0. この記事でわかること
本記事では、ハズブロ(HAS)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: Magic: The Gatheringとライセンス事業の成長、「Playing to Win」戦略による営業利益率改善、高配当利回り4-5%の魅力
- 事業内容と成長戦略: トランスフォーマー、マイリトルポニー、モノポリーなどの人気IPを持つ玩具大手。Wizards & Digital Gaming部門の46%成長、デジタル&ダイレクト戦略によるライセンス収益拡大
- 競合との差別化: Mattelと並ぶ米国玩具2強。世界3位のエンタメライセンサーとして、MONOPOLY Goのような大ヒットデジタルゲームのライセンス展開で収益源を多様化
- 財務・配当の実績: 2025年Q1-Q2で成長軌道に復帰。営業利益率20.3%(前年+10.8pt)、10億ドルのコスト削減計画による収益性改善
- リスク要因: 消費者製品部門の在庫過剰問題と虚偽の在庫品質報告による集団訴訟、小売業者のホリデー向け在庫購入抑制、玩具市場の成熟と競争激化
1. なぜハズブロ(HAS)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
ハズブロは2025年に「Playing to Win」戦略を発表し、以下の3つの柱で成長を目指しています:
Magic: The Gatheringへの集中投資: 前年比23%増収で、成長のコアとなる強力なIP。2027年までにこのフランチャイズとPlay-Dohへの投資を強化し、営業利益率を年間50-100bp改善する計画です
デジタル&ダイレクト戦略の拡大: 自社パブリッシュのビデオゲームとeコマースを拡大。MONOPOLY Goのライセンス収益が月1,000万ドル規模に成長し、世界3位のエンタメライセンサー、デジタルゲーム最大手としての地位を確立しています
「Aging Up」戦略による高マージン化: 13歳以上のコレクター向け製品を強化し、高マージンセグメントへ事業をシフト。成熟した玩具市場でも収益性を向上させる狙いです
(2) 注目テーマ(Magic: The Gathering・ライセンスビジネス・コスト削減)
投資家が最も注目しているのは、Magic: The Gatheringの好調です。2025年Q1には、Wizards & Digital Gaming部門が46%成長し、全社の成長を牽引しました。このカードゲームは30年以上の歴史を持ちながら、デジタル化とコレクター市場の拡大で今なお成長を続けています。
ライセンスビジネスも大きな収益源です。ハズブロはトランスフォーマー、マイリトルポニー、モノポリーなどの人気IPを外部企業にライセンス供与し、映画、ゲーム、アパレル等に展開。特にMONOPOLY Goは月1,000万ドル規模のライセンス収益を生み出しており、玩具の製造・在庫リスクを負わずに安定収益を得られる点が魅力です。
さらに、10億ドルのコスト削減計画(半分を営業利益に)により、2024年通期の営業利益率は20.3%(前年+10.8pt)と大幅に改善しました。eOne売却による非中核事業の整理と人員削減(約1,100人、20%)が効果を上げています。
(3) 投資家の関心・懸念点
アナリストは「Strong Buy」評価で、平均目標株価86.36ドル(現在から14.89%上昇)と強気です。Magic: The Gatheringとライセンス事業の収益性向上、2027年までにEPS 5.59ドルへの成長見込みが評価されています。
一方で、消費者製品部門の不振が懸念材料です。2025年Q2の好決算にも関わらず株価は2.81%下落(プレマーケット)し、消費者製品のガイダンスを5-8%減に下方修正(前回は0-4%減)しました。小売業者がホリデー向けの裁量在庫購入を一時停止しており、玩具市場の成熟とパンデミック後の消費支出シフトが影響しています。
また、2022-2023年には虚偽の在庫品質報告で集団訴訟を受けており、在庫管理問題への信頼回復が課題です。
2. ハズブロの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(消費者製品・Wizards & Digital Gaming・エンターテインメント)
ハズブロは以下の3つのセグメントで事業を展開しています:
1. 消費者製品(Consumer Products)
伝統的な玩具事業で、トランスフォーマー、マイリトルポニー、Play-Doh、Nerf、モノポリーなどのブランドを展開。Mattelに並ぶ米国第2位の玩具メーカーですが、近年は在庫過剰と小売業者の購入抑制で減収傾向です。
2. Wizards & Digital Gaming
Magic: The GatheringとDungeons & Dragons(D&D)を中核とする高成長部門。2025年Q1-Q2で46%成長し、全社の収益性を牽引。カードゲームの物理版とデジタル版、ライセンス収益を組み合わせた多層的なビジネスモデルが特徴です。
3. エンターテインメント(Entertainment)
IP活用による映画、テレビ、ライセンス事業。MONOPOLY Goのようなデジタルゲームのライセンス収益が急成長しています。
(2) セクター・業種の説明(Consumer Discretionary - Leisure Products)
ハズブロは**一般消費財セクター(Consumer Discretionary)のレジャー製品業界(Leisure Products)**に属します。このセクターは景気変動の影響を受けやすく、消費者の裁量支出が減少すると売上が低迷する傾向があります。
玩具市場は成熟しており、人口動態(少子化)やデジタルエンターテインメント(ゲーム、動画)との競争が激化しています。ハズブロはこの課題に対し、IPの映画化・ゲーム化、コレクター向け高単価製品、デジタルゲームのライセンス展開で対応しています。
(3) ビジネスモデルの特徴(IP活用型・Playing to Win戦略)
ハズブロの強みは、人気IPのポートフォリオです。トランスフォーマーは実写映画で世界的にヒットし、Magic: The GatheringとD&Dはデジタルゲームや映画(D&D: Honor Among Thieves)に展開。モノポリーはMONOPOLY Goというモバイルゲームで新たな収益源を生み出しました。
「Playing to Win」戦略では、5つの柱を掲げています:
- Profitable Franchises: Magic、Play-Doh等への集中投資
- Aging Up: 13歳以上のコレクター向け製品強化
- Everyone Plays: 家族向け・多世代向けゲーム拡充
- Digital & Direct: 自社パブリッシュのビデオゲームとeコマース拡大
- Partner Scaled: ライセンス事業の拡大(世界3位のエンタメライセンサー)
2027年までに中位一桁台の売上成長と営業利益率50-100bp改善を見込み、10億ドルのコスト削減計画(半分を営業利益に)を実行中です。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(Mattel・LEGO・Bandai Namco等)
ハズブロの主要競合は以下の通りです:
Mattel(マテル): 米国玩具1位。バービー、ホットウィール、フィッシャープライス等のブランドを持つ。バービー映画の大ヒット(2023年)で業績好調
LEGO(レゴ): デンマークの玩具メーカー。ブロック玩具で世界的なブランド力を持ち、デジタル化(LEGOビデオゲーム、映画)でも成功
Bandai Namco(バンダイナムコ): 日本の玩具・ゲーム大手。ガンダム、仮面ライダー等の人気IPを持ち、アジア市場で強い
Spin Master: カナダの玩具メーカー。PAW Patrol(パウ・パトロール)で急成長
(2) 競合優位性(人気IP・デジタル展開・ライセンス事業)
ハズブロの競合優位性は以下の3点です:
1. 多様な人気IPポートフォリオ
トランスフォーマー、マイリトルポニー、モノポリー、Magic: The Gathering、D&D等、幅広い年齢層とジャンルをカバー。Mattelはバービー中心、LEGOはブロック玩具中心と比べ、リスク分散ができています。
2. デジタル展開の成功
Magic: The Gatheringはデジタル版(MTG Arena)とライセンスゲーム(Baldur's Gate 3等のD&D関連)で大ヒット。MONOPOLY Goは月1,000万ドル規模のライセンス収益を生み出し、物理玩具だけでなくデジタルでも収益化しています。
3. 世界3位のエンタメライセンサー
ライセンス事業はMattelやLEGOに比べて規模が大きく、製造・在庫リスクを負わずに安定収益を得られる点が強みです。
(3) 市場でのポジショニング(米国玩具2強・世界3位のエンタメライセンサー)
ハズブロはMattelと並ぶ米国玩具2強の一角ですが、近年はWizards & Digital Gaming部門の成長により、「玩具メーカー」から「エンタメIPカンパニー」への転換を図っています。
2018年のトイザらス破綻で打撃を受けましたが、COVID-19パンデミック時は巣ごもり需要で好調。その後は反動減に苦しむも、デジタル化とライセンス事業で収益性を改善しています。ディズニーとのライセンス関係終了(過去の減益要因)を乗り越え、自社IPの強化に成功した点も評価できます。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(2024年通期・2025年Q1-Q2実績)
以下は、ハズブロの財務推移です(出典: Hasbro Inc. 10-K 2024, SEC EDGAR / IR資料):
項目 | 2024年通期 | 2025年Q1 | 2025年Q2 |
---|---|---|---|
売上高 | - | 前年比+17% | 好決算 |
調整後営業利益 | 8.39億ドル | - | - |
営業利益率 | 20.3%(+10.8pt) | - | - |
Wizards & Digital Gaming成長率 | - | +46% | 好調維持 |
消費者製品ガイダンス | - | - | -5~-8%(下方修正) |
※2025年10月時点のデータです。最新情報はHasbro Inc公式IRページをご確認ください。
ポイント:
- 2024年通期で調整後営業利益8.39億ドル(前年比+3.62億ドル)、営業利益率20.3%(+10.8pt)と大幅改善
- 2025年Q1-Q2で成長軌道に復帰。Wizards & Digital Gaming部門が46%成長
- 消費者製品部門は5-8%減見込みで、ガイダンス下方修正(小売業者の在庫抑制)
- 2025年通期で売上高は中位一桁台成長、営業利益率22-23%を見込む
- eOne売却と6億ドルのコスト削減が収益性改善に寄与
(2) 配当履歴(配当利回り4-5%・高配当株)
ハズブロは高配当株として知られ、配当利回り4-5%程度で推移しています(2025年10月時点)。玩具市場は成熟していますが、安定したキャッシュフローと配当政策により、配当重視の投資家に人気があります。
配当のポイント:
- 配当利回り: 約4-5%(市場平均を上回る高配当)
- 配当性向: 適切な範囲内で維持(詳細は最新10-Kで確認)
- 連続増配年数: 一部期間で減配もありましたが、長期的には配当を維持
米国株配当の税金:
- 米国で10%源泉徴収後、日本で約20.315%課税(特定口座の場合)
- 外国税額控除を申告すれば、二重課税の一部を軽減可能
- NISA口座では米国10%源泉徴収後の配当を非課税で受け取れる(ただし外国税額控除は利用不可)
(3) 財務健全性(営業利益率改善・コスト削減効果)
ハズブロの財務健全性は以下の通りです:
営業利益率改善
2024年通期で営業利益率20.3%(+10.8pt)と大幅改善。10億ドルのコスト削減計画(半分を営業利益に)により、2027年まで年間50-100bpの改善を見込みます。
キャッシュフロー
Wizards & Digital Gaming部門の高マージン化とライセンス事業の拡大により、フリーキャッシュフロー(FCF)が改善傾向です。
有利子負債
eOne売却により非中核事業を整理し、財務体質を強化。詳細は最新10-Kで確認してください。
自己資本比率
適切な水準を維持しており、財務の安定性は高いと言えます。
5. リスク要因
(1) 事業リスク(消費者製品在庫過剰・玩具市場の成熟)
ハズブロの主要な事業リスクは以下の通りです:
消費者製品部門の在庫過剰問題
2022-2023年に虚偽の在庫品質報告で集団訴訟を受けました。在庫管理の信頼回復が課題です。2025年Q2では、小売業者がホリデー向けの裁量在庫購入を一時停止し、消費者製品のガイダンスを5-8%減に下方修正しました。
玩具市場の成熟
少子化とデジタルエンターテインメント(ゲーム、動画)との競争が激化しており、伝統的な玩具の需要は減少傾向です。ハズブロは「Aging Up」戦略でコレクター向け製品に注力していますが、市場全体の成長は限定的です。
パンデミック後の反動減
COVID-19パンデミック時は巣ごもり需要で好調でしたが、その後は消費支出がサービス(旅行、外食)にシフトし、玩具需要が低迷しています。
(2) 市場環境リスク(小売業者の在庫抑制・消費支出シフト)
小売業者の在庫抑制
2025年Q2時点で、小売業者がホリデー向けの在庫購入を抑制しています。消費者の裁量支出が不透明な中、小売業者はリスク回避姿勢を強めており、ハズブロの売上に影響しています。
景気変動の影響
一般消費財セクターは景気変動に敏感です。景気後退時には玩具のような裁量支出が減少し、売上が低迷するリスクがあります。
為替リスク
ハズブロは米国企業ですが、世界中で事業を展開しています。日本人投資家にとっては、円高・円安の影響で配当受取額や株価(円換算)が変動するリスクがあります。
(3) 規制・競争リスク(デジタル化・競争激化)
デジタル化の影響
子供たちの遊びがデジタルゲームやYouTube等にシフトしており、物理玩具の需要が減少しています。ハズブロはデジタル&ダイレクト戦略で対応していますが、デジタル分野ではソニー、任天堂、マイクロソフト等の強力な競合が存在します。
競争激化
Mattel、LEGO、Bandai Namco等の競合も映画化・ゲーム化を強化しており、IPの価値をめぐる競争が激化しています。Mattelのバービー映画の成功は、ハズブロにとって競争圧力となっています。
規制リスク
玩具の安全基準(CPSC規制等)は厳格であり、製品リコールや訴訟リスクがあります。また、デジタルゲームの課金に関する規制(ルートボックス規制等)も今後の懸念材料です。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(人気IP・デジタル展開・高配当)
ハズブロの強みは以下の3点です:
多様な人気IPポートフォリオ: トランスフォーマー、Magic: The Gathering、モノポリー、D&D等、幅広い年齢層とジャンルをカバー。映画、ゲーム、ライセンスで多層的に収益化
デジタル&ライセンス事業の成長: Wizards & Digital Gaming部門が46%成長、MONOPOLY Goのライセンス収益が月1,000万ドル規模。世界3位のエンタメライセンサーとして、製造・在庫リスクなしで安定収益を確保
高配当利回り4-5%: 玩具市場は成熟していますが、安定したキャッシュフローと配当政策により、配当重視の投資家に魅力的
(2) リスク要因(再掲)
一方で、以下のリスクには注意が必要です:
消費者製品部門の不振: 在庫過剰問題と小売業者の購入抑制により、ガイダンス下方修正。玩具市場の成熟とデジタル化の影響で、伝統的な玩具事業は減収傾向
市場環境の不透明感: 景気変動、為替リスク、消費支出のシフト(サービスへ)により、売上が変動しやすい
(3) 向いている投資家
ハズブロは以下のような投資家に向いています:
高配当を重視する投資家: 配当利回り4-5%で、安定したインカムゲインを求める方に適しています
エンタメIPの価値を評価する投資家: Magic: The Gathering、トランスフォーマー等の人気IPが好きで、映画・ゲーム展開に期待する方
リスク許容度のある投資家: 玉市場の成熟と在庫問題を理解し、デジタル&ライセンス事業の成長に期待できる方
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。米国株投資には為替リスク、市場リスク、個別企業リスクが伴います。最新の財務データや株価指標は、Hasbro Inc公式IRページやSEC EDGARでご確認ください。
Q: ハズブロの配当利回りは?
A: 2025年10月時点で約4-5%程度と高配当です。玩具市場は成熟していますが、安定した配当が魅力で、配当重視の投資家に人気があります。ただし、配当は企業の業績や方針により変動する可能性があるため、最新の配当情報は公式IRページで確認してください。米国株の配当は米国で10%源泉徴収後、日本で約20.315%課税されますが、外国税額控除やNISA口座の活用で税負担を軽減できます。
Q: ハズブロの主な競合は?
A: Mattel(米国玩具1位、バービー・ホットウィール等)、LEGO(デンマーク、ブロック玩具)、Bandai Namco(日本、ガンダム・仮面ライダー等)などが主要競合です。ハズブロはトランスフォーマーやMagic: The Gathering、モノポリー等の人気IPで差別化しており、特にデジタル&ライセンス事業では世界3位のエンタメライセンサーとして強みを持っています。Mattelのバービー映画の成功など、競合も映画化・ゲーム化を強化しているため、競争は激化しています。
Q: ハズブロのリスク要因は?
A: 主なリスクは、消費者製品の在庫過剰問題(2022-2023年に虚偽報告で集団訴訟)、小売業者の在庫購入抑制(ホリデー商戦の不透明感)、玩具市場の成熟と競争激化、デジタル化の影響(子供の遊びがデジタルゲームにシフト)などです。詳細はリスク要因セクションを参照してください。また、為替リスク(円高・円安)も日本人投資家には重要なリスクです。
Q: ハズブロは長期投資に向いている?
A: 人気IPの価値とライセンスビジネスの安定性があり、高配当も魅力ですが、玩具市場の成熟と在庫問題があるため、配当重視でリスク許容度のある投資家に向いています。Wizards & Digital Gaming部門(Magic: The Gathering、D&D)の成長とコスト削減による収益性改善が今後の鍵です。投資判断はご自身で行ってください。長期投資を検討する場合は、最新の決算資料(10-K、10-Q)で財務状況と事業戦略を定期的に確認することをお勧めします。