左右されやすい特性があります。
- コンテンツコストの上昇: スポーツ放映権やドラマ制作費は年々上昇しており、収益性の確保が課題です。
- ストリーミングへのシフト: 視聴者はケーブルTVからストリーミングサービスに移行しており、従来型TVビジネスモデルに圧力がかかっています。
フォックスの特徴
2019年にディズニーに映画・エンタメ資産(20世紀フォックス、FXネットワーク、ナショナルジオグラフィック等)を売却し、スポーツ・ニュースに集中しました。これにより、資産規模は縮小しましたが、収益性の高い事業に特化する戦略を取っています。
(3) ビジネスモデルの特徴(議決権付きClass A株の意味とデュアルクラス構造)
議決権付きClass A株(FOXA)の意味
フォックスは2種類の株式クラスを発行しています:
- FOXA(Class A株): 議決権あり。経営に関する投票権を持ちます。
- FOX(Class B株): 議決権なし。経営に関する投票権はありませんが、配当や経済的権利はClass Aと同等です。
マードック一族の支配構造
フォックスの創業者ルパート・マードック氏とその家族は、議決権の大半を保有しており、経営方針に強い影響力を持ちます。このため、一般株主がFOXA(Class A株)を保有しても、経営に与える影響は限定的です。
FOXAとFOXの価格差
一般的に、議決権付きの株式は議決権なしの株式よりも高く評価されることがありますが、マードック一族が議決権の大半を保有している状況では、一般株主にとって議決権の価値は限定的です。そのため、FOXAとFOXの価格差は小さいか、ほとんどない場合が多いです。
収益モデル
フォックスの収益源は以下の通りです:
- 広告収入: 全収益の約40%。スポーツ中継やニュース番組の広告枠が主要な収益源です。
- 配信収入: ケーブルTV事業者からの配信料。視聴者がケーブルTV契約を通じてFoxチャンネルを視聴する際、事業者から配信料を受け取ります。
- コンテンツライセンス: 自社制作コンテンツを他社にライセンス供与して得る収入。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(Disney、Comcast/NBCUniversal、Warner Bros. Discovery)
フォックスの主な競合企業は以下の通りです。
① Disney(ディズニー)
ESPN(スポーツ専門チャンネル)、ABC(総合放送局)、Disney+(ストリーミングサービス)を運営しています。スポーツ放映権ではフォックスと競合しており、特にNFL放映権で激しい競争があります。Disney+は映画・ドラマを中心とした総合エンタメサービスで、フォックスとは異なる戦略を取っています。
② Comcast/NBCUniversal(コムキャスト/NBCユニバーサル)
NBC Sports、Peacock(ストリーミングサービス)を運営しています。NBCはNFLやオリンピックの放映権を持ち、スポーツコンテンツで競合しています。Peacockは無料プランと有料プランを組み合わせたハイブリッド型のストリーミングサービスです。
③ Warner Bros. Discovery(ワーナー・ブラザース・ディスカバリー)
TNT Sports、Max(ストリーミングサービス)を運営しています。TNTはNBAやMLBの放映権を持ち、スポーツコンテンツで競合しています。Maxは映画・ドラマを中心とした総合エンタメサービスで、HBO Maxから改名しました。
(2) 競合優位性(スポーツ放映権、Fox Newsの視聴者基盤、Tubi成長)
フォックスの競合優位性は以下の3点です。
① スポーツ放映権の強み
フォックスはNFL(スーパーボウルを含む)、MLB、FIFA ワールドカップなどの主要スポーツイベントの放映権を持ちます。スーパーボウル59では総広告収益8億ドル超を記録し、スポーツ放映権の価値を証明しました。スポーツ中継はライブ視聴需要が強く、録画視聴やオンデマンド視聴に比べて広告効果が高いとされています。
② Fox Newsの視聴者基盤
Fox Newsは米国最大の保守系ニュースチャンネルで、視聴者基盤が非常に忠実です。平日の夜のプライムタイム番組が人気で、政治ニュースを中心に報道しています。視聴者の年齢層は比較的高く、広告主にとって購買力のある層にリーチできる魅力があります。
③ Tubiの成長
Tubiは月間アクティブユーザー1億人超、総視聴時間17%増、収益32%増と急成長しており、次世代の視聴者を獲得する重要なプラットフォームです。NetflixやDisney+などのサブスクリプション型サービスとは異なり、無料で視聴できる点が強みです。広告主にとっては大量の視聴者にリーチできるプラットフォームとして魅力的です。
(3) 市場でのポジショニング(ストリーミング時代の伝統的メディア)
伝統的メディアからの転換
フォックスは、ケーブルTV中心のビジネスモデルから、ストリーミング(Fox One、Tubi)とスポーツベッティング(FanDuel投資)を組み合わせた新しいモデルへの転換を進めています。Fox Oneは月額19.99ドルでFox NewsとFox Sportsへの直接アクセスを提供し、ケーブルTV契約を解約したコードカッター層を獲得します。
市場での評価
アナリスト8人のコンセンサスは「買い」(強い買い5人、ホールド2人、売り1人)、目標株価は70ドル(BofAは65ドルから上方修正)。株価は過去1年で68.48%のリターンを記録しており、市場での評価は高いです。ただし、MoffettNathansonは2025年1月に「買い」から「中立」に格下げしており、キャッシュフロー持続性への懸念が指摘されています。
長期的な課題
視聴者のストリーミングシフトにより、従来型TVビジネスモデルに圧力がかかっています。ケーブルTV加入者は年々減少しており、配信収入の減少が懸念されています。一方、Tubiの成長が従来型TV視聴者減少を相殺する可能性があり、長期的な成長戦略として注目されています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(2025年通期17%増の160億ドル、EBITDA 26%増)
フォックスの最新決算(2025会計年度通期)は以下の通りです。
2025会計年度(通期)ハイライト
- 売上高: 160億ドル(前年比17%増)
- EBITDA: 36億ドル(前年比26%増)
- 調整後EPS: 4.78ドル(前年比39%増)
- 政治広告収益: 4億ドル超(過去最高)
- スーパーボウル59の広告収益: 8億ドル超
Q3 2025決算ハイライト
- 売上高: 前年比27%増
- 広告収益: 前年比65%増(スーパーボウルとTubiが牽引)
- フリーキャッシュフロー: 19億ドル超(過去最高)
- 自社株買い枠増額: 50億ドル
※2025年10月時点のデータです。最新情報はFox Corporation公式IRページをご確認ください。
(出典: Fox Corp Q4 2025 Earnings Call Transcript, GuruFocus)
(2) 配当履歴(配当利回り、自社株買い枠50億ドル増額)
フォックスは配当と自社株買いの両方で株主還元を行っています。
配当のポイント
- 配当利回り: 最新の配当利回りはYahoo FinanceのFOXA銘柄ページをご参照ください。
- 配当の安定性: 2019年のディズニーへの資産売却後も安定配当を維持しています。配当や経済的権利はFOX(Class B株)と同等です。
- 自社株買い: 2025年には50億ドルの自社株買い枠増額を発表しており、株主還元に積極的です。
米国株の配当課税
米国株の配当には、米国で10%、日本で20.315%の源泉徴収が行われます(NISA口座を除く)。外国税額控除を活用することで、米国で課税された10%の一部を日本の所得税・住民税から差し引くことができます。詳細は本サイトの別コラム「米国株の税金ガイド」をご参照ください。
(3) 財務健全性(Q3 2025で過去最高のFCF 19億ドル超)
フォックスの財務健全性は、以下の指標で確認できます。
フリーキャッシュフロー(FCF)
FCFは、営業キャッシュフローから設備投資を差し引いた金額で、企業が自由に使える現金を示します。Q3 2025で過去最高の19億ドル超を記録しており、配当や自社株買いの原資が潤沢です。
EBITDA
EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は2025年通期で26%増の36億ドルを達成しました。営業レベルでの収益力が強化されています。
懸念点:キャッシュフロー持続性
MoffettNathansonは2025年1月に「買い」から「中立」に格下げしました。キャッシュフロー持続性への懸念が株価上昇を制限する可能性があると指摘しています。2025年はスーパーボウルと政治広告(米国大統領選挙)が重なった特別な年であり、2026年以降も同水準のFCFを維持できるかどうかが注目されています。
5. リスク要因
(1) 事業リスク(広告収益依存40%、広告市場の軟化)
フォックスは、以下の事業リスクに直面しています。
広告収益依存
全収益の約40%が広告収入で、広告市場の軟化が大きなリスクです。アナリストは広告環境の弱さを懸念材料として指摘しています。広告収入は経済環境に左右されやすく、景気後退期には大幅に減少する可能性があります。
スポーツ放映権コストの上昇
NFL、MLB、FIFA ワールドカップなどの主要スポーツイベントの放映権コストは年々上昇しています。潤沢な資金力を持つストリーミング競合(Amazon Prime Video、Apple TV+等)が放映権争奪戦に参入しており、コスト上昇が収益性を圧迫する可能性があります。
政治広告の変動
2024年は米国大統領選挙の年で、政治広告収益が4億ドル超と過去最高を記録しました。しかし、政治広告は選挙の年にのみ発生するため、2025年以降は減少する見込みです。
(2) 市場環境リスク(ストリーミング競争、ケーブルTV加入者減少)
フォックスは、以下の市場環境リスクに影響を受けます。
ストリーミング競争の激化
Netflix、Disney+、Amazon Prime Video、Apple TV+などのストリーミングサービスが急成長しており、視聴者の奪い合いが激化しています。フォックスもFox OneとTubiで対抗していますが、潤沢な資金力を持つ競合に対して長期的に競争できるかどうかが課題です。
ケーブルTV加入者減少
米国ではケーブルTV加入者が年々減少しており(コードカッター現象)、配信収入の減少が懸念されています。ケーブルTV事業者からの配信料はフォックスの重要な収益源ですが、加入者減少により収益が圧迫される可能性があります。
為替リスク
日本人投資家にとっては、為替リスクも重要です。円高になると、ドル建て資産の円換算額が減少します。為替レートは1ドル=140-150円程度の変動幅を想定しておく必要があります(2025年10月時点)。
(3) 規制・競争リスク(スポーツ放映権コスト上昇、法的リスク、マードック一族の支配)
フォックスは、以下の規制・競争リスクに直面しています。
スポーツ放映権コストの上昇(再掲)
NFL、MLB、FIFA ワールドカップなどの主要スポーツイベントの放映権コストは年々上昇しています。競合との争奪戦が激化しており、収益性の確保が課題です。
法的リスク
Fox Newsは過去に名誉毀損訴訟で和解金を支払った事例があります(2023年にDominion Voting Systemsとの訴訟で7億8750万ドルの和解金)。同様の訴訟リスクが今後も発生する可能性があり、財務への影響が懸念されています。
マードック一族の支配構造
フォックスの創業者ルパート・マードック氏とその家族は、議決権の大半を保有しており、経営方針に強い影響力を持ちます。このため、一般株主がFOXA(Class A株)を保有しても、経営に与える影響は限定的です。マードック一族の意向次第で経営方針が変わる可能性があり、一般株主にとっては経営への関与が難しいというリスクがあります。
規制強化の可能性
メディア業界では、コンテンツ規制や独占禁止規制が強化される可能性があります。特にスポーツ放映権の独占が問題視される場合、事業モデルへの影響が懸念されます。
競争激化
ストリーミング市場では新規参入が相次いでおり、視聴者の奪い合いが激化しています。Tubiは無料広告型ストリーミングで差別化していますが、競合も同様のサービスを展開しており、競争優位性の維持が課題です。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(スポーツ放映権、Tubi成長、堅調なFCF、議決権)
フォックスの強みは以下の4点です。
① スポーツ放映権の価値
NFL(スーパーボウルを含む)、MLB、FIFA ワールドカップなどの主要スポーツイベントの放映権を持ちます。スーパーボウル59では総広告収益8億ドル超を記録し、スポーツ放映権の価値を証明しました。スポーツ中継はライブ視聴需要が強く、録画視聴やオンデマンド視聴に比べて広告効果が高いとされています。
② Tubiの急成長
Tubiは月間アクティブユーザー1億人超、総視聴時間17%増、収益32%増と急成長しており、次世代の視聴者を獲得する重要なプラットフォームです。無料広告型ストリーミング(AVOD)市場のリーダーとして、NetflixやDisney+などのサブスクリプション型サービスとは異なる収益モデルを確立しています。
③ 堅調なフリーキャッシュフロー
Q3 2025で過去最高のFCF 19億ドル超を記録しており、配当や自社株買いの原資が潤沢です。50億ドルの自社株買い枠増額を発表し、株主還元に積極的です。
④ 議決権付き株式(FOXA)
FOXA(Class A株)は議決権を持ちます。ただし、マードック一族が議決権の大半を保有しているため、一般株主の経営への影響は限定的です。それでも、議決権を重視する投資家にとっては、FOX(Class B株、議決権なし)よりも魅力的な選択肢となる可能性があります。
(2) リスク要因(再掲)
フォックスのリスク要因は以下の3点です。
① 広告収益依存と市場の軟化
全収益の約40%が広告収入で、広告市場の軟化が大きなリスクです。景気後退期には広告収入が大幅に減少する可能性があり、収益が圧迫される懸念があります。
② ストリーミング競争とケーブルTV加入者減少
視聴者のストリーミングシフトにより、従来型TVビジネスモデルに圧力がかかっています。ケーブルTV加入者は年々減少しており、配信収入の減少が懸念されています。潤沢な資金力を持つストリーミング競合に対してスポーツ放映権を長期的に防衛できるかどうかが課題です。
③ マードック一族の支配構造
マードック一族が議決権の大半を保有しており、経営方針に強い影響力を持ちます。一般株主の意見が経営に反映されにくいという側面があります。
(3) 向いている投資家(議決権重視、配当・FCF重視、メディア業界理解)
フォックスは、以下のような投資家に向いています。
① 議決権を重視する投資家
FOXA(Class A株)は議決権を持ちます。ただし、マードック一族が議決権の大半を保有しているため、一般株主の経営への影響は限定的です。それでも、議決権を重視する投資家にとっては、FOX(Class B株)よりも魅力的な選択肢となる可能性があります。
② 配当・フリーキャッシュフローを重視する投資家
安定配当と自社株買いで株主還元を行っており、配当やFCFを重視する投資家に適しています。配当や経済的権利はFOX(Class B株)と同等です。Q3 2025で過去最高のFCF 19億ドル超を記録しており、配当や自社株買いの原資が潤沢です。
③ メディア業界の構造変化を理解している投資家
ストリーミングへのシフトが進む中、フォックスはFox OneとTubiでデジタル化を推進しています。メディア業界の構造変化を理解し、長期的な視点で保有できる投資家に向いています。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言を行うものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。米国株投資には為替リスク、広告市場リスク、競争リスクなどが伴います。最新の財務データやリスク要因については、Fox Corporation公式IRページやSEC EDGAR(10-K、10-Q)をご確認ください。
Q: フォックスA(FOXA)とフォックス(FOX)の違いは?
A: FOXAはClass A株(議決権あり)、FOXはClass B株(議決権なし)です。配当や経済的権利は同等ですが、経営に関する投票権の有無が異なります。ただし、創業者ルパート・マードック氏とその家族が議決権の大半を保有しており、一般株主の議決権影響力は限定的です。そのため、FOXAとFOXの価格差は小さいか、ほとんどない場合が多いです。一般的にFOX(Class B株)の方が流動性が高く取引されており、投資家の多くは議決権よりも配当や株価上昇を重視するため、Class B株を選択するケースが多いです。
Q: フォックスAの配当利回りは?
A: 最新の配当利回りは本文の財務セクションまたはYahoo FinanceのFOXA銘柄ページをご参照ください。2025年には50億ドルの自社株買い枠増額も発表しており、株主還元に積極的です。配当や経済的権利はFOX(Class B株)と同等で、配当と自社株買いの両方で株主還元を行っています。
Q: フォックスAの主な競合は?
A: Disney(ESPN、ABC)、Comcast/NBCUniversal(NBC Sports、Peacock)、Warner Bros. Discovery(TNT Sports、Max)などです。フォックスはスポーツ放映権(NFL、MLB、FIFA ワールドカップ等)とFox Newsの保守系視聴者基盤で差別化しています。スーパーボウル59では総広告収益8億ドル超を記録し、スポーツ放映権の価値を証明しました。
Q: フォックスAのリスク要因は?
A: 広告収益依存(全体の約40%)、ストリーミング競争の激化、ケーブルTV加入者減少、スポーツ放映権コストの上昇、法的リスク、マードック一族による支配構造などがあります。特に広告市場の軟化が大きなリスクで、景気後退期には広告収入が大幅に減少する可能性があります。また、マードック一族が議決権の大半を保有しているため、一般株主の意見が経営に反映されにくいという側面があります。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。
Q: フォックスAは長期投資に向いている?
A: 議決権を重視し、配当・FCFを評価する中長期投資家に向いています。Tubiの成長(月間アクティブユーザー1億人超、収益32%増)とスポーツ放映権の価値が長期的な成長をサポートする一方、ストリーミング競争のリスクもあるため、リスク許容度を確認してから投資判断をしてください。MoffettNathansonはキャッシュフロー持続性への懸念を指摘しており、2025年のスーパーボウルと政治広告が重なった特別な年の業績が今後も続くかどうかが注目されています。投資判断はご自身の責任で行ってください。