0. この記事でわかること
本記事では、ロス・ストアーズ(ROST)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: オフプライス小売モデルで景気後退時にも強いディフェンシブ株として評価され、積極的な店舗拡大戦略と関税リスク対応のChina-plus-one戦略を推進しています
- 事業内容と成長戦略: Ross Dress for Lessとdd's DISCOUNTSの2ブランドで全米44州に2,273店舗を展開し、定価の20-60%引きでブランド品を提供するオフプライス小売業界の大手企業です
- 競合との差別化: TJX Companies(業界最大手)、Burlington Storesとの競争において、トレジャーハント型のショッピング体験と高い営業利益率で差別化を図っています
- 財務・配当の実績: 32年連続の配当支払い実績と4年連続で10.2%の増配を実施しており、配当成長株としての魅力があります
- リスク要因: 商品の半数以上が中国製であることから関税リスクが高く、2025年通期ガイダンスを撤回するなど短期的な業績圧迫が懸念されています
1. なぜロス・ストアーズ(ROST)が注目されているのか
ロス・ストアーズは、オフプライス小売(定価より大幅割引で販売する小売形態)で全米2位のチェーン「Ross Dress for Less」を展開する企業です。ブランド品を定価の20-60%引きで販売し、景気後退時にも強い「バリューリテール」のビジネスモデルを持つことから、アナリストから景気後退局面での防衛的投資先として評価されています。
(1) 成長戦略の3つのポイント
ロス・ストアーズの成長戦略は以下の3つの柱で構成されています:
積極的な店舗拡大戦略: 2025年に約90店舗(Ross Dress for Less 80店舗、dd's DISCOUNTS 10店舗)を新規出店する計画です。長期目標はRoss 2,900店舗、dd's 700店舗で、現在44州に2,273店舗を展開しています
地理的拡大と市場深耕: Ross Dress for Lessはコネチカット州・ニューヨーク州など未開拓市場に進出し、dd's DISCOUNTSはテキサス州・カリフォルニア州など既存強固市場での集中出店を推進しています
China-plus-one戦略: 関税リスク軽減のため、ベトナム・インド・マレーシアへの生産拠点分散を推進しています。2025年の関税影響は0.11~0.16ドル/株のEPS減少を見込んでいます
(2) 注目テーマ
投資家がロス・ストアーズに注目する理由として、以下のテーマが挙げられます:
- オフプライス小売モデル(Off-Price Retail): 機会主義的な仕入れ戦略で在庫過剰品やキャンセル注文を調達し、定価より大幅割引で販売する独自のビジネスモデルです
- トレジャーハント型ショッピング体験(Treasure Hunt): 常に変化する品揃えで宝探し感覚を演出し、顧客の頻繁な来店を促進しています
- 関税リスク対応・China-plus-one戦略: 商品の半数以上が中国製であることから、関税リスク軽減のため生産拠点の分散を進めています
(3) 投資家の関心・懸念点
アナリストは2025年の売上5.6%成長、EPS 8.2%成長を予測し、総合評価は「Strong Buy」(買い12、中立4、売り0)となっています。平均目標株価160.29ドルは現在株価から8.38%の上昇を示唆しています。
一方で、関税リスクと低~中所得層顧客への圧力が懸念されています。2025年通期ガイダンスを撤回し、Q2見通しはコンセンサスを約11%下回る状況です。Q1 2025では既存店売上高が横ばい、マーチャンダイズマージンが45bp減少しています。
2. ロス・ストアーズの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(Ross Dress for Less・dd's DISCOUNTS)
ロス・ストアーズは2つのブランドを展開しています:
Ross Dress for Less: 全米44州に展開する主力ブランドで、アパレル、シューズ、ホーム用品、ビューティー製品などを定価の20-60%引きで販売しています。コネチカット州やニューヨーク州など未開拓市場への進出を進めています
dd's DISCOUNTS: テキサス州やカリフォルニア州など既存強固市場で集中出店を推進しており、より低価格帯の顧客層をターゲットにしています
2025年の設備投資予算は8.55億ドルで、13億ドルの回転信用枠を保有しています。
(2) セクター・業種の説明(オフプライス小売)
ロス・ストアーズは消費者裁量セクター(Consumer Discretionary)の専門小売業(Specialty Retail)に属しています。オフプライス小売は、メーカーや百貨店の在庫過剰品、キャンセル注文品、季節商品の売れ残りなどを機会主義的に仕入れ、定価より大幅に割り引いて販売する業態です。
このビジネスモデルは景気後退時にも強いとされており、低~中所得層の顧客が価格を重視する傾向が強まる局面で競争優位性を発揮します。
(3) ビジネスモデルの特徴(機会主義的仕入れ・実店舗中心)
ロス・ストアーズのビジネスモデルには以下の特徴があります:
- 機会主義的な仕入れ戦略: 在庫過剰品やキャンセル注文を調達することで、定価の20-60%引きでブランド品を提供できます
- トレジャーハント型の買い物体験: 常に変化する品揃えで宝探し感覚を演出し、顧客の頻繁な来店を促進しています
- 実店舗中心のモデル: オンライン販売には消極的で、実店舗での体験価値を重視しています
Q2 2025ではコスメカテゴリが好調、レディースビジネスが改善しています。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業
オフプライス小売業界の主要競合企業は以下の通りです:
- TJX Companies: TJマックス、Marshalls、HomeGoods等を運営する業界最大手です
- Burlington Stores: バーリントンブランドで全米に店舗を展開しています
- その他の百貨店・専門小売: MercyやKohl'sなどの百貨店も競合となります
(2) 競合優位性(積極的な店舗拡大・トレジャーハント体験・高営業利益率)
ロス・ストアーズの競合優位性は以下の点にあります:
- 積極的な店舗拡大戦略: 2025年に約90店舗を新規出店し、長期目標はRoss 2,900店舗、dd's 700店舗です。競合のTJX Companiesと比較しても積極的な拡大戦略を取っています
- トレジャーハント型のショッピング体験: 常に変化する品揃えで顧客の頻繁な来店を促進し、実店舗での体験価値を重視しています
- 高い営業利益率: Q2 2025の営業マージンは11.5%で、オフプライス小売業界の中では高水準を維持しています(ただし前年比95bp低下)
(3) 市場でのポジショニング
ロス・ストアーズはオフプライス小売業界で全米2位のポジションにあります。業界最大手のTJX Companiesに次ぐ規模で、44州に2,273店舗を展開しています。
未開拓市場への進出と既存強固市場での集中出店を組み合わせることで、地理的な拡大と市場深耕の両面で成長を目指しています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(既存店売上・営業マージン)
ロス・ストアーズの最新の業績は以下の通りです(2025年Q2時点):
- EPS: 1.56ドル(前年1.59ドルから減少)、関税影響は約0.11ドル/株
- 営業マージン: 11.5%(前年比95bp低下)
- 既存店売上高: Q1 2025で横ばい、Q2以降の見通しは慎重
- マーチャンダイズマージン: Q1で45bp減少
2025年の見通しは慎重で、通期ガイダンスを撤回し、Q3とQ4の既存店売上成長率を各2-3%と予想しています。関税の影響で短期的には業績が圧迫されるものの、アナリストは2025年の売上5.6%成長、EPS 8.2%成長を予測しています。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はRoss Stores Inc公式IRページをご確認ください。 (出典: Ross Stores Inc Q2 2025 Earnings, Yahoo Finance)
(2) 配当履歴(32年連続配当支払い・4年連続増配10.2%成長)
ロス・ストアーズは配当成長株としての魅力を持っています:
- 配当利回り: 約1%前後(2025年時点)
- 配当支払い実績: 32年連続の配当支払い実績
- 増配実績: 4年連続で10.2%の増配を実施
配当利回りは低めですが、安定した配当支払い実績と増配トレンドから、配当成長株として評価されています。
(3) 財務健全性(設備投資予算8.55億ドル・回転信用枠13億ドル)
ロス・ストアーズの財務健全性は以下の通りです:
- 設備投資予算: 2025年は8.55億ドルで、積極的な店舗拡大を支えています
- 回転信用枠: 13億ドルを保有しており、資金調達の柔軟性を確保しています
- キャッシュフロー: 高い営業利益率と安定したキャッシュフローを生んでいます
5. リスク要因
(1) 事業リスク(関税影響・低~中所得層顧客への圧力)
最も重要なリスク要因は関税の影響です。商品の半数以上が中国製であることから、関税水準の上昇が商品調達パターンの混乱、コスト増加、マージン圧迫を引き起こす懸念があります。2025年通期ガイダンスを撤回し、Q2見通しはコンセンサスを約11%下回る状況です。
また、インフレや生活必需品の高コストが継続し、主要顧客層である低~中所得層の裁量支出が圧迫されています。Q1 2025では既存店売上高が横ばい、マーチャンダイズマージンが45bp減少しています。
(2) 市場環境リスク(為替変動・インフレ・消費者の購買行動変化)
市場環境リスクとして以下が挙げられます:
- 為替変動リスク: 米ドル建ての株式のため、円高になると円換算での投資リターンが減少します
- インフレリスク: 生活必需品の高コストが継続すると、顧客の裁量支出がさらに圧迫される可能性があります
- 消費者の購買行動変化: オンライン販売の拡大により、実店舗中心のビジネスモデルが影響を受ける可能性があります
(3) 規制・競争リスク(在庫調達リスク・人件費上昇・オンライン販売との競争)
規制・競争リスクとして以下が挙げられます:
- 在庫調達リスク: 機会主義的な仕入れ戦略に依存しているため、在庫過剰品やキャンセル注文が減少すると調達が困難になる可能性があります
- 人件費上昇リスク: 最低賃金の上昇や労働市場の逼迫により、人件費が上昇する可能性があります
- オンライン販売との競争: 実店舗中心のモデルであるため、Amazon等のオンライン小売との競争が激化する可能性があります
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
ロス・ストアーズの強みは以下の3点です:
- オフプライス小売モデルの強み: 定価の20-60%引きでブランド品を提供し、景気後退時にも強いビジネスモデルを持っています
- 配当成長株としての魅力: 32年連続の配当支払い実績と4年連続で10.2%の増配を実施しており、配当成長株として評価されています
- 積極的な店舗拡大戦略: 2025年に約90店舗を新規出店し、長期目標はRoss 2,900店舗、dd's 700店舗で、未開拓市場への進出と既存強固市場での集中出店を推進しています
(2) リスク要因(再掲)
一方で、以下のリスク要因に注意が必要です:
- 関税リスク: 商品の半数以上が中国製であることから、関税水準の上昇が業績を圧迫する懸念があります(2025年通期ガイダンスを撤回)
- 低~中所得層顧客への圧力: インフレや生活必需品の高コストが主要顧客層の裁量支出を圧迫しています
(3) 向いている投資家
ロス・ストアーズは以下のような投資家に向いていると言われています:
- 景気後退時にも強いディフェンシブ株を探している投資家: アナリストは景気後退局面での防衛的投資先として評価しています
- 小売業の成長性に関心がある投資家: 積極的な店舗拡大戦略と高い営業利益率が魅力です
- 配当成長株を重視する投資家: 32年連続配当支払い実績と4年連続増配10.2%成長が魅力です
※本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新の財務データや市場動向は公式IRページや証券会社のレポートをご確認ください。
Q: ロス・ストアーズの配当利回りは?
A: 約1%前後です(2025年時点)。配当利回りは低めですが、32年連続の配当支払い実績があり、4年連続で10.2%の増配を実施しています。配当成長株として魅力があります。詳細は財務・配当セクションを参照してください。
Q: ロス・ストアーズの主な競合は?
A: オフプライス小売業界では、TJX Companies(TJマックス、Marshalls等を運営、業界最大手)、Burlington Stores(バーリントン)などが競合です。競合との差別化ポイントは積極的な店舗拡大戦略とトレジャーハント型のショッピング体験です。
Q: ロス・ストアーズのリスク要因は?
A: 関税の影響(商品の半数以上が中国製、2025年通期ガイダンスを撤回、Q2見通しがコンセンサスを11%下回る)、低~中所得層顧客への圧力(インフレや生活必需品の高コストが裁量支出を圧迫、Q1で既存店売上横ばい、マーチャンダイズマージン45bp減少)、在庫調達リスク、人件費上昇などがリスクです。詳細はリスク要因セクションを参照してください。
Q: ロス・ストアーズは長期投資に向いている?
A: 景気後退時にも強いディフェンシブ株を探している投資家や小売業の成長性に関心がある投資家に向いています。32年連続配当支払い実績と高営業利益率が魅力ですが、関税リスクや低~中所得層顧客への圧力を考慮する必要があります。アナリストは景気後退局面での防衛的投資先として評価しています。投資判断はご自身で行ってください。
Q: ロス・ストアーズの成長戦略は?
A: 積極的な店舗拡大戦略(2025年に約90店舗新規出店、長期目標はRoss 2,900店舗、dd's 700店舗、現在44州に2,273店舗)、地理的拡大と市場深耕(Ross Dress for Lessは未開拓市場に進出、dd's DISCOUNTSは既存強固市場で集中出店)、China-plus-one戦略(関税リスク軽減のためベトナム・インド・マレーシアへの生産拠点分散)の3本柱です。アナリストは2025年の売上5.6%成長、EPS 8.2%成長を予測しています。