0. この記事でわかること
本記事では、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 固定無線アクセス拡大、Frontier Communications買収(200億ドル)による光ファイバー強化、Verizon AI ConnectによるAI戦略展開により成長を目指しています
- 事業内容と成長戦略: 米国内シェアNo.1(約37%)の通信大手で、5G Ultra-Wideband展開と光ファイバー拡張に注力しています
- 競合との差別化: 5G技術への業界トップクラスの投資、ミリ波5Gに注力し、T-Mobile、AT&T等の競合と差別化を図っています
- 財務・配当の実績: 配当利回り約6.5%と高水準で、18年連続増配の実績があります
- リスク要因: Frontier買収による高額負債増加、激しい競争環境による顧客流出、成長目標の弱さなどが懸念材料です
1. なぜベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
ベライゾンは2025年以降、以下3つの成長戦略を推進しています:
固定無線アクセス(Fixed Wireless Access)の拡大 2028年までに固定無線アクセス加入者を2倍の800万超に拡大し、最大9000万世帯をカバーする計画です。既存インフラを活用することで光ファイバー展開コストを抑制しながら、急速にブロードバンド市場を拡大しています。光ファイバー不要の家庭向けブロードバンドサービスであり、設備投資効率が高い点が特徴です。
Frontier Communications買収による光ファイバー強化 2024年9月にFrontier Communications買収(200億ドル)を発表し、220万の光ファイバー加入者を獲得しました。2026年までに光ファイバー世帯カバー数を4000万に拡大する計画であり、通信インフラを大幅強化しています。
Verizon AI Connectによるエンタープライズ向けAI展開 ハイパースケーラー、クラウドプロバイダー、グローバル企業向けにAI関連製品・ソリューションを提供しています。5G Ultra-Widebandと光ファイバーの拡大に合わせてプライベートネットワークをスケール展開し、エンタープライズ市場での競争優位性を確立しています。
(2) 注目テーマ(5G Ultra-Wideband・AI戦略・光ファイバー拡張)
投資家が注目するテーマは以下3つです:
- 5G Ultra-Wideband展開: C-band展開が80-90%完了し、2025年末までに計画サイトの80-90%をカバー予定です。ミリ波5Gに業界トップクラスの投資を行っており、競合他社との差別化を図っています
- AI戦略(Verizon AI Connect): ハイパースケーラー、クラウドプロバイダー、グローバル企業向けにAIリソース管理を提供し、エンタープライズ市場での収益拡大を目指しています
- 光ファイバー拡張とブロードバンド市場の急成長: 2024年に250万の後払いモビリティ・ブロードバンド加入者を追加し、固定無線アクセスと光ファイバーの両輪でブロードバンド市場を拡大しています
(3) 投資家の関心・懸念点
ベライゾンは2025年に調整後EBITDA成長率2.5-3.5%、ワイヤレスサービス収益成長率2.0-2.8%を見込み、アナリストの平均目標株価は46.49ドル(現在価格から13.28%上昇)とされています。10名のアナリストがコンセンサス評価「買い」を示しており、5G・光ファイバー・AI技術への戦略的投資により、今後3年間で利益と収益がそれぞれ年率5.8%と2%成長し、ROEは16.5%に達すると予測されています。
一方、Frontier買収により既に高水準の純負債がさらに増加し、2027年までEPS増加効果がない点が懸念材料です。Q1に後払い無線電話顧客28.9万件の純減、解約率が過去10年で最高の0.95%/月(前年0.89%)を記録しており、激しい競争環境と顧客流出が投資家の不安要因となっています。
2. ベライゾン・コミュニケーションズの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業
ベライゾンは以下3つの事業を主力としています:
ワイヤレス通信サービス 米国内シェアNo.1(約37%)で加入者数1億4600万件を持ち、5G Ultra-Widebandネットワーク投資で差別化を図っています。2025年Q2ワイヤレスサービス収益は209億ドル(前年比2.2%増)を達成しました。
ブロードバンドサービス(固定無線アクセス・光ファイバー) 固定無線アクセスを2028年までに2倍の800万超加入者に拡大し、最大9000万世帯をカバーする計画です。Frontier買収により220万の光ファイバー加入者を獲得し、2026年までに光ファイバー世帯カバー数を4000万に拡大します。
エンタープライズ向けソリューション(Verizon AI Connect) ハイパースケーラー、クラウドプロバイダー、グローバル企業向けにAI関連製品・ソリューションを提供し、プライベートネットワークをスケール展開しています。
(2) セクター・業種の説明
ベライゾンはCommunication Servicesセクター、Diversified Telecommunication Services業種に属します。通信業界は以下の特徴があります:
- 高額設備投資: 5G・光ファイバー展開には多額の設備投資が必要であり、EBITDA(利払い・税金・減価償却前利益)が重要指標となります
- 規制リスク: スペクトラムライセンスや価格規制が事業に影響を与える可能性があります
- 競争環境: 米国通信市場は寡占市場(ベライゾン、T-Mobile、AT&Tの3強)であり、価格競争と顧客獲得競争が激しい状況です
(3) ビジネスモデルの特徴
ベライゾンのビジネスモデルは以下の特徴があります:
インフラ投資による差別化戦略 5G Ultra-Wideband(C-band周波数帯)とミリ波5Gに業界トップクラスの投資を行い、競合他社との差別化を図っています。AT&Tと対照的に通信事業への集中投資を優先しており、メディア事業への分散投資を避けています。
市場浸透による収益拡大 市場シェア拡大による収益増を狙う集中成長戦略を採用しており、固定無線アクセスと光ファイバーの両輪でブロードバンド市場を拡大しています。
安定したキャッシュフローと高配当 2025年Q2フリーキャッシュフローは52億ドルを達成し、配当性向50%を目標として18年連続増配の実績があります。安定したキャッシュフローにより高配当を継続しています。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業
米国通信市場における主要競合は以下2社です:
T-Mobile US(TMUS) 5G分野での強力な進出により、ベライゾンの市場シェアを奪う懸念があります。T-MobileはSprint買収により全国的な5Gカバレッジを強化しており、価格競争力が高い点が特徴です。
AT&T(T) ベライゾンと並ぶ米国通信大手であり、5G・光ファイバー展開で競合しています。AT&Tはメディア事業への投資を縮小し、通信事業への集中投資に転換しています。
(2) 競合優位性
ベライゾンの競合優位性は以下3つです:
5G Ultra-Widebandネットワーク投資 C-band展開が80-90%完了し、2025年末までに計画サイトの80-90%をカバー予定です。ミリ波5Gに業界トップクラスの投資を行っており、超高速5Gネットワーク技術で差別化を図っています。
固定無線アクセスの急速な拡大 既存インフラを活用することで光ファイバー展開コストを抑制しながら、急速にブロードバンド市場を拡大しています。2028年までに800万超加入者を目指し、最大9000万世帯をカバーする計画です。
Frontier買収による光ファイバー強化 220万の光ファイバー加入者を獲得し、2026年までに光ファイバー世帯カバー数を4000万に拡大します。通信インフラを大幅強化することで、T-MobileやAT&Tとの競争で優位性を確立しています。
(3) 市場でのポジショニング
ベライゾンは米国内シェアNo.1(約37%)で加入者数1億4600万件を持ち、2024年売上高1348億ドルの世界第2位の通信会社です。5G展開に積極的で、安定した収益基盤を持つ高配当企業として長期投資家に人気があります。
アナリストの評価は「買い」であり、5G・光ファイバー・AI技術への戦略的投資により、今後3年間で利益と収益がそれぞれ年率5.8%と2%成長し、ROEは16.5%に達すると予測されています。ただし、成長見通しは全体として緩やかであり、Frontier買収による高額負債増加が懸念材料となっています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移
以下は2025年Q2の四半期業績です(2025年10月時点):
項目 | 2025年Q2 | 前年同期比 |
---|---|---|
ワイヤレスサービス収益 | 209億ドル | +2.2% |
調整後EBITDA | 128億ドル | +4.1% |
フリーキャッシュフロー | 52億ドル | - |
2025年Q2ではワイヤレスサービス収益209億ドル(前年比2.2%増)、調整後EBITDA 128億ドル(4.1%成長)、フリーキャッシュフロー52億ドルを達成しました。
2025年通期ガイダンス:
- 調整後EBITDA成長率: 2.5-3.5%
- ワイヤレスサービス収益成長率: 2.0-2.8%
将来見通し: 今後3年間で利益と収益がそれぞれ年率5.8%と2%成長し、ROEは16.5%に達すると予測されています。ただし、Frontier買収により2027年までEPS増加効果がなく、成長目標は弱い(EPS増加ガイダンス1-3%)点が懸念材料です。
(出典: Verizon Communications Inc Q2 2025 Earnings Release, SEC EDGAR)
(2) 配当履歴
ベライゾンの配当利回りは約6.5%(2025年時点)と高水準です。配当性向は50%を目標としており、18年連続増配の実績があります。高配当株として長期投資家に人気があります。
配当実績:
- 配当利回り: 約6.5%(2025年時点)
- 配当性向: 50%目標
- 連続増配年数: 18年
日本人投資家向け注意点: 米国株配当は米国で10%源泉徴収されます。NISA口座でも米国10%源泉徴収は免除されないため、配当利回りは実質的に約5.85%(10%源泉徴収後)となります。特定口座(源泉徴収あり)の場合、米国10%源泉徴収後、日本で20.315%課税されるため、外国税額控除の活用を検討してください。
(3) 財務健全性
高額負債の増加懸念 Frontier買収(200億ドル)により既に高水準の純負債がさらに増加し、2027年までEPS増加効果がありません。負債返済により戦略的柔軟性と株主還元が制限される可能性があります。
フリーキャッシュフロー 2025年Q2フリーキャッシュフローは52億ドルを達成し、配当支払能力を測る重要指標として安定したキャッシュフローを維持しています。
EBITDA 2025年Q2調整後EBITDAは128億ドル(4.1%成長)を達成し、通信業界では設備投資が大きいため重要指標として注目されています。
5. リスク要因
(1) 事業リスク
高額負債の増加懸念 Frontier買収(200億ドル)により既に高水準の純負債がさらに増加し、2027年までEPS増加効果がありません。負債返済により戦略的柔軟性と株主還元が制限される可能性があります。成長目標が弱く、EPS増加ガイダンスはわずか1-3%となっています。
激しい競争環境と顧客流出 携帯電話市場は人口動向の停滞とデバイス交換サイクルの長期化(40カ月超)により、競争とプロモーション強度が高まっています。Q1に後払い無線電話顧客28.9万件の純減、解約率が過去10年で最高の0.95%/月(前年0.89%)を記録しており、顧客流出が懸念材料です。
T-Mobileの5G分野での強力な進出 T-MobileはSprint買収により全国的な5Gカバレッジを強化しており、ベライゾンの市場シェアを奪う懸念があります。価格競争力が高く、ベライゾンの競争優位性が揺らぐ可能性があります。
(2) 市場環境リスク
為替リスク ベライゾンは主に米国内で事業を展開しているため、為替リスクは限定的です。ただし、配当受取額は円換算で為替影響を受けるため、長期投資では為替リスクを考慮してください。特に米ドル安円高局面では円ベースでの受取配当額が減少します。
デバイス交換サイクルの長期化 デバイス交換サイクルが40カ月超に長期化しており、携帯電話市場の成長が鈍化しています。人口動向の停滞と合わせて、ワイヤレス通信サービスの成長が制約される可能性があります。
(3) 規制・競争リスク
規制変更リスク スペクトラムライセンスや価格規制が事業に影響を与える可能性があります。通信業界の規制変更により、収益性が低下するリスクがあります。
競合他社(T-Mobile、AT&T)の動向 T-MobileとAT&Tの動向により市場シェアが変動する可能性があります。価格競争と顧客獲得競争が激化しており、ベライゾンの競争優位性が揺らぐリスクがあります。
光ファイバー展開の遅延 Frontier買収により光ファイバー世帯カバー数を2026年までに4000万に拡大する計画ですが、展開の遅延により競合他社に先行される可能性があります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
5G Ultra-Widebandネットワーク投資 C-band展開が80-90%完了し、2025年末までに計画サイトの80-90%をカバー予定です。ミリ波5Gに業界トップクラスの投資を行っており、超高速5Gネットワーク技術で差別化を図っています。
固定無線アクセスの急速な拡大 2028年までに固定無線アクセス加入者を2倍の800万超に拡大し、最大9000万世帯をカバーする計画です。既存インフラを活用することで光ファイバー展開コストを抑制しながら、急速にブロードバンド市場を拡大しています。
安定した高配当 配当利回り約6.5%(2025年時点)と高水準で、配当性向50%を目標として18年連続増配の実績があります。安定したキャッシュフローにより高配当を継続しており、長期投資家に人気があります。
(2) リスク要因(再掲)
高額負債の増加懸念 Frontier買収(200億ドル)により既に高水準の純負債がさらに増加し、2027年までEPS増加効果がありません。負債返済により戦略的柔軟性と株主還元が制限される可能性があります。
激しい競争環境と顧客流出 Q1に後払い無線電話顧客28.9万件の純減、解約率が過去10年で最高の0.95%/月(前年0.89%)を記録しており、顧客流出が懸念材料です。
(3) 向いている投資家のタイプ
高配当重視の長期投資家 配当利回り約6.5%(米国10%源泉徴収前)と安定したキャッシュフローを持ち、18年連続増配の実績があります。高配当株として長期投資家に向いています。
インフラ投資を評価する投資家 5G Ultra-Wideband、固定無線アクセス、Frontier買収による光ファイバー強化など、通信インフラへの大規模投資を評価する投資家に向いています。
成長性よりも安定性を重視する投資家 成長見通しは全体として緩やか(利益年率5.8%、売上年率2%)ですが、安定した収益基盤を持つ高配当企業として、成長性よりも安定性を重視する投資家に向いています。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新情報はベライゾン公式IRページおよびSEC EDGARをご確認ください。
Q: ベライゾン・コミュニケーションズの配当利回りは?
A: 配当利回りは約6.5%(2025年時点)と高水準です。配当性向は50%を目標としており、18年連続増配の実績があります。高配当株として長期投資家に人気があります。ただし、米国株配当は米国で10%源泉徴収されるため、実質的な配当利回りは約5.85%となります。NISA口座でも米国10%源泉徴収は免除されないため、特定口座の場合は外国税額控除の活用を検討してください。
Q: ベライゾン・コミュニケーションズの主な競合は?
A: 米国通信市場における主要競合はT-Mobile US(TMUS)とAT&T(T)です。ベライゾンは米国内シェアNo.1(約37%)で加入者数1億4600万件を持ち、5G Ultra-Widebandネットワーク投資で差別化を図っています。T-MobileはSprint買収により全国的な5Gカバレッジを強化しており、価格競争力が高い点が特徴です。AT&Tはメディア事業への投資を縮小し、通信事業への集中投資に転換しています。競合優位性は、C-band展開80-90%完了、固定無線アクセス拡大(2028年までに800万超加入者)、Frontier買収による光ファイバー強化(2026年までに4000万世帯カバー)の3つです。
Q: ベライゾン・コミュニケーションズのリスク要因は?
A: Frontier買収(200億ドル)による高額負債増加、激しい競争環境(Q1に後払い無線電話顧客28.9万件純減、解約率0.95%/月と過去10年最高)、T-Mobileの5G分野での強力な進出、成長目標が弱い(EPS増加ガイダンス1-3%)点が主なリスクです。負債返済により戦略的柔軟性と株主還元が制限される可能性があり、2027年までEPS増加効果がありません。また、デバイス交換サイクルの長期化(40カ月超)により携帯電話市場の成長が鈍化しています。詳細はリスク要因セクションを参照してください。
Q: ベライゾン・コミュニケーションズは長期投資に向いている?
A: 固定無線アクセスの拡大(2028年までに800万超加入者)、Frontier買収による光ファイバー強化(2026年までに4000万世帯カバー)、Verizon AI Connectによるエンタープライズ向けAI展開が成長を牽引します。配当利回り約6.5%と安定性を重視する長期投資家に向いていますが、成長性は緩やか(利益年率5.8%、売上年率2%)です。Frontier買収による高額負債増加や顧客流出などのリスクには注意が必要です。投資判断はご自身でご確認ください。