S&P500

オールステート (ALL)

The Allstate Corporation

0. この記事でわかること

本記事では、オールステート(ALL)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: 米国2位の個人向け損害保険会社として、自動車保険・住宅保険で高いシェアを持ちます。「You're in good hands(あなたは良い手の中にいます)」のスローガンで有名。配当貴族候補(連続増配14年)で安定配当を重視する投資家に人気です
  • 事業内容と成長戦略: 自動車保険(売上の約60%)と住宅保険が主力。Transformative Growth計画(手頃・シンプル・つながる保険商品を全米展開)、マルチチャネル販売戦略(Allstate代理店、独立代理店、直販)、Protection Services事業拡大(テレマティクス「Arity」等)を推進しています
  • 競合との差別化: State Farm(非上場)、Progressive、GEICO(Berkshire Hathaway傘下)と競合。全米唯一の4セグメント顧客対応、National General買収による独立代理店基盤強化、AI活用による引受審査の高度化が強みです
  • 財務・配当の実績: 2024年通期売上641億ドル(+12.3%)、純利益46億ドル(前年赤字から回復)。配当利回り約2-3%で、32年連続配当支払・14年連続増配の実績があります
  • リスク要因: 自然災害損失の急増(2025年Q1は再保険回復後22億ドル)、負債増加と規制リスク、気候変動による長期的な保険金支払い増加が主なリスクです

※この記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資判断は自己責任で行ってください。

1. なぜオールステート(ALL)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

オールステートは、米国損害保険市場で長年の実績を持ちながら、新たな成長戦略を推進しています。

第一に、Transformative Growth計画の推進です。2025年に「Affordable, Simple, Connected(手頃・シンプル・つながる)」をコンセプトとする自動車・住宅保険商品を全米展開しています(出典: Allstate Reports First Quarter 2025 Results)。テクノロジーを活用して経費を削減し、顧客アクセスを拡大し、手頃な価格を実現することで、より多くの顧客を獲得する戦略です。

第二に、マルチチャネル販売戦略です。オールステートは、全米で唯一、4つの顧客セグメント(対面/自己主導、ブランド志向)すべてに対応する販売体制を持っています(出典: Allstate Profile)。2024年は新規契約が、Allstate代理店、独立代理店、直販でほぼ均等に分散しました。2021年にNational Generalを40億ドルで買収し、独立代理店基盤を強化しています。

第三に、Protection Services事業の拡大です。保険以外の保護サービス(自動車テレマティクス「Arity」、デバイス保護、ロードサイドアシスタンス、個人情報保護)で顧客との関係を強化し、新たな収益源を確保しています。Arityは、車載センサーで運転データを収集し、安全運転に基づく保険料設定を行うテレマティクス事業で、将来的な成長ドライバーとして期待されています。

(2) 注目テーマ(損害保険市場)

投資家がオールステートに注目する最大の理由は、安定した配当と業界トップレベルの引受収益性です。オールステートは、32年連続で配当を支払い、14年連続で増配しています。配当貴族候補として、安定配当を重視する投資家に人気です。

また、保険引受収益性の改善も注目されています。Combined Ratio(損害率と事業費率の合計)は86.9と、過去最高水準に改善しています(出典: Allstate Reports Fourth Quarter and Full Year 2024 Results)。100%未満が黒字、100%超が赤字を意味するため、86.9は非常に優れた収益性を示しています。

**AI活用(パーソナライズドマーケティング、引受審査の高度化)**も投資家の関心を集めています。オールステートは、AIを活用して顧客ごとに最適な保険プランを提案し、リスクの高い顧客を事前に識別することで、保険金支払いを抑制しています。

テレマティクス(Arity)による安全運転報奨プログラムも注目されています。安全運転をする顧客には保険料を割引し、リスクの高い運転をする顧客には高い保険料を設定することで、収益性を改善しています。

気候変動リスク対応も重要なテーマです。カリフォルニア州では、山火事リスクの高まりを受けて料率を35%引き上げました(出典: 業界報道)。自然災害が増加する中、保険料値上げにより収益性を維持する戦略です。

**デジタルファースト戦略(直販チャネル強化)**も進んでいます。オンラインで保険契約を完結できる仕組みを整備し、代理店手数料を削減することで、コスト競争力を高めています。

(3) 投資家の関心・懸念点

投資家の関心は、「自然災害損失の管理」と「保険料値上げによる収益性改善」に集中しています。2024年は、ハリケーン、山火事、竜巻などの自然災害により巨額の保険金支払いが発生しましたが、再保険(保険会社が他の保険会社に保険をかけること)により損失を軽減しました(出典: Allstate Reports First Quarter 2025 Results)。また、災害後は保険料を値上げし、収益性を回復させる戦略が奏功しています。

一方で、懸念点も多くあります。自然災害損失の急増が最大の懸念です。2025年Q1は総災害損失33億ドル(再保険回復後22億ドル)と、巨額の損失が発生しました(出典: Allstate Reports First Quarter 2025 Results)。気候変動により、今後も自然災害が増加するリスクがあります。

また、負債増加と規制リスクも懸念されています。2025年Q2時点で負債が81億ドルに達し、現金は6億ドルに減少しました(2023年末の7.2億ドルから減少)(出典: Institutional Bullishness on Allstate Corporation)。気候リスク開示や業務監督に関する規制強化への対応コストも懸念材料です。

オールステートは、長期的には安定配当と業界トップレベルの収益性で投資家の信頼を得ていますが、短期的には自然災害損失の管理が重要な課題です。投資家は、災害損失の動向と保険料値上げの効果を注視する必要があります。

2. オールステートの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業(自動車・住宅保険)

オールステートは1931年創業の損害保険会社で、元々はSears Roebuck(米国の小売大手)の保険部門として設立されました。1991年に株式公開、1995年にSearsから独立しました(出典: Wikipedia日本語版「オールステート保険」)。

オールステートの主力事業は以下の2つです:

  1. 自動車保険(売上の約60%): 個人向け自動車保険が主力。「You're in good hands(あなたは良い手の中にいます)」のスローガルで知られ、米国で高いブランド認知度を持ちます。Allstate代理店、独立代理店、直販(オンライン・電話)の3チャネルで販売しています
  2. 住宅保険: 個人向け住宅保険(火災、盗難、自然災害等をカバー)。自動車保険とセットで契約する顧客が多く、クロスセル効果が高いです

オールステートは、2021年にNational General(独立代理店経由の自動車保険会社)を40億ドルで買収し、独立代理店基盤を強化しました。これにより、Allstate代理店だけでなく、独立代理店経由でも新規顧客を獲得できる体制を整えています。

また、Protection Services事業も拡大しています。これには、以下のサービスが含まれます:

  • Arity(テレマティクス): 車載センサーで運転データを収集し、安全運転に基づく保険料設定を行います
  • デバイス保護: スマートフォン、タブレット等の保険
  • ロードサイドアシスタンス: 故障時のレッカー・修理サービス
  • 個人情報保護: 個人情報盗難保険

これらのサービスにより、保険以外の収益源を確保し、顧客との長期的な関係を構築しています。

(2) セクター・業種の説明

オールステートはFinancials(金融)セクターInsurance(保険)業種に分類されます。保険業種は、リスクを引き受けて保険料を徴収し、事故や災害時に保険金を支払う産業です。オールステートの場合、個人向けの自動車・住宅保険を提供しています。

保険業種の特徴は、景気に対する相対的な耐性です。自動車保険や住宅保険は、法律で義務付けられている場合が多く(米国では自動車保険は州法で義務)、景気が悪化しても需要が安定しています。ディフェンシブ株(景気後退時でも業績が安定する株)として、投資家に人気です。

また、保険業種は金利に敏感です。保険会社は、保険料を徴収してから保険金を支払うまでの期間(フロート)に、その資金を運用して利益を得ます。金利が上昇すれば運用益が増加し、金利が低下すれば運用益が減少します。2022-2024年の米国金利上昇局面では、オールステートの運用益が増加しました。

(3) ビジネスモデルの特徴

オールステートのビジネスモデルの最大の特徴は、マルチチャネル販売です。全米で唯一、4つの顧客セグメント(対面/自己主導、ブランド志向)すべてに対応する販売体制を持っています(出典: Allstate Profile)。具体的には、以下の3チャネルです:

  1. Allstate代理店(Exclusive Agent): Allstate専属の代理店。対面で丁寧なサービスを提供し、ブランド志向の顧客を獲得します
  2. 独立代理店(Independent Agent): 複数の保険会社の商品を扱う代理店。National General買収により強化され、幅広い顧客層にアクセスできます
  3. 直販(Direct): オンライン・電話で契約を完結。代理店手数料が不要なため、低価格を求める顧客に向いています

このマルチチャネル戦略により、幅広い顧客層をカバーし、競合との差別化を図っています。

また、再保険の活用も重要です。オールステートは、自然災害リスクの一部を再保険会社に転嫁することで、巨額の災害損失を軽減しています。2025年Q1の災害損失は総額33億ドルでしたが、再保険により11億ドルを回収し、実質的な損失は22億ドルに抑えられました(出典: Allstate Reports First Quarter 2025 Results)。

さらに、データとAI活用も特徴です。累計数千万人の顧客データを蓄積し、AIを活用してリスクの高い顧客を識別し、保険料を適正に設定しています。これにより、保険金支払いを抑制し、収益性を改善しています。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業

オールステートの主要競合企業は以下の通りです:

  1. State Farm(非上場): 米国最大の個人向け損害保険会社。市場シェア約18%(オールステートは約10%)。相互会社(株主ではなく契約者が所有)のため、株式市場に上場していません
  2. Progressive(PGR): 上場している損害保険会社で、オールステートと市場シェアを争います。特に自動車保険で強く、テレマティクス(Snapshot)でも先行しています
  3. GEICO(Berkshire Hathaway傘下): バークシャー・ハサウェイが所有する自動車保険会社。低価格で知られ、直販チャネルに強みを持ちます
  4. Farmers Insurance Group: 独立代理店経由の販売に強い損害保険会社

これらの競合企業は、それぞれ異なる販売チャネルや価格戦略で市場シェアを拡大しています。

(2) 競合優位性

オールステートの競合優位性は、マルチチャネル販売による幅広い顧客層へのアクセスです。State Farmは主に専属代理店、Progressiveは直販、GEICOは直販に偏っていますが、オールステートはAllstate代理店、独立代理店、直販の3チャネルすべてで強みを持ちます(出典: Allstate Profile)。これにより、ブランド志向の顧客、価格志向の顧客、対面サービスを求める顧客など、多様なニーズに対応できます。

第二に、National General買収による独立代理店基盤の強化です。2021年の買収により、独立代理店経由の新規顧客獲得が加速しました。独立代理店は、複数の保険会社の商品を扱うため、顧客にとっては選択肢が多く、オールステートにとっては新たな販売網を獲得できるメリットがあります。

第三に、AI活用による引受審査の高度化です。オールステートは、AIを活用してリスクの高い顧客を事前に識別し、保険料を適正に設定しています。これにより、保険金支払いを抑制し、収益性を改善しています。Combined Ratio 86.9(2024年Q4)は、業界トップレベルの収益性を示しています(出典: Allstate Reports Fourth Quarter and Full Year 2024 Results)。

第四に、ブランド力と顧客ロイヤルティです。「You're in good hands」のスローガルは米国で広く認知されており、長年の実績により顧客の信頼を得ています。顧客ロイヤルティが高く、継続率(更新率)が高いことも強みです。

(3) 市場でのポジショニング

オールステートは、米国個人向け損害保険市場で第2位のポジションを維持しています(State Farmに次ぐ)。市場シェアは約10%で、Progressive、GEICOと2-4位を争っています(出典: 業界推計)。

オールステートは、プレミアムブランドとしてポジショニングされています。価格はGEICOやProgressiveより高めですが、対面サービス、ブランド力、顧客サポートで差別化しています。ブランド志向の顧客、対面サービスを重視する顧客がターゲットです。

一方で、直販チャネルでも競争力を高めています。デジタルファースト戦略により、オンラインで契約を完結できる仕組みを整備し、価格志向の顧客も獲得しています。

また、Transformative Growth計画により、「手頃・シンプル・つながる」保険商品を展開し、より幅広い顧客層にアピールしています。従来のプレミアムブランドから、より手頃な価格帯の商品も提供することで、市場シェア拡大を狙っています。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移

オールステートの財務状況は、自然災害の発生状況に大きく左右されています。以下は過去5年の売上高・利益の推移です(出典: The Allstate Corporation 10-K Annual Report 2024; Yahoo Finance):

年度 売上高(億ドル) 純利益(億ドル) EPS(ドル)
2020 440 54 17.74
2021 508 57 19.68
2022 549 22 7.89
2023 571 -19(赤字) -7.07
2024 641 46 17.11

2023年は、ハリケーン、山火事などの自然災害により巨額の保険金支払いが発生し、純利益が赤字に転落しました。しかし、2024年は保険料値上げと再保険の活用により、純利益が46億ドルに回復しました(出典: Allstate Reports Fourth Quarter and Full Year 2024 Results)。

2024年の調整後純利益は49億ドル、調整後ROE(自己資本利益率)は26.8%と、非常に高い収益性を達成しました。Combined Ratio(損害率と事業費率の合計)は86.9と、過去最高水準に改善しています。

2025年Q1の決算では、売上165億ドル(+7.8%)、純利益5.66億ドル、調整後純利益9.49億ドル(EPS $3.53)と、引き続き好調です(出典: Allstate Reports First Quarter 2025 Results)。保有契約数は+6.7%増加し、2.11億件に達しました。

アナリストは、2025年のEPSを$17.50(従来$17.10から引き上げ)、2026年のEPSを$20.75(従来$20.45から引き上げ)と予測しています(出典: TipRanks)。保険料値上げと収益性改善により、利益成長が見込まれています。

(2) 配当履歴

オールステートは、32年連続で配当を支払い、14年連続で増配しています(出典: The Allstate Corporation 10-K)。配当貴族候補として、安定配当を重視する投資家に人気です。配当利回りは約2-3%です。

過去5年の配当履歴は以下の通りです:

年度 年間配当(ドル) 配当性向(%) 配当利回り(%)
2020 2.04 11.5 1.8
2021 2.24 11.4 1.5
2022 3.28 41.6 2.5
2023 3.60 マイナス(赤字) 2.7
2024 4.00 23.4 2.3

2023年は純利益が赤字でしたが、配当は維持・増配されました。これは、一時的な自然災害損失であり、長期的には収益性が回復すると判断されたためです。実際、2024年には純利益が大幅に回復し、配当性向も23.4%と健全な水準に戻りました。

配当を重視する投資家にとって、オールステートは魅力的な選択肢です。ただし、自然災害損失が長期化すれば、配当維持が困難になる可能性もあります。投資家は、災害損失の動向と配当性向を注視する必要があります。

(3) 財務健全性

オールステートの財務健全性は、以下の指標で評価できます(2024年時点、出典: The Allstate Corporation 10-K Annual Report 2024):

  • 自己資本比率: 約25%(保険会社としては標準的な水準)
  • 有利子負債: 約81億ドル(2025年Q2時点)
  • 現金・現金同等物: 約6億ドル(2025年Q2時点、2023年末の7.2億ドルから減少)

保険会社の場合、自己資本比率は一般事業会社より低めですが、25%は標準的な水準です。有利子負債が81億ドルと増加し、現金が減少している点は懸念材料ですが、保険料収入が安定しているため、財務リスクは中程度と評価できます。

また、再保険の活用により、巨額の災害損失リスクを軽減しています。2025年Q1の災害損失33億ドルのうち、11億ドルを再保険で回収し、実質的な損失を22億ドルに抑えました。

財務健全性は「中程度」と評価できます。有利子負債の増加と現金減少は懸念ですが、安定した保険料収入と再保険によるリスク軽減により、財務基盤は維持されています。

5. リスク要因

(1) 事業リスク(自然災害損失)

オールステートの最大のリスクは、自然災害による保険金支払いの急増です。2025年Q1は、総災害損失33億ドル(再保険回復後22億ドル)と、巨額の損失が発生しました(出典: Allstate Reports First Quarter 2025 Results)。ハリケーン、山火事、竜巻などの自然災害が増加しており、保険金支払いが増加する傾向にあります。

2024年通期でも、複数のハリケーンと山火事により巨額の災害損失が発生しました。カリフォルニア州の山火事、フロリダ州のハリケーンなどが主な原因です。気候変動により、今後も自然災害が増加するリスクがあります。

自然災害損失が増加すれば、オールステートの利益は大きく圧迫されます。2023年は、災害損失により純利益が赤字に転落しました。再保険により損失を軽減していますが、再保険料も上昇しており、コスト増加の要因となっています。

(2) 市場環境リスク(気候変動)

気候変動による長期的な保険金支払い増加は、オールステートにとって大きなリスクです。気温上昇により、ハリケーンの強度が増し、山火事の頻度が増加し、竜巻や洪水のリスクも高まっています。保険業界全体が、気候変動リスクへの対応を迫られています。

オールステートは、気候変動リスクに対応するため、保険料の値上げを進めています。カリフォルニア州では、山火事リスクの高まりを受けて料率を35%引き上げました(出典: 業界報道)。しかし、保険料値上げには州の規制当局の承認が必要で、大幅な値上げは難しい場合があります。

また、規制強化リスクも考慮すべきです。気候リスク開示や業務監督に関する規制が強化されており、対応コストが増加しています(出典: Institutional Bullishness on Allstate Corporation)。規制当局は、保険会社に対して気候リスクの開示を求めており、リスク管理体制の強化が必要です。

負債増加リスクも懸念されています。2025年Q2時点で負債が81億ドルに達し、現金は6億ドルに減少しました(2023年末の7.2億ドルから減少)(出典: Institutional Bullishness on Allstate Corporation)。災害損失が続けば、さらに負債が増加する可能性があります。

(3) 規制・競争リスク

競合の激化は、オールステートにとってリスクです。Progressive、GEICOなどの競合企業が、低価格とデジタル化で市場シェアを拡大しています。特にProgressiveは、テレマティクス(Snapshot)で先行しており、安全運転報奨プログラムで顧客を獲得しています。

オールステートも、Arityによるテレマティクス事業を強化していますが、Progressiveに比べると普及率が低い状況です。競合との差別化が課題です。

また、保険料値上げの制限もリスクです。米国では、保険料の値上げには州の規制当局の承認が必要です。災害損失が増加しても、規制当局が大幅な値上げを認めない場合、オールステートの収益性が悪化する可能性があります。

訴訟リスクも考慮すべきです。保険金支払いを拒否した場合、顧客から訴訟を起こされるリスクがあります。大規模な訴訟が発生すれば、評判の低下や多額の和解金支払いが必要になる可能性があります。

技術変化リスクも長期的にはあります。自動運転車が普及すれば、交通事故が減少し、自動車保険の需要が減少する可能性があります。現時点では、自動運転車の普及はまだ限定的ですが、長期的には自動車保険市場の構造が変化するリスクがあります。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み

オールステートの強みは、以下の3点です:

  1. 安定配当と配当貴族候補: 32年連続配当支払・14年連続増配の実績を持ち、配当利回り約2-3%。配当を重視する投資家に向いています。2023年は赤字でしたが配当を維持し、2024年には利益が回復しました
  2. 業界トップレベルの引受収益性: Combined Ratio 86.9(2024年Q4)と、過去最高水準の収益性を達成。AI活用による引受審査の高度化、保険料値上げ、再保険活用により、収益性を改善しています
  3. マルチチャネル販売による幅広い顧客層へのアクセス: 全米唯一の4セグメント顧客対応により、ブランド志向、価格志向、対面サービス重視など、多様なニーズに対応できます。National General買収により独立代理店基盤を強化しました

(2) リスク要因(再掲)

一方で、以下のリスクに注意が必要です:

  1. 自然災害損失の急増: 2025年Q1は再保険回復後22億ドルの災害損失が発生。気候変動により、今後も自然災害が増加するリスクがあります
  2. 負債増加と規制リスク: 負債が81億ドルに増加し、現金が6億ドルに減少。気候リスク開示や業務監督に関する規制強化への対応コストも懸念されています

(3) 向いている投資家

オールステートは、以下のような投資家に向いています:

  1. 安定配当を求める投資家: 配当利回り約2-3%で、32年連続配当支払・14年連続増配の実績があります。配当貴族候補として、安定配当を重視する投資家に向いています
  2. ディフェンシブ株を求める投資家: 保険は景気に対する相対的な耐性があり、景気後退時でも需要が安定します。ディフェンシブな金融株として、リスクを抑えたい投資家に向いています
  3. 自然災害リスクに耐えられる投資家: 自然災害により短期的に業績が悪化する可能性がありますが、長期的には保険料値上げで収益性を回復します。短期的な業績変動に動じない投資家に向いています

向いていない投資家:

  • 高配当利回りを求める投資家(配当利回り約2-3%と中程度)
  • 高成長を期待する投資家(保険業界は成熟産業)
  • 自然災害リスクを避けたい投資家

免責事項: この記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新の財務データは、オールステート公式IRページ(https://www.allstateinvestors.com/)やSEC EDGAR(https://www.sec.gov/edgar)でご確認ください。

※2025年10月時点の情報です。保険市場や財務状況は変動するため、投資前に最新情報をご確認ください。

よくある質問

Q1オールステートの配当利回りは?

A1約2-3%です(2025年10月時点)。オールステートは32年連続で配当を支払い、14年連続で増配しています。配当貴族候補として、安定配当を重視する投資家に人気です。2023年は純利益が赤字でしたが配当を維持し、2024年には利益が回復しました。配当性向は23.4%(2024年)と健全な水準です。

Q2オールステートの主な競合は?

A2State Farm(非上場、業界1位)、Progressive(PGR)、GEICO(Berkshire Hathaway傘下)などです。オールステートは米国個人向け損保市場で第2位のポジションを維持しています。市場シェアは約10%で、全米唯一の4セグメント顧客対応(Allstate代理店、独立代理店、直販)が強みです。

Q3オールステートのリスク要因は?

A3主なリスクは、自然災害による保険金支払いの急増(2025年Q1は再保険回復後22億ドル)、気候変動による長期的な損失増加、負債増加(81億ドル)と規制リスクです。2023年は災害損失により純利益が赤字に転落しましたが、2024年には保険料値上げと再保険活用で回復しました。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。

Q4オールステートは長期投資に向いている?

A4安定配当を求める投資家に向いています。配当利回り約2-3%で、32年連続配当・14年連続増配の実績があります。ディフェンシブな金融株として、景気後退時でも需要が安定します。自然災害リスクにより短期的に業績が変動する可能性がありますが、長期的には保険料値上げで収益性を回復します。投資判断はご自身で行ってください。