0. この記事でわかること
本記事では、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: OpenAIとの6ギガワット規模のGPU導入契約、ZT Systems社49億ドル買収、MI350/MI400シリーズGPU投入によるAIデータセンター市場攻略
- 事業内容と成長戦略: CPU(Ryzen・EPYC)・GPU(Radeon・Instinct)の半導体メーカー、データセンター事業が前年比94%成長、AIアクセラレータ市場シェア15%
- 競合との差別化: インテル(CPU)・エヌビディア(GPU)との競合、CPUとGPUの統合ソリューション提供が差別化
- 財務・配当の実績: 2024年売上258億ドル(前年比14%増)、2025年Q1売上74億ドル(前年比36%増)、無配当(成長投資重視)
- リスク要因: 中国向けMI308輸出規制(約8億ドル損失)、Q1 2025データセンター売上予想下回り、高バリュエーション(予想PER 46.18倍)
アドバンスト・マイクロ・デバイセズは、CPU・GPUの半導体メーカーとして、AI・データセンター需要拡大を追い風に急成長しています。2017年にZenアーキテクチャのCPU(Ryzen、EPYC)を投入し、インテルからCPU市場シェアを奪いました。エヌビディアとはGPU(AI・データセンター向け)で競合していますが、AMDはCPUとGPUの両方を手掛け、統合ソリューションを提供できる点が差別化ポイントです。
1. なぜアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が注目されているのか
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、1969年創業の半導体メーカーです。長年インテルに押されていましたが、2017年にZenアーキテクチャのCPU(Ryzen、EPYC)を投入し、性能・コストパフォーマンスでインテルを逆転しました。現在はデータセンター・PC・ゲーミング向けCPUで高シェアを獲得し、AI・データセンター需要拡大により急成長しています。
(1) 成長戦略の3つのポイント
アドバンスト・マイクロ・デバイセズは、以下の3つの成長戦略を推進しています:
ZT Systems社を49億ドルで買収し、包括的AIソリューションをワンストップで提供
2024年にZT Systems社を49億ドルで買収しました。ZT Systems社はデータセンターインフラ専門企業で、ハードウェア・ソフトウェア・システムレベル統合の専門知識を持ちます。この買収により、AMDはハードウェア(CPU・GPU)だけでなく、ソフトウェア・システムレベル統合を含む包括的AIソリューションをワンストップで提供できるようになりました。Lisa Su CEO(2014年就任)のAI開発戦略の主要構成要素とされています。
OpenAIとの戦略パートナーシップにより6ギガワット規模のAMD GPU導入
OpenAIとのコア戦略パートナーシップを締結し、6ギガワット規模のAMD GPU導入を推進しています。Instinct MI450シリーズから展開を開始し、OpenAIのAI開発基盤を支えます。マイクロソフト・メタ・オラクル・テスラなど大手テック企業もMI300Xを採用しており、戦略パートナーシップがAMDのAI市場での地位を強化しています。
MI350/MI400シリーズGPU投入
MI350シリーズGPUを2025年にリリースし、前世代比4倍の演算性能・AI推論35倍向上を実現します。MI400シリーズを2026年に投入予定で、エヌビディアとの性能差を縮小し、AI市場での競争力を強化します。ROCm 7ソフトウェアエコシステム拡充により、開発者がAMD GPUを容易に利用できる環境を整備しています。
(2) 注目テーマ(AI・データセンター市場)
投資家が注目している主要テーマは以下の通りです:
AIデータセンター向けGPU・アクセラレータ(MI300/MI350/MI400シリーズ)
AIデータセンターアクセラレータ市場は、2028年まで年率60%超成長で5,000億ドル規模到達が予想されています。AMDはInstinct MI300/MI350/MI400シリーズで市場攻略を進めており、2025年にAI GPU売上80-90億ドル到達が予測されています。AIアクセラレータ市場シェアは2022年5%から2024年15%へ拡大し、エヌビディア(シェア80%超)を追撃しています。
Zenアーキテクチャによる高性能CPU(Ryzen・EPYCファミリー)
2017年に投入したZenアーキテクチャのCPU(Ryzen、EPYC)は、性能・コストパフォーマンスでインテルを逆転しました。データセンター向けEPYCはインテルXeonからシェアを奪い、2024年データセンター売上126億ドル(前年比94%増)を記録しました。PC向けRyzenもゲーミングPC・クリエイター向けPCで高シェアを獲得しています。
メタ・OpenAI・マイクロソフト・オラクルなど大手テック企業との戦略パートナーシップ
メタ・OpenAI・マイクロソフト・オラクル・テスラなど大手テック企業がAMDのMI300Xを採用しています。戦略パートナーシップにより、AMDはエヌビディア一強のAI市場で代替選択肢としての地位を確立しました。OpenAIとの6ギガワット規模のGPU導入契約は、AMDのAI市場での存在感を大幅に高めました。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家の主な関心は、AI・データセンター需要の長期成長です。AIアクセラレータ市場は2028年まで年率60%超成長で5,000億ドル規模到達が予想されており、AMDは市場シェア15%でエヌビディアを追撃しています。2025年度売上23%成長・EPS32.3%成長予測で、長期的な成長期待が株価を支えています。
一方、懸念点としては、中国向け輸出規制とQ1 2025弱気ガイダンスが挙げられます。中国向けMI308輸出規制により売上が事実上消滅し、在庫評価損等で約8億ドルの損失を計上しました(GAAP粗利率40%に低下・営業損失1.34億ドル)。Q1 2025データセンター売上39億ドルが予想を下回り、Q1ガイダンスもデータセンター売上7%減の弱気見通しとなりました。
アナリストの見通しは概ね前向きで、コンセンサスは「Moderate Buy」(買い29・ホールド10・売り0)です。平均目標株価は249.92ドル(レンジ160-310ドル)で、Bank of AmericaとHSBCが目標株価を300-310ドルに引き上げました。一方、高バリュエーション(予想PER 46.18、P/S 5.6、P/EBIT 69.0)と営業利益率8.1%(S&P500平均13.1%を下回る)が懸念材料です。
2. アドバンスト・マイクロ・デバイセズの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(CPU・GPU)
アドバンスト・マイクロ・デバイセズは、CPU・GPUの半導体メーカーとして、以下の主力事業を展開しています:
データセンター向けCPU(EPYC)・GPU(Instinct)
データセンター向けCPU(EPYC)は、インテルXeonからシェアを奪い、2024年データセンター売上126億ドル(前年比94%増)を記録しました。データセンター事業は2024年Q1の21.9億ドルから2025年Q1には40.9億ドルへ87%成長し、AMDの最大成長セグメントとなっています。GPU(Instinct MI300/MI350/MI400シリーズ)はAIアクセラレータとして、メタ・OpenAI・マイクロソフト・オラクル・テスラなど大手テック企業に採用されています。
PC向けCPU(Ryzen)・GPU(Radeon)
PC向けCPU(Ryzen)は、ゲーミングPC・クリエイター向けPCで高シェアを獲得しています。Zenアーキテクチャにより性能・コストパフォーマンスでインテルを逆転し、PC市場でのプレゼンスを拡大しました。GPU(Radeon)はゲーミングPC・クリエイター向けで、エヌビディアGeForceと競合しています。
組み込み向け(Xilinx)
2024年にXilinx(AI向けFPGA)を買収し、組み込み向け事業を強化しました。FPGAは、プログラム可能な半導体で、AI・5G・自動車・産業用途で使用されます。Xilinx買収により、AMDはデータセンター・AI市場でのソリューションを拡充しました。
(2) セクター・業種の説明
アドバンスト・マイクロ・デバイセズは情報技術(Information Technology)セクターの**半導体・半導体製造装置(Semiconductors & Semiconductor Equipment)**に分類されます。
半導体セクターの特徴
半導体はPC・スマートフォン・データセンター・自動車など幅広い用途で使用され、景気の影響を受けやすい一方、長期的な需要成長が期待される産業です。AI・データセンター・5G・自動車の電動化により、半導体需要は今後も拡大する見込みです。
半導体業界の収益構造
半導体業界の収益は「出荷数量 × 単価」で決まります。出荷数量は経済活動・デジタル化に連動し、単価は性能・技術革新により変動します。AMDは、高性能CPU・GPUに特化し、高単価製品でマージンを確保しています。
(3) ビジネスモデルの特徴
アドバンスト・マイクロ・デバイセズのビジネスモデルには以下の特徴があります:
ファブレスモデル(製造設備を持たず設計・販売に特化)
AMDは2009年にGlobalFoundriesへ製造部門を分離し、ファブレスモデルに移行しました。製造はTSMC(台湾積体電路製造)に委託し、設計・販売に経営資源を集中しています。ファブレスモデルにより、巨額の設備投資を回避し、研究開発に資金を集中できます。
CPUとGPUの統合ソリューション提供
AMDは、CPUとGPUの両方を手掛け、統合ソリューションを提供できる点が差別化ポイントです。データセンター向けにCPU(EPYC)とGPU(Instinct)を組み合わせたソリューションを提供し、顧客のワンストップニーズに応えています。インテルはCPU専業、エヌビディアはGPU専業であり、AMDの統合ソリューションは独自の強みです。
成長投資重視(無配当)
AMDは無配当で、利益をAI・データセンター事業に再投資する方針です。配当収入を求める投資家には不向きですが、長期的な成長を期待する投資家には魅力的です。ZT Systems買収(49億ドル)やMI350/MI400シリーズGPU開発に資金を集中し、AI市場での競争力を強化しています。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業
アドバンスト・マイクロ・デバイセズの主要競合企業は以下の通りです:
インテル(INTC)- CPU市場
インテルはCPU市場で長年トップシェアを維持してきましたが、AMDのZenアーキテクチャ投入によりシェアを奪われています。データセンター向けでは、AMDのEPYCがインテルXeonからシェアを奪い、2024年データセンター売上126億ドル(前年比94%増)を記録しました。インテルは製造技術の遅れと経営陣の混乱により、AMDに対して劣勢となっています。
エヌビディア(NVDA)- GPU市場
エヌビディアはGPU市場でトップシェアを維持し、AI市場ではシェア80%超でリードしています。AMDはAIアクセラレータ市場シェア15%でエヌビディアを追撃していますが、性能・ソフトウェアエコシステム(CUDA)で劣勢です。エヌビディアは2024年にBlackwell GPUを投入し、性能で先行しています。
Qualcomm・ARM - モバイル・組み込み市場
Qualcomm(クアルコム)・ARM(アーム)はモバイル・組み込み市場で競合しています。AMDは組み込み向けにXilinx(FPGA)を買収しましたが、モバイル市場ではQualcomm・ARMが優位です。
(2) 競合優位性
アドバンスト・マイクロ・デバイセズの競合優位性は以下の通りです:
CPUとGPUの統合ソリューション提供
AMDは、CPUとGPUの両方を手掛け、統合ソリューションを提供できる点が差別化ポイントです。データセンター向けにCPU(EPYC)とGPU(Instinct)を組み合わせたソリューションを提供し、顧客のワンストップニーズに応えています。インテルはCPU専業、エヌビディアはGPU専業であり、AMDの統合ソリューションは独自の強みです。
Zenアーキテクチャによる高性能・高コストパフォーマンス
2017年に投入したZenアーキテクチャのCPU(Ryzen、EPYC)は、性能・コストパフォーマンスでインテルを逆転しました。Zenアーキテクチャは世代を重ねるごとに性能が向上し、現在はZen 5まで進化しています。高性能・高コストパフォーマンスにより、データセンター・PC市場でシェアを拡大しました。
戦略パートナーシップ(OpenAI・メタ・マイクロソフト等)
OpenAI・メタ・マイクロソフト・オラクル・テスラなど大手テック企業との戦略パートナーシップにより、AMDはエヌビディア一強のAI市場で代替選択肢としての地位を確立しました。OpenAIとの6ギガワット規模のGPU導入契約は、AMDのAI市場での存在感を大幅に高めました。
(3) 市場でのポジショニング
アドバンスト・マイクロ・デバイセズは、AI・データセンター市場の成長株として、エヌビディアの代替選択肢としてのポジショニングを確立しています。
AI・データセンター市場の成長株
AMDは、AI・データセンター需要の長期成長を追い風に急成長しています。2024年データセンター売上126億ドル(前年比94%増)を記録し、AIアクセラレータ市場シェアは2022年5%から2024年15%へ拡大しました。2025年度売上23%成長・EPS32.3%成長予測で、長期的な成長期待が株価を支えています。
エヌビディアの代替選択肢
エヌビディアはAI市場でシェア80%超でリードしていますが、供給不足・価格高騰により、顧客はAMDへの分散調達を進めています。AMDはMI350/MI400シリーズGPU投入により、エヌビディアとの性能差を縮小し、代替選択肢としての地位を強化しています。
無配当・成長投資重視
AMDは無配当で、利益をAI・データセンター事業に再投資する方針です。配当収入を求める投資家には不向きですが、長期的な成長を期待する投資家には魅力的です。Lisa Su CEO(2014年就任)のリーダーシップのもと、高性能コンピューティング・省電力チップ設計・信頼性ある製品供給に注力しています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移
アドバンスト・マイクロ・デバイセズの財務実績は以下の通りです(2025年10月時点のデータ):
2024年(年間)の業績
- 売上高: 258億ドル(前年比14%増)で過去最高
- データセンター売上: 126億ドル(前年比94%増)
- AIアクセラレータ市場シェア: 15%(2022年5%から拡大)
2025年Q2(2024年12月期)の業績
- 売上高: 77億ドル(前年比32%増)
2025年Q1(2024年9月期)の業績
- 売上高: 74億ドル(前年比36%増)
- データセンター売上: 40.9億ドル(前年21.9億ドルから87%成長)
- データセンター売上39億ドルが予想を下回り
2025年度の見通し
AMDは2025年度売上23%成長・EPS32.3%成長を予測しています。Q3売上87億ドル(前年比28%増)・非GAAPグロスマージン54%を見込んでいます。AI GPU売上は2025年に80-90億ドル到達が予測されています。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はAMD公式IRページをご確認ください。
(出典: AMD 2024 Annual Report, AMD Q1 2025 Earnings Report)
(2) 配当履歴
アドバンスト・マイクロ・デバイセズは無配当です。
配当利回り
0%(無配当)です。同社は成長投資を優先し、利益をAI・データセンター事業に再投資する方針です。
無配当の理由
AMDは、ZT Systems買収(49億ドル)、MI350/MI400シリーズGPU開発、ROCm 7ソフトウェアエコシステム拡充など、AI・データセンター事業への成長投資を優先しています。配当収入を求める投資家には不向きですが、長期的な成長を期待する投資家には魅力的です。
将来の配当可能性
AMDが配当を開始する可能性は現時点では低いです。成長投資を優先する方針が継続する見込みです。
(3) 財務健全性
アドバンスト・マイクロ・デバイセズの財務健全性は以下の通りです:
中国向け輸出規制による損失
中国向けMI308輸出規制により売上が事実上消滅し、在庫評価損等で約8億ドルの損失を計上しました(GAAP粗利率40%に低下・営業損失1.34億ドル)。輸出規制は短期的に財務を圧迫していますが、長期的にはAI市場での成長が財務健全性を支えると見込まれています。
営業利益率
営業利益率8.1%はS&P500平均13.1%を下回る低収益性です。AI・データセンター事業の成長により、営業利益率の改善が期待されています。
キャッシュフロー
成長投資(ZT Systems買収、MI350/MI400シリーズGPU開発)により、キャッシュアウトが継続しています。ただし、AI GPU売上80-90億ドル到達によりキャッシュフロー創出力が強化される見込みです。
5. リスク要因
(1) 事業リスク(中国向け輸出規制)
アドバンスト・マイクロ・デバイセズの主な事業リスクは以下の通りです:
中国向けMI308輸出規制(約8億ドル損失)
中国向けMI308輸出規制により売上が事実上消滅し、在庫評価損等で約8億ドルの損失を計上しました(GAAP粗利率40%に低下・営業損失1.34億ドル)。輸出規制は政策変更により影響が拡大・縮小する可能性があり、中国市場への依存度が高い企業にとって重大なリスクです。
Q1 2025データセンター売上予想下回り
Q1 2025データセンター売上39億ドルが予想を下回り、Q1ガイダンスもデータセンター売上7%減の弱気見通しとなりました。データセンター需要の変動により、業績が短期的に変動するリスクがあります。
AI市場での競争激化
エヌビディアはAI市場でシェア80%超でリードし、2024年にBlackwell GPUを投入しました。AMDはMI350/MI400シリーズGPU投入により追撃していますが、性能・ソフトウェアエコシステム(CUDA)で劣勢です。競争激化により市場シェア・利益率が低下するリスクがあります。
(2) 市場環境リスク(競争激化)
アドバンスト・マイクロ・デバイセズは以下の市場環境リスクに直面しています:
エヌビディアとの競争激化
エヌビディアはAI市場でシェア80%超でリードし、CUDAソフトウェアエコシステムで圧倒的な優位性を持ちます。AMDはROCm 7ソフトウェアエコシステム拡充により追撃していますが、開発者のCUDA依存度は高く、AMDへの移行は容易ではありません。
半導体需要の景気変動リスク
半導体は景気の影響を受けやすい産業です。景気後退により、PC・データセンター需要が減少すれば、AMDの売上が減少するリスクがあります。
為替リスク(日本人投資家向け)
日本人投資家にとって、為替レートの変動により円ベースでの投資リターンが大きく影響を受ける可能性があります。円高局面では米ドル建て資産の円換算価値が減少し、円安局面では増加します。
(3) 規制・競争リスク
アドバンスト・マイクロ・デバイセズは以下の規制・競争リスクに直面しています:
輸出規制の拡大
米国政府は中国向け半導体輸出規制を強化しており、規制対象製品が拡大すればAMDの売上がさらに減少するリスクがあります。中国市場への依存度を低減する必要があります。
高バリュエーション(予想PER 46.18倍)
予想PER 46.18倍、P/S 5.6、P/EBIT 69.0と高バリュエーションです。業績期待の高さを示していますが、期待外れ時の下落リスクも大きいです。AI・データセンター需要が期待を下回れば、株価が大幅に下落する可能性があります。
ファブレスモデルのリスク
AMDは製造をTSMC(台湾積体電路製造)に委託しており、TSMCの製造能力・地政学リスク(台湾有事)に依存しています。TSMCの製造能力不足や地政学リスクにより、AMDの製品供給が滞るリスクがあります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
アドバンスト・マイクロ・デバイセズの主な強みは以下の通りです:
AI・データセンター市場での急成長
2024年データセンター売上126億ドル(前年比94%増)を記録し、AIアクセラレータ市場シェアは2022年5%から2024年15%へ拡大しました。OpenAIとの6ギガワット規模のGPU導入契約により、AI市場での存在感を大幅に高めました。
CPUとGPUの統合ソリューション提供
AMDは、CPUとGPUの両方を手掛け、統合ソリューションを提供できる点が差別化ポイントです。データセンター向けにCPU(EPYC)とGPU(Instinct)を組み合わせたソリューションを提供し、顧客のワンストップニーズに応えています。
MI350/MI400シリーズGPU投入と戦略パートナーシップ
MI350シリーズGPUを2025年にリリースし、前世代比4倍の演算性能・AI推論35倍向上を実現します。MI400シリーズを2026年に投入予定で、エヌビディアとの性能差を縮小します。OpenAI・メタ・マイクロソフト・オラクル・テスラなど大手テック企業との戦略パートナーシップが成長を支えています。
(2) リスク要因(再掲)
アドバンスト・マイクロ・デバイセズの主なリスク要因は以下の通りです:
中国向け輸出規制と業績変動
中国向けMI308輸出規制により約8億ドルの損失を計上しました。Q1 2025データセンター売上が予想を下回り、業績変動が懸念されます。
エヌビディアとの競争激化と高バリュエーション
エヌビディアはAI市場でシェア80%超でリードし、性能・ソフトウェアエコシステム(CUDA)で優位です。予想PER 46.18倍と高バリュエーションで、期待外れ時の下落リスクが大きいです。
(3) 向いている投資家
アドバンスト・マイクロ・デバイセズは以下のような投資家に向いています:
AI・データセンター需要の長期成長を信じる投資家
AIアクセラレータ市場は2028年まで年率60%超成長で5,000億ドル規模到達が予想されています。AMDは市場シェア15%でエヌビディアを追撃し、長期的な成長が期待されます。
短期的な業績変動に耐えられる投資家
Q1 2025データセンター売上が予想を下回るなど、短期的な業績変動があります。長期的な成長を信じ、短期的な業績変動に耐えられる投資家に向いています。
無配当を許容できる成長株投資家
AMDは無配当で、利益をAI・データセンター事業に再投資する方針です。配当収入を求める投資家には不向きですが、長期的な成長を期待する投資家には魅力的です。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。米国株投資には為替リスク、税金(AMDは無配当のため配当課税なし)、規制リスクなどが伴います。最新の財務データ・税率は公式IRページ・国税庁ウェブサイトをご確認ください。