0. この記事でわかること
本記事では、ハーシー(HSY)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 130年超の歴史を持つ米国チョコレート最大手として、健康志向型商品への転換、非チョコレート菓子の拡大、塩味スナック事業の強化を推進。ただし、2025年はカカオ価格高騰により大幅減益予想
- 事業内容と成長戦略: Hershey's、Reese's、Kit Kat(米国のみ)などの強力ブランドを保有。Better-For-You戦略、デジタル変革、生産効率化プログラムにより長期成長を目指す
- 競合との差別化: 米国チョコレート市場シェア46%で第1位。Mars、Nestle、Mondelezとの競合環境において、ブランド力とHershey Trust構造による安定経営が特徴
- 財務・配当の実績: 連続増配12年、配当利回り2-3%。Q2 2025は売上高前年比26%増と好調だが、2025年通期のEPSは前年比36-38%減の厳しい見通し
- リスク要因: カカオ価格急騰、関税コスト増加、健康志向による菓子需要減少、Hershey Trust支配構造による株主利益との乖離懸念
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1. なぜハーシー(HSY)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
ハーシーは、伝統的なチョコレート事業に加え、以下の3つの成長戦略を推進しています:
Better-For-You戦略: 2021年に発表した10年計画で、糖質削減を中心とした健康志向型菓子セグメントの成長を主導しています。Lily's Sweetsなどの買収により製品ポートフォリオを強化し、健康志向の高まりに対応しています。
非チョコレート菓子の拡大: Jolly Rancher、Shaq-A-Licious XL Gummies、Sour Stripsなどの成長ブランドを拡大しています。2026年にはSour Stripsの販売網を拡大予定です。
塩味スナック事業の強化: Pirate's Booty Puffs、SkinnyPop Popcorn、Dot's Homestyle Pretzelsなどの塩味スナックブランドが前年比9.5%増と好調です。プロテインバーFulfilブランドの新製品も投入しています。
(2) 注目テーマ(Better-For-You・デジタル変革・生産効率化)
投資家が注目している主なテーマは以下の通りです:
- パッケージ革新: スタンドアップバッグ・マルチパック形式への移行により、利便性と保存性を向上
- デジタル変革・データ活用: 需要計画、消費者インサイト、メディア戦略への投資により、データをビジネス各部門に統合し、継続的なテストと分析で最適解を迅速に発見
- 生産効率化プログラム: 「Smart Complexity」と「Advancing Automation and Agility」により、4億ドルの削減目標を掲げています
(3) 投資家の関心・懸念点
ハーシーに対する投資家の関心は、米国チョコレート市場シェア46%という圧倒的な地位と、安定配当実績(連続増配12年)にあります。一方で、懸念点としては、カカオ価格の急騰による利益率の大幅圧迫が挙げられます。2025年のEPSは前年比36-50%減少する見込みであり、関税の新規実施による追加コストも収益圧力となっています。
ただし、2026年には粗利益率を500ベーシスポイント以上改善させる回復計画を実施中であり、長期的には製品イノベーション、多角化、戦略的パートナーシップにより菓子業界のトレンドと消費者嗜好を活かせる好位置にあるとされています。
2. ハーシーの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(チョコレート・非チョコ菓子・塩味スナック)
ハーシーの事業は、大きく3つのカテゴリーに分かれます:
チョコレート事業: 米国最大のチョコレート製造会社として、Hershey's、Reese's、Kit Kat(米国のみ)などの強力ブランドを保有しています。これらのブランドは、ハロウィン・クリスマスなどの季節需要で特に強い存在感を示します。
非チョコレート菓子事業: Jolly Rancher、Shaq-A-Licious XL Gummies、Sour Stripsなどの成長ブランドを展開。Reese's OREOカップなど注目度の高い新製品も投入しており、2025年は感覚体験を重視し、新技術と大胆なフレーバープロファイルを組み合わせています。
塩味スナック事業: Pirate's Booty Puffs、SkinnyPop Popcorn、Dot's Homestyle Pretzelsなどの塩味スナックブランドが前年比9.5%増と好調です。プロテインバーFulfilブランドの新製品投入により、健康志向型スナック市場でも存在感を高めています。
(2) セクター・業種の説明(生活必需品・食品)
ハーシーは、生活必需品(Consumer Staples)セクター、食品(Food Products)業種に分類されます。このセクターは、景気後退期でも比較的安定した需要が見込まれるため、ディフェンシブ銘柄として評価されています。
米国人口増加によりお菓子需要の長期的成長が見込まれる一方で、健康志向の高まりにより、伝統的な高糖質菓子からBetter-For-You製品へのシフトが進んでいます。
(3) ビジネスモデルの特徴(強力ブランド・季節需要)
ハーシーのビジネスモデルの特徴は、以下の通りです:
- 強力なブランドポートフォリオ: Hershey's、Reese's、Kit Kat(米国版)、Jolly Rancherなど、米国市場で圧倒的な認知度を誇るブランドを保有
- 季節需要の活用: ハロウィン、クリスマス、バレンタインデーなどの季節イベントで売上が大きく伸びる傾向があり、マーケティング戦略も季節需要に最適化されています
- 小売パートナーシップ: 買い物客体験を中心に据えた目標と計画を小売パートナーと共有し、売り場での存在感を高めています
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(Mars・Nestle・Mondelez等)
ハーシーの主要競合企業は以下の通りです:
- Mars: M&M's、Snickersなどのブランドを保有する世界的な菓子メーカー
- Nestle: Kit Kat(米国以外)、Crunchなどのブランドを展開
- Mondelez: Cadburyなどのチョコレートブランドを保有
これらの競合企業はグローバル市場で強い存在感を示していますが、ハーシーは米国市場において圧倒的なシェアを保持しています。
(2) 競合優位性(米国市場シェア46%・ブランド力・Trust構造)
ハーシーの競合優位性は、以下の3点に集約されます:
米国市場シェア46%: 米国チョコレート市場において第1位のシェアを占めており、Hershey's、Reese's、Kit Kat(米国版)などの強力ブランドが市場での地位を確固たるものにしています。
ブランド力: 130年超の歴史を持ち、米国の消費者に深く浸透しているブランドを保有。特にHershey'sとReese'sは、米国市場で圧倒的な認知度を誇ります。
Hershey Trust構造: Hershey Trustが議決権の約80%を保有しているため、敵対的買収のリスクが低く、長期的な視点での経営が可能です。ただし、この構造により株主利益が最優先されない可能性も指摘されています。
(3) 市場でのポジショニング(米国最大チョコレートメーカー)
ハーシーは、米国最大のチョコレート製造会社として、米国市場に特化した戦略を展開しています。世界約90カ国で事業展開していますが、売上の大部分は米国市場が占めています。
この米国市場への集中は、グローバル展開を進める競合企業と比べると地域リスクが高い一方で、米国市場における圧倒的なブランド力と流通網により、安定した収益基盤を確保しています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(Q2 2025は前年比26%増)
ハーシーの財務状況は以下の通りです:
2025年Q2決算:
- 売上高: 前年比26%増
- 販売数量: 前年比21%増
- EPS: 1.21ドル(予想0.99ドルを上回る)
ただし、2025年通期の見通しは厳しく、カカオ価格高騰と関税により調整後EPSが36-38%減少する見込みです。2025年通期売上高は少なくとも2%成長の見込みですが、報告ベースEPSは約50%減、調整後EPSは36-38%減少予想となっています。
2026年以降の見通し: 2026年には粗利益率を500ベーシスポイント以上改善させる取り組みを実施中であり、戦略的価格設定と新製品投入により下半期に2-4%の成長加速を期待しています。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はHershey Co公式IRページをご確認ください。 (出典: Hershey Co 10-K 2024, SEC EDGAR; Q2 2025 Earnings Call Transcript)
(2) 配当履歴(連続増配12年・配当利回り約2-3%)
ハーシーの配当実績は以下の通りです:
- 連続増配年数: 12年
- 配当利回り: 約2-3%(株価により変動)
- 配当性向: 安定的な配当性向を維持
ハーシーは配当貴族銘柄(25年以上連続増配)ではありませんが、安定増配実績を持つ銘柄として、配当を重視する投資家から評価されています。自社株買いも積極的に実施しており、株主還元に積極的な姿勢を示しています。
(3) 財務健全性(カカオ価格影響・2026年利益率改善計画)
ハーシーの財務健全性については、以下の点に留意が必要です:
短期的な課題: カカオ価格の急騰により、2025年は利益率が大幅に圧迫されています。関税の新規実施による追加コストも収益圧力となっており、2025年後半まで厳しい状況が継続する見込みです。
中長期的な改善計画: 2026年には粗利益率を500ベーシスポイント以上改善させる計画を実施中です。生産効率化プログラム「Smart Complexity」と「Advancing Automation and Agility」により、4億ドルの削減を目指しています。
財務基盤: 米国市場での強固な地位と安定したキャッシュフローにより、財務基盤は健全です。自己資本比率、フリーキャッシュフロー、有利子負債の状況については、最新の10-Kレポートで確認することをお勧めします。
5. リスク要因
(1) 事業リスク(カカオ価格急騰・健康志向による菓子離れ)
ハーシーの事業リスクとして、以下の点が挙げられます:
カカオ価格急騰: カカオ価格の急騰により、2025年の利益率は大幅に圧迫されています。カカオは国際商品市場で取引されており、天候不順や産地の政情不安などにより価格が大きく変動するリスクがあります。
健康志向による菓子離れ: 健康志向の高まりにより、伝統的な高糖質菓子の需要が構造的に減少するリスクがあります。ハーシーはBetter-For-You戦略により健康志向型商品へのシフトを進めていますが、競合も同様の戦略を展開しており、差別化が課題となっています。
季節需要への依存: ハロウィン、クリスマスなどの季節イベントで売上が大きく伸びる一方で、季節需要が減少した場合の影響が大きいというリスクがあります。
(2) 市場環境リスク(関税コスト・景気減速)
市場環境リスクとして、以下の点に留意が必要です:
関税コスト: 2025年は関税の新規実施により追加コストが発生しており、収益圧力となっています。今後の貿易政策の変更により、さらなるコスト増加のリスクがあります。
景気減速: 生活必需品セクターは景気後退期でも比較的安定していますが、深刻な景気減速局面では、消費者が嗜好品であるチョコレートや菓子の購入を控える可能性があります。
為替リスク: 日本人投資家にとっては、円高局面では円ベースのリターンが目減りするリスクがあります。米国株投資では為替リスクを常に意識する必要があります。
(3) 規制・競争リスク(Trust構造・株主利益との乖離懸念)
規制・競争リスクとして、以下の点が挙げられます:
Hershey Trust支配構造: Hershey Trustが議決権の約80%を保有しているため、一般株主の意見が経営に反映されにくいという懸念があります。敵対的買収のリスクは低い一方で、株主利益が最優先されない可能性も指摘されています。
競争激化: Mars、Nestle、Mondelezなどの競合企業との競争が激化しており、価格競争やマーケティング費用の増加が利益率を圧迫するリスクがあります。
規制強化: 肥満や生活習慣病の問題を背景に、高糖質食品への規制が強化される可能性があります。糖質含有量の表示義務化や広告規制などが導入された場合、事業に影響が出る可能性があります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(ブランド力・米国市場シェア・安定配当)
ハーシーの強みは、以下の3点に集約されます:
- 圧倒的なブランド力: Hershey's、Reese's、Kit Kat(米国版)など、130年超の歴史を持つ強力ブランドを保有し、米国市場で圧倒的な認知度を誇ります
- 米国市場シェア46%: 米国チョコレート市場で第1位のシェアを占めており、安定した収益基盤を確保しています
- 安定配当実績: 連続増配12年、配当利回り2-3%の実績があり、配当を重視する投資家にとって魅力的です
(2) リスク要因(再掲:カカオ価格・EPS大幅減・健康志向)
一方で、以下のリスク要因に留意が必要です:
- カカオ価格高騰によるEPS大幅減: 2025年のEPSは前年比36-38%減少する見込みであり、短期的な業績は厳しい状況です
- 健康志向による構造的な菓子需要減少: Better-For-You戦略により対応を進めていますが、伝統的な高糖質菓子の需要減少リスクは継続しています
(3) 向いている投資家(配当重視・生活必需品志向・ブランド重視)
ハーシーは、以下のような投資家に向いています:
- 配当を重視する投資家: 連続増配12年の実績があり、安定配当を期待する投資家に適しています
- 生活必需品セクターの安定性を好む投資家: 景気後退期でも比較的安定した需要が見込まれるディフェンシブ銘柄を好む投資家に向いています
- ブランド力に期待する投資家: 130年超の歴史を持つ強力ブランドの長期的な価値を評価する投資家に適しています
ただし、2025年はカカオ価格高騰の影響で大幅減益予想であることに留意し、投資判断は慎重に行う必要があります。投資判断は自己責任で行ってください。最新の財務データや市場環境を確認し、ご自身のリスク許容度と投資目的に照らし合わせて判断することをお勧めします。
Q: ハーシーの配当利回りは?
A: 約2-3%前後です(株価により変動)。連続増配12年の実績があり、安定配当銘柄として評価されています。ただし、配当貴族銘柄(25年以上連続増配)ではないため、今後の増配継続性については最新の業績動向を確認することが重要です。2025年は大幅減益予想ですが、配当政策については公式IRページで最新情報をご確認ください。
Q: ハーシーの主な競合は?
A: Mars(M&M's、Snickers)、Nestle、Mondelez(Cadbury)が主要競合です。差別化ポイントは、米国市場シェア46%(第1位)、Hershey's・Reese's・Kit Kat(米国版)等の強力ブランド、Hershey Trustによる安定した経営です。Marsは世界的な菓子メーカーとして強い存在感を示していますが、米国チョコレート市場ではハーシーが最大手です。競合との比較分析については、本文「3. 競合との差別化」を参照してください。
Q: ハーシーのリスク要因は?
A: カカオ価格急騰による利益圧迫(2025年EPS予想は前年比36-38%減)、関税による追加コスト、健康志向による菓子需要の構造的減少、Hershey Trustの支配構造(議決権約80%保有)が主なリスクです。特に2025年はカカオ価格高騰の影響が大きく、短期的には厳しい業績が予想されています。ただし、2026年には粗利益率を500ベーシスポイント以上改善させる回復計画を実施中です。詳細は本文「5. リスク要因」を参照してください。
Q: ハーシーは長期投資に向いている?
A: 配当を重視する投資家、生活必需品セクターの安定性を好む投資家、ブランド力に期待する投資家に向いています。ただし、2025年はカカオ価格高騰の影響で大幅減益予想であることに留意が必要です。長期投資の場合、2026年以降の利益率改善計画の進捗、Better-For-You戦略による健康志向型商品の成長、非チョコレート菓子・塩味スナック事業の拡大などを注視することが重要です。投資判断は自己責任で行ってください。詳細は本文「6. まとめ:投資判断のポイント」を参照してください。
Q: ハーシーの主力ブランドは?
A: Hershey's、Reese's、Kit Kat(米国のみ)、Jolly Rancher、SkinnyPop Popcorn等が主力ブランドです。米国チョコレート市場シェア46%で第1位を占めています。特にHershey'sとReese'sは、米国市場で圧倒的な認知度を誇り、ハロウィンやクリスマスなどの季節イベントで強い存在感を示します。近年は、Sour Stripsなどの新ブランドの買収や、Reese's OREOカップなどのコラボレーション製品も投入しています。詳細は本文「2. ハーシーの事業内容・成長戦略」を参照してください。