S&P500

センティーン (CNC)

Centene Corp

0. この記事でわかること

本記事では、センティーン(CNC)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: 米国最大級のメディケイド(低所得者向け公的医療保険)マネージドケア企業。2,800万人超の会員基盤と政府系医療保険への特化戦略
  • 事業内容と成長戦略: メディケイド契約の拡大、マーケットプレイス(ACA)事業の成長、メディケア・アドバンテージの損益分岐達成(2027年目標)
  • 競合との差別化: ユナイテッドヘルス・グループやアンセムといった大手保険会社と比較した地域密着型アプローチとメディケイド特化戦略
  • 財務・配当の実績: 2025年Q2売上425億ドル、調整後EPS -0.16ドルの赤字。無配当で利益を事業拡大に再投資
  • リスク要因: 2025年7月のガイダンス撤回で株価が40%急落。リスク調整措置の不確実性、医療費インフレ、集団訴訟

PER 10倍前後の割安バリュー株として注目されるセンティーンですが、2025年7月にガイダンスを突然撤回し株価が一時40%急落したことで、投資家の不安が高まっています。政府系医療保険(メディケイド・メディケア・ACA)への依存度が高く、規制業種としての安定性と政策リスクの両面を持つ銘柄です。本記事では、事業モデルや成長戦略とともに、リスク調整措置の問題点や医療費インフレといった投資判断に必要な情報を詳しく解説します。

1. なぜセンティーン(CNC)が注目されているのか

センティーンは、米国ヘルスケアセクターの中でも政府系医療保険に特化した珍しいビジネスモデルを持つ企業です。メディケイド(低所得者向け公的医療保険)で全米2,800万人超の会員基盤を持ち、15人に1人がセンティーンの医療保険に加入しているとされています。高齢化社会の進展と政府の医療保険拡大政策により、長期的な成長が期待できる一方で、政策変更や医療費インフレといったリスクも抱えています。

(1) 成長戦略の3つのポイント

センティーンの成長戦略は、以下の3つの柱で構成されています。

まず、メディケア・アドバンテージ事業の収益性改善です。2025年の価格設定と業務効率化により、2027年に損益分岐点到達を目指しています。予想以上の会員維持率が2025年売上に10億ドル追加されており、高齢者向け医療保険市場での競争力を強化しています。メディケア・アドバンテージは65歳以上の高齢者向け民間医療保険で、米国の高齢化に伴い市場が拡大しています。

次に、メディケイド契約の拡大です。イリノイ州・ネバダ州で新規契約を獲得し、フロリダ州・カンザス州で2025年開始の大型契約を確保しました。メディケイドで5%の総合料率調整(従来予想4%を上回る)を達成しており、州政府との良好な関係を背景に収益拡大を図っています。メディケイドは州政府と連邦政府が共同で運営する制度で、各州での契約獲得が成長の鍵となります。

最後に、マーケットプレイス(ACA)事業の成長です。新規加入と継続率が予想を上回り、メディケア処方薬プランが前年比22%増、マーケットプレイスが29%増の会員数拡大を実現しました。ACA(Affordable Care Act、通称オバマケア)により個人向け医療保険市場が整備され、センティーンはこの市場でトップクラスのシェアを持っています。

(出典: CENTENE CORPORATION ANNOUNCES 2025 GUIDANCE, Centene Investor Relations)

(2) 注目テーマ(メディケイド・マーケットプレイス)

投資家が注目するテーマとして、メディケイド(低所得者向け医療保険)の契約拡大と料率改善が挙げられます。センティーンはメディケイド事業が収益の7割超を占めるため、州政府との契約獲得と料率交渉が業績の鍵となります。2025年には5%の総合料率調整を達成しており、医療費インフレに対応した収益確保が進んでいます。

また、マーケットプレイス(ACA)のリスク調整問題への対応と再価格戦略も重要なテーマです。マーケットプレイスでは、重症患者を多く抱える保険会社への補填制度(リスク調整措置)がありますが、2025年7月にガイダンスを撤回した際、22州のリスク調整措置による補填額が想定を下回ったことが判明しました。この問題への対応が今後の収益性を左右します。

さらに、**メディケア・アドバンテージの損益分岐達成(2027年目標)**も注目されています。現在は赤字事業ですが、2027年に損益分岐点到達を目指しており、この目標達成が株価上昇の材料となる可能性があります。

(3) 投資家の関心・懸念点

投資家の関心は、割安バリュー株としての魅力に集中しています。センティーンはPER 10倍前後で取引されており、ヘルスケアセクターの中でも割安な水準です。政府系医療保険への特化により、景気変動に左右されにくい事業特性があるため、ディフェンシブ銘柄としての側面もあります。

一方で、懸念点も深刻です。最大の懸念は、2025年7月にガイダンスを突然撤回し株価が一時40%急落したことです。これは2001年上場以来の最大下落で、110億ドルの株主価値が1日で失われました。22州のリスク調整措置による補填額が想定を下回り、EPSを2.75ドル押し下げる可能性があり、マーケットプレイス会員が年末に590万人から540万人へ減少する見込みです。

また、メディケイド事業で医療給付率が94.9%に悪化しています。行動医療・在宅医療・高額医薬品のコスト急増により、保険料収入に対する医療費支出の割合が上昇し、収益性が圧迫されています。マーケットプレイス事業は2026年まで、メディケア・アドバンテージは2027年まで黒字化せず、短期的な収益圧力が継続する見通しです。

さらに、複数の法律事務所が証券違反で集団訴訟を提起しています。楽観的な報告と内部指標の乖離を指摘しており、訴訟リスクが業績に影響を与える可能性があります。

(出典: Centene Corporation (CNC) Investors See Over $11 Billion Of Shareholder Value Wiped Out, PR Newswire; オバマケア最大手、センティーン株が40%安, Bloomberg Japan)

2. センティーンの事業内容・成長戦略

センティーンは、政府後援医療プログラム(メディケイド・メディケア・ACA)に特化したマネージドケア企業です。マネージドケアとは、医療費抑制と質向上を両立させる医療保険の仕組みで、センティーンは地域密着型アプローチで質の高い医療を提供しています。全米2,800万人超の会員を抱え、15人に1人がセンティーンの医療保険に加入しているとされています。

(1) 主力事業

センティーンの事業は、大きく3つのセグメントに分かれています。

まず、メディケイド事業です。低所得者向け公的医療保険制度であるメディケイドは、センティーンの収益の7割超を占める主力事業です。州政府と契約を結び、メディケイド加入者に医療サービスを提供します。2025年にはイリノイ州・ネバダ州で新規契約を獲得し、フロリダ州・カンザス州で大型契約を確保しました。メディケイドは州ごとに運営されるため、各州での契約獲得が成長の鍵となります。

次に、マーケットプレイス(ACA)事業です。個人向け医療保険市場(オバマケア)で、センティーンは540万人の会員を抱えるトップクラスのプレイヤーです。2025年にはメディケア処方薬プランが前年比22%増、マーケットプレイスが29%増の会員数拡大を実現しました。ただし、リスク調整措置の問題により収益性に課題があり、2026年まで黒字化しない見通しです。

最後に、メディケア・アドバンテージ事業です。65歳以上の高齢者向け民間医療保険で、予想以上の会員維持率により2025年売上に10億ドル追加されました。現在は赤字事業ですが、2027年に損益分岐点到達を目指しており、価格設定と業務効率化により収益性改善を進めています。

(出典: Centene Corporation - About Centene, Investor Relations; ALAMCO「CENTENE CORP(センティーン)」)

(2) セクター・業種の説明

センティーンは、ヘルスケア(Health Care)セクターの**ヘルスケアプロバイダー&サービス(Health Care Providers & Services)**に分類されます。ヘルスケアセクターは、医療サービス、医療機器、医薬品などを提供する業種で、高齢化社会の進展により長期的な成長が期待される分野です。

ヘルスケアプロバイダー&サービスは、病院、診療所、医療保険会社などを含む業種で、センティーンは医療保険会社に分類されます。医療保険会社は、加入者から保険料を徴収し、医療機関に医療費を支払う役割を担います。マネージドケア企業は、医療費抑制のために医療機関と契約を結び、適切な医療サービス提供を管理する仕組みを持っています。

(3) ビジネスモデルの特徴

センティーンのビジネスモデルは、政府系医療保険への特化が最大の特徴です。メディケイド・メディケア・ACAといった政府後援医療プログラムに集中することで、未加入・加入不足層をターゲットとし、景気変動に左右されにくい事業基盤を確保しています。

また、地域密着型アプローチで質の高い医療を提供している点も特徴です。センティーンは地域パートナーシップを重視し、3年間で9,000万ドルを社会的決定因子(栄養、住宅、交通、予防医療)に投資しています。医療だけでなく、加入者の生活環境改善にも取り組むことで、医療費抑制と健康増進を両立させています。

さらに、M&Aによる事業拡大戦略も重要です。2019年にウェルケア・ヘルス・プランズを150億ドルで買収し、事業規模を大幅に拡大しました。買収により地域カバレッジを広げ、規模の経済を活かした運営効率化を進めています。

ただし、医療費適正化(MLR: Medical Loss Ratio規制)により利益率が制限される点には注意が必要です。保険料収入に対する医療費支出の割合が規制されており、一定以上の医療費を支出する義務があります。このため、利益率は限定的で、規模拡大による収益増加が成長の鍵となります。

(出典: Centene Corp: Business Model, SWOT Analysis, and Competitors 2024, PitchGrade)

3. 競合との差別化

医療保険業界は、ユナイテッドヘルス・グループやアンセム(現エレバンス・ヘルス)といった大手企業が市場を支配しています。センティーンは規模では劣るものの、メディケイド特化と地域密着型アプローチにより、独自のポジションを確立しています。

(1) 主要競合企業

センティーンの主要競合企業として、以下の3社が挙げられます。

まず、**ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)**です。米国最大の医療保険会社で、時価総額は約5,500億ドル(センティーンの約25倍)、会員数は約5,200万人です。メディケア・アドバンテージと企業向け医療保険が主力で、幅広い事業ポートフォリオを持っています。医療サービス部門(Optum)も展開し、垂直統合型のビジネスモデルで高い収益性を実現しています。

次に、**アンセム(現エレバンス・ヘルス、ELV)**です。時価総額は約1,200億ドル、会員数は約4,700万人で、企業向け医療保険とメディケイド事業が主力です。ブルークロス・ブルーシールドのブランドを複数州で展開し、地域ごとの強みを持っています。

最後に、**モリーナ・ヘルスケア(MOH)**です。センティーンと同様にメディケイド特化型の保険会社で、時価総額は約200億ドル(センティーンとほぼ同規模)、会員数は約500万人です。メディケイド市場でのシェアはセンティーンに次ぐ規模で、直接的な競合となっています。

これらの競合企業と比較すると、センティーンはメディケイド特化により独自のポジションを築いていますが、規模の経済では大手に劣る面があります。

(2) 競合優位性

センティーンの競合優位性は、以下の3点に集約されます。

まず、メディケイド特化と地域密着型アプローチです。センティーンはメディケイド事業が収益の7割超を占め、低所得者向け医療保険に特化しています。地域パートナーシップを重視し、社会的決定因子(栄養、住宅、交通、予防医療)への投資により、加入者の生活環境改善に取り組んでいます。この地域密着型アプローチにより、他社が参入しにくいニッチ市場でのシェアを確保しています。

次に、全米2,800万人超の会員基盤です。15人に1人がセンティーンの医療保険に加入しているとされ、規模の経済を活かした運営効率化が可能です。大規模な会員基盤により、医療機関との価格交渉力を持ち、医療費抑制に成功しています。

最後に、州政府との良好な関係です。メディケイドは州ごとに運営されるため、各州政府との契約獲得が重要です。センティーンは2025年にイリノイ州・ネバダ州で新規契約、フロリダ州・カンザス州で大型契約を確保しており、州政府との信頼関係を背景に事業拡大を進めています。

(3) 市場でのポジショニング

センティーンは、メディケイド特化型の中堅保険会社として市場でポジショニングされています。時価総額は約220億ドル(2025年10月時点)で、ユナイテッドヘルス・グループやアンセムといった大手企業と比べると規模は小さいものの、メディケイド市場ではトップクラスのシェアを持っています。

また、割安バリュー株としての地位も確立しています。PER 10倍前後で取引されており、ヘルスケアセクターの中でも割安な水準です。政府系医療保険への特化により、景気変動に左右されにくい事業特性があるため、ディフェンシブ銘柄としての側面もあります。

さらに、ESG投資の観点からも注目されています。低所得者向け医療保険の提供により、社会的格差の是正に貢献しており、3年間で9,000万ドルを社会的決定因子に投資する姿勢がESG投資家から評価されています。

ただし、2025年7月のガイダンス撤回により、業績不確実性が高い銘柄との認識も広がっています。Morningstarは不確実性評価を「非常に高い」へ引き上げ、アナリストコンセンサスは「ホールド」となっています。

4. 財務・配当の実績

センティーンの財務実績は、2025年7月のガイダンス撤回により大きく揺らいでいます。2025年Q2決算では売上425億ドルを記録しましたが、調整後EPSは-0.16ドルの赤字となり、収益性の悪化が顕著です。配当は実施しておらず、利益を事業拡大(メディケイド契約・M&A)に再投資する方針を取っています。

(1) 売上高・利益の推移

センティーンの売上高は安定した成長を続けていますが、利益は変動が大きい状況です。2025年Q2決算では、プレミアム・サービス売上425億ドルを記録しましたが、調整後EPSは-0.16ドルの赤字でした。マーケットプレイス事業で24億ドルの損失圧力(リスク調整変更と高利用率)があり、メディケイド医療給付率が94.9%に悪化(行動医療・在宅医療・高額医薬品が要因)したことが収益性悪化の主因です。

当初発表された2025年ガイダンス(2024年12月発表、7月に撤回)では、総売上1,665億~1,695億ドル、調整後EPS 7.25ドル超(前年比6%以上の成長)を見込んでいました。しかし、リスク調整措置の問題により、この見通しは大幅に下方修正される可能性が高まっています。

長期的な見通しとしては、アナリストはEPS成長率19.3%/年、売上成長率4.3%/年を予測しています。2025年に規制子会社から19億ドルの配当受領、設備投資に7億ドルを計画しており、事業拡大のための投資を継続する方針です。

以下、過去5年間の売上高・利益の推移(概算)です:

年度 売上高(億ドル) 調整後純利益(億ドル) 調整後EPS(ドル)
2020 約1,100 約25 約4.50
2021 約1,260 約30 約5.15
2022 約1,440 約32 約5.60
2023 約1,530 約28 約5.00
2024 約1,600 約38 約6.85

※2025年10月時点のデータです。2025年Q2は赤字のため、通期見通しは不透明です。最新情報はCentene公式IRページをご確認ください。 (出典: Centene Corp Q2 2025 Earnings Call Highlights, Yahoo Finance; CENTENE CORPORATION ANNOUNCES 2025 GUIDANCE, Centene Investor Relations)

(2) 配当履歴

センティーンは現在無配当です。利益を事業拡大(メディケイド契約・M&A)に再投資する方針で、配当よりも株価成長を重視する銘柄です。過去にも配当を実施していた時期がありますが、現在は配当を停止しています。

配当収入を重視する投資家にとっては魅力が薄い銘柄ですが、成長投資により株価上昇を狙う投資家にとっては、利益再投資による長期的な企業価値向上が期待できる可能性があります。ただし、2025年7月のガイダンス撤回により株価が40%急落したことから、株価成長戦略も不透明な状況です。

(3) 財務健全性

センティーンの財務健全性については、安定したキャッシュフローと継続的な投資のバランスが重要です。

まず、自己資本比率は約20-25%程度で、医療保険会社としては標準的な水準です。医療保険会社は安定したキャッシュフローがあるため、自己資本比率が低くても問題ないとされています。

次に、**フリーキャッシュフロー(FCF)**は、年間で数十億ドル程度を生み出しています。2025年には規制子会社から19億ドルの配当を受領し、設備投資に7億ドルを計画しており、事業拡大のための資金は確保できています。

最後に、有利子負債は約200-300億ドル程度で、レバレッジは適正範囲内とされています。2019年のウェルケア・ヘルス・プランズ買収(150億ドル)により負債が増加しましたが、現在は安定した水準を維持しています。

ただし、医療給付率の悪化と収益性の低下が懸念材料です。メディケイド医療給付率が94.9%に達しており、保険料収入に対する医療費支出の割合が上昇しています。行動医療・在宅医療・高額医薬品のコスト急増により、短期的な収益圧力が継続する見通しです。

(出典: Centene Corp Q2 2025 Earnings Call Highlights, Yahoo Finance; Centene (CNC) Stock Forecast & Analyst Price Targets, TipRanks)

5. リスク要因

センティーンへの投資には、いくつかの重大なリスク要因が存在します。2025年7月のガイダンス撤回により、業績不確実性が「非常に高い」と評価されており、短期的な収益圧力と政策リスクには特に注意が必要です。

(1) 事業リスク

事業リスクとして、まず2025年7月のガイダンス撤回と株価急落が最大の懸念材料です。センティーンは2025年7月にガイダンスを突然撤回し、株価がアフターマーケットで25%急落、翌日も含めると一時40%下落しました。これは2001年上場以来の最大下落で、110億ドルの株主価値が1日で失われました。ガイダンス撤回の理由は、22州のマーケットプレイス会員(全体の72%)のリスク調整措置による補填額が想定を大幅に下回ったためです。EPSを2.75ドル押し下げる可能性があり、残る7州のデータもさらなる下振れ要因となる可能性があります。

次に、医療費インフレによる収益性の圧迫も深刻です。メディケイド医療給付率が94.9%に悪化しており、行動医療・在宅医療・高額医薬品のコスト急増が要因です。料率改善が医療費インフレに追いつかない場合、収益性がさらに悪化する恐れがあります。

また、マーケットプレイス会員の減少も事業リスクです。マーケットプレイス会員が年末に590万人から540万人へ減少する見込みで、会員数の減少は保険料収入の減少に直結します。

(出典: Centene Corporation (CNC) Investors See Over $11 Billion Of Shareholder Value Wiped Out, PR Newswire; Centene Corp Q2 2025 Earnings Call Highlights, Yahoo Finance)

(2) 市場環境リスク

市場環境リスクとして、政策変更リスクが最も重要です。センティーンは政府系医療保険(メディケイド・メディケア・ACA)への依存度が高く、連邦政府や州政府の政策変更が業績に直結します。例えば、ACAの変更や廃止が実施された場合、マーケットプレイス事業が大打撃を受ける可能性があります。また、州政府の予算削減によりメディケイド契約が縮小するリスクもあります。

次に、為替リスクも日本人投資家にとっては重要です。センティーンは配当を実施していないため、為替リスクは主に株価変動に影響します。円高局面では円ベースの株価評価額が減少し、為替変動が実質リターンに影響を与えます。

また、景気後退リスクも無視できません。ヘルスケアセクターは景気変動に強いとされていますが、景気後退によりメディケイド加入者が増加すると、医療費支出が急増し収益性が悪化する可能性があります。逆説的ですが、加入者増加が必ずしも収益増加に繋がらない点がリスクとなります。

(3) 規制・競争リスク

規制リスクとして、**医療費適正化規制(MLR規制)**が挙げられます。保険料収入に対する医療費支出の割合が規制されており、一定以上の医療費を支出する義務があります。メディケイド医療給付率が94.9%に達している現状では、利益率の改善が困難であり、規制による収益制限が続く可能性があります。

次に、競争リスクとして、大手保険会社との競争激化が挙げられます。ユナイテッドヘルス・グループやアンセムといった大手企業がメディケイド市場への参入を強化した場合、センティーンのシェアが侵食される可能性があります。規模の経済で劣るセンティーンにとって、価格競争は不利に働く恐れがあります。

また、訴訟リスクも重要です。2025年7月のガイダンス撤回を受けて、複数の法律事務所が証券違反で集団訴訟を提起しています。楽観的な報告と内部指標の乖離を指摘しており、訴訟が長期化した場合、企業イメージの悪化や和解金の支払いが業績に影響を与える可能性があります。

(出典: オバマケア最大手、センティーン株が40%安, Bloomberg Japan; Centene Corporation (CNC) Investors See Over $11 Billion Of Shareholder Value Wiped Out, PR Newswire)

6. まとめ:投資判断のポイント

センティーンは、米国最大級のメディケイド(低所得者向け公的医療保険)マネージドケア企業として、2,800万人超の会員基盤を持ち、政府系医療保険への特化戦略により独自のポジションを築いています。PER 10倍前後の割安バリュー株として注目されていますが、2025年7月のガイダンス撤回により業績不確実性が「非常に高い」と評価されており、投資判断には慎重さが求められます。

(1) この銘柄の強み

センティーンの強みは、以下の3点です。

まず、全米2,800万人超の会員基盤です。15人に1人がセンティーンの医療保険に加入しているとされ、規模の経済を活かした運営効率化が可能です。メディケイド市場でトップクラスのシェアを持ち、州政府との良好な関係を背景に契約拡大を進めています。

次に、政府系医療保険への特化による安定性です。メディケイド・メディケア・ACAといった政府後援医療プログラムに集中することで、景気変動に左右されにくい事業基盤を確保しています。ディフェンシブ銘柄としての側面があり、景気後退局面でも一定の需要が見込めます。

最後に、割安バリュー株としての魅力です。PER 10倍前後で取引されており、ヘルスケアセクターの中でも割安な水準です。業績が回復すれば、株価上昇の余地が大きいとの見方もあります。

(2) リスク要因(再掲)

一方で、リスク要因も深刻です。

まず、2025年7月のガイダンス撤回と株価急落が最大の懸念材料です。リスク調整措置の問題によりEPSを2.75ドル押し下げる可能性があり、業績不確実性が「非常に高い」と評価されています。

次に、医療費インフレによる収益性の圧迫です。メディケイド医療給付率が94.9%に悪化しており、行動医療・在宅医療・高額医薬品のコスト急増が要因です。料率改善が追いつかない場合、収益性がさらに悪化する恐れがあります。

(3) 向いている投資家

センティーンは、以下のような投資家に向いています。

まず、割安バリュー株を好むリスク許容度の高い投資家です。PER 10倍前後の割安水準で、業績回復により株価上昇を狙う戦略が取れます。ただし、業績不確実性が高いため、短期的な株価変動に耐えられるリスク許容度が必要です。

次に、政府系医療保険の成長性に賭ける長期投資家です。高齢化社会の進展と政府の医療保険拡大政策により、長期的な成長が期待できる市場です。メディケイド・メディケア・ACA市場の拡大に伴い、センティーンの会員基盤も成長する可能性があります。

最後に、ESG投資を重視する投資家です。低所得者向け医療保険の提供により社会的格差の是正に貢献しており、3年間で9,000万ドルを社会的決定因子に投資する姿勢が評価されています。

ただし、アナリストコンセンサスは「ホールド」で平均目標株価は38.33ドル(最高73ドル、最低28ドル)と評価が分かれています。投資判断は、ご自身のリスク許容度や投資目的に照らして慎重に行ってください。

※本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言を行うものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

※2025年10月時点のデータです。最新情報はCentene公式IRページをご確認ください。

よくある質問

Q1センティーンの配当利回りは?

A1センティーンは現在無配当です。利益を事業拡大(メディケイド契約・M&A)に再投資する方針で、配当よりも株価成長を重視する銘柄です。過去にも配当を実施していた時期がありますが、現在は配当を停止しています。配当収入を重視する投資家には向かず、成長投資により株価上昇を狙う投資家向けの銘柄と言えます。

Q2センティーンの主な競合は?

A2ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)、アンセム(現エレバンス・ヘルス、ELV)、モリーナ・ヘルスケア(MOH)等です。センティーンはメディケイド特化と地域密着型アプローチが差別化ポイントで、全米2,800万人超の会員基盤を持ちます。規模では大手に劣りますが、メディケイド市場ではトップクラスのシェアを維持しています。

Q3センティーンのリスク要因は?

A32025年7月のガイダンス撤回で株価が一時40%急落(110億ドルの株主価値喪失)、リスク調整措置の不確実性(EPSを2.75ドル押し下げる可能性)、医療費インフレ(メディケイド医療給付率94.9%に悪化)、集団訴訟の提起等が懸念材料です。Morningstarは不確実性評価を「非常に高い」へ引き上げています。詳細は本文の「5. リスク要因」を参照してください。

Q4センティーンは長期投資に向いている?

A4PER 10倍前後の割安バリュー株ですが、政策リスクと業績不確実性が高い銘柄です。政府系医療保険の成長性に賭けるリスク許容度の高い投資家向けです。アナリストコンセンサスは「ホールド」で、平均目標株価は38.33ドル(最高73ドル、最低28ドル)と評価が分かれています。投資判断は、ご自身のリスク許容度や投資目的に照らして慎重に行ってください。