S&P500

シグナ (CI)

Cigna Corp

0. この記事でわかること

本記事では、シグナ(CI)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: Evernorth専門薬局事業の拡大(35億ドル投資)、バイオシミラー採用の進展、リーダーシップ刷新による成長加速、EPS成長率26.38%(業界平均15.34%を大幅上回る)
  • 事業内容と成長戦略: 大手医療保険・ヘルスケアサービス企業。2事業部門(Cigna Healthcare + Evernorth Health Services)で統合ヘルスケアモデルを実現。2018年のExpress Scripts買収でPBM事業を強化
  • 競合との差別化: UnitedHealth Group、CVS Health、Humanaなどと競合。PBM統合、専門薬局事業の拡大、段階的成長モデルで差別化
  • 財務・配当の実績: 2025年Q1に収益655億ドル(前年比14%増)、調整後EPS 6.74ドル。配当利回りは1.5~2.0%程度で増配を継続
  • リスク要因: PBM規制強化懸念(株価が過去3ヶ月で18.7%下落)、高水準の負債(302億ドル)、ストップロス保険コスト増加

シグナは、医療保険と薬局給付管理(PBM)を統合したヘルスケアサービス企業です。高齢化と医療費増加で長期需要が見込まれ、割安なバリュエーションと配当成長が魅力のディフェンシブバリュー株として注目されています。

1. なぜシグナ(CI)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

シグナは以下の3つの成長戦略を推進しています:

Evernorth専門薬局事業の拡大
35億ドルをShields Health Solutionsに投資し、専門医薬品市場でのリーダーシップを強化しています。専門医薬品(がん、リウマチなど高額・複雑な疾患向け)は高い利益率を持ち、成長ドライバーとなっています。また、Humiraバイオシミラー(後発品)の採用が進展し、コスト削減と利益率向上に寄与しています(出典: The Cigna Group 2024年決算、2025年10月時点)。

段階的成長モデル
基盤事業(Express Scripts、米国商業保険、国際保険)で安定成長を確保し、加速成長領域(専門薬局、Evernorth Care、政府保険)で市場拡大を推進しています。基盤事業の安定収益を活用し、高成長領域に投資することで、リスクを分散しながら成長を実現しています。

リーダーシップ刷新(2025年3月)
2025年3月に組織構造を顧客・患者重視に再編し、成長戦略を加速しています。組織をよりシンプル化し顧客フォーカスを強化することで、サービス品質の向上と業務効率の改善を図っています。

(2) 注目テーマ(バイオシミラー・専門医薬品・統合ヘルスケアサービス)

シグナは、以下のテーマで投資家の注目を集めています:

  • バイオシミラー: バイオ医薬品の後発品であり、特許切れのバイオ医薬品と同等の効果を持つ低価格の代替薬。Humiraバイオシミラーの採用が進展し、コスト削減に寄与
  • 専門医薬品: がん、リウマチなど高額・複雑な疾患向けの特殊医薬品。高い利益率を持ち、成長ドライバーとなっている
  • 統合ヘルスケアサービス: 医療保険とPBM(薬局給付管理)を統合し、コスト削減と顧客体験の向上を実現。2018年のExpress Scripts買収により実現

(3) 投資家の関心・懸念点

関心点

  • 2025年Q1に収益655億ドル(前年比14%増)、調整後EPS 6.74ドルと好調な結果を報告し、通年ガイダンスを29.60ドルに引き上げたこと
  • アナリストの平均目標株価は396.90ドル(現在価格から29.1%上昇)で「Strong Buy」評価を獲得していること
  • EPS成長率は年率26.38%と予測され、米国ヘルスケア業界平均(15.34%)を大きく上回る見通しであること

懸念点

  • PBM(薬局給付管理)への規制強化懸念が投資家心理を圧迫し、過去3ヶ月で株価が18.7%下落したこと
  • 超党派法案が薬局資産の分離を義務付ける可能性があり、PBM事業の収益性に影響を与える懸念があること
  • 高水準の負債(2024年Q3時点で長期債務302億ドルに対し現金・現金同等物は59億ドルのみ)により、財務柔軟性が制限されていること

2. シグナの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業(医療保険+薬局給付管理の統合モデル)

シグナは、2つの主力事業を展開しています:

Cigna Healthcare(医療保険)
企業・個人向けの医療保険を提供しています。米国商業保険、国際保険、政府保険(メディケア・メディケイド)を取り扱っており、幅広い顧客基盤を持ちます。ただし、2025年3月にメディケア事業をHCSCに売却し、収益金を自社株買いに充当する戦略を実施しました。

Evernorth Health Services(薬局給付管理・専門薬局)
PBM(Pharmacy Benefit Manager、薬局給付管理)事業を中核としています。保険会社と薬局の間で処方薬の価格交渉や給付管理を行い、医療費の削減を実現します。2018年にExpress Scriptsを買収し、統合ヘルスケアモデルを実現しました。また、専門医薬品を扱う専門薬局事業にも注力しており、高い利益率を持つ成長ドライバーとなっています。

(2) セクター・業種の説明(Health Care - Health Care Providers & Services)

シグナは、Health Care(ヘルスケア)セクターHealth Care Providers & Services(医療サービス提供)業種に分類されます。ヘルスケアセクターは、高齢化社会と医療費増加により長期的な成長が期待されるディフェンシブセクターです。景気後退局面でも医療需要は比較的安定しており、景気変動の影響を受けにくい特性があります。

(3) ビジネスモデルの特徴(Cigna Healthcare + Evernorth Health Services)

シグナの最大の特徴は、医療保険とPBMを統合したビジネスモデルです。医療保険で顧客を獲得し、PBM事業で処方薬のコスト削減を実現することで、医療費を抑えながら利益率を向上させています。2018年のExpress Scripts買収により、PBM事業の規模を大幅に拡大し、統合ヘルスケアモデルを確立しました。

段階的成長モデルにより、基盤事業(Express Scripts、米国商業保険、国際保険)で安定成長を確保し、加速成長領域(専門薬局、Evernorth Care、政府保険)で市場拡大を推進しています。リスクを分散しながら、高成長領域に投資する戦略を採用しています。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業(UnitedHealth Group、CVS Health、Humana等)

シグナの主要競合企業は以下の通りです:

UnitedHealth Group
米国最大の医療保険・ヘルスケアサービス企業。医療保険(UnitedHealthcare)とPBM・ヘルスケアサービス(Optum)を展開し、規模の優位性を持ちます。

CVS Health
薬局チェーン、PBM(CVS Caremark)、医療保険(Aetna)を統合した総合ヘルスケア企業。小売薬局とPBMの統合により、顧客接点を拡大しています。

Humana
メディケア(高齢者向け医療保険)に強みを持つ医療保険企業。メディケアアドバンテージ(民間保険会社が提供するメディケア補完保険)で高いシェアを持ちます。

(2) 競合優位性(PBM統合、専門薬局事業の拡大)

シグナは以下の競合優位性を持ちます:

PBM統合
2018年のExpress Scripts買収により、PBM事業を統合し、医療保険とPBMのシナジーを実現しています。処方薬のコスト削減と利益率向上を同時に達成しています。

専門薬局事業の拡大
35億ドルをShields Health Solutionsに投資し、専門医薬品市場でのリーダーシップを強化しています。専門医薬品は高い利益率を持ち、成長ドライバーとなっています。

段階的成長モデル
基盤事業で安定成長を確保し、加速成長領域で市場拡大を推進することで、リスクを分散しながら成長を実現しています。

(3) 市場でのポジショニング(大手医療保険・PBM統合企業)

シグナは、UnitedHealth Group、CVS Healthに次ぐ規模を持つ大手医療保険・PBM統合企業です。PBM事業の規模では業界トップクラスであり、Express Scriptsの買収により市場での存在感を強めています。2024年10月にはHumanaとの合併交渉が再開されており、成否により株価が大きく変動する可能性があります。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移(2025年Q1の業績含む)

シグナの財務状況は以下の通りです(2024年通年・2025年Q1決算時点):

2024年通年業績

項目 2024年 前年比
総収益 2,471億ドル +27%
調整後営業利益 77億ドル(1株27.33ドル) +2.7%
株主還元 86億ドル(配当+自社株買い) -

2025年Q1業績

項目 2025年Q1 前年比
総収益 655億ドル +14%
調整後EPS 6.74ドル -
通年EPS見通し 29.60ドル 引き上げ

2025年Q1は収益655億ドル(前年比14%増)、調整後EPS 6.74ドルと好調な結果を報告し、通年ガイダンスを29.60ドルに引き上げました。アナリストはEPS成長率を年率26.38%と予測しており、米国ヘルスケア業界平均(15.34%)を大きく上回る見通しです(出典: TipRanks、2025年10月時点)。

(2) 配当履歴(配当利回り、増配実績)

シグナの配当状況は以下の通りです:

  • 配当利回り: 執筆時点で約1.5~2.0%程度
  • 増配実績: 2024年に配当を増額し、株主還元に積極的
  • 配当性向: 利益の一定割合を配当として還元

2024年に株主還元86億ドル(配当+自社株買い)を実施し、株主還元に積極的な姿勢を示しています。メディケア事業をHCSCに売却した収益金を自社株買いに充当する戦略を実施しており、株主価値の向上を図っています。

※米国株の配当は、米国で10%、日本で20.315%の二重課税が発生します。外国税額控除を利用することで、米国で課税された10%の一部を日本の所得税から差し引くことができます。詳細は国税庁のウェブサイトをご確認ください。

(3) 財務健全性(自社株買い、負債水準)

シグナの財務健全性は以下の通りです:

  • 自社株買い: 2024年に株主還元86億ドル(配当+自社株買い)を実施。メディケア事業売却の収益金を自社株買いに充当
  • 負債水準: 2024年Q3時点で長期債務302億ドルに対し現金・現金同等物は59億ドルのみ。高水準の負債が財務柔軟性を制限
  • フリーキャッシュフロー: 安定したキャッシュフローを生み出しており、配当と自社株買いに充当

高水準の負債は懸念材料ですが、安定したキャッシュフローと株主還元に積極的な姿勢は評価できます。

5. リスク要因

(1) 事業リスク(PBM規制強化、ストップロス保険コスト増加)

PBM規制強化
超党派法案が薬局資産の分離を義務付ける可能性があり、PBM事業の収益性に影響を与える懸念があります。規制強化により、PBMと薬局の統合による利益が制限される可能性があります。この懸念により、投資家心理が圧迫され、過去3ヶ月で株価が18.7%下落しました。

ストップロス保険コスト増加
2024年Q4に予想以上のストップロス保険コストが発生し、業績に悪影響を与えました。ストップロス保険は、雇用主が従業員の医療費が一定額を超えた場合の損失を補償する保険であり、医療費の増加により保険コストが上昇するリスクがあります。

(2) 市場環境リスク(為替、高水準の負債、医療制度改革)

為替リスク
米国株に投資する日本人投資家は、為替変動の影響を受けます。円高が進行すると、ドル建ての配当や株価上昇益が円換算で目減りするリスクがあります。為替手数料も証券会社により1ドルあたり0~25銭程度かかるため、取引コストを考慮する必要があります。

高水準の負債
2024年Q3時点で長期債務302億ドルに対し現金・現金同等物は59億ドルのみであり、財務柔軟性が制限されています。金利上昇局面では利払い負担が増加するリスクがあります。

医療制度改革
米国の医療制度改革により、医療保険やPBM事業の規制が強化される可能性があります。特に、薬価引き下げや医療費抑制策により、収益性が圧迫されるリスクがあります。

(3) 規制・競争リスク(薬局資産分離法案、Humanaとの合併交渉)

薬局資産分離法案
超党派法案が薬局資産の分離を義務付ける可能性があります。PBMと薬局の統合による利益が制限され、収益性が低下するリスクがあります。

Humanaとの合併交渉
2024年10月にHumanaとの合併交渉が再開されましたが、成否により株価が大きく変動する可能性があります。合併が成立すれば規模の優位性を拡大できますが、規制承認の不確実性と統合リスクがあります。

競合激化
UnitedHealth Group、CVS Healthなどの大手企業との競争が激化しており、価格圧力と利益率の圧縮が懸念されます。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み(統合ヘルスケアモデル、専門薬局事業、高EPS成長率)

シグナの強みは以下の3点です:

  1. 統合ヘルスケアモデル: 医療保険とPBMを統合し、コスト削減と顧客体験の向上を実現。2018年のExpress Scripts買収により実現
  2. 専門薬局事業: 35億ドルをShields Health Solutionsに投資し、専門医薬品市場でのリーダーシップを強化。高い利益率を持つ成長ドライバー
  3. 高EPS成長率: EPS成長率は年率26.38%と予測され、米国ヘルスケア業界平均(15.34%)を大きく上回る見通し

(2) リスク要因(再掲)(PBM規制強化、高負債、株価下落)

リスク要因は以下の3点です:

  1. PBM規制強化: 超党派法案が薬局資産の分離を義務付ける可能性があり、PBM事業の収益性に影響。過去3ヶ月で株価が18.7%下落
  2. 高負債: 長期債務302億ドルに対し現金・現金同等物は59億ドルのみ。財務柔軟性が制限
  3. ストップロス保険コスト増加: 2024年Q4に予想以上のコストが発生し、業績に悪影響

(3) 向いている投資家(ヘルスケアセクター重視の投資家、ディフェンシブバリュー株を求める投資家)

シグナは以下のような投資家に向いています:

  • ヘルスケアセクター重視の投資家: 高齢化社会と医療費増加により長期的な成長が期待されるヘルスケアセクターに関心がある投資家
  • ディフェンシブバリュー株を求める投資家: 景気変動の影響を受けにくいディフェンシブセクターで、割安なバリュエーションと配当成長を重視する投資家
  • 高EPS成長率を期待する投資家: EPS成長率26.38%(業界平均15.34%を大幅上回る)に期待する投資家

ただし、PBM規制強化懸念、高負債、株価下落(過去3ヶ月で18.7%)などのリスクに注意が必要です。投資判断はご自身の責任で行ってください。

※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。

Q: シグナの配当利回りは?

A: 執筆時点で約1.5~2.0%程度です。2024年に配当を増額し、株主還元に積極的です。最新の配当利回りは証券会社のサイトで確認してください。米国株の配当は米国で10%、日本で20.315%の二重課税が発生しますが、外国税額控除を利用することで米国で課税された10%の一部を日本の所得税から差し引くことができます。

Q: シグナの主な競合は?

A: UnitedHealth Group、CVS Health、Humanaなどが主要競合です。シグナは2018年のExpress Scripts買収により統合ヘルスケアモデルを実現し、PBM事業で差別化しています。PBM統合、専門薬局事業の拡大、段階的成長モデルにより、競合優位性を構築しています。

Q: シグナのリスク要因は?

A: PBM(薬局給付管理)への規制強化懸念、高水準の負債(302億ドル)、ストップロス保険のコスト増加、株価の下落(過去3ヶ月で18.7%下落)などが挙げられます。また、為替リスク、医療制度改革、薬局資産分離法案、Humanaとの合併交渉の不確実性なども考慮する必要があります。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。

Q: シグナは長期投資に向いている?

A: 高齢化社会と医療費増加によるヘルスケアセクターの成長に期待する投資家、ディフェンシブなバリュー株を求める投資家に向いています。EPS成長率26.38%は業界平均を大きく上回る見通しであり、成長性が期待されます。ただし、PBM規制強化懸念、高負債、株価下落などのリスクに注意が必要です。投資判断はご自身の責任で行ってください。

Q: シグナのPBM事業とは?

A: PBM(Pharmacy Benefit Manager)は薬局給付管理事業で、保険会社と薬局の間で処方薬の価格交渉や給付管理を行います。シグナの子会社Evernorthがこの事業を担い、収益の柱となっています。2018年にExpress Scriptsを買収し、PBM事業の規模を大幅に拡大しました。ただし、超党派法案が薬局資産の分離を義務付ける可能性があり、規制強化懸念が株価に影響を与えています。

よくある質問

Q1シグナの配当利回りは?

A1執筆時点で約1.5~2.0%程度です。2024年に配当を増額し、株主還元に積極的です。最新の配当利回りは証券会社のサイトで確認してください。米国株の配当は米国で10%、日本で20.315%の二重課税が発生しますが、外国税額控除を利用することで米国で課税された10%の一部を日本の所得税から差し引くことができます。

Q2シグナの主な競合は?

A2UnitedHealth Group、CVS Health、Humanaなどが主要競合です。シグナは2018年のExpress Scripts買収により統合ヘルスケアモデルを実現し、PBM事業で差別化しています。PBM統合、専門薬局事業の拡大、段階的成長モデルにより、競合優位性を構築しています。

Q3シグナのリスク要因は?

A3PBM(薬局給付管理)への規制強化懸念、高水準の負債(302億ドル)、ストップロス保険のコスト増加、株価の下落(過去3ヶ月で18.7%下落)などが挙げられます。また、為替リスク、医療制度改革、薬局資産分離法案、Humanaとの合併交渉の不確実性なども考慮する必要があります。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。

Q4シグナは長期投資に向いている?

A4高齢化社会と医療費増加によるヘルスケアセクターの成長に期待する投資家、ディフェンシブなバリュー株を求める投資家に向いています。EPS成長率26.38%は業界平均を大きく上回る見通しであり、成長性が期待されます。ただし、PBM規制強化懸念、高負債、株価下落などのリスクに注意が必要です。投資判断はご自身の責任で行ってください。

Q5シグナのPBM事業とは?

A5PBM(Pharmacy Benefit Manager)は薬局給付管理事業で、保険会社と薬局の間で処方薬の価格交渉や給付管理を行います。シグナの子会社Evernorthがこの事業を担い、収益の柱となっています。2018年にExpress Scriptsを買収し、PBM事業の規模を大幅に拡大しました。ただし、超党派法案が薬局資産の分離を義務付ける可能性があり、規制強化懸念が株価に影響を与えています。