S&P500

アカマイ・テクノロジーズ (AKAM)

Akamai Technologies Inc

0. この記事でわかること

本記事では、アカマイ・テクノロジーズ(AKAM)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: CDN(コンテンツ配信ネットワーク)企業からサイバーセキュリティ・クラウド企業へ転換中。2014年には売上の85%がCDNでしたが、2024年には33%に縮小し、Security 51%、Compute 16%へシフトしています。Security ARR成長率30-35%、Cloud ARR成長率40-45%を目標としています。
  • 事業内容と成長戦略: WAF、API Security(Noname Security買収)により10億ドル規模のセキュリティ事業を強化。Linode買収(9億ドル)を基盤にAkamai Connected Cloudを展開しています。
  • 競合との差別化: Cloudflare(NET)、Fastly、AWS CloudFrontなどと競合しながらも、企業顧客向けで高いシェアと信頼性を持ち、世界130カ国以上のサーバ群で膨大な脅威インテリジェンスを蓄積しています。
  • 財務・配当の実績: 2025年Q1売上10.15億ドル(+3% YoY)、Security+Compute 69%(+10% YoY)を達成。営業利益率30%(Non-GAAP)を維持しています。
  • リスク要因: レガシーDelivery事業が2025年Q1に-9% YoY減少。2025年通期ガイダンス(EPS $6.10-6.40)が市場予想を下回り、モルガン・スタンレーが格下げしました。

1. なぜアカマイ・テクノロジーズ(AKAM)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

アカマイ・テクノロジーズは以下の3つの成長戦略を推進しています:

① セキュリティ事業の拡大
WAF(Web Application Firewall)、API Security(Noname Security買収)により10億ドル規模のセキュリティ事業を強化しています。ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)成長率30-35%を目指しています。

② クラウドコンピューティング事業の加速
Linode買収(2022年、9億ドル)を基盤にAkamai Connected Cloudを展開しています。ARR成長率40-45%を計画し、AWS、Azure、Googleに対抗する低コストクラウドを展開しています。

③ レガシーDelivery事業からの転換
2014年には売上の85%がCDNでしたが、2024年には33%に縮小しました。Security 51%、Compute 16%へシフトし、「サイバーセキュリティとクラウドの企業」として事業を推進しています。

(2) 注目テーマ(AI・生成AI・エッジコンピューティング・API Security)

AI・生成AI(トラフィック成長ドライバー)
AI・生成AIがトラフィック成長のドライバーとなっています。動画配信・クラウド需要拡大が追い風となり、Akamaiのインフラが支えています。

エッジコンピューティング(サーバーレス実行環境)
エッジコンピューティングとは、データセンターではなく、ユーザーに近い場所で処理を実行する技術です。Akamaiは世界130カ国以上のサーバ群を活用し、低レイテンシーのサービスを提供しています。

API Security(Noname Security統合)
Noname Security買収により、API Securityを強化しています。API(Application Programming Interface)は現代のWebアプリケーションで広く使われており、そのセキュリティ需要が高まっています。

クラウドコスト削減(3大クラウドへの挑戦)
AWS、Azure、Googleに対抗する低コストクラウドを展開しています。Linode買収を基盤に、Akamai Connected Cloudでクラウドコスト削減を訴求しています。

(3) 投資家の関心・懸念点

投資家の関心

  • 2025年Q1売上10.15億ドル(+3% YoY、+4% 定常通貨ベース)を達成
  • Security+Compute 69%(+10% YoY)へシフト
  • 営業利益率30%(Non-GAAP)、EPS $1.07(+4% YoY)
  • EPS成長率17.9%/年、売上成長率6%/年(今後3年予測)
  • ROE 23%(3年後予測)
  • アナリスト平均目標株価$98.10(現在株価から約20%上昇余地)
  • アナリスト評価「Strong Buy」(12社がStrong Buy、4社がBuy、2025年3月時点)

投資家の懸念

  • レガシーDelivery事業が2025年Q1に-9% YoY減少(Q4 2024は-18% YoY)
  • 2025年通期ガイダンス(EPS $6.10-6.40)が市場予想を下回る(前年比-1.2%〜-5.9%)
  • モルガン・スタンレーが格下げ(売上低迷、Security成長鈍化、クラウド移行コスト増)
  • Q4 2024決算後に株価15.03%下落($83.30)
  • マクロ経済不確実性(高金利、インフレ)でクライアント支出が減少

アカマイは「CDN企業」から「サイバーセキュリティ・クラウド企業」へ転換中で、AI需要やエッジコンピューティングの拡大が追い風となっています。

2. アカマイ・テクノロジーズの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業

アカマイ・テクノロジーズの主力事業は以下の3つです:

① Security(セキュリティ事業、売上の51%)
WAF(Web Application Firewall)、DDoS攻撃対策、API Securityを提供しています。10億ドル規模のセキュリティ事業に成長し、ARR成長率30-35%を目指しています。

② Compute(クラウドコンピューティング事業、売上の16%)
Linode買収(2022年、9億ドル)を基盤にAkamai Connected Cloudを展開しています。ARR成長率40-45%を計画し、AWS、Azure、Googleに対抗する低コストクラウドを訴求しています。

③ Delivery(レガシーCDN事業、売上の33%)
CDN(Content Delivery Network)は創業事業で、世界中に分散配置したサーバーから、ユーザーに最も近いサーバーでコンテンツを配信する仕組みです。2014年には売上の85%を占めていましたが、2024年には33%に縮小しています。

(2) セクター・業種の説明

セクター: Information Technology(情報技術)
情報技術セクターはソフトウェア、ハードウェア、ITサービスなどを含みます。アカマイはITサービスに分類され、インターネットインフラを支える裏方企業として安定需要があります。

業種: IT Services(ITサービス)
ITサービスは企業や個人にIT関連サービスを提供する業種です。アカマイはCDN、セキュリティ、クラウドコンピューティングを提供しています。

(3) ビジネスモデルの特徴

サブスクリプション型ビジネス
セキュリティ・クラウド事業はサブスクリプション型で、ARR(年間経常収益)を指標としています。安定的な収益基盤を構築しています。

世界130カ国以上のサーバ群
世界130カ国以上に分散配置したサーバ群を活用し、低レイテンシーのサービスを提供しています。膨大な脅威インテリジェンスを蓄積し、セキュリティ事業に活用しています。

事業転換の進行中
2014年には売上の85%がCDNでしたが、2024年には33%に縮小し、Security 51%、Compute 16%へシフトしています。「CDN企業」から「サイバーセキュリティ・クラウド企業」への転換を進めています。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業

アカマイ・テクノロジーズの主な競合は以下の通りです:

  • Cloudflare(NET)
  • Fastly
  • AWS CloudFront

これらはCDN・セキュリティ・クラウド事業を展開しています。Cloudflareは新興企業として急成長中ですが、アカマイは企業顧客向けで高いシェアと信頼性を持ちます。

(2) 競合優位性

① 企業顧客向けで高いシェアと信頼性
Netflix、Apple、Facebook、Amazonなどの大手ウェブサービスがアカマイの顧客です。企業顧客向けで高いシェアと信頼性を持ちます。

② 世界130カ国以上のサーバ群と脅威インテリジェンス
世界130カ国以上に分散配置したサーバ群を活用し、膨大な脅威インテリジェンスを蓄積しています。これをセキュリティ事業に活用し、DDoS攻撃対策やWAFで強みを発揮しています。

③ セキュリティ事業(10億ドル規模)
10年前にWAFクラウドサービスでSecurity事業に参入し、現在は10億ドル規模に成長しています。ARR成長率30-35%を目指しています。

(3) 市場でのポジショニング

アカマイは「CDN企業」から「サイバーセキュリティ・クラウド企業」へ転換中です。2025年通期売上は41.4-42.1億ドル(+3-4%)で、Security+Computeが全売上の69%を占めます。AI需要やエッジコンピューティングの拡大が追い風となっています。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移

以下は過去の財務実績です(2025年10月時点):

指標 2025年Q1 2025年通期見通し
売上 10.15億ドル(+3% YoY、+4% 定常通貨ベース) 41.4-42.1億ドル(+3-4%)
Security+Compute 69%(+10% YoY) 69%
Delivery 31%(-9% YoY) -
営業利益率(Non-GAAP) 30% -
EPS $1.07(+4% YoY) $6.10-6.40(前年比-1.2%〜-5.9%)

※出典: Akamai Technologies 2025年Q1決算発表、SEC EDGAR
※2025年10月時点のデータです。最新情報はAkamai Technologies公式IRページをご確認ください。

事業構成の変化

  • 2014年:CDN 85%、Security+Compute 15%
  • 2024年:CDN 33%、Security 51%、Compute 16%

(2) 配当履歴

アカマイは配当を支払っていません:

  • 配当なし: 成長投資・M&Aを優先しており、利益は事業拡大に再投資しています。
  • M&A実績: Linode買収(2022年、9億ドル)、Noname Security買収(API Security強化)

配当を重視する投資家には向きませんが、成長投資を評価する投資家には魅力的です。

(3) 財務健全性

営業利益率30%(Non-GAAP)
営業利益率30%を維持しており、EBITDA Marginは目標40%台半ばとされています。

ARR成長率

  • Security ARR成長率30-35%
  • Cloud ARR成長率40-45%

サブスクリプション型ビジネスで安定的な収益基盤を構築しています。

EPS成長率17.9%(3年平均予測)
アナリストはEPS成長率17.9%/年、売上成長率6%/年を予測しています(今後3年間)。ROE 23%(3年後予測)も期待されています。

5. リスク要因

(1) 事業リスク

レガシーDelivery事業の減収
レガシーDelivery事業が2025年Q1に-9% YoY減少しました(Q4 2024は-18% YoY)。全体成長の足かせとなっています。

2025年通期ガイダンスが市場予想を下回る
2025年通期EPS $6.10-6.40は前年$6.48から減少(-1.2%〜-5.9%)し、投資家の懸念を招きました。Q4 2024決算後に株価が15.03%下落($83.30)しています。

(2) 市場環境リスク

マクロ経済不確実性
高金利、インフレによりクライアント支出が減少しています。モルガン・スタンレーが格下げし、売上低迷、Security成長鈍化、クラウド移行コスト増を指摘しています。

為替リスク
米ドル/円レートにより実質リターンが変動します。為替リスクにご注意ください。

(3) 規制・競争リスク

競争激化
Cloudflare(NET)、Fastly、AWS CloudFrontなどとの競争が激化しています。Cloudflareは新興企業として急成長中で、低価格を武器に市場シェアを拡大しています。

規制リスク
サイバーセキュリティ・クラウド事業は規制が厳しい業種です。規制変更により業績に影響を与える可能性があります。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み

① セキュリティ事業(10億ドル規模、ARR成長率30-35%)
WAF、DDoS攻撃対策、API Securityで10億ドル規模のセキュリティ事業を構築しています。ARR成長率30-35%を目指しています。

② クラウドコンピューティング事業(ARR成長率40-45%)
Linode買収を基盤にAkamai Connected Cloudを展開し、ARR成長率40-45%を計画しています。

③ 世界130カ国以上のサーバ群と脅威インテリジェンス
世界130カ国以上に分散配置したサーバ群を活用し、膨大な脅威インテリジェンスを蓄積しています。

(2) リスク要因(再掲)

① レガシーDelivery事業の減収
2025年Q1に-9% YoY減少し、全体成長の足かせとなっています。

② 2025年通期ガイダンスが市場予想を下回る
EPS $6.10-6.40は前年比-1.2%〜-5.9%で、Q4 2024決算後に株価が15.03%下落しました。

(3) 向いている投資家

① CDNからセキュリティ・クラウド企業への転換を評価する投資家
2014年にはCDN 85%でしたが、2024年にはSecurity 51%、Compute 16%へシフトしています。

② AI・エッジコンピューティング需要の拡大を期待する投資家
AI・生成AIがトラフィック成長のドライバーとなり、エッジコンピューティング需要が拡大しています。

③ 成長投資を重視する投資家(配当なし)
配当を支払っていませんが、EPS成長率17.9%(3年平均予測)が期待されています。

免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。財務データは2025年10月時点のものです。最新情報はAkamai Technologies公式IRページ(https://www.ir.akamai.com/)およびSEC EDGAR(https://www.sec.gov/)をご確認ください。アカマイは配当を支払っていません。米国株の売却益はNISAで非課税ですが、為替リスクにご注意ください。

よくある質問

Q1アカマイ・テクノロジーズの配当利回りは?

A1アカマイは配当を支払っていません。成長投資・M&Aを優先しており、利益は事業拡大に再投資しています。Linode買収(2022年、9億ドル)、Noname Security買収(API Security強化)などのM&A実績があります。配当を重視する投資家には向きませんが、成長投資を評価する投資家には魅力的です。

Q2アカマイ・テクノロジーズの主な競合は?

A2Cloudflare(NET)、Fastly、AWS CloudFrontなどです。Cloudflareは新興企業として急成長中ですが、アカマイは企業顧客向けで高いシェアと信頼性を持ち、Netflix、Apple、Facebook、Amazonなどの大手ウェブサービスが顧客です。セキュリティ事業(10億ドル規模、ARR成長率30-35%)が強みです。競合との差別化ポイントは本文「3. 競合との差別化」を参照してください。

Q3アカマイ・テクノロジーズのリスク要因は?

A3主なリスクは以下の2つです:① レガシーDelivery事業が2025年Q1に-9% YoY減少(全体成長の足かせ)、② 2025年通期ガイダンス(EPS $6.10-6.40)が市場予想を下回り、Q4 2024決算後に株価が15.03%下落。モルガン・スタンレーが格下げしました。詳細は本文「5. リスク要因」を参照してください。

Q4アカマイ・テクノロジーズは長期投資に向いている?

A4CDNからセキュリティ・クラウド企業への転換を評価する投資家、AI・エッジコンピューティング需要の拡大を期待する投資家、成長投資を重視する投資家(配当なし)に向いています。EPS成長率17.9%(3年平均予測)が期待されますが、Delivery事業の減収リスクに注意が必要です。投資判断はご自身の責任で行ってください。

Q5CDN(コンテンツ配信ネットワーク)とは何か?

A5世界中に分散配置したサーバーから、ユーザーに最も近いサーバーでコンテンツを配信する仕組みです。ウェブサイトや動画の表示を高速化します。アカマイは1998年創業以来このCDN事業が主力でしたが、2014年には売上の85%を占めていたCDNが、2024年には33%に縮小しています。現在はセキュリティ51%、クラウド16%へシフトし、「サイバーセキュリティ・クラウド企業」として事業を推進しています。