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Cboeグローバル・マーケッツ (CBOE)

Cboe Global Markets Inc

0. この記事でわかること

本記事では、Cboeグローバル・マーケッツ(CBOE)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: デリバティブ市場のグローバル展開、デジタル資産事業の再編、0-DTEオプションなど新商品の積極投入による成長戦略
  • 事業内容と成長戦略: 取引所運営という安定的なビジネスモデル、オプション取引で圧倒的なシェア、VIX指数(恐怖指数)の独占的な取扱い
  • 競合との差別化: CMEグループ、インターコンチネンタル取引所(ICE)、Nasdaqといった主要競合に対し、デリバティブ特化型リーダーとしてのポジショニング
  • 財務・配当の実績: 2024年通期売上21億ドル(前年比8%増)、調整後EPS 8.61ドル(10%増)、配当利回り約1.5-2.0%
  • リスク要因: 営業費用増加・税率上昇、取引量の市場変動依存、デジタル資産規制の不透明性

Cboeグローバル・マーケッツは、金融インフラという安定的なビジネスモデルを持つ一方で、成長戦略の実行と規制環境への対応が投資判断のポイントとなります。

1. なぜCboeグローバル・マーケッツ(CBOE)が注目されているのか

Cboeグローバル・マーケッツ(CBOE)は、デリバティブ市場における世界的リーダーとして、投資家の注目を集めています。特に以下の3つの成長戦略が注目されています。

(1) 成長戦略の3つのポイント

デリバティブ市場のグローバル展開

Cboeは、アジア太平洋地域への進出を本格化しています。香港にDirector of Derivatives Market Intelligence(Wei Liao氏)を配置し、日本、オーストラリア、韓国、台湾、香港の6か国でRobinhoodなどのプラットフォームと提携を進めています。この国際展開により、Data Vantageセグメントの国際売上は45%増を記録し、増分売上の85~90%が国際市場由来となっています(出典: Cboe Global Markets Q2 2025 Earnings Report)。

デジタル資産事業の再編

2024年には、デジタル資産デリバティブ(Cboe Digital)を既存のGlobal Derivatives and Clearingビジネスに統合し、より効率的な運営体制を構築しました。2025年には、長期のビットコイン・イーサリアム先物(Cboe Continuous futures)を米国規制取引所で提供開始予定です。規制不透明性を考慮しつつ、既存の強みであるデリバティブ事業とのシナジーを図る戦略が進行中です(出典: PR Newswire, 2024年5月14日)。

新商品の積極的投入

有効期限ゼロ日(0-DTE)商品、S&P 500バリアンス先物、VIX先物オプション、S&P 500イコールウェイト指数オプション(2025年4月14日開始予定)など、個人投資家向け商品を拡充しています。Robinhoodの2,700万口座のうち、オプション取引承認はわずか4%で、大きな成長余地があると見られています(出典: Investing.com, 2025年2月7日)。

(2) 注目テーマ(デリバティブ市場、データ事業、0-DTEオプション)

投資家が特に注目しているのは、以下の3つのテーマです:

  • デリバティブ市場インテリジェンス: アジア太平洋地域への人材配置と現地パートナーシップ
  • Data Vantage(データ・アナリティクス): 10%超の成長率を維持する高収益セグメント
  • 0-DTEオプション(超短期オプション取引): 個人投資家の参入を促進する新商品

(3) 投資家の関心・懸念点

将来性に対する期待

2025年の有機的売上成長率は「高い一桁台」に上方修正され、2028年には売上26億ドル、利益11億ドルを見込んでいます。カナダ移行完了後(2025年第1四半期以降)、技術リソースを成長戦略に振り向けられる体制が整うことも好材料です(出典: Nasdaq, 2025年7月25日)。

懸念材料

一方で、営業費用の増加と税率上昇が投資家の懸念材料となっています。2025年の営業費用は8億3,700万~8億5,200万ドルと予想され、実効税率も28.5~30.5%と高めの水準です。また、2024年8月には、アナリストによる格下げ(目標株価256→215ドル)も報じられました(出典: Bloomberg, 2024年8月12日)。

2. Cboeグローバル・マーケッツの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業(デリバティブ取引所、清算、データサービス)

Cboeグローバル・マーケッツは、以下の3つの主力事業を展開しています:

デリバティブ取引所運営

オプション取引において圧倒的なシェアを誇り、特にVIX指数(ボラティリティ・インデックス、別名「恐怖指数」)関連商品を独占的に取り扱っています。VIXは投資家の不安心理を示す指標として広く利用されており、市場が不安定な時期には取引量が急増します。

清算サービス

取引の決済を保証する清算機能を提供しており、市場の信頼性を支える重要なインフラとなっています。

データサービス(Data Vantage)

市場データやアナリティクスを提供するData Vantageセグメントは、2024年に7%の売上成長を記録し、2025年には10%超の成長が見込まれています。このセグメントは高い利益率を持ち、収益の多様化に貢献しています(出典: Cboe Global Markets IR, 2025年2月6日)。

(2) セクター・業種の説明(金融インフラ企業)

Cboeは金融セクター(Financials)の中でも、資本市場(Capital Markets)に分類されます。取引所運営という規制産業であり、寡占市場で高い参入障壁を持つため、ディフェンシブな特性があります。

(3) ビジネスモデルの特徴(取引量ベースの手数料収入)

収益は主に取引量に応じた手数料収入で構成されており、景気変動に対する耐性があります。市場のボラティリティが高まると取引量が増加するため、不安定な市場環境でも収益を確保できる構造となっています。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業(CME、ICE、Nasdaqなど)

Cboeの主要競合企業は以下の3社です:

  • CMEグループ: 先物取引で世界最大のシェアを持つ
  • インターコンチネンタル取引所(ICE): エネルギー・商品デリバティブに強み
  • Nasdaq: 株式市場とオプション取引の両方を運営

(2) 競合優位性(VIX独占、オプション市場シェア)

Cboeの競合優位性は以下の点にあります:

VIX指数の独占的取扱い

VIX関連商品(VIX先物、VIXオプション)を独占的に提供しており、この分野で競合を許していません。VIXは市場の不安心理を測る重要な指標として広く認知されており、Cboeにとって強力なブランド資産となっています。

オプション市場での高シェア

米国のオプション市場において、Cboeは上位のシェアを持ち、特に個人投資家向けの商品開発で先行しています。

(3) 市場でのポジショニング(デリバティブ特化型リーダー)

Cboeは、デリバティブ取引に特化したリーダーとして明確なポジショニングを確立しています。競合が株式市場や商品市場など複数分野に展開する中で、Cboeはオプション・デリバティブに集中し、専門性を高めています。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移(2024年売上21億ドル・8%増)

以下は、Cboeの過去5年間の財務推移です(2024年通期データ):

年度 売上高(億ドル) 調整後EPS(ドル) 前年比成長率
2020 15.8 5.52 -
2021 17.3 6.28 +9.5%
2022 18.9 7.18 +9.2%
2023 19.4 7.83 +2.6%
2024 21.0 8.61 +8.2%

※出典: Cboe Global Markets 10-K Annual Report 2024, SEC EDGAR

2024年通期の売上は21億ドル(前年比8%増)、調整後EPS 8.61ドル(10%増)と、堅調な成長を示しています。Derivatives Marketsセグメントの売上は8%増、Data Vantageセグメントは7%増でした(出典: Cboe Global Markets IR, 2025年2月6日)。

(2) 配当履歴(配当利回り・連続増配実績)

Cboeの配当利回りは約1.5-2.0%程度です(2025年10月時点)。同社は安定的な配当を維持しており、過去数年間で増配を実施しています。配当性向は利益の一部を株主に還元する健全な水準を保っています。

(3) 財務健全性(手数料ベースモデルの安定性)

取引量に応じた手数料収入が中心のビジネスモデルであり、大きな設備投資や在庫を必要としないため、財務健全性は高い水準にあります。フリーキャッシュフロー(FCF)も安定的に創出されており、配当や自社株買いの原資となっています。

5. リスク要因

(1) 事業リスク(営業費用増加・税率上昇)

営業費用の増加

2025年の営業費用は8億3,700万~8億5,200万ドルと予想され、コスト圧力が収益性を圧迫する懸念があります。実効税率も28.5~30.5%と高めの水準であり、利益率への影響が注視されています(出典: Nasdaq, 2025年3月5日)。

規制・法務リスク

2024年には、元Cboe取締役Mark Francis Duffyに対し、Belvedere Tradingでの財務不正行為の証拠に対応しなかったとする訴訟が提起され、監督体制への懸念が指摘されました。規制産業であるため、コンプライアンス体制の維持が重要です。

(2) 市場環境リスク(取引量変動・ボラティリティ依存)

取引量の変動

デリバティブ取引量は市場変動の影響を受けやすく、平穏な市場環境では取引量が減少する傾向があります。2024年8月には、VIX急騰時に薄商いが影響したとの指摘もありました(出典: Bloomberg, 2024年8月12日)。

為替リスク

日本人投資家にとって、ドル建て資産であるため、為替変動の影響を受けます。円高局面では、円換算での評価額が目減りする可能性があります。

(3) 規制・競争リスク(デジタル資産規制・監督体制への懸念)

デジタル資産規制の不透明性

ビットコイン・イーサリアム先物など、デジタル資産デリバティブの規制環境は依然として不透明です。規制強化や方針変更があれば、事業計画の見直しを迫られる可能性があります。

競合の激化

CME、ICE、Nasdaqなどの競合も、オプション市場やデータサービス分野での競争を強化しています。市場シェアの維持・拡大が継続的な課題となります。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み(金融インフラの寡占性・VIX独占)

Cboeグローバル・マーケッツの強みは以下の3点です:

  1. 金融インフラの寡占性: 取引所運営という規制産業で、高い参入障壁を持つ
  2. VIX指数の独占的取扱い: 市場の不安心理を測る重要指標として広く認知
  3. 安定的な手数料収入モデル: 取引量ベースの収益構造で、景気変動に対する耐性がある

(2) リスク要因(再掲:コスト増・規制不透明性)

一方で、以下のリスク要因に注意が必要です:

  1. 営業費用増加・税率上昇: 収益性への圧迫要因
  2. デジタル資産規制の不透明性: 事業計画への影響リスク

(3) 向いている投資家(金融セクター志向・配当重視)

Cboeグローバル・マーケッツは、以下のような投資家に向いていると考えられます:

  • 金融セクターに関心があり、安定的なビジネスモデルを重視する投資家
  • 配当収入を重視し、長期保有を前提とする投資家
  • デリバティブ市場の成長に期待し、VIX関連商品のユニークさを評価する投資家

ただし、金融セクター特有のリスクや規制環境の変化もあるため、投資判断はご自身で慎重に行ってください。最新の財務情報はCboe Global Markets公式IRページ(https://ir.cboe.com/)でご確認ください。

※本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨ではありません。投資判断は自己責任で行ってください。 ※2025年10月時点のデータです。最新情報は公式IRページをご確認ください。

よくある質問

Q1Cboeグローバル・マーケッツの配当利回りは?

A1約1.5-2.0%程度です(2025年10月時点)。Cboeは安定的な配当を維持しており、過去数年間で増配を実施しています。配当性向は利益の一部を株主に還元する健全な水準を保っています。最新の配当情報は、Cboe Global Markets公式IRページでご確認ください。

Q2Cboeグローバル・マーケッツの主な競合は?

A2CMEグループ、インターコンチネンタル取引所(ICE)、Nasdaqなどが主要競合です。Cboeはオプション取引とVIX指数で差別化を図っており、特にVIX関連商品(VIX先物、VIXオプション)を独占的に提供している点が強みです。デリバティブ取引に特化したリーダーとして、明確なポジショニングを確立しています。

Q3Cboeグローバル・マーケッツのリスク要因は?

A3主なリスク要因は、営業費用増加・税率上昇(2025年営業費用8億3,700万~8億5,200万ドル予想)、取引量の市場変動依存、デジタル資産規制の不透明性などです。また、2024年には元取締役に対する訴訟が提起され、監督体制への懸念も指摘されました。為替リスク(ドル建て資産)も日本人投資家にとって重要な考慮事項です。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。

Q4Cboeグローバル・マーケッツは長期投資に向いている?

A4金融インフラという安定的なビジネスモデルを持ち、配当重視の投資家に向いています。取引量ベースの手数料収入モデルで景気変動に対する耐性があり、VIX指数の独占的取扱いという強力なブランド資産を持っています。ただし、金融セクター特有のリスク(規制環境の変化、コスト圧力等)もあるため、投資判断はご自身で慎重に行ってください。