S&P500

キャンベル・スープ (CPB)

Campbell’s Co

0. この記事でわかること

本記事では、キャンベル・スープ(CPB)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: 150年超の老舗食品メーカーが、スープからスナック・ソースへの事業転換を推進。配当利回り3-4%の高配当株として、安定配当を求める投資家から注目されています。
  • 事業内容と成長戦略: Campbell SnacksとCampbell Meals & Beveragesの2事業に集中。2028年度までに2.5億ドルのコスト削減と、16の主力ブランドに注力する戦略を展開中です。
  • 競合との差別化: General MillsやKraft Heinzと比べるとブランド力では劣りますが、スナック事業の買収強化とコスト削減で差別化を図っています。
  • 財務・配当の実績: 50年超の連続配当実績を持ち、2025年度は売上102.5億ドル(前年比6.4%増)を達成。ただし、配当性向が101.3%と高く、持続可能性には注意が必要です。
  • リスク要因: スナック部門の低迷(有機売上高5%減)、2026年度の関税影響(調整後EPS 12-18%減見込み)、消費者の健康志向シフト(缶詰離れ)が主なリスクです。

※本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の投資推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

1. なぜキャンベル・スープ(CPB)が注目されているのか

(1) スープから多角化への戦略転換

キャンベル・スープは、1869年創業の米国食品大手で、缶詰スープの世界シェア1位を誇ります。しかし、消費者の健康志向や調理済み食品の普及により、主力の缶詰スープ(売上の約40%)は低迷が続いています。

この状況を打開するため、同社は2024年に社名を「The Campbell's Company」に変更し、スープだけでなくスナック・ソース事業を含む多角化を反映しました。スナック売上は前年比13%増(スープは3%増)で、成長ドライバーとして期待されています。

具体的には、以下の3つの戦略を推進しています:

  1. スナック事業への戦略転換: 2017年にスナイダー・ランス社を50億ドルで買収し、2024年にSovos Brandsを取得。スナック売上は前年比13%増(スープは3%増)で、16の主力ブランドに注力(全売上の84%、営業利益の95%を占める)しています。

  2. 2.5億ドルのコスト削減プログラム: 2028年度までに2.5億ドルのコスト削減を実施。2025年度の削減額は当初目標を上回る1.2億ドルに引き上げ、タリフ(関税)や原材料高騰のインパクトの60%を軽減しています。

  3. Meals & Beverages部門の成長強化: ソース事業を10億ドル規模のフランチャイズに拡大(年率3%成長)を目標。スープでは若年層・ミレニアル世代の取り込みを強化し、5四半期連続でフラット~プラス成長を達成しています。

(2) 高配当銘柄としての安定性

キャンベル・スープは、50年超の連続配当実績を持つ高配当株です。配当利回りは3-4%程度(2025年10月時点)で、景気後退局面でも需要が見込める生活必需品セクター(Consumer Staples)のディフェンシブ銘柄として、安定配当を求める投資家から注目されています。

ただし、配当性向が101.3%と業界平均を大幅に上回っており、配当が利益を上回る状態が続いています。増配余地は限定的ですが、コスト削減や事業転換により配当の維持は可能と見られています。

(3) 投資家の関心・懸念点

投資家は、キャンベル・スープの事業転換に期待を寄せる一方で、以下の懸念点も抱えています:

  • 株価パフォーマンスの低迷: 過去5年間で27.8%下落、年初来28.9%下落、直近1か月で11.4%下落と、株価は低迷が続いています。
  • 負債比率の高さ: 負債比率1.78は業界中央値0.39を大幅に上回り、財務健全性に懸念があります。
  • スナック部門の立て直し: 2025年第3四半期のスナック部門は有機売上高が5%減少し、カテゴリー全体の軟化と競争激化に直面しています。

アナリスト16名の平均評価は「ホールド」(強気買い5、ホールド8、売り3)で、目標株価35ドル(現在価格から8.39%上昇)と、慎重な見方が広がっています。

2. キャンベル・スープの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業:スナックとMeals & Beverages

キャンベル・スープは、以下の2つの事業に集中しています:

  1. Campbell Snacks(スナック事業):

    • Goldfish(クラッカー)、Pepperidge Farm(クッキー・パン)、Snyder's(プレッツェル)などの人気ブランドを展開。
    • 2025年度のスナック部門は売上が13%増加し、成長ドライバーとして期待されていますが、2025年第3四半期は有機売上高が5%減少し、競争激化に直面しています。
  2. Campbell Meals & Beverages(食品・飲料事業):

    • 缶詰スープ(Campbell's、Swanson)、ソース(Prego、Pace)、飲料(V8、Pacific Foods)が主力。
    • 2025年度のMeals & Beverages部門は有機売上高が6%増加し、好調を維持しています。ソース事業を10億ドル規模に拡大(年率3%成長)を目標としています。

(2) 生活必需品セクターのディフェンシブ銘柄

キャンベル・スープは、Consumer Staples(生活必需品)セクターのFood Products(食品製造)業種に属します。生活必需品セクターは、景気後退局面でも需要が比較的安定しており、ディフェンシブ銘柄として投資家から注目されています。

特に、キャンベル・スープは缶詰スープやスナック食品など、日常的に消費される製品を扱っているため、景気変動の影響を受けにくいビジネスモデルです。

(3) 2028年度に向けた成長戦略

キャンベル・スープは、2027年度までに以下の長期成長目標を掲げています:

  • 有機売上高成長率: 2-3%
  • 調整後EBIT成長率: 4-6%
  • 調整後EPS成長率: 7-9%

この目標を達成するため、以下の戦略を推進しています:

  1. 16の主力ブランドに注力: 全売上の84%、営業利益の95%を占める主力ブランドに経営資源を集中。
  2. マーケティング投資の拡大: 売上高の9-10%をマーケティングに投資し、ブランド認知度とロイヤルティ向上を図る。
  3. プレミアム化とフレーバー探求: 健康志向・在宅調理トレンドに対応した高付加価値製品の開発。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業:General MillsとKraft Heinz

キャンベル・スープの主要競合企業は、General Mills(ゼネラル・ミルズ)とKraft Heinz(クラフト・ハインツ)です。

  • General Mills: Cheerios、Betty Crocker、Häagen-Dazsなどのグローバルブランドを持ち、ブランド力と多角化で優位。
  • Kraft Heinz: Kraft、Heinz、Oscar Mayerなど、世界的に認知度の高いブランドを多数保有。規模の経済でコスト競争力が高い。

キャンベル・スープは、これらの競合と比べるとブランド力では劣りますが、スナック事業の買収強化とコスト削減で差別化を図っています。

(2) ブランドポートフォリオの最適化

キャンベル・スープは、2024年に社名を「The Campbell's Company」に変更し、スープだけでなくスナック・ソースを含む多角化を反映しました。16の主力ブランドに注力する「ブランドポートフォリオの最適化」戦略により、全売上の84%、営業利益の95%を主力ブランドに集中させています。

これにより、マーケティング投資の効率化と、成長性の高い事業への経営資源の集中が可能となっています。

(3) 市場でのポジショニング

キャンベル・スープは、缶詰スープの世界シェア1位を誇り、世界120ヵ国以上で販売されています。日本では、2025年9月1日より伊藤忠商事がキャンベルジャパンのスープ製品の輸入・販売を開始し、日本の即席スープ市場(2024年に約1,030億円、2033年には約1,320億円に成長見込み)への展開を強化しています。

スナック事業では、Goldfishやプレッツェルなど、米国市場で高い認知度を持つブランドを保有しており、ニッチ市場でのポジショニングを確立しています。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移

キャンベル・スープの財務実績は以下の通りです(2025年度は通期実績、2026年度はガイダンス):

年度 売上高(億ドル) 純利益(億ドル) 調整後EPS(ドル)
2021 88.1 9.8 2.63
2022 92.0 9.2 2.78
2023 96.4 5.7 2.98
2024 96.3 5.7 2.84
2025 102.5 6.0 3.08
2026 100.5(予想) - 2.58-2.70(予想)

(出典: The Campbell's Company Form 10-K 2025, SEC EDGAR)

2025年度(2024年8月4日終了)は、売上高102.5億ドル(前年比6.4%増)、純利益6.02億ドル(前年比6.17%増)を達成しました。Meals & Beverages部門の有機売上高が6%増加し、好調を維持しています。

しかし、2026年度は関税影響により、売上高▲2%~横ばい、調整後EBIT▲9~13%、調整後EPS▲12~18%と厳しいガイダンスを発表しています。

(2) 50年超の連続配当実績

キャンベル・スープは、50年超の連続配当実績を持つ高配当株です。配当利回りは3-4%程度(2025年10月時点)で、安定配当を求める投資家から注目されています。

過去の配当履歴は以下の通りです:

年度 年間配当(ドル) 配当利回り(%) 配当性向(%)
2021 1.48 3.2 56.3
2022 1.48 3.1 53.2
2023 1.48 3.6 49.7
2024 1.48 3.4 52.1
2025 1.52 3.8 101.3

(出典: Yahoo Finance - CPB, 2025年10月時点)

配当性向は50-60%程度で推移していましたが、2025年度は101.3%と業界平均を大幅に上回っています。これは、配当が利益を上回る状態であり、持続可能性には注意が必要です。

(3) 財務健全性と配当持続性

財務健全性については、以下の指標に注意が必要です:

  • 負債比率(Debt-to-Equity Ratio): 1.78(業界中央値0.39を大幅に上回る)
  • 配当性向(Payout Ratio): 101.3%(配当が利益を上回る)

負債比率の高さは、過去の大型買収(スナイダー・ランス社など)の影響です。ただし、コスト削減プログラムにより、2028年度までに2.5億ドルのコスト削減を実施する計画で、財務健全性の改善が期待されています。

配当の持続性については、配当性向が100%超である点が懸念材料ですが、同社は50年超の連続配当実績を持ち、配当維持へのコミットメントは強いと見られています。

5. リスク要因

(1) スナック部門の低迷と競争激化

2025年第3四半期のスナック部門は有機売上高が5%減少し、カテゴリー全体の軟化と競争激化に直面しています。価格設定力の低下とボリューム圧力が課題となっており、スナック事業への戦略転換の成否が今後の業績を左右します。

DA Davidsonは、ボリューム圧力、価格設定力の低下、マージン制約を理由に、同社を「ニュートラル」に格下げしています。

(2) 関税・原材料コスト上昇の影響

2026年度は関税により売上原価が4%押し上げられる見込みです。これにより、調整後EBITが9-13%減、調整後EPSが12-18%減と厳しいガイダンスを発表しています。

コスト削減プログラムにより、関税影響の60%を軽減する計画ですが、残り40%は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 消費者の健康志向シフト

消費者の健康志向(低ナトリウム・オーガニック志向)や、缶詰離れ(調理済み食品の普及)により、主力の缶詰スープ事業は構造的な売上減が続いています。

同社は、プレミアム化とフレーバー探求により、健康志向に対応した高付加価値製品の開発を進めていますが、消費者の嗜好変化に対応できるかが今後の課題です。

また、為替リスクも重要です。米ドル建ての株価・配当は、円高局面では円ベースのリターンが減少します。為替レート(USD/JPY)の変動により、円ベースのリターンが大きく変動するリスクがあります。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み

キャンベル・スープの主な強みは以下の3点です:

  1. 50年超の連続配当実績: 配当利回り3-4%の高配当株で、安定配当を求める投資家に適しています。
  2. 生活必需品セクターのディフェンシブ性: 景気後退局面でも需要が比較的安定しており、ポートフォリオの安定化に寄与します。
  3. スナック事業への戦略転換: 2017年のスナイダー・ランス社買収以降、スナック売上は前年比13%増と成長ドライバーとして期待されています。

(2) リスク要因(再掲)

主なリスク要因は以下の2点です:

  1. 配当性向の高さ: 配当性向101.3%で、配当が利益を上回る状態。配当の持続可能性には注意が必要です。
  2. 2026年度の関税影響: 調整後EPSが12-18%減と厳しいガイダンスで、短期的な業績悪化が見込まれます。

(3) 向いている投資家

キャンベル・スープは、以下のような投資家に向いています:

  • 安定配当を重視する投資家: 50年超の連続配当実績を持ち、配当利回り3-4%の高配当株です。
  • ディフェンシブ銘柄を求める投資家: 生活必需品セクターで、景気後退局面でも需要が見込めます。
  • バリュー株投資家: PER 12-15倍の割安バリュー株で、長期的な株価回復を期待する投資家に適しています。

ただし、株価成長は限定的(過去5年で年率0-3%)で、短期的には関税影響による減益が見込まれます。投資判断は、最新の財務データ(Form 10-K、10-Q)やアナリストレポートを確認し、ご自身の投資方針に基づいて慎重に行ってください。

※本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の投資推奨ではありません。投資はご自身の判断と責任で行ってください。最新の財務データは、The Campbell's Company公式IRページ(https://investor.thecampbellscompany.com/)をご確認ください。

Q: キャンベル・スープの配当利回りは?

A: 3-4%程度です(2025年10月時点)。50年超の連続配当実績があり、高配当株として注目されていますが、配当性向が101.3%と高く、持続可能性には注意が必要です。配当が利益を上回る状態が続いていますが、コスト削減プログラムにより配当維持は可能と見られています。詳細は「財務・配当の実績」を参照してください。

Q: キャンベル・スープの主な競合は?

A: General Mills(ゼネラル・ミルズ)とKraft Heinz(クラフト・ハインツ)が主な競合です。ブランド力ではやや劣りますが、スナック事業への戦略転換(2017年にスナイダー・ランス社を50億ドルで買収)とコスト削減(2028年度までに2.5億ドル削減)で差別化を図っています。競合比較の詳細は「競合との差別化」を参照してください。

Q: キャンベル・スープのリスク要因は?

A: スナック部門の低迷(2025年第3四半期は有機売上高5%減)、2026年度の関税影響(製品コスト4%増、調整後EPS 12-18%減見込み)、消費者の健康志向シフト(缶詰離れ・低ナトリウム志向)が主なリスクです。また、負債比率1.78(業界中央値0.39)と財務健全性にも懸念があります。詳細は「リスク要因」を参照してください。

Q: キャンベル・スープは長期投資に向いている?

A: 安定配当を重視し、景気後退局面でも需要が見込める生活必需品セクターに投資したい投資家に向いています。ただし、株価成長は限定的(過去5年で年率0-3%成長)で、短期的には関税影響による減益が見込まれるため、投資判断はご自身で慎重に行ってください。配当性向101.3%と高いため、配当の持続可能性にも注意が必要です。

よくある質問

Q1キャンベル・スープの配当利回りは?

A13-4%程度です(2025年10月時点)。50年超の連続配当実績があり、高配当株として注目されていますが、配当性向が101.3%と高く、持続可能性には注意が必要です。配当が利益を上回る状態が続いていますが、コスト削減プログラムにより配当維持は可能と見られています。詳細は「財務・配当の実績」を参照してください。

Q2キャンベル・スープの主な競合は?

A2General Mills(ゼネラル・ミルズ)とKraft Heinz(クラフト・ハインツ)が主な競合です。ブランド力ではやや劣りますが、スナック事業への戦略転換(2017年にスナイダー・ランス社を50億ドルで買収)とコスト削減(2028年度までに2.5億ドル削減)で差別化を図っています。競合比較の詳細は「競合との差別化」を参照してください。

Q3キャンベル・スープのリスク要因は?

A3スナック部門の低迷(2025年第3四半期は有機売上高5%減)、2026年度の関税影響(製品コスト4%増、調整後EPS 12-18%減見込み)、消費者の健康志向シフト(缶詰離れ・低ナトリウム志向)が主なリスクです。また、負債比率1.78(業界中央値0.39)と財務健全性にも懸念があります。詳細は「リスク要因」を参照してください。

Q4キャンベル・スープは長期投資に向いている?

A4安定配当を重視し、景気後退局面でも需要が見込める生活必需品セクターに投資したい投資家に向いています。ただし、株価成長は限定的(過去5年で年率0-3%成長)で、短期的には関税影響による減益が見込まれるため、投資判断はご自身で慎重に行ってください。配当性向101.3%と高いため、配当の持続可能性にも注意が必要です。