0. この記事でわかること
本記事では、TJX(TJX)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 世界最大のオフプライス小売チェーン。28年連続増配の実績、長期的に店舗数を7,000店超に拡大する計画、Eコマース戦略の強化と国際展開の推進により、中長期的な成長が見込まれています。
- 事業内容と成長戦略: 21,000超のベンダーから仕入れた高品質ブランド商品を定価より20-60%安く販売する独自モデル。T.J.Maxx、Marshalls、HomeGoodsなどの多ブランド戦略で成長しています。
- 競合との差別化: Ross Stores、Burlington Storesなどと競合しますが、21,000超のベンダーネットワークと毎週10,000点の新商品投入による「宝探し」体験で差別化しています。
- 財務・配当の実績: 2026年度Q2は売上144億ドル(前年比7%増)、既存店売上4%増、EPS 1.10ドル(15%増)と好調。配当利回りは約1-2%程度です。
- リスク要因: 販管費増加圧力、高いバリュエーション(PER 28.4倍)、関税リスク、為替逆風に注意が必要です。
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1. なぜTJX(TJX)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
TJXは、以下の3つの戦略で成長を加速させています:
長期的に店舗数を現在の5,085店から7,000店超に拡大する計画
2026年度は約130店純増で5,200店を超える見込みです。スペインに2026年初頭に初出店予定であり、欧州での存在感を強化します。米国、カナダ、欧州、オーストラリアなど9カ国で店舗展開しており、グローバルな成長余地があります。Eコマース戦略の強化
オンラインでの「宝探し」体験を拡充し、品揃えを拡大しています。ただし売上の98.6%は実店舗で、デジタルは補完的な位置づけです。実店舗中心のビジネスモデルを維持しながら、オンライン顧客の獲得も進めています。国際展開の推進
メキシコ、UAE、サウジアラビアなど高成長地域への投資を加速しています。国際市場での認知度向上と店舗網拡大により、新たな成長機会を開拓しています。
(2) 注目テーマ(オフプライス小売・宝探し体験・7000店舗拡大)
TJXは、以下の長期成長トレンドに注力しています:
- オフプライス小売モデル(定価の20-60%オフ): 小売店やメーカーがさばききれない在庫を買い取り、消費者に安く販売するビジネスモデルです。21,000超のベンダーから18カ国で商品調達し、高品質ブランド商品を定価より20-60%安く提供しています。
- 宝探し型ショッピング体験(毎週約10,000点の新商品投入): 毎週約10,000点の新商品を投入し、顧客が掘り出し物を見つける楽しさを提供しています。在庫が常に変わるため、顧客は頻繁に店舗を訪れ、リピート率が高まります。
- 実店舗中心の多ブランド戦略(T.J.Maxx、Marshalls、HomeGoods等): T.J.Maxx、Marshalls、HomeGoodsなどの多ブランド戦略で、幅広い顧客層をカバーしています。実店舗が売上の98.6%を占め、店舗体験を重視しています。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家は、TJXの長期成長ポテンシャルに注目していますが、同時に以下の懸念も抱いています:
- 成長期待: 2026年度は売上581-586億ドル(3-4%増)、EPS 4.34-4.43ドルを見込み、配当を13%増額し、20-25億ドルの自社株買いを計画しています。アナリストの平均目標株価は152.82ドルで、コンセンサス評価は「Strong Buy」です。長期的に7,000店舗への拡大余地があり、中長期的な成長が期待されています。
- 高いバリュエーション: PER 28.4倍は米国企業の約半数(17倍未満)と比べて大幅に高く、今後3年間のEPS成長率見込み9.7%は市場平均10%と同水準です。高PERが将来成長に見合わないリスクがあります。
- コスト増加懸念: 2026年度Q1は販管費率が20%に上昇見込み(主に店舗人件費増が要因)で、為替逆風も税前利益率を約0.2ポイント、EPSを約3%押し下げます。関税リスクや人件費増により、利益率が圧迫される可能性があります。
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2. TJXの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業
TJXは、世界最大のオフプライス小売チェーンとして、以下の4つの事業セグメントで構成されています:
Marmaxx(米国)
T.J.MaxxとMarshallsの2つのブランドで構成され、米国全土に約2,300店舗を展開しています。アパレル、ホームファッション、アクセサリー、靴などを販売しています。HomeGoods(米国)
ホームファッション専門店として、家具、インテリア、キッチン用品などを販売しています。米国全土に約900店舗を展開しています。TJX Canada
カナダでT.J.Maxx、Marshalls、HomeSenseを展開し、約600店舗を運営しています。TJX International
欧州(英国、ドイツ、ポーランド、オーストリア、オランダなど)とオーストラリアでT.K.Maxx、HomeSenseを展開し、約1,300店舗を運営しています。2026年初頭にはスペインに初出店予定です。
(2) セクター・業種の説明
TJXは、一般消費財セクター(Consumer Discretionary)、**専門小売業種(Specialty Retail)**に分類されます。
オフプライス小売は、小売店やメーカーがさばききれない在庫を買い取り、消費者に定価より大幅に安い価格で販売する業態です。在庫処分品やシーズン落ち商品を扱うため、仕入価格を抑え、利益率を維持しながら顧客に魅力的な価格を提供できます。
TJXは、21,000超のベンダーから18カ国で商品調達し、高品質ブランド商品を定価より20-60%安く提供しています。
(3) ビジネスモデルの特徴
TJXのビジネスモデルには、以下の特徴があります:
- オフプライス小売モデル: 小売店やメーカーがさばききれない在庫を買い取り、消費者に安く販売するビジネスモデルです。仕入価格を抑え、利益率を維持しながら顧客に魅力的な価格を提供できます。
- 「宝探し」型ショッピング体験: 毎週約10,000点の新商品を投入し、在庫が常に変わるため、顧客は頻繁に店舗を訪れ、掘り出し物を見つける楽しさを味わえます。リピート率が高まり、顧客ロイヤルティが強化されます。
- 21,000超のベンダーネットワーク: 18カ国で商品調達し、幅広い品揃えを実現しています。ベンダーとの長期的な関係を築き、安定的な仕入れを確保しています。
- 実店舗中心の戦略: 売上の98.6%は実店舗で、デジタルは補完的な位置づけです。実店舗での「宝探し」体験を重視し、顧客の来店頻度を高めています。
- 景気後退期でも強いビジネスモデル: 不況期には、消費者が節約志向になり、オフプライス小売の需要が高まります。高品質ブランド商品を安く買いたいというニーズに応え、景気後退期でも売上を維持しやすい特性があります。
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3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業
TJXの主要競合企業は以下の通りです:
- Ross Stores(ロス・ストアーズ): 米国第2位のオフプライス小売チェーン。Ross Dress for LessとDD's Discountsの2つのブランドで約2,000店舗を展開しています。
- Burlington Stores(バーリントン・ストアーズ): 米国第3位のオフプライス小売チェーン。約1,000店舗を展開しています。
- Nordstrom Rack(ノードストローム・ラック): 高級百貨店Nordstromのオフプライス業態。約350店舗を展開しています。
(2) 競合優位性
TJXは、以下の点で競合他社と差別化しています:
21,000超のベンダーネットワークと毎週10,000点の新商品投入
18カ国で商品調達し、幅広い品揃えを実現しています。毎週約10,000点の新商品を投入し、顧客が掘り出し物を見つける楽しさを提供しています。Ross StoresやBurlington Storesと比べて、ベンダーネットワークが大きく、品揃えの幅が広いです。多ブランド戦略(T.J.Maxx、Marshalls、HomeGoods等)
T.J.Maxx、Marshalls、HomeGoodsなどの多ブランド戦略で、幅広い顧客層をカバーしています。T.J.Maxxは総合的なオフプライス小売、Marshallsは靴・アクセサリーに強み、HomeGoodsはホームファッション専門と、各ブランドが明確な差別化を図っています。国際展開の先行優位性
欧州(英国、ドイツ、ポーランド、オーストリア、オランダなど)とオーストラリアで約1,300店舗を運営しており、Ross StoresやBurlington Storesと比べて国際展開が進んでいます。2026年初頭にはスペインに初出店予定であり、欧州での存在感をさらに強化します。実店舗中心の戦略
売上の98.6%は実店舗で、デジタルは補完的な位置づけです。実店舗での「宝探し」体験を重視し、顧客の来店頻度を高めています。Eコマース戦略も強化していますが、実店舗中心のビジネスモデルを維持しています。
(3) 市場でのポジショニング
TJXは、世界最大のオフプライス小売チェーンとして、以下の市場で強いポジションを確立しています:
- オフプライス小売市場: 米国、カナダ、欧州、オーストラリアなど9カ国で5,085店舗を運営しており、世界最大のオフプライス小売チェーンです。Ross StoresやBurlington Storesと比べて、店舗数とベンダーネットワークで圧倒的な優位性を持ちます。
- 「宝探し」型ショッピング体験市場: 毎週約10,000点の新商品を投入し、顧客が掘り出し物を見つける楽しさを提供しています。在庫が常に変わるため、顧客は頻繁に店舗を訪れ、リピート率が高まります。
- 国際市場: 欧州とオーストラリアで約1,300店舗を運営しており、2026年初頭にはスペインに初出店予定です。長期的に7,000店舗への拡大余地があり、国際市場での成長が期待されています。
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4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移
TJXの売上高と利益は、以下のように推移しています(2026年度Q2時点):
項目 | 2026年度Q2実績 | 前年比 |
---|---|---|
売上高 | 144億ドル | +7% |
既存店売上 | — | +4% |
EPS | 1.10ドル | +15% |
税前利益率 | — | 11.4-11.5%台 |
2026年度Q2は、売上144億ドル(前年比7%増)、既存店売上4%増、EPS 1.10ドル(15%増)と好調な業績を報告しました。2026年度上半期では、売上275億ドル(6%増)、EPS 2.02ドル(7%増)を達成しました。
2025年度通年では、売上564億ドル(6%増)、EPS 4.26ドル(13%増)、税前利益率11.5%(60bps改善)を達成しました。
2026年度は、売上581-586億ドル(3-4%増)、EPS 4.34-4.43ドルを見込んでいます。
(出典: TJX Investor Relations - Q2 FY26 Results, 2025年8月発表)
(2) 配当履歴
TJXの配当に関する情報は以下の通りです(2024年末時点):
- 配当利回り: 約1-2%程度
- 連続増配: 28年連続増配の実績があります。
- 配当増額: 2026年度は配当を13%増額しました。成長投資と配当のバランスを重視した政策です。
- 自社株買い: 2026年度は20-25億ドルの自社株買いを計画しており、株主還元を強化しています。
配当利回りは約1-2%程度で、成長株寄りの配当政策です。ただし、28年連続増配の実績があり、安定した配当成長が期待できます。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はTJX公式IRページをご確認ください。
(3) 財務健全性
TJXの財務健全性は以下の通りです:
- 税前利益率: 11.4-11.5%台で推移しており、業界トップクラスの収益性を維持しています。
- EPS成長率: 今後3年間のEPS成長率見込み9.7%で、市場平均10%と同水準です。
- PER(株価収益率): 28.4倍で、米国企業の約半数(17倍未満)と比べて大幅に高いです。高バリュエーションが将来成長に見合わないリスクがあります。
財務基盤は安定しており、成長投資(店舗拡大、国際展開)と株主還元(配当、自社株買い)を両立できる体制を維持しています。
(出典: TJX Companies 10-K Annual Report 2025, SEC EDGAR)
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5. リスク要因
(1) 事業リスク
TJXの主な事業リスクは以下の通りです:
販管費増加圧力
2026年度Q1は販管費率が20%に上昇見込みで、主に店舗人件費増が要因です。米国では最低賃金の引き上げが進んでおり、労働コストが上昇すると利益率が低下する可能性があります。高いバリュエーション
PER 28.4倍は米国企業の約半数(17倍未満)と比べて大幅に高く、今後3年間のEPS成長率見込み9.7%は市場平均10%と同水準です。高PERが将来成長に見合わないリスクがあります。Burlington、Rossと比較しても、プレミアムバリュエーションが持続不可能な可能性があります。在庫リスクと利益率圧縮
マクロ経済悪化時には、在庫が増加し、利益率が圧縮されるリスクがあります。オフプライス小売モデルは在庫処分品を扱うため、景気後退期には仕入先の在庫が増加し、仕入価格が低下する一方で、消費者の購買力が減少すると売上が減少する可能性があります。
(2) 市場環境リスク
TJXは、以下の市場環境リスクにさらされています:
関税リスク
関税政策の変更で仕入コストが急変するリスクがあります。輸入品の比率が高いため、関税負担が増加すると利益率が低下する可能性があります。為替逆風
国際展開を進めているため、為替レートの変動が業績に影響を及ぼします。2026年度は為替逆風により税前利益率を約0.2ポイント、EPSを約3%押し下げる見込みです。日本人投資家にとっては、ドル円レートの変動が投資リターンに大きく影響します。円高が進むと、ドル建て株価が上昇しても円換算での利益が減少する可能性があります。景気サイクルの影響
小売業は景気変動・消費者心理の影響を受けやすく、景気後退時には裁量支出が減少します。ただし、オフプライス小売モデルは景気後退期でも強い傾向があり、消費者の節約志向が追い風となります。
(3) 規制・競争リスク
TJXは、以下の規制・競争リスクに直面しています:
競争の激化
Ross Stores、Burlington Stores、Nordstrom Rackなどの競合他社が、オフプライス小売市場での競争を激化させています。また、Amazon、eBayなどのEコマース企業も中古品やアウトレット品を扱うようになり、競争環境が厳しくなっています。労働規制の強化
米国では最低賃金の引き上げや労働規制の強化が進んでおり、労働コストが上昇すると利益率が低下する可能性があります。環境規制の強化
環境規制が強化されると、サステナビリティへの投資が必要となり、コストが増加する可能性があります。TJXはサステナビリティ戦略を推進していますが、規制コストの増加が懸念されます。
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6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
TJXの強みは以下の3点です:
世界最大のオフプライス小売チェーンとしての地位
21,000超のベンダーネットワークと毎週10,000点の新商品投入により、「宝探し」型ショッピング体験を提供しています。9カ国で5,085店舗を運営し、長期的に7,000店舗への拡大余地があります。28年連続増配の実績と安定した株主還元
28年連続増配の実績があり、2026年度は配当を13%増額しました。20-25億ドルの自社株買いを計画しており、成長投資と株主還元のバランスを重視しています。景気後退期でも強いビジネスモデル
不況期には、消費者が節約志向になり、オフプライス小売の需要が高まります。高品質ブランド商品を安く買いたいというニーズに応え、景気後退期でも売上を維持しやすい特性があります。
(2) リスク要因(再掲)
TJXのリスク要因は以下の2点です:
販管費増加圧力と高いバリュエーション
2026年度Q1は販管費率が20%に上昇見込みで、主に店舗人件費増が要因です。PER 28.4倍は米国企業の約半数(17倍未満)と比べて大幅に高く、高PERが将来成長に見合わないリスクがあります。関税リスクと為替逆風
関税政策の変更で仕入コストが急変するリスクがあり、為替逆風により税前利益率を約0.2ポイント、EPSを約3%押し下げる見込みです。
(3) 向いている投資家
TJXは、以下のような投資家に向いています:
オフプライス小売モデルの安定性と7,000店舗への拡大余地を信じる投資家
世界最大のオフプライス小売チェーンとして、21,000超のベンダーネットワークと毎週10,000点の新商品投入により、「宝探し」型ショッピング体験を提供しています。長期的に7,000店舗への拡大余地があり、中長期的な成長が期待されます。高バリュエーション(PER 28.4倍)を許容できる投資家
PER 28.4倍は高めですが、28年連続増配の実績と景気後退期でも強いビジネスモデルを評価できる投資家に向いています。アナリストの平均目標株価は152.82ドルで、コンセンサス評価は「Strong Buy」です。景気サイクルの変動を許容できる投資家
小売業は景気変動・消費者心理の影響を受けやすいため、短期的な業績変動を許容できる投資家に向いています。ただし、オフプライス小売モデルは景気後退期でも強い傾向があります。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身の責任で行ってください。最新の財務データや市場動向は、TJX公式IRページや証券会社の情報をご確認ください。
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Q: TJXの配当利回りは?
A: 約1-2%程度です(2024年末時点)。28年連続増配の実績があり、2026年度は配当を13%増額しました。配当利回りは低めですが、28年連続増配の実績と安定した配当成長が魅力です。成長投資(店舗拡大、国際展開)と配当のバランスを重視した政策を採用しており、20-25億ドルの自社株買いも計画しています。
Q: TJXの主な競合は?
A: 主な競合は、Ross Stores(ロス・ストアーズ)、Burlington Stores(バーリントン・ストアーズ)、Nordstrom Rack(ノードストローム・ラック)などです。これらの企業とオフプライス小売市場で競合していますが、TJXは21,000超のベンダーネットワークと毎週10,000点の新商品投入による「宝探し」体験で差別化しています。世界最大のオフプライス小売チェーンとして、店舗数とベンダーネットワークで圧倒的な優位性を持ちます。
Q: TJXのリスク要因は?
A: 主なリスク要因は、販管費増加圧力(店舗人件費増)、高いバリュエーション(PER 28.4倍)、関税リスク、為替逆風です。2026年度Q1は販管費率が20%に上昇見込みで、主に店舗人件費増が要因です。PER 28.4倍は米国企業の約半数(17倍未満)と比べて大幅に高く、高PERが将来成長に見合わないリスクがあります。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。
Q: TJXは長期投資に向いている?
A: オフプライス小売モデルの安定性と7,000店舗への拡大余地を信じ、高バリュエーション(PER 28.4倍)を許容できる投資家に向いています。28年連続増配の実績と景気後退期でも強いビジネスモデルが特徴です。世界最大のオフプライス小売チェーンとして、21,000超のベンダーネットワークと毎週10,000点の新商品投入により、「宝探し」型ショッピング体験を提供しています。ただし、高バリュエーションと販管費増加圧力を許容できることが前提です。投資判断はご自身で行ってください。