S&P500

アメリカン・インターナショナル・グループ (AIG)

American International Group Inc

0. この記事でわかること

本記事では、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: デジタル・生成AI活用により申込処理が4倍高速化し、ROE 10%超・EPS年率20%成長を目標に掲げています。2025年Q1に保険料8%増を達成し、3年連続2桁増配を実現しました。
  • 事業内容と成長戦略: 損害保険(商業保険・個人保険)を主力とし、190カ国以上で事業を展開。Lloyd'sで新シンジケートを開始し、TATA Groupとの提携でインド市場の成長を見込んでいます。
  • 競合との差別化: Chubb、Travelers、Allstateなどと競合しながらも、グローバルネットワークと生成AI活用による業務効率化が強みです。
  • 財務・配当の実績: 2024年Q4に調整後税引後利益35%増の10億ドルを達成。配当を12.5%増配し、資本還元を強化しています。
  • リスク要因: カリフォルニア山火事で災害損失が前年比5倍に急増し、コンバインドレシオが悪化。PER 14.1は業界平均を上回り割高感があります。

1. なぜアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

AIGは以下の3つの成長戦略を推進しています:

① デジタル・AI変革の加速
生成AI活用により申込処理が4倍高速化、成約率20%改善を実現しました。Chief Digital Officerを新設し、AI/GenAIをアンダーライティング・保険金請求全体に展開しています。これにより、マージン改善とビジネスの将来性強化を図っています。

② 保険料成長とROE目標
2025年通期でROE 10%超を目標とし、今後3年間でEPS年率20%以上の成長を目指しています。2025年Q1では保険料が8%増の45億ドルを達成しました。

③ グローバル商業保険の拡大
北米商業保険14%増、国際商業保険8%増を達成しています。Lloyd'sで新シンジケート2478を2025年1月に開始(引受能力7.15億ドル)し、TATA Groupとの提携でインド市場2030年まで年率20%成長を見込んでいます。

(2) 注目テーマ(デジタル・生成AI活用・ROE 10%超・グローバル商業保険)

デジタル・生成AI活用
AIGは生成AIを活用して申込処理を4倍高速化し、成約率を20%改善しました。Chief Digital Officerを新設し、AI/GenAIをアンダーライティング・保険金請求全体に展開しています。これにより、業務効率化とマージン改善を実現しています。

ROE 10%超・EPS年率20%成長
2025年通期でROE 10%超を目標とし、今後3年間でEPS年率20%以上の成長を目指しています。2028年には売上313億ドル・利益38億ドルを目標としています(年率売上4.5%増・利益5億ドル増)。

グローバル商業保険
190カ国以上で事業を展開し、北米商業保険14%増、国際商業保険8%増を達成しています。Lloyd'sで新シンジケート2478を開始し、TATA Groupとの提携でインド市場の成長を見込んでいます。

(3) 投資家の関心・懸念点

投資家の関心

  • 2024年Q4に調整後税引後利益35%増の10億ドルを達成
  • 2025年Q1に保険料8%成長を達成
  • 配当を12.5%増配(3年連続2桁増配)
  • 株価が年初来13.6%上昇
  • 「AIG Next」イニシアティブで5億ドルのコスト削減を完了

投資家の懸念

  • カリフォルニア山火事により北米商業保険のコンバインドレシオが前年比580bp悪化
  • 2025年Q1の災害損失が前年比5倍近く増加
  • PER 14.1は業界平均13.9・競合平均12.5を上回り割高
  • 気候変動リスクと競争激化がマージン圧迫の懸念

格付け会社は見通しをポジティブに引き上げていますが、気候変動リスクと競争激化が長期収益を脅かす懸念があります。

2. アメリカン・インターナショナル・グループの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業

AIGの主力事業は以下の3つです:

① 商業保険(General Insurance - Commercial)
企業向けの損害保険を提供しています。北米商業保険14%増、国際商業保険8%増を達成しました。Lloyd'sで新シンジケート2478を2025年1月に開始し、引受能力7.15億ドルを確保しています。

② 個人保険(General Insurance - Personal)
個人向けの損害保険を提供しています。カリフォルニア山火事などの災害損失の影響を受けやすいですが、デジタル化とAI活用で業務効率化を進めています。

③ テクノロジー子会社
テクノロジー・データ分析によるアンダーライティング強化を図っています。生成AI活用により申込処理が4倍高速化し、成約率20%改善を実現しました。

(2) セクター・業種の説明

セクター: Financials(金融)
金融セクターは銀行、保険、証券、不動産などを含みます。景気変動の影響を受けやすいですが、AIGは損害保険に特化することで安定的な収益基盤を持ちます。

業種: Insurance(保険)
保険業は生命保険、損害保険に分かれます。AIGは損害保険(商業保険・個人保険)を主力としています。金利上昇局面では運用益が増加するメリットがあります。

(3) ビジネスモデルの特徴

グローバルネットワーク
190カ国以上で事業を展開するグローバルネットワークが強みです。TATA Groupとの提携でインド市場2030年まで年率20%成長を見込んでいます。

デジタル・AI変革
Chief Digital Officerを新設し、生成AIをアンダーライティング・保険金請求全体に展開しています。申込処理が4倍高速化し、成約率20%改善を実現しました。

事業再編と財務健全化
リーマンショック時に政府救済を受けましたが、2012年に政府保有株をすべて売却。生命保険部門(Corebridge Financial)は2022年に分離・上場し、現在は損害保険が主力です。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業

AIGの主な競合は以下の通りです:

  • Chubb
  • Travelers
  • Allstate

これらは米国の大手損害保険会社です。AIGは190カ国以上のグローバルネットワークと生成AI活用による業務効率化が強みです。

(2) 競合優位性

① グローバルネットワーク
190カ国以上で事業を展開し、Lloyd'sで新シンジケート2478を開始しました(引受能力7.15億ドル)。TATA Groupとの提携でインド市場2030年まで年率20%成長を見込んでいます。

② 生成AI活用による業務効率化
生成AI活用により申込処理が4倍高速化、成約率20%改善を実現しました。Chief Digital Officerを新設し、AI/GenAIをアンダーライティング・保険金請求全体に展開しています。

③ 「AIG Next」イニシアティブ
「AIG Next」イニシアティブで5億ドルのコスト削減を完了しました。マージン改善とビジネスの将来性強化を図っています。

(3) 市場でのポジショニング

AIGは世界最大級の損害保険会社として、グローバル商業保険市場でのポジショニングを強化しています。デジタル・AI変革とリーダーシップ刷新により、株価は年初来13.6%上昇しました。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移

以下は過去の財務実績です(2025年10月時点):

指標 2024年Q4 2025年Q1
調整後税引後利益 10億ドル(35%増) -
調整後税引後利益(1株) $1.81(56%増) -
保険料 61億ドル(7%増) 45億ドル(8%増)
一般保険アンダーライティング利益 6.26億ドル(46%増) -
資本還元 20億ドル(Q4) -

※出典: AIG 2024年Q4決算発表、2025年Q1決算発表、SEC EDGAR
※2025年10月時点のデータです。最新情報はAIG公式IRページをご確認ください。

2028年目標

  • 売上313億ドル(年率4.5%増)
  • 利益38億ドル(年率5億ドル増)

(2) 配当履歴

AIGは2012年に配当再開後、増配を継続しています:

  • 2025年配当増配: 12.5%増配(3年連続2桁増配)
  • 配当利回り: 約2.0-2.5%程度(株価変動により変化、2025年10月時点)
  • 資本還元: 2024年通期で45億ドルを株主還元

配当は2009年に停止しましたが、2012年に再開し、以降増配を継続しています。

(3) 財務健全性

コンバインドレシオ
コンバインドレシオは損害率と事業費率の合計で、100%未満が黒字を意味します。カリフォルニア山火事により北米商業保険のコンバインドレシオが前年比580bp悪化しました。

災害損失
2024年の災害損失は11億ドルで9.4%増、2025年Q1は前年比5倍近く増加しました。気候変動リスクが長期収益を脅かす懸念があります。

ROE目標
2025年通期でROE 10%超を目標としており、今後3年間でEPS年率20%以上の成長を目指しています。

5. リスク要因

(1) 事業リスク

コンバインドレシオ悪化と山火事損失
カリフォルニア山火事により北米商業保険のコンバインドレシオが前年比580bp悪化しました。2025年Q1の災害損失が前年比5倍近く増加し、収益を圧迫しています。

気候変動リスク
気候変動により、ハリケーン、山火事などの災害損失が増加するリスクがあります。2024年の災害損失は11億ドルで9.4%増となっています。

(2) 市場環境リスク

プレミアムバリュエーション懸念
PER 14.1は業界平均13.9・競合平均12.5を上回り、割高感が強いです。気候変動リスクと競争激化がマージン圧迫の懸念があります。

金利変動リスク
保険会社は保険料を運用して利益を得るため、金利変動の影響を受けます。金利上昇局面では運用益が増加しますが、金利低下局面では運用益が減少するリスクがあります。

(3) 規制・競争リスク

競争激化
Chubb、Travelers、Allstateなどとの競争が激化しています。生成AI活用による業務効率化とマージン改善が求められています。

規制リスク
保険業は規制が厳しい業種です。規制変更により業績に影響を与える可能性があります。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み

① デジタル・AI変革による業務効率化
生成AI活用により申込処理が4倍高速化、成約率20%改善を実現しました。Chief Digital Officerを新設し、マージン改善を図っています。

② ROE 10%超・EPS年率20%成長を目標
2025年通期でROE 10%超を目標とし、今後3年間でEPS年率20%以上の成長を目指しています。

③ グローバルネットワーク
190カ国以上で事業を展開し、Lloyd'sで新シンジケート2478を開始しました。TATA Groupとの提携でインド市場の成長を見込んでいます。

(2) リスク要因(再掲)

① コンバインドレシオ悪化と山火事損失
カリフォルニア山火事で災害損失が前年比5倍に急増し、コンバインドレシオが悪化しました。

② プレミアムバリュエーション懸念
PER 14.1は業界平均13.9・競合平均12.5を上回り、割高感が強いです。

(3) 向いている投資家

① バリュー株を好む投資家
リーマンショック時の政府救済から財務健全化し、バリュー株として見直される可能性があります。

② 金利上昇局面での運用益増加を期待する投資家
金利上昇局面では運用益が増加するメリットがあります。

③ デジタル・AI変革を評価する投資家
生成AI活用により申込処理が4倍高速化、成約率20%改善を実現しています。

免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。財務データは2025年10月時点のものです。最新情報はAIG公式IRページ(https://aig.gcs-web.com/)およびSEC EDGAR(https://www.sec.gov/)をご確認ください。米国株の配当は米国で10%、日本で20.315%課税されます(二重課税)。確定申告で外国税額控除を受けられますが、NISA口座は対象外です。為替リスクにもご注意ください。

よくある質問

Q1アメリカン・インターナショナル・グループの配当利回りは?

A1配当利回りは約2.0-2.5%程度です(株価変動により変化、2025年10月時点)。2012年に配当再開後、3年連続2桁増配を達成し、2025年には12.5%増配を発表しています。配当は2009年に停止しましたが、2012年に再開し、以降増配を継続しています。過去の配当履歴と合わせて確認してください。

Q2アメリカン・インターナショナル・グループの主な競合は?

A2Chubb、Travelers、Allstateなどの大手損害保険会社が競合です。AIGは190カ国以上のグローバルネットワークと生成AI活用による業務効率化が強みで、申込処理が4倍高速化、成約率20%改善を実現しています。競合との差別化ポイントは本文「3. 競合との差別化」を参照してください。

Q3アメリカン・インターナショナル・グループのリスク要因は?

A3主なリスクは以下の3つです:① カリフォルニア山火事で災害損失が前年比5倍に急増し、コンバインドレシオが悪化、② PER 14.1は業界平均13.9・競合平均12.5を上回り割高、③ 気候変動リスクと競争激化がマージン圧迫の懸念。詳細は本文「5. リスク要因」を参照してください。

Q4アメリカン・インターナショナル・グループは長期投資に向いている?

A4バリュー株を好む投資家、金利上昇局面での運用益増加を期待する投資家、デジタル・AI変革を評価する投資家に向いています。財務健全化とデジタル変革が進んでいますが、災害リスクの高まりと割高感に注意が必要です。投資判断はご自身の責任で行ってください。

Q5リーマンショック時の政府救済は今も影響しているか?

A52012年に政府保有株はすべて売却され、財務は健全化しています。事業再編も完了し、生命保険部門(Corebridge Financial)は2022年に分離・上場。現在は商業保険・個人保険を主力とする通常の保険会社として運営されています。「AIG Next」イニシアティブで5億ドルのコスト削減を完了し、ROE 10%超・EPS年率20%成長を目標としています。