0. この記事でわかること
本記事では、インターナショナル・フレーバーズ・アンド・フレグランシズ(IFF)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 食品・飲料・化粧品業界向けの香料・フレーバー大手で、2018年FRUTAROM買収により市場シェア1位を獲得。イノベーション・R&D投資の増強、サステナビリティ戦略(2030年までに全主要製造拠点でゼロウェイスト達成目標)、北米市場シェア拡大(現在3位から1位・2位を目指す)が注目テーマです
- 事業内容と成長戦略: Taste(風味)、Food Ingredients(食品原料)、Health & Biosciences(ヘルスバイオサイエンス)、Scent(香り)の4セグメント。Pharma Solutions売却で負債削減を進め、2025年にR&D・商業・生産能力への戦略的投資を増加。2026年から売上・利益成長加速、2027年にフル効果を発揮予定。2025年売上106~109億ドル、調整後EBITDA 20~21.5億ドルを見込む
- 競合との差別化: Givaudan、Symrise、Firmenich、Kerry Groupとの競争において、2018年FRUTAROM買収で市場シェア1位獲得、世界33カ国にグローバルネットワーク展開、バイオテクノロジー・機能性食品原料への事業拡大が差別化要因
- 財務・配当の実績: Q1 2025は売上28億ドル(比較可能通貨中立ベースで3%成長)、調整後営業EBITDA 9%増、マージン120bps改善の20.3%。負債89.8億ドル(純負債85.1億ドル)、Pharma Solutions売却で純負債/調整後EBITDA比率が3倍未満に改善。配当は維持されているが、負債削減を優先
- リスク要因: 高水準の負債(89.8億ドル)と現金枯渇懸念、弱い2025年ガイダンス(売上106~109億ドルは2024年の115億ドルを下回る)で株価5.2%下落、マージン圧力(Q4調整後EBITDAマージン17%に低下)、貸し手の改善要求で株主希薄化リスク
投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨ではありません。
1. なぜインターナショナル・フレーバーズ・アンド・フレグランシズ(IFF)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
インターナショナル・フレーバーズ・アンド・フレグランシズ(IFF)は、食品・飲料・化粧品業界向けの香料・フレーバーを提供する専門企業で、以下の3つの戦略で成長を目指しています:
① 成長重視戦略へのシフトと投資増強
2025年にR&D、商業、生産能力、技術への戦略的投資を増加します。2026年から売上・利益成長が加速し、2027年にフル効果を発揮する見込みです。市場リーダーシップ維持に向けた研究開発強化により、顧客ニーズに先行した新製品開発を推進しています。今後2年で利益倍増が期待されており、アナリストの平均レーティングは「Strong Buy」です。
② ポートフォリオ最適化と資産売却
Pharma Solutions事業を2025年6月30日売却予定(当初計画より2ヶ月前倒し)です。売却により資本構造を強化し、純負債/調整後EBITDA比率が3倍未満に改善します。非中核事業を売却し、中核事業(Taste、Food Ingredients、Health & Biosciences、Scent)に集中することで、経営資源の効率的配分を実現しています。
③ 事業セグメント再編
2025年1月1日からNourishセグメントをTasteとFood Ingredientsの2事業に再編し、市場ニーズと戦略優先度に整合させました。Tasteセグメントは風味(フレーバー)に特化し、Food Ingredientsセグメントは食品原料(栄養成分、機能性素材)に特化することで、顧客セグメントごとの最適な製品・サービス提供を実現しています。
(2) 注目テーマ(イノベーション・R&D投資、サステナビリティ、北米市場シェア拡大)
投資家が注目する3つのテーマは以下です:
- イノベーションとR&D投資: 市場リーダーシップ維持に向けた研究開発強化。2025年にR&D投資を増加し、2026~2027年に成長加速を見込む。顧客ニーズに先行した新製品開発(植物由来香料、機能性食品原料、バイオテクノロジー素材等)が成長エンジンです
- サステナビリティ戦略: 2030年までに全主要製造拠点でゼロウェイスト達成目標を掲げており、2023年に10拠点追加認証を取得しました。環境配慮型製品開発、サプライチェーン透明性向上、再生可能エネルギー利用拡大が進行中です
- 北米市場シェア拡大: 現在3位から1位・2位を目指しています。北米は世界最大の香料市場で、シェア拡大により売上・利益の大幅増加が期待されます。主要顧客(P&G、Coca-Cola、PepsiCo、Unilever等)との関係強化が焦点です
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家の関心:
- アナリストの強気評価: 15名のアナリストの平均目標株価は85.23ドル(現在価格から31.85%上昇)で、コンセンサスは「Strong Buy」です
- 2026~2027年の成長加速: 戦略的投資の効果が本格化し、利益倍増が予想されています
- Pharma Solutions売却による負債削減: 売却完了で純負債/調整後EBITDA比率が3倍未満に改善し、財務健全性が向上します
投資家の懸念:
- 高水準の負債と現金枯渇懸念: 2024年12月時点で負債89.8億ドル(前年101億ドルから減少)、現金4.69億ドル、純負債85.1億ドル。時価総額対比で高レバレッジであり、貸し手が改善要求すれば株主の大幅希薄化リスクがあります
- 弱い2025年ガイダンスによる株価下落: 2025年売上予想106~109億ドルは2024年の115億ドルを下回り、株価5.2%下落しました。売上7.93%減、ROE 0.14%と業界平均を下回る収益性が懸念されています
- マージン圧力: R&D・販管費増加でマージン圧力が生じており、Q4調整後EBITDAマージンは17%に低下しました(Q1は20.3%に改善)
2. インターナショナル・フレーバーズ・アンド・フレグランシズの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(Taste、Food Ingredients、Health & Biosciences、Scent)
IFFの事業は以下の4つのセグメントで構成されています(2025年10月時点):
① Tasteセグメント(風味)
- 食品・飲料向けフレーバー: 炭酸飲料、乳製品、菓子、スナック、調味料向けの香料・風味素材
- 主要顧客: Coca-Cola、PepsiCo、Nestlé、Mondelez等の食品・飲料大手
- 業績: Q1 2025で売上7%増、調整後営業EBITDA 22%増と堅調
② Food Ingredientsセグメント(食品原料)
- 栄養成分: ビタミン、ミネラル、プロバイオティクス(腸内細菌)、植物由来タンパク質
- 機能性素材: 食品の保存性向上、テクスチャー改善、栄養強化素材
- 業績: 2025年1月1日にNourishセグメントから再編。健康志向・機能性食品需要の拡大が追い風
③ Health & Biosciencesセグメント(ヘルスバイオサイエンス)
- バイオテクノロジー素材: 発酵技術・微生物培養による素材開発(持続可能な代替素材)
- 健康・栄養成分: サプリメント向けの高付加価値素材
- 業績: バイオテクノロジーへの事業拡大により、従来の香料事業から差別化
④ Scentセグメント(香り)
- 香粧品向けフレグランス: 香水、化粧品、シャンプー、洗剤向けの香料
- 主要顧客: L'Oréal、Estée Lauder、P&G、Unilever等の化粧品・日用品大手
- 業績: 香粧品市場の成長に連動し、安定収益を確保
⑤ Pharma Solutions(医薬品ソリューション、売却予定)
- 医薬品向け機能性素材: 医薬品の溶解性向上、徐放性制御素材
- 業績: Q1 2025で売上2.66億ドル(8%増)、調整後営業EBITDA 5400万ドル(19%増)
- 売却計画: 2025年6月30日売却予定(当初計画より2ヶ月前倒し)
(2) セクター・業種の説明(素材:化学品)
IFFはMaterials(素材)セクターのChemicals(化学品)業種に分類されます。
- セクター特性: 基礎素材(化学品、金属、紙パルプ等)を提供するセクター。景気敏感度は中程度で、製造業の生産活動に連動します。香料・フレーバーは消費財向けであり、景気後退時にも相対的に安定した需要があります
- 業種特性: 特殊化学品(スペシャリティケミカル)に分類され、汎用化学品に比べて高付加価値・高利益率を実現します。技術力、顧客密着型開発、グローバルネットワークが競争優位性の源泉です
(3) ビジネスモデルの特徴(香料・フレーバーの専門性と顧客密着型開発)
香料・フレーバーの専門性
IFFは食品・飲料・化粧品業界向けに、香料・フレーバーを提供する専門企業です。顧客(Coca-Cola、PepsiCo、Nestlé、L'Oréal等)は、新製品開発時にIFFの技術者と協働し、消費者嗜好に合った香り・味を設計します。この顧客密着型開発により、長期的な取引関係を構築し、リピート受注を獲得します。
バイオテクノロジーへの事業拡大
従来の香料事業から、バイオテクノロジー・機能性食品原料へ事業拡大しています。発酵技術・微生物培養による素材開発(Health & Biosciencesセグメント)は、持続可能な代替素材として成長が期待されます。例えば、動物由来素材の代替として、微生物培養による香料・栄養成分を開発しています。
M&A戦略
2018年のFRUTAROM買収(約72億ドル)、2021年のDuPont栄養・バイオサイエンス部門買収(約263億ドル)により、事業規模を大幅に拡大しました。FRUTAROM買収により市場シェア1位を獲得し、DuPont買収により機能性食品原料・バイオテクノロジー分野に進出しました。一方で、負債が大幅に増加し、負債削減が経営課題となっています。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(Givaudan、Symrise、Firmenich、Kerry Group)
IFFの主要競合企業は以下です:
グローバル香料大手:
- Givaudan(スイス): 世界最大の香料企業(IFFがFRUTAROM買収前は1位)。食品・飲料・香粧品向けに幅広い製品を提供
- Symrise(ドイツ): 香料・フレーバー大手。栄養成分・ペットフード向けにも展開
- Firmenich(スイス): 香料業界の老舗企業。高級香水向けフレグランスに強み
食品原料大手:
- Kerry Group(アイルランド): 食品原料・フレーバー大手。食品加工業向けに機能性素材を提供
- Chr. Hansen(デンマーク): プロバイオティクス・発酵素材の専門企業
(2) 競合優位性(2018年FRUTAROM買収で市場シェア1位、グローバルネットワーク)
IFFの競合優位性は以下の3点です:
① 2018年FRUTAROM買収で市場シェア1位獲得
2018年のFRUTAROM買収(約72億ドル)により、香料・フレーバー市場で世界シェア1位を獲得しました。FRUTAROMは天然香料・食品原料に強みを持ち、IFFの合成香料・フレグランス事業と補完関係にあります。規模の経済(研究開発コスト分散、グローバル調達力)により、競合優位性を強化しています。
② 世界33カ国にグローバルネットワーク展開
世界33カ国に進出し、グローバル顧客(Coca-Cola、PepsiCo、Nestlé、L'Oréal、P&G、Unilever等)の各地域での新製品開発をサポートしています。地域ごとの消費者嗜好(例: アジアは甘味・辛味、欧州はハーブ・スパイス、北米は乳製品・バニラ等)に対応した製品開発力が、グローバル展開企業にとって必須です。
③ バイオテクノロジー・機能性食品原料への事業拡大
2021年のDuPont栄養・バイオサイエンス部門買収により、バイオテクノロジー(発酵技術・微生物培養)、機能性食品原料(プロバイオティクス、栄養成分)に進出しました。従来の香料企業(Givaudan、Firmenich)との差別化要因となっており、健康志向・機能性食品需要の拡大が追い風です。
(3) 市場でのポジショニング(香料業界の統合リーダー)
IFFは香料業界の統合リーダーとして、以下のポジショニングを確立しています:
- 市場シェア1位: 2018年FRUTAROM買収で世界シェア1位を獲得。主要市場・カテゴリーで1位または2位のシェア獲得を目指しています
- 4セグメント多角化: Taste、Food Ingredients、Health & Biosciences、Scentの4セグメントで多角化し、特定市場の変動リスクを分散しています
- 北米市場シェア拡大: 現在3位から1位・2位を目指しており、最大の成長機会と位置づけています
一方で、DuPont買収による負債増加(89.8億ドル)が財務健全性を圧迫しており、Pharma Solutions売却等の資産売却により負債削減を進めています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(Q1 2025は売上28億ドル、調整後営業EBITDA 9%増)
以下はIFFの最近の業績推移です(2025年10月時点):
Q1 2025業績(2025年1-3月期):
- 売上: 28億ドル(比較可能通貨中立ベースで3%成長)
- 調整後営業EBITDA: 9%増
- 調整後営業EBITDAマージン: 20.3%(120bps改善)
- Tasteセグメント: 売上7%増、調整後営業EBITDA 22%増
- Pharma Solutions: 売上2.66億ドル(8%増)、調整後営業EBITDA 5400万ドル(19%増)
2024年通期業績:
- 売上: 115億ドル
- 営業キャッシュフロー: 11億ドル
- 設備投資(CapEx): 4.63億ドル(売上比約4%)
2025年通期ガイダンス:
- 売上: 106~109億ドル(2024年の115億ドルを下回る)
- 調整後EBITDA: 20~21.5億ドル
- 比較可能通貨中立ベース成長率: 1~4%
※ 弱い2025年ガイダンスにより、株価は5.2%下落しました。
アナリスト評価:
- コンセンサスレーティング: 「Strong Buy」(15名のアナリスト)
- 平均目標株価: 85.23ドル(現在価格から31.85%上昇)
長期見通し:
- 2026年から売上・利益成長が加速
- 2027年に戦略的投資のフル効果を発揮
- 今後2年で利益倍増が予想されています
※ 財務データは変動する可能性があります。最新情報はIFF公式IRページ(https://ir.iff.com/)または10-K・10-Qレポート(SEC EDGAR)でご確認ください。
(2) 配当履歴(配当維持、利回り中程度)
IFFの配当は維持されていますが、負債削減を優先するため配当成長は限定的です。
- 配当方針: 中程度の配当利回りを維持(具体的な数値は最新データを参照)
- 負債削減優先: Pharma Solutions売却等の資産売却により、配当よりも負債削減を優先
米国株配当の税金(日本人投資家向け):
米国株の配当には二重課税(米国10% + 日本20.315%)が適用されますが、外国税額控除で米国分の一部を取り戻せます。また、NISA口座で保有すれば日本の税金(20.315%)が非課税になります(米国の10%源泉徴収は回避不可)。
(3) 財務健全性(負債89.8億ドル、Pharma Solutions売却で負債削減進行中)
IFFの財務健全性は以下の通りです:
負債水準:
- 2024年12月時点: 負債89.8億ドル(前年101億ドルから減少)、現金4.69億ドル、純負債85.1億ドル
- 純負債/調整後EBITDA比率: Pharma Solutions売却完了で3倍未満に改善予定
Pharma Solutions売却:
- 売却時期: 2025年6月30日予定(当初計画より2ヶ月前倒し)
- 効果: 負債削減により、財務健全性が向上
営業キャッシュフロー:
- 2024年通期: 11億ドル
- 設備投資(CapEx): 4.63億ドル(売上比約4%)
懸念点:
- 時価総額対比で高レバレッジであり、貸し手が改善要求すれば株主の大幅希薄化リスクがあります
- 大口投資家の資金流出(流入比率47.4%)、過去5日間で弱気シグナル4、強気0が確認されています
※ 2025年10月時点のデータです。最新情報はIFF公式IRページをご確認ください。
(出典: IFF Q1 2025 Earnings、Simply Wall St Analysis)
5. リスク要因
(1) 事業リスク(高水準の負債、事業統合の成否、R&D投資増加によるマージン圧力)
IFFの主な事業リスクは以下です:
高水準の負債と現金枯渇懸念
2024年12月時点で負債89.8億ドル(前年101億ドルから減少)、現金4.69億ドル、純負債85.1億ドルです。時価総額対比で高レバレッジであり、貸し手が改善要求すれば株主の大幅希薄化リスクがあります。Pharma Solutions売却により負債削減が進む見込みですが、マクロ経済の不確実性や業績悪化により、売却計画が想定通り進まないリスクがあります。
事業統合の成否
2021年のDuPont栄養・バイオサイエンス部門買収(約263億ドル)の統合プロセスが継続中です。統合コスト、組織文化の違い、主要人材の離職により、期待したシナジー効果が得られないリスクがあります。また、2025年1月1日のNourishセグメント再編(TasteとFood Ingredientsに分割)が顧客・従業員に混乱を与える可能性があります。
R&D投資増加によるマージン圧力
2025年にR&D、商業、生産能力への戦略的投資を増加するため、短期的にマージン圧力が生じます。Q4調整後EBITDAマージンは17%に低下しており(Q1は20.3%に改善)、R&D投資増加により、2025年の利益率が圧迫される可能性があります。2026~2027年に投資効果が本格化しますが、成果が出るまでの期間は業績変動リスクがあります。
(2) 市場環境リスク(マクロ経済の不確実性、為替変動、原材料価格変動)
マクロ経済の不確実性
食品・飲料・化粧品業界の需要は、消費者の可処分所得に連動します。景気後退時には、消費者が高価格製品から低価格製品に切り替えるダウントレード現象が生じ、香料・フレーバーの高付加価値製品の需要が減少するリスクがあります。また、顧客企業(Coca-Cola、PepsiCo、Nestlé等)のコスト削減圧力により、IFFへの値下げ要求が強まる可能性があります。
為替変動
米国株投資では為替リスクが常に存在します。円高局面(例: 1ドル=140円→130円)では、ドル建て株価が上昇しても円換算でのリターンが減少します。逆に円安局面(例: 1ドル=140円→150円)では為替差益が上乗せされます。為替手数料も考慮する必要があります(SBI証券は片道25銭、住信SBIネット銀行経由で4銭に削減可能)。
原材料価格変動
香料・フレーバーの原材料(天然香料、化学品、農産物等)は、気候変動、地政学リスク、サプライチェーン混乱により価格が変動します。原材料価格上昇を製品価格に転嫁できない場合、利益率が低下します。一方で、バイオテクノロジー(発酵技術・微生物培養)による代替素材開発により、原材料価格変動リスクを低減する取り組みが進行中です。
(3) 規制・競争リスク(サステナビリティ規制強化、競合との価格競争)
サステナビリティ規制強化
EU・米国では、サステナビリティ規制(環境負荷開示、サプライチェーン透明性、再生可能エネルギー利用義務等)が強化されています。IFFは2030年までに全主要製造拠点でゼロウェイスト達成目標を掲げていますが、規制対応コストが増加するリスクがあります。また、天然香料の調達において、森林破壊・生物多様性喪失への批判が高まっており、認証取得コストが上昇する可能性があります。
競合との価格競争
Givaudan、Symrise、Firmenich、Kerry Group等の競合が技術革新・価格競争により市場シェアを奪うリスクがあります。特に、中国・インド等の新興国企業が低価格製品で参入すると、価格競争が激化し、利益率が低下します。IFFは市場シェア1位を維持していますが、北米市場では3位であり、1位・2位を目指すための投資が必要です。
知的財産権リスク
香料・フレーバーの配合は企業秘密(トレードシークレット)として保護されていますが、模倣品・類似品により差別化が困難になるリスクがあります。また、特許訴訟により知的財産権侵害を主張されると、訴訟コストや損害賠償が発生する可能性があります。
※ リスク要因は予測に基づくものであり、実際の結果は異なる可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(市場シェア1位、4セグメント多角化、2026-2027年成長加速見込み)
IFFの主な強みは以下の3点です:
① 市場シェア1位とグローバルネットワーク
2018年FRUTAROM買収により、香料・フレーバー市場で世界シェア1位を獲得しました。世界33カ国にグローバルネットワークを展開し、主要顧客(Coca-Cola、PepsiCo、Nestlé、L'Oréal、P&G、Unilever等)の各地域での新製品開発をサポートしています。規模の経済と顧客密着型開発により、競合優位性を確立しています。
② 4セグメント多角化
Taste(風味)、Food Ingredients(食品原料)、Health & Biosciences(ヘルスバイオサイエンス)、Scent(香り)の4セグメントで多角化し、特定市場の変動リスクを分散しています。Q1 2025ではTasteセグメントが売上7%増、調整後営業EBITDA 22%増と堅調で、成長エンジンとして機能しています。
③ 2026~2027年の成長加速見込み
2025年にR&D、商業、生産能力への戦略的投資を増加し、2026年から売上・利益成長が加速、2027年にフル効果を発揮する見込みです。今後2年で利益倍増が予想されており、アナリストの平均目標株価は85.23ドル(現在価格から31.85%上昇)です。
(2) リスク要因(高水準の負債、弱い2025年ガイダンス、株主希薄化リスク)
一方で、以下のリスク要因に注意が必要です:
① 高水準の負債と現金枯渇懸念
負債89.8億ドル(純負債85.1億ドル)は依然高水準で、時価総額対比で高レバレッジです。貸し手が改善要求すれば、株主の大幅希薄化リスクがあります。Pharma Solutions売却により負債削減が進む見込みですが、売却計画が想定通り進まないリスクがあります。
② 弱い2025年ガイダンス
2025年売上予想106~109億ドルは2024年の115億ドルを下回り、株価は5.2%下落しました。売上7.93%減、ROE 0.14%と業界平均を下回る収益性が懸念されています。短期的には業績変動リスクが高い状況です。
③ マージン圧力
R&D・販管費増加でマージン圧力が生じており、Q4調整後EBITDAマージンは17%に低下しました(Q1は20.3%に改善)。2025年の利益率が圧迫される可能性があり、2026~2027年の成長加速までの期間は不確実性が存在します。
(3) 向いている投資家(中長期視点で業績回復を期待できる投資家、消費財セクター投資家)
IFFは以下のような投資家に向いています:
向いている投資家:
- 中長期視点で業績回復を期待できる投資家: 2026~2027年に投資効果が本格化し、利益倍増が予想されています。短期的な業績変動を許容できる投資家に向いています
- 消費財セクター投資家: 食品・飲料・化粧品業界の「裏方」として安定需要があり、日常生活に欠かせない製品を提供しています
- アナリストの強気評価を重視する投資家: コンセンサスレーティングは「Strong Buy」で、平均目標株価は85.23ドル(現在価格から31.85%上昇)です
向いていない投資家:
- 短期的な株価上昇を狙う投資家: 弱い2025年ガイダンスにより株価は下落しており、短期的な株価変動リスクが高い状況です
- 高配当を求める投資家: 配当は維持されていますが、負債削減を優先するため配当成長は限定的です
- 財務健全性を重視する投資家: 負債89.8億ドル(純負債85.1億ドル)は高水準であり、現金枯渇懸念があります
免責事項:
本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨ではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。財務データ・税率・制度は変更される可能性があり、最新情報はIFF公式IRページ、国税庁、金融庁等の公式サイトでご確認ください。為替リスク・市場リスク・信用リスク等により、元本割れする可能性があります。
Q: インターナショナル・フレーバーズ・アンド・フレグランシズの配当利回りは?
A: 中程度の配当利回りを維持しています(具体的な数値は最新データを参照)。配当は維持されていますが、負債削減を優先するため配当成長は限定的です。Pharma Solutions売却により負債削減が進めば、将来的に配当成長余地が拡大する可能性があります。米国株配当には米国10%・日本20.315%の二重課税が適用されます(外国税額控除・NISA口座で軽減可能)。
Q: インターナショナル・フレーバーズ・アンド・フレグランシズの主な競合は?
A: Givaudan(スイス)、Symrise(ドイツ)、Firmenich(スイス)、Kerry Group(アイルランド)などです。IFFは2018年のFRUTAROM買収により市場シェア1位を獲得しています。差別化ポイントは、世界33カ国のグローバルネットワーク、バイオテクノロジー・機能性食品原料への事業拡大(2021年DuPont買収)、顧客密着型開発による長期的な取引関係です。
Q: インターナショナル・フレーバーズ・アンド・フレグランシズのリスク要因は?
A: 主なリスクは以下の通りです:① 高水準の負債(89.8億ドル)と現金枯渇懸念、時価総額対比で高レバレッジ、② 弱い2025年ガイダンス(売上106~109億ドルは2024年の115億ドルを下回る)で株価5.2%下落、③ R&D投資増加によるマージン圧力(Q4調整後EBITDAマージン17%に低下)、④ 事業統合の成否(DuPont買収の統合プロセス継続中)、⑤ マクロ経済の不確実性。詳細は本文「5. リスク要因」を参照してください。
Q: インターナショナル・フレーバーズ・アンド・フレグランシズは長期投資に向いている?
A: 中長期視点で業績回復を期待できる投資家に向いています。2026~2027年に投資効果が本格化し、利益倍増が予想されています。アナリストコンセンサスは「Strong Buy」(平均目標株価85.23ドル、現在価格から31.85%上昇)で、長期的な成長が期待されます。ただし、現時点では負債水準が高く(89.8億ドル)、短期的には業績変動リスクがあるため、投資判断はご自身で行ってください。
Q: インターナショナル・フレーバーズ・アンド・フレグランシズの成長戦略は?
A: 2025年にR&D、商業、生産能力への戦略的投資を増強し、2026年から成長加速を見込んでいます。Pharma Solutions売却(2025年6月30日予定)で負債削減を進め、NourishセグメントをTasteとFood Ingredientsに再編して市場ニーズに対応しています。北米市場シェア拡大(現在3位から1位・2位を目指す)、サステナビリティ戦略(2030年までに全主要製造拠点でゼロウェイスト達成)が成長ドライバーです。