0. この記事でわかること
本記事では、フランクリン・リソーシズ(BEN)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: グローバル資産運用会社で、高配当利回り(約5%)が魅力。オルタナティブ投資とETF事業が成長ドライバー
- 事業内容と成長戦略: オルタナティブ投資AUMが2580億ドルに到達、ETFプラットフォームが15四半期連続純流入、欧州のプライベートクレジット企業Apera買収で5年間で1000億ドルの私募市場資金調達を目標
- 競合との差別化: ブラックロック、バンガード、ステート・ストリート等と競合。オルタナティブ投資、トークン化マネーファンド「Benji」、OCIO事業(AUM 930億ドル)で差別化
- 財務・配当の実績: 2025年第3四半期は調整後EPS 0.59ドル(前年比0.65ドルから減少)。配当利回り約5%、フリーキャッシュフローが豊富
- リスク要因: Western Assetの連邦調査(SEC・DOJ・CFTC)、約1200億ドルの資金流出、総純流出500億ドル、株価低迷(過去1年間で-14.3%)など
(本記事は情報提供を目的としており、投資判断はご自身で行ってください)
1. なぜフランクリン・リソーシズ(BEN)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
フランクリン・リソーシズは、グローバル資産運用会社として、以下の3つの成長戦略を推進しています。
オルタナティブ投資の拡大 オルタナティブ投資のAUMは2580億ドルに達し、2025年第3四半期に62億ドルの資金調達を実現しました(うち私募市場資産が53億ドル)。プライベートエクイティ、プライベートクレジット、ヘッジファンドなどのオルタナティブ投資は、高い運用報酬を生み出す収益源として期待されています(出典: AI Invest分析)。
欧州のプライベートクレジット企業Apera Asset Management(AUM 57億ドル)を買収し、5年間で1000億ドルの私募市場資金調達を目標に設定しています。この買収により、私募市場事業を多様化し、欧州市場でのプレゼンスを強化します。
ETFプラットフォームの成長 ETFプラットフォームが15四半期連続で純流入を記録し、2025年第3四半期に43億ドルを追加してAUMが441億ドルに到達しました。Franklin Crypto Index ETFやヨーロッパ初のトークン化マネーファンド「Benji」など、革新的な商品を展開しています(出典: AI Invest分析)。
ETF事業は低コストで顧客獲得できる成長分野であり、パッシブ運用への資金流出に対抗する重要な戦略となっています。
プライベートクレジット事業の拡大 Apera買収により、欧州のプライベートクレジット市場に参入しました。プライベートクレジットは、銀行融資に代わる企業向け融資として需要が拡大しており、高い運用報酬を生み出す成長分野です。5年間で1000億ドルの私募市場資金調達を目標としており、オルタナティブ投資のさらなる拡大が期待されています。
(2) 注目テーマ
フランクリン・リソーシズが投資家の注目を集める主なテーマは以下の3つです:
- ブロックチェーン・デジタル資産(トークン化マネーファンド「Benji」): ヨーロッパ初のトークン化マネーファンド「Benji」を展開。ブロックチェーン技術を活用した次世代金融商品
- プライベートクレジット・プライベート市場: Apera買収により欧州プライベートクレジット市場に参入。5年間で1000億ドルの私募市場資金調達を目標
- OCIO(アウトソースCIO)事業の拡大(AUM 930億ドル、100名超のマルチアセット投資専門家): 企業年金・財団の投資運用業務を外部委託するOCIO事業が拡大。専門知識を活かした高付加価値サービス
これらのテーマは、パッシブ運用への資金流出に対抗する差別化戦略の中核となっています。
(3) 投資家の関心・懸念点
関心点 フランクリン・リソーシズは、総運用資産(AUM)約1.6兆ドル(2024年9月末)を誇るグローバル資産運用会社です。150カ国以上でサービス提供し、30カ国超にオフィス、約1万200人の従業員を擁しています(出典: みんかぶ米国株)。
オルタナティブ投資とETF事業が成長ドライバーとなっており、記録的な240億ドルの機関投資家パイプライン(未実行案件)や185億ドルのオルタナティブ資産調達計画が将来の成長材料となっています(出典: AI Invest分析)。
配当利回り約5%と高水準であり、フリーキャッシュフローが豊富なため、増配・自社株買いに積極的です。5年後には配当利回りが5.17%に到達すると予測されており、高配当株候補として注目されています(出典: 複利のチカラで億り人)。
懸念点 一方で、以下の懸念点が指摘されています:
- Western Assetの連邦調査: Western Asset Managementが連邦調査(SEC、DOJ、CFTC)を受け、約1200億ドルの資金流出が発生しました。CIO交代と20億ドルファンド閉鎖に至り、不適切な取引配分(チェリーピッキング)疑惑が浮上しています(出典: Bloomberg)
- 総純流出500億ドル: 2025年度の総純流出額が500億ドルに拡大し、長期純流出が326億ドルに達するなど、資金流出が継続的な課題となっています(出典: Nasdaq分析)
- 株価低迷: 過去1年間で株価が14.3%下落(S&P500は8.2%上昇)し、BlackRockの13.5%上昇に大きく劣後しています(出典: Nasdaq分析)
- 従業員削減: Western Assetの調査問題を受けて、従業員約300名(全体の3%)を削減しました。2026年度に2億-2億5000万ドルのコスト削減を見込んでいます(出典: Bloomberg)
2. フランクリン・リソーシズの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(株式・債券・オルタナティブ投資)
フランクリン・リソーシズは、1947年に創業したグローバル資産運用会社です。フランクリン・テンプルトン・ブランドで、以下の主力事業を展開しています:
株式運用
- 米国株、国際株、エマージング株など幅広い株式ファンド
- アクティブ運用とパッシブ運用(ETF)の両方を提供
債券運用
- 国債、社債、ハイイールド債、エマージング債など幅広い債券ファンド
- Western Asset Managementが債券運用の中核(現在は調査問題で資金流出中)
オルタナティブ投資
- プライベートエクイティ、プライベートクレジット、ヘッジファンド、不動産など
- AUM 2580億ドル、2025年第3四半期に62億ドル調達
マルチアセットソリューション
- OCIO(アウトソースCIO)事業:企業年金・財団の投資運用業務を外部委託するサービス(AUM 930億ドル)
- バランス型ファンド、ターゲット・デート・ファンドなど
(2) セクター・業種の説明(Financials - Capital Markets)
フランクリン・リソーシズは「Financials(金融)」セクターの「Capital Markets(資本市場)」業種に分類されます。この業種は、資産運用、投資銀行、証券ブローカレッジなどを含みます。
資産運用業界の特徴:
- 市場環境依存: 株式市場・債券市場の上昇時にAUMが増加し、運用報酬収入が拡大。逆に市場下落時はAUMが減少し、収益が圧迫される
- パッシブ運用へのシフト: 低コストのパッシブ運用(インデックスファンド、ETF)への資金流出が業界全体の構造問題
- 規制の厳格さ: SECなどの規制当局による監督が厳しく、コンプライアンス違反は業績に大きな影響を与える
フランクリン・リソーシズは、オルタナティブ投資とETF事業の拡大により、パッシブ運用への資金流出に対抗しています。
(3) ビジネスモデルの特徴(グローバル資産運用・フランクリン・テンプルトン・ブランド)
フランクリン・リソーシズのビジネスモデルの最大の特徴は、グローバル資産運用とフランクリン・テンプルトン・ブランドです。
M&A戦略による規模拡大
- 2020年7月にLegg Mason(AUM 1.4兆ドル)を買収し、世界最大級の独立系専門投資運用会社に
- 2024年1月にPutnam Investments(9億2500万ドル)を買収完了し、リタイアメント・保険市場でのプレゼンスを強化(出典: Franklin Resources公式サイト)
- 2022年11月にオルタナティブ資産投資会社Alcentraの買収を完了(出典: みんかぶ米国株)
- 2025年にApera Asset Management(欧州プライベートクレジット、AUM 57億ドル)を買収
フリーキャッシュフロー重視 資本投資不要でフリーキャッシュフローが豊富であり、増配・自社株買いに積極的です。配当利回り約5%と高水準であり、高配当株として魅力があります(出典: 複利のチカラで億り人)。
デジタル資産・ブロックチェーン先行 ヨーロッパ初のトークン化マネーファンド「Benji」を展開し、ブロックチェーン技術を活用した次世代金融商品を提供しています。Franklin Crypto Index ETFなど、デジタル資産分野で先行しています(出典: AI Invest分析)。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(ブラックロック、バンガード、ステート・ストリート等)
フランクリン・リソーシズの主な競合企業は以下の3社です:
- ブラックロック(BlackRock): 世界最大手の資産運用会社。AUM約10兆ドル。パッシブ運用(iShares ETF)とアクティブ運用の両方に強み
- バンガード(Vanguard): パッシブ運用(インデックスファンド、ETF)の大手。低コスト戦略で顧客を獲得
- ステート・ストリート(State Street Global Advisors): パッシブ運用(SPDR ETF)の大手。機関投資家向けサービスに強み
これらの競合と比較して、フランクリン・リソーシズはオルタナティブ投資とETF成長で差別化を図っています。
(2) 競合優位性(オルタナティブ投資・ETF 15四半期連続純流入・トークン化マネーファンド)
フランクリン・リソーシズの競合優位性は以下の3点にまとめられます:
オルタナティブ投資の拡大 オルタナティブ投資AUM 2580億ドルは業界でも高水準です。プライベートエクイティ、プライベートクレジット、ヘッジファンドなどの高付加価値サービスにより、高い運用報酬を生み出しています。Apera買収により、欧州プライベートクレジット市場にも参入し、5年間で1000億ドルの私募市場資金調達を目標としています(出典: AI Invest分析)。
ETFプラットフォームの成長 ETFプラットフォームが15四半期連続で純流入を記録し、AUM 441億ドルに到達しました。Franklin Crypto Index ETFやトークン化マネーファンド「Benji」など、革新的な商品を展開しており、パッシブ運用への資金流出に対抗しています(出典: AI Invest分析)。
OCIO事業の拡大 OCIO(アウトソースCIO)事業はAUM 930億ドルに達し、100名超のマルチアセット投資専門家を擁しています。企業年金・財団の投資運用業務を外部委託するサービスであり、専門知識を活かした高付加価値サービスとして成長しています。
(3) 市場でのポジショニング(AUM 1.6兆ドル・独立系運用会社)
フランクリン・リソーシズは、AUM約1.6兆ドル(2024年9月末)を誇る世界最大級の独立系専門投資運用会社です。
- 独立系運用会社: 銀行系や保険系ではなく、独立系運用会社として中立的な投資判断を提供
- グローバル展開: 150カ国以上でサービス提供し、30カ国超にオフィスを持つ
- 75年超の投資経験: 1947年創業、国際分散投資のパイオニアとして長い実績を持つ(出典: 複利のチカラで億り人)
ブラックロックやバンガードと比較すると規模では劣りますが、オルタナティブ投資とデジタル資産分野で差別化しています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(2025年第3四半期調整後EPS 0.59ドル)
最新四半期業績 2025年第1四半期(会計年度は10月-9月)の業績は以下の通りです(出典: Franklin Resources Q1 FY2025決算発表):
- 純利益:1億6360万ドル(EPS 0.29ドル、前年0.50ドルから減少)
- 調整後純利益:3億2050万ドル
- 調整後EPS:0.59ドル(前年0.65ドルから減少)
- ETF事業:89%成長、12四半期連続で純流入を記録
通期ガイダンス(2025年度)
- 費用:2024年度比でほぼ横ばい~やや増加(2000-3000万ドル増)
- 2026年度に少なくとも2億ドルのランレート・コスト削減を見込む
- 営業利益率:長期的に30%目標に向けて改善(現在は20%台半ば)
将来予想 営業利益率を長期的に30%目標に向けて改善する計画です(出典: Quartr分析)。オルタナティブ投資とETF事業の成長により、収益性の向上が期待されています。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はFranklin Resources公式IRページをご確認ください。
(2) 配当履歴(高配当利回り約5%・豊富なフリーキャッシュフロー)
フランクリン・リソーシズは高配当株として人気があり、配当利回りは2025年時点で約5%前後です。
配当の特徴
- 配当利回り:約5%(2025年10月時点)
- フリーキャッシュフローが豊富:資本投資不要でフリーキャッシュフローが豊富なため、増配・自社株買いに積極的
- 5年後配当利回り予測:5.17%(出典: 複利のチカラで億り人)
ただし、配当性向はやや高めであり、増配余地は限定的との見方もあります。資金流出問題が解決しない場合、配当削減のリスクもあります。
(3) 財務健全性(500億ドルの純流出・営業利益率30%目標)
500億ドルの純流出 2025年度の総純流出額が500億ドルに拡大し、長期純流出が326億ドルに達しています(出典: Nasdaq分析)。特にWestern Assetの調査問題により、約1200億ドルの顧客資産が流出しました(出典: Bloomberg)。
この資金流出は、運用報酬収入の減少につながり、業績に悪影響を与えています。
営業利益率30%目標 一方で、2026年度に少なくとも2億ドルのランレート・コスト削減を見込み、営業利益率を長期的に30%目標に向けて改善する計画です(出典: Quartr分析)。従業員約300名(全体の3%)を削減し、コスト削減を進めています。
5. リスク要因
(1) 事業リスク(Western Asset調査問題・1200億ドル資金流出)
Western Assetの連邦調査 Western Asset Managementが連邦調査(SEC、DOJ、CFTC)を受けており、不適切な取引配分(チェリーピッキング)疑惑が浮上しています。約1200億ドルの顧客資産が流出し、CIO交代と20億ドルファンド閉鎖に至りました(出典: Bloomberg)。
この調査問題は、さらなる資金流出や罰金のリスクがあり、業績に重大な影響を与える可能性があります。
資金流出問題 2025年度の総純流出額が500億ドルに拡大し、長期純流出が326億ドルに達しています(出典: Nasdaq分析)。パッシブ運用への資金流出は業界全体の構造問題ですが、Western Assetの調査問題により流出が加速しています。
(2) 市場環境リスク(パッシブ運用への資金流出・株価低迷)
パッシブ運用への資金流出 アクティブ運用からパッシブ運用(インデックスファンド、ETF)への長期的な資金流出は、業界全体の構造問題です。フランクリン・リソーシズもこの影響を受けており、オルタナティブ投資とETF事業の拡大で対抗していますが、十分に資金流出を止められていません。
株価低迷 過去1年間で株価が14.3%下落(S&P500は8.2%上昇)し、BlackRockの13.5%上昇に大きく劣後しています(出典: Nasdaq分析)。資金流出問題と調査問題により、投資家の信頼が低下しています。
為替リスク 日本人投資家にとって、為替リスクは重要な考慮事項です。円高局面では、ドル建て資産の円換算価値が減少します。為替ヘッジを検討する場合は、証券会社の為替手数料(片道0.25円程度)も考慮してください。
(3) 規制・競争リスク(SEC・DOJ・CFTC調査・300名削減)
SEC・DOJ・CFTC調査 Western Assetの不適切な取引配分(チェリーピッキング)疑惑により、SEC(証券取引委員会)、DOJ(司法省)、CFTC(商品先物取引委員会)の3つの連邦機関が調査を行っています(出典: Bloomberg)。
調査の結果次第では、多額の罰金や事業停止につながる可能性があり、業績に重大な影響を与えます。
従業員削減300名 Western Assetの調査問題を受けて、従業員約300名(全体の3%)を削減しました。2026年度に2億-2億5000万ドルのコスト削減を見込んでいますが、従業員削減によるサービス品質低下や顧客離れのリスクもあります(出典: Bloomberg)。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(高配当利回り・オルタナティブ拡大・デジタル資産先行)
フランクリン・リソーシズの強みは以下の3点にまとめられます:
高配当利回り約5% 配当利回り約5%と高水準であり、フリーキャッシュフローが豊富なため、増配・自社株買いに積極的です。5年後には配当利回りが5.17%に到達すると予測されており、高配当株として魅力があります。
オルタナティブ投資の拡大 オルタナティブ投資AUM 2580億ドル、2025年第3四半期に62億ドル調達と成長が続いています。Apera買収により、欧州プライベートクレジット市場にも参入し、5年間で1000億ドルの私募市場資金調達を目標としています。
デジタル資産・ブロックチェーン先行 ヨーロッパ初のトークン化マネーファンド「Benji」を展開し、ブロックチェーン技術を活用した次世代金融商品を提供しています。Franklin Crypto Index ETFなど、デジタル資産分野で先行しています。
(2) リスク要因(再掲)
一方で、以下のリスク要因には注意が必要です:
- Western Assetの連邦調査: SEC・DOJ・CFTCの3つの連邦機関が調査中。不適切な取引配分(チェリーピッキング)疑惑
- 約1200億ドルの資金流出: Western Assetの調査問題により、約1200億ドルの顧客資産が流出
- 総純流出500億ドル: 2025年度の総純流出額が500億ドルに拡大、長期純流出が326億ドル
- 株価低迷: 過去1年間で株価が14.3%下落(S&P500は8.2%上昇)
- 従業員削減300名: 2026年度に2億-2億5000万ドルのコスト削減を見込むが、サービス品質低下や顧客離れのリスク
- 為替リスク: 日本人投資家は円高局面での円換算価値減少に注意
(3) 向いている投資家(高配当志向・バリュー投資家・長期保有)
フランクリン・リソーシズは以下のような投資家に向いています:
- 高配当志向の投資家: 配当利回り約5%を重視する投資家
- バリュー投資家: 株価低迷(過去1年間で-14.3%)を割安と捉え、オルタナティブ投資とETF事業の成長を期待する投資家
- 長期保有投資家: 資金流出問題が解決し、営業利益率30%目標が達成されることを期待する長期保有投資家
一方で、Western Assetの調査問題と資金流出問題は重大なリスクであり、投資判断は慎重に行う必要があります。調査の結果次第では、多額の罰金や配当削減のリスクもあります。
免責事項 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。為替リスク、税制変更リスク、最新の財務データは公式IRページをご確認ください。