S&P500

エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ (APD)

Air Products and Chemicals Inc

0. この記事でわかること

本記事では、エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ(APD)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: 新CEOエドゥアルド・メネゼス氏の下、水素プロジェクトへの多額投資からコア産業ガス事業への戦略転換を実施。2025年度に調整後営業利益率20%超、2030年までに30%を目標とし、アジア電子産業向け投資を拡大中です
  • 事業内容と成長戦略: 世界最大級の産業ガスメーカーとして、酸素・窒素・水素・アルゴン・ヘリウム等を製造・販売。顧客と長期契約(10-20年)を結び、顧客工場の敷地内にガス製造プラントを建設する「オンサイト型」ビジネスモデルで安定収益を確保しています
  • 競合との差別化: Linde(リンデ)、Air Liquide(エア・リキード)と競合する中、水素エネルギー事業への積極投資とグローバル展開で差別化。2017年にパフォーマンスマテリアルズ部門を売却し、産業ガス事業に集中しています
  • 財務・配当の実績: 40年超連続増配の配当貴族銘柄。2025年Q1は調整後EPS2.86ドル(ガイダンス上限超え)、2024年度通期は純利益38.4億ドル(前年比68%増)を達成しました
  • リスク要因: アクティビスト投資家Mantle Ridge LPが3議席獲得、D.E. ShawがCEO退任を要求。ROCE(投下資本利益率)が過去5年間で10%から7.7%に低下し、投資効率への懸念が高まっています

(約290字)

1. なぜエアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ(APD)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

エアー・プロダクツは以下の3つの成長戦略を推進しています:

コア産業ガス事業への戦略的回帰
クリーンエネルギープロジェクトの一部をキャンセルし、コア産業ガス事業に年間約15億ドルを投資しています。2025年度に調整後営業利益率20%超、2030年までに30%を目標としています。新CEOエドゥアルド・メネゼス氏の下、水素プロジェクトへの多額投資から高品質・高マルチプルの産業ガス事業モデルへと戦略転換中です。

アジア電子産業への注力
現在進行中のエネルギー転換プロジェクトを完了しつつ、特にアジアの電子産業向けコア産業ガスプロジェクトへの投資を拡大しています。半導体製造には高純度の窒素・アルゴン・ヘリウムなどが不可欠で、アジアの半導体需要拡大に対応しています。

コスト削減と組織再編
2025/2026年に従業員数を約21,200人に削減(現在比8%減)し、2027/2028年までにさらに18,500人へ削減する計画です。年間15億ドルの高収益機会に資本を集中させ、コスト構造を改善しています。

(2) 注目テーマ(産業ガス回帰・アジア電子産業・営業利益率改善)

投資家が注目している主要テーマは以下の通りです:

産業ガス事業への回帰(水素・アルゴン・窒素・酸素)
2017年にパフォーマンスマテリアルズ部門を売却し、産業ガスに集中しました。水素プロジェクトへの多額投資が利益を圧迫しているとの批判を受け、コア産業ガス事業への回帰を明確にしています。

アジア電子産業向け投資
半導体製造には高純度の産業ガスが不可欠です。アジアの半導体需要拡大に対応し、アジア電子産業向けコア産業ガスプロジェクトへの投資を拡大しています。

営業利益率改善(2030年目標30%)
2025年度に調整後営業利益率20%超、2030年までに30%を目標としています。コスト削減と組織再編により、高収益体質への転換を図っています。

(3) 投資家の関心・懸念点

投資家の関心は、①40年超連続増配の配当貴族銘柄としての安定性、②産業ガスの必需品としての堅調な需要、③水素エネルギー事業への積極投資による成長期待、に集まっています。

一方、懸念点としては、①アクティビスト投資家Mantle Ridge LPが3議席獲得、D.E. ShawがCEO退任を要求する公開書簡を発表し、クリーンエネルギー戦略が利益を圧迫しているとの批判、②ROCE(投下資本利益率)が過去5年間で10%から7.7%に低下し、資本利用は増加したが売上は伸び悩み(過去12ヶ月で売上3.1%減)、③LindeやAir Liquideと比較して業績不振、が挙げられます。

将来性の要約
エアー・プロダクツは2025年度にEPS11.90-12.10ドル(前年比3-4%減)、設備投資約50億ドルを見込んでいます。新CEOエドゥアルド・メネゼス氏の下、水素プロジェクトへの多額投資から高品質・高マルチプルの産業ガス事業モデルへと戦略転換中です。アナリスト平均目標株価は329.91ドル(レンジ275-375ドル)で、評価は「Moderate Buy」となっています。2026-2029年に高い一桁成長、2030年以降は二桁成長を予測しています。ただし、NEOMグリーン水素プロジェクト等の資本集約的プロジェクトの遅延・超過コストリスクが残ります。

2. エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業(産業ガス・水素・医療用酸素)

エアー・プロダクツは1940年創業の産業ガスメーカーで、以下の主力事業を展開しています:

産業ガス(酸素・窒素・アルゴン・ヘリウム等)
製造業(鉄鋼、化学、半導体、ガラス、食品等)、医療(医療用酸素)、エネルギー(水素燃料)など幅広い用途で使用されます。産業ガスは製造業に不可欠な産業インフラで、景気循環の影響はあるものの、必需品としての需要は堅調です。

主要な産業ガスと用途

  • 酸素(Oxygen): 製鉄、化学プラント、医療(人工呼吸器)
  • 窒素(Nitrogen): 半導体製造、食品保存(酸化防止)、石油精製
  • アルゴン(Argon): 半導体製造、溶接、照明
  • 水素(Hydrogen): 製油所(脱硫)、化学プラント、燃料電池
  • ヘリウム(Helium): 半導体製造、MRI冷却、風船

水素エネルギー事業
脱炭素トレンドで水素需要が拡大しており、エアー・プロダクツは水素エネルギー事業に積極投資しています。NEOMグリーン水素プロジェクト(サウジアラビア)などの大規模プロジェクトを推進していますが、資本集約的で遅延・コスト超過リスクがあります。

医療用酸素
医療用酸素は人工呼吸器や在宅酸素療法で使用されます。COVID-19パンデミック時には需要が急増しました。医療用酸素は安定的な需要があり、景気循環の影響を受けにくい特性があります。

(2) セクター・業種の説明(Chemicals - 産業ガス)

エアー・プロダクツは「Materials」セクターの「Chemicals」業種に分類されます。ただし、一般的な化学品メーカーとは異なり、産業ガスに特化しています。

産業ガスは製造業に不可欠な産業インフラで、鉄鋼、化学、半導体、医療など幅広い産業で使用されます。景気循環の影響はあるものの、必需品としての需要は堅調で、ディフェンシブ銘柄の特性を持ちます。

(3) ビジネスモデルの特徴(長期契約・オンサイト型)

エアー・プロダクツのビジネスモデルの最大の特徴は、長期契約(10-20年)とオンサイト型ガス供給です。

長期契約(10-20年)
顧客と10-20年の長期契約を結び、安定的な収益を確保します。契約には価格調整条項が含まれており、エネルギー価格や原材料価格の変動を価格に反映できます。長期契約により、景気循環の影響を受けにくい安定収益を得られます。

オンサイト型ガス供給
顧客工場の敷地内にガス製造プラント(空気分離装置、水素製造装置等)を建設し、パイプラインで直接供給します。初期投資が大きいですが、長期契約により投資を回収し、安定的な収益を得られます。オンサイト型は大口顧客(製鉄所、化学プラント、半導体工場等)向けで、売上の大半を占めます。

その他の供給方式

  • オンサイト型: 顧客工場内にプラント建設、パイプラインで供給(大口顧客向け)
  • 液化ガス配送: タンクローリーで液化ガスを配送(中規模顧客向け)
  • シリンダー配送: ボンベで配送(小口顧客向け)

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業(Linde・Air Liquide)

エアー・プロダクツの主要競合企業は以下の通りです:

Linde(リンデ、アイルランド)
世界最大の産業ガスメーカーで、エアー・プロダクツより規模が大きく、時価総額も上回ります。2018年にPraxair(米国)との合併により誕生しました。北米、欧州、アジアでグローバルに事業を展開しています。

Air Liquide(エア・リキード、フランス)
世界第2位の産業ガスメーカーで、欧州を中心にグローバル展開しています。医療用酸素や在宅医療にも注力しており、医療分野での存在感が大きいです。

これら3社は産業ガス市場の上位3社を形成しており、世界市場の大半を占めています。

(2) 競合優位性(水素エネルギー投資・グローバル展開)

エアー・プロダクツの競合優位性は以下の3点です:

水素エネルギー事業への積極投資
LindeやAir Liquideと異なり、エアー・プロダクツは水素エネルギー事業に積極投資しています。NEOMグリーン水素プロジェクト(サウジアラビア)などの大規模プロジェクトを推進しており、脱炭素トレンドでの成長期待があります。ただし、資本集約的で遅延・コスト超過リスクがあり、アクティビスト投資家から批判を受けています。

グローバル展開
米州(Americas)、アジア(Asia)、欧州(Europe)の3地域でグローバルに事業を展開しています。2017年にパフォーマンスマテリアルズ部門を売却し、産業ガス事業に集中することで、グローバル競争力を強化しています。

長期契約による安定収益
顧客と10-20年の長期契約を結び、安定的な収益を確保しています。長期契約により、景気循環の影響を受けにくく、ディフェンシブ銘柄としての特性を持ちます。

(3) 市場でのポジショニング(世界最大級の産業ガス企業)

エアー・プロダクツは世界最大級の産業ガス企業として位置づけられています。Lindeより規模は小さいですが、Air Liquideと同等の規模を持ちます。

2017年にパフォーマンスマテリアルズ部門を売却し、産業ガス事業に集中することで、LindeやAir Liquideとの競争を強化しました。水素エネルギー事業への積極投資により、脱炭素トレンドでの成長を目指していますが、アクティビスト投資家から「利益を圧迫している」との批判を受け、戦略転換を実施中です。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移(2025年Q1決算)

2025年Q1(2024年10-12月期)の決算結果は以下の通りです:

項目 2025年Q1 備考
調整後EPS 2.86ドル ガイダンス上限超え
調整後EBITDA利益率 - 140bp改善

2024年度通期の決算結果は以下の通りです:

項目 2024年度 前年比
純利益 38.4億ドル +68%
利益率 32% 前年18%

2024年度は純利益が前年比68%増と大幅に増加し、利益率も32%(前年18%)と大幅に改善しました。

2025年度の見通し
2025年度はEPS11.90-12.10ドル(前年比3-4%減)、設備投資約50億ドルを見込んでいます。EPS減少は、水素プロジェクトへの投資が利益を圧迫しているためです。

※2025年10月時点のデータです。最新情報はエアー・プロダクツ公式IRページをご確認ください。
(出典: Air Products and Chemicals, Inc. 2025年Q1決算発表、SEC EDGAR)

(2) 配当履歴(40年超連続増配・配当貴族)

エアー・プロダクツは40年超連続増配の配当貴族銘柄です。配当利回りは約2-3%(2025年時点)で、配当成長を重視する投資家に適しています。

配当貴族としての位置づけ
配当貴族(S&P 500 Dividend Aristocrats)は、S&P500構成銘柄の中で25年以上連続増配している企業を指します。エアー・プロダクツは40年超連続増配の実績を持ち、配当貴族の中でも長期の実績を持つ企業です。

配当性向は適正水準を維持しており、配当の持続可能性は高いと考えられています。長期契約による安定収益を背景に、景気循環の影響を受けにくく、長期的な配当成長が期待されています。

(3) 財務健全性(営業利益率・EBITDA)

エアー・プロダクツの財務健全性は以下の点が評価されています:

高い営業利益率
2025年度に調整後営業利益率20%超、2030年までに30%を目標としています。コスト削減と組織再編により、高収益体質への転換を図っています。

EBITDA利益率の改善
2025年Q1は調整後EBITDA利益率が140bp改善しました。資本効率の改善が評価されています。

ROCE(投下資本利益率)の低下
一方、ROCE(投下資本利益率)は過去5年間で10%から7.7%に低下しています。資本利用は増加したが売上は伸び悩み(過去12ヶ月で売上3.1%減)、投資効率への懸念が高まっています。アクティビスト投資家から「水素プロジェクトへの多額投資が利益を圧迫している」との批判を受けています。

5. リスク要因

(1) 事業リスク(アクティビスト投資家圧力・戦略転換)

エアー・プロダクツの主要な事業リスクは以下の通りです:

アクティビスト投資家からの圧力
Mantle Ridge LPが3議席を獲得し、D.E. ShawがCEO退任を要求する公開書簡を発表しました。クリーンエネルギー戦略が利益を圧迫しているとの批判があり、戦略転換を迫られています。アクティビスト投資家の要求に応えるため、水素プロジェクトへの投資を削減し、コア産業ガス事業への回帰を明確にしています。

戦略転換のリスク
新CEOエドゥアルド・メネゼス氏の下、水素プロジェクトへの多額投資から高品質・高マルチプルの産業ガス事業モデルへと戦略転換中です。クリーンエネルギープロジェクトの一部をキャンセルし、コア産業ガス事業に年間約15億ドルを投資しています。戦略転換がうまく進まなければ、成長機会を失うリスクがあります。

(2) 市場環境リスク(ROCE低下・景気循環)

ROCE(投下資本利益率)の低下
ROCEは過去5年間で10%から7.7%に低下しています。資本利用は増加したが売上は伸び悩み(過去12ヶ月で売上3.1%減)、投資効率への懸念が高まっています。水素プロジェクトへの多額投資が利益を圧迫しており、投資家の信頼回復が課題です。

景気循環の影響
産業ガスは製造業に不可欠な産業インフラですが、景気循環の影響を受けます。製造業の生産量が減少すれば、産業ガスの需要も減少します。ただし、長期契約により、景気循環の影響を受けにくい安定収益を確保しています。

為替リスク
海外売上(アジア、欧州等)は為替レートの変動により、円換算での評価額が変動します。ドル高・円安が進めば円ベースでの評価額は上昇しますが、逆の場合は評価額が減少します。

(3) 規制・競争リスク(水素プロジェクト遅延・コスト超過)

水素プロジェクトの遅延・コスト超過
NEOMグリーン水素プロジェクト(サウジアラビア)などの大規模水素・CO2回収プロジェクトは資本集約的で、遅延・超過コストリスクがあります。水素エネルギー事業への積極投資が利益を圧迫しており、アクティビスト投資家から批判を受けています。

競合との競争
LindeやAir Liquideとの競争が激しく、過去12ヶ月で売上が3.1%減少しています。Lindeと比較して業績不振との指摘があり、競争力の強化が課題です。

規制の変化
環境規制の強化により、CO2排出削減が求められています。水素エネルギー事業はCO2排出削減に貢献しますが、規制の変更により事業環境が変化するリスクがあります。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み(配当貴族・産業インフラ・水素成長)

エアー・プロダクツの強みは以下の3点です:

40年超連続増配の配当貴族
40年超連続増配の実績を持ち、配当利回り約2-3%(2025年時点)で配当成長を継続しています。長期契約による安定収益を背景に、景気循環の影響を受けにくく、長期的な配当成長が期待されます。

産業ガスの必需品としての堅調な需要
産業ガスは製造業・医療・エネルギーに不可欠な産業インフラで、必需品としての需要は堅調です。長期契約により、景気循環の影響を受けにくい安定収益を確保しています。

水素エネルギー事業への積極投資
脱炭素トレンドで水素需要が拡大しており、NEOMグリーン水素プロジェクト(サウジアラビア)などの大規模プロジェクトを推進しています。ただし、資本集約的で遅延・コスト超過リスクがあり、アクティビスト投資家から批判を受けています。

(2) リスク要因(再掲)

一方、以下のリスク要因にも留意が必要です:

アクティビスト投資家からの圧力
Mantle Ridge LPが3議席獲得、D.E. ShawがCEO退任を要求する公開書簡を発表しました。クリーンエネルギー戦略が利益を圧迫しているとの批判があり、戦略転換を迫られています。

ROCE(投下資本利益率)の低下
ROCEは過去5年間で10%から7.7%に低下しています。資本利用は増加したが売上は伸び悩み(過去12ヶ月で売上3.1%減)、投資効率への懸念が高まっています。

水素プロジェクトの遅延・コスト超過
NEOMグリーン水素プロジェクト等の資本集約的プロジェクトの遅延・超過コストリスクが残ります。

(3) 向いている投資家(配当成長志向・ディフェンシブ志向)

エアー・プロダクツは以下のような投資家に向いています:

配当成長を重視する長期投資家
40年超連続増配の実績を持ち、配当貴族銘柄として配当成長を継続しています。配当利回りは約2-3%と高配当ではありませんが、配当成長率を重視する投資家に適しています。

ディフェンシブ銘柄を好む投資家
産業ガスは製造業・医療・エネルギーに不可欠な産業インフラで、必需品としての需要は堅調です。長期契約により、景気循環の影響を受けにくい安定収益を確保しており、ディフェンシブ銘柄を好む投資家に向いています。

水素エネルギーの成長に注目する投資家
脱炭素トレンドで水素需要が拡大しており、水素エネルギー事業への積極投資により成長期待があります。ただし、資本集約的で遅延・コスト超過リスクがあり、アクティビスト投資家から批判を受けている点に留意が必要です。

免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言を行うものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新の財務データや株価情報は、エアー・プロダクツ公式IRページやSEC EDGARでご確認ください。米国株投資には為替リスク、税制(外国税額控除)、証券会社の手数料などが関わりますので、事前に十分ご確認ください。

よくある質問

Q1エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズの配当利回りは?

A1約2-3%です(2025年時点)。40年超連続増配の配当貴族銘柄で、安定した配当成長を重視する投資家に適しています。配当性向は適正水準を維持しており、長期契約による安定収益を背景に、景気循環の影響を受けにくく、長期的な配当成長が期待されています。

Q2エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズの主な競合は?

A2Linde(リンデ、アイルランド)、Air Liquide(エア・リキード、フランス)が主要競合です。エアー・プロダクツは水素エネルギー事業への積極投資で差別化していますが、資本集約的で遅延・コスト超過リスクがあり、アクティビスト投資家から批判を受けています。競合との差別化ポイントは、①水素エネルギー事業への積極投資、②グローバル展開(米州・アジア・欧州)、③長期契約による安定収益、です。

Q3エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズのリスク要因は?

A3主なリスクは、①アクティビスト投資家からの圧力(Mantle Ridge LPが3議席獲得、D.E. ShawがCEO退任を要求)、②ROCE(投下資本利益率)が過去5年間で10%から7.7%に低下し投資効率への懸念、③水素プロジェクト(NEOMグリーン水素等)の遅延・コスト超過リスク、です。クリーンエネルギー戦略が利益を圧迫しているとの批判を受け、戦略転換を実施中です。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。

Q4エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズは長期投資に向いている?

A4産業ガスは製造業・医療・エネルギーに不可欠な産業インフラで、40年超連続増配の実績から、配当成長志向のディフェンシブ投資家に向いています。長期契約により景気循環の影響を受けにくい安定収益を確保しており、堅実な配当株を好む方に適しています。水素エネルギーの成長に注目する投資家にも適していますが、資本集約的で遅延・コスト超過リスクに留意が必要です。投資判断はご自身で行ってください。