S&P500

アクセンチュア (ACN)

Accenture plc

0. この記事でわかること

本記事では、アクセンチュア(ACN)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: 生成AI事業が前年比3倍増(27億ドル)、成長モデルをReinvention Servicesに刷新し、AI時代のコンサルティング企業へ変革中です
  • 事業内容と成長戦略: 戦略コンサルティングからシステム構築・アウトソーシングまで一貫提供し、Fortune 500企業を中心に約75万人の社員が120カ国以上でサービスを展開しています
  • 競合との差別化: IBM、Deloitte、Capgeminiなどとは異なり、戦略から実装・運用まで一貫して提供する点で差別化しています
  • 財務・配当の実績: 2025年度第3四半期の売上177億ドル(前年比8%増)、営業利益率16.8%、配当を15%増の$1.48に引き上げました
  • リスク要因: 米国政府の歳出削減による受注減(政府向け事業が全売上の8%)、コンサルティング需要の減速、人材コスト上昇に注意が必要です

元Anderson Consulting(アンダーセン・コンサルティング)から独立した世界最大級のITコンサルティング・アウトソーシング企業です。日本法人(アクセンチュア株式会社)も大手ですが、米国本社の株を買うことでグローバル事業の成長を享受できます。

1. なぜアクセンチュア(ACN)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

アクセンチュアは以下の3つの成長戦略で投資家の注目を集めています。

Reinvention Servicesへの統合
2025年9月に全サービスをReinvention Servicesという単一統合ビジネスユニットに再編しました。生成AIの力を迅速に展開する成長モデルに刷新し、AI時代のコンサルティング企業へ変革しています(出典: Accenture Newsroom)。

生成AI事業の急拡大
2025年度に生成AI売上27億ドル(3倍増)、生成AI受注59億ドル(約2倍)を達成しました。2024年度には生成AI受注30億ドル、売上9億ドルを記録しており、生成AIが主要な成長ドライバーとなっています(出典: Accenture Newsroom, Simply Wall St)。

戦略的M&Aによる事業拡大
各買収で新たな技術・人材を獲得し、デジタル変革・AI・クラウド・アナリティクスを統合したエンドツーエンドのビジネス変革を提供しています。戦略コンサルティングだけでなく、技術駆動の実行力で差別化しています(出典: Accenture Strategy Services)。

(2) 注目テーマ(生成AI・デジタル変革・自律型AIシステム)

投資家が注目する3つのテーマは以下の通りです。

生成AI(Gen AI)
アクセンチュアは企業独自の認知型デジタルブレインを構築し、自律性により経営意図に即したアクションを実現する「自律型AIシステム」を推進しています(出典: アクセンチュア テクノロジービジョン2025)。2025年第3四半期には生成AI受注が15億ドルに達しました。

デジタル変革
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)、クラウド移行、サイバーセキュリティ強化など、IT投資需要は長期的に拡大傾向にあります。約75万人の社員が120カ国以上の顧客にサービスを提供するグローバル規模で、戦略からIT、広告まで幅広い領域に展開しています。

エンドツーエンドのビジネス変革
従来の戦略コンサルティングとは異なり、AI、クラウド、アナリティクスなどの先端技術を戦略的意思決定に統合し、戦略から実装・運用まで一貫して提供する点が強みです(出典: Accenture Strategy Services)。

(3) 投資家の関心・懸念点

関心点

  • アナリストの合意評価は「買い」で、平均目標株価は$302.24、約24%の上昇余地があるとされています(出典: Simply Wall St)。
  • 2025年度に7%の売上成長で50億ドル増収、受注高800億ドル超を達成しました(出典: Accenture Newsroom)。
  • 2025年第3四半期に四半期配当を15%増の$1.48に引き上げ、株主還元を強化しています(出典: Yahoo Finance)。

懸念点

  • 過去1年で株価が33.08%下落し、52週安値の$236.63を記録しました(出典: Simply Wall St)。
  • 米国連邦政府の歳出削結により、米国売上の15%・全世界売上の8%を占める政府向け事業が2026年以降打撃を受ける懸念があります(出典: Simply Wall St, Bloomberg)。
  • 2025年6月-11月に事業最適化プログラムを実施し、退職金等で8.65億ドル(約1300億円)を計上しました(出典: Bloomberg)。
  • Rothschild Redburnが買いから中立に格下げし、「AI関連利益を他分野の成長鈍化が相殺する」と懸念を示しました(出典: Bloomberg)。

2. アクセンチュアの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業

アクセンチュアは以下の主力事業を展開しています。

戦略コンサルティング(Strategy Consulting)
企業・デジタル変革、ビジネス戦略、M&A、サステナビリティの専門知識を提供します。従来の戦略コンサルティングとは異なり、技術駆動の実行でエンドツーエンドのビジネス変革を実現します(出典: Accenture Strategy Services)。

システム構築・テクノロジー
クラウド移行、システム統合、サイバーセキュリティ、データアナリティクスなど、最新技術を活用したシステム構築を提供します。2025年9月からはReinvention Servicesという単一ユニットに統合され、生成AIの力を迅速に展開しています。

アウトソーシング・マネージドサービス
企業の業務プロセスを包括的に支援するアウトソーシングサービスを提供します。ただし、機関投資家からはアウトソーシング需要低下の懸念が示されています(出典: Simply Wall St)。

デジタルマーケティング(インタラクティブ)
広告・マーケティング領域でも事業を展開しており、デジタルエクスペリエンスの設計・実装を支援します。ストラテジー&コンサルティング、インタラクティブ、テクノロジー、オペレーションズの4サービスで事業を展開しています(出典: アクセンチュア日本法人ニュースリリース)。

(2) セクター・業種の説明

アクセンチュアはInformation Technology(情報技術)セクターIT Services(ITサービス)業種に属します。

ITサービス業種は、企業のIT戦略立案、システム構築、運用保守など、IT関連の包括的なサービスを提供します。景気敏感ではありますが、IT投資需要は長期的に拡大傾向にあります。

アイルランドに登記されており、税務上のメリットを享受しています。ただし、米国証券取引委員会(SEC)の規制対象であり、米国企業と同様の情報開示が求められます。

(3) ビジネスモデルの特徴

Fortune 500企業が中心クライアント
グローバル大企業向けのコンサルティングが中心で、高い参入障壁を持ちます。約75万人の社員が120カ国以上でサービスを提供するグローバル規模が強みです(出典: アクセンチュア テクノロジービジョン2025)。

戦略から実装・運用まで一貫提供
戦略立案だけでなく、システム構築、運用保守まで一貫して提供する点が、従来の戦略コンサルティングファーム(McKinsey、BCGなど)との差別化ポイントです。

北米・欧州・成長市場の3地域体制
北米、欧州、成長市場(日本含むアジア太平洋)の3地域で事業管理を行っています(出典: アクセンチュア日本法人ニュースリリース)。

積極的なM&Aで技術・人材を獲得
デジタル変革・AI・クラウド・アナリティクスを統合したエンドツーエンドのビジネス変革を提供するため、戦略的M&Aで新技術・人材を獲得しています(出典: Accenture Strategy Services)。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業

ITサービス業界の主要競合企業は以下の通りです。

  • IBM: 世界最大級のIT企業、クラウド・AI・コンサルティングを展開
  • Deloitte(デロイト): Big 4会計事務所の一角、コンサルティング・監査を提供
  • Capgemini(キャップジェミニ): 欧州大手のITコンサルティング企業
  • Cognizant(コグニザント): ITアウトソーシング・デジタル変革に強み

(2) 競合優位性

アクセンチュアの競合優位性は以下の点にあります。

戦略から実装・運用まで一貫提供
McKinsey、BCGなどの戦略コンサルティングファームは戦略立案に特化しますが、アクセンチュアは実装・運用まで一貫して提供します。IBM、Deloitteとは異なり、戦略コンサルティングと技術駆動の実行力を両立しています(出典: Accenture Strategy Services)。

生成AI事業での先行
2025年度に生成AI売上27億ドル(3倍増)、生成AI受注59億ドル(約2倍)を達成し、生成AI事業で業界をリードしています(出典: Accenture Newsroom)。

グローバル規模と専門性
約75万人の社員が120カ国以上でサービスを提供するグローバル規模を持ちながら、各分野の専門家が深い専門知識を共有しています(出典: アクセンチュア テクノロジービジョン2025)。

(3) 市場でのポジショニング

アクセンチュアは、世界最大級のITコンサルティング・アウトソーシング企業としてポジショニングされています。

Fortune 500企業を中心に、高い参入障壁を持つ市場で事業を展開しています。元Anderson Consulting(アンダーセン・コンサルティング)から独立した歴史を持ち、戦略コンサルティングと技術駆動の実行力を両立する点で独自のポジションを確立しています。

2025年9月からReinvention Servicesという単一ユニットに統合され、AI時代のコンサルティング企業へ変革しています。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移

2025年度第3四半期の業績ハイライトは以下の通りです(出典: Yahoo Finance - ACN Q4 2025 Earnings)。

  • 売上: 177億ドル(前年比8%増)
  • 希薄化EPS: $3.49(15%増)
  • 営業利益率: 16.8%(80ベーシスポイント増)
  • フリーキャッシュフロー: 35億ドル
  • 生成AI受注: 15億ドル

2025年度通年の実績

項目 金額 前年比
売上成長 +50億ドル +7%
受注高 800億ドル超 -
生成AI売上 27億ドル 3倍増
生成AI受注 59億ドル 約2倍

2026年度ガイダンス(出典: Simply Wall St)

  • 売上成長: ローカル通貨ベースで2-5%
  • EPS成長: 5-8%($13.52-$13.90)
  • 年間利益成長率: 8.8%予想(米国市場平均15.5%を下回る)
  • 売上成長率: 5.3%予想(市場平均10%を下回る)

(2) 配当履歴

アクセンチュアは配当貴族ではありませんが、連続増配を継続しています。

2025年第3四半期に四半期配当を15%増の$1.48に引き上げました(出典: Yahoo Finance)。年間配当は約$5.92となり、株主還元を強化しています。

配当利回りは控えめですが、生成AI事業の成長により株価上昇(キャピタルゲイン)が期待できます。配当よりも成長性を重視する投資家に向いている銘柄と言えるでしょう。

(3) 財務健全性

主要財務指標(2025年度第3四半期)

  • 営業利益率: 16.8%(業界内で高水準)
  • フリーキャッシュフロー: 35億ドル
  • EPS: $3.49(前年比15%増)

営業利益率16.8%は業界内で高水準であり、収益性の高さを示しています。フリーキャッシュフロー35億ドルは配当支払いや自社株買いの原資となり、財務健全性が高いことを示しています。

ただし、2025年6月-11月に事業最適化プログラムを実施し、退職金等で8.65億ドル(約1300億円)を計上しました(出典: Bloomberg)。人員削減により収益性改善を図る一方で、一時的な費用負担が発生しています。

※2025年10月時点のデータです。最新情報はAccenture公式IRページをご確認ください。
(出典: Accenture 10-K 2025, SEC EDGAR)

5. リスク要因

(1) 事業リスク

米国政府の歳出削減による受注減
米国連邦政府向け事業が米国売上の約15%、全世界売上の約8%を占めており、2026年以降の影響が懸念されています(出典: Simply Wall St)。2025年3月にトランプ政権の歳出削減で政府調達が減少し、株価が一時11%急落しました(出典: Bloomberg)。

コンサルティング需要の減速
機関投資家が成長鈍化とアウトソーシング需要低下を懸念して持ち株を売却しています(出典: Simply Wall St)。Rothschild Redburnが買いから中立に格下げし、「AI関連利益を他分野の成長鈍化が相殺する」と懸念を示しました(出典: Bloomberg)。

人材コスト上昇
約75万人の社員を抱えるため、人材コストが収益性に大きな影響を与えます。2025年6月-11月に事業最適化プログラムを実施し、退職金等で8.65億ドル(約1300億円)を計上しました(出典: Bloomberg)。

(2) 市場環境リスク

景気敏感性
景気後退により企業のIT投資が減少すると、売上が減少する可能性があります。アナリストは年間利益成長率8.8%予想で米国市場平均15.5%を下回ると見ています(出典: Simply Wall St)。

為替リスク(USD/JPY)
日本人投資家にとって、為替レートの変動は重要なリスク要因です。円高が進むとドル建ての株価が上昇しても円換算では損失が出る可能性があります。為替手数料も証券会社により異なるため(SBI証券:片道25銭等)、取引コストも考慮する必要があります。

新規受注の減少
2026年度ガイダンスでは新規受注の6%減少が見込まれています。受注高が減少すると将来の売上に影響を与える可能性があります。

(3) 規制・競争リスク

規制変更リスク
アイルランド登記企業ですが、米国SECの規制対象です。将来的に米国やアイルランドの税制・規制が変更されると、収益性に影響を受ける可能性があります。

競争激化リスク
IBM、Deloitte、Capgemini、Cognizantなどの大手競合との競争が激化すると、料金低下や市場シェアの縮小につながる可能性があります。特にAI・クラウド分野では新興企業の参入も増えています。

株価下落
過去1年で株価が33.08%下落し、52週安値の$236.63を記録しました(出典: Simply Wall St)。市場が成長鈍化と政府向け事業の減少を懸念しているためです。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み

アクセンチュアの主な強みは以下の3点です。

生成AI事業での先行
2025年度に生成AI売上27億ドル(3倍増)、生成AI受注59億ドル(約2倍)を達成し、生成AI事業で業界をリードしています。Reinvention Servicesへの統合によりAI時代のコンサルティング企業へ変革しています。

戦略から実装・運用まで一貫提供
従来の戦略コンサルティングファーム(McKinsey、BCGなど)とは異なり、戦略立案から実装・運用まで一貫して提供する点で差別化しています。技術駆動の実行力が強みです。

グローバル規模と高い参入障壁
約75万人の社員が120カ国以上でサービスを提供するグローバル規模を持ち、Fortune 500企業を中心に高い参入障壁を持つ市場で事業を展開しています。

(2) リスク要因(再掲)

主なリスク要因は以下の2点です。

米国政府の歳出削減による受注減
米国連邦政府向け事業が全世界売上の約8%を占めており、2026年以降の影響が懸念されています。2025年3月に株価が一時11%急落しました。

コンサルティング需要の減速
機関投資家が成長鈍化とアウトソーシング需要低下を懸念して持ち株を売却しています。過去1年で株価が33.08%下落しました。

(3) 向いている投資家

以下のような投資家に向いている銘柄と考えられます。

生成AI・デジタル変革の成長に期待する投資家
生成AI事業(2025年度売上27億ドル、3倍増)とデジタル変革需要が成長ドライバーです。AI時代のコンサルティング企業への変革に期待する投資家に適しています。

長期的なキャピタルゲインを重視する投資家
配当利回りは控えめですが、アナリストの目標株価は平均$302.24で約24%の上昇余地があるとされています。株価上昇を期待する投資家に向いています。

グローバル企業に投資したい投資家
日本法人(アクセンチュア株式会社)だけでなく、米国本社の株を買うことで120カ国以上のグローバル事業の成長を享受できます。世界規模の成長に投資したい投資家に適しています。

免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。財務データは2025年10月時点のものであり、最新情報は公式IRページをご確認ください。

※米国株投資にはNISA(成長投資枠)を活用できます。年間240万円まで非課税で購入可能です。詳細は金融庁公式サイトをご確認ください。
※為替リスクや外国税額控除については、別コラムで詳しく解説しています。

よくある質問

Q1アクセンチュアの配当利回りは?

A1配当貴族ではありませんが、連続増配を継続しています。2025年第3四半期に配当を15%増の$1.48に引き上げました。年間配当は約$5.92となります。配当利回りは控えめですが、生成AI事業の成長により株価上昇(キャピタルゲイン)が期待できます。

Q2アクセンチュアの主な競合は?

A2IBM、Deloitte(デロイト)、Capgemini(キャップジェミニ)、Cognizant(コグニザント)などが主要競合です。アクセンチュアは戦略立案から実装・運用まで一貫して提供する点で差別化しています。従来の戦略コンサルティングファーム(McKinsey、BCGなど)とは異なり、技術駆動の実行力が強みです。

Q3日本法人もあるが米国株として買う意味は?

A3米国本社の株を買うことで、グローバル事業(120カ国以上、約75万人の社員)の成長を享受できます。日本法人(アクセンチュア株式会社)だけでなく世界規模の成長に投資できます。北米、欧州、成長市場(日本含むアジア太平洋)の3地域で事業を展開しており、グローバルな収益基盤を持ちます。

Q4アクセンチュアのリスク要因は?

A4米国政府の歳出削減による受注減(政府向け事業が全売上の8%)、コンサルティング需要の減速、人材コスト上昇などがあります。2025年3月に株価が一時11%急落し、過去1年で株価が33.08%下落しました。詳細はリスク要因セクションを参照してください。

Q5アクセンチュアは長期投資に向いている?

A5生成AI事業(2025年度売上27億ドル、3倍増)とデジタル変革需要が成長ドライバーです。アナリストの目標株価は平均$302.24で約24%の上昇余地があるとされています。ただし、景気敏感で政府向け事業の減少や需要減速リスクがあるため、投資判断はご自身で行ってください。