S&P500

CMEグループ (CME)

CME Group Inc

0. この記事でわかること

本記事では、CMEグループ(CME)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: 世界最大のデリバティブ取引所運営会社として、先物・オプション取引で圧倒的シェアを持ち、取引量に応じた手数料収入で安定成長しています。14年連続増配を誇る配当貴族候補として、配当利回り(約2.0~2.5%)と高い利益率(調整後純利益率60%超)が投資家の注目を集めています。
  • 事業内容と成長戦略: 金利先物、株価指数先物、エネルギー先物、FX先物など、全主要資産クラスでグローバルベンチマーク商品を提供。UST清算承認申請、OSSTRA売却(10億ドル超)、24/7取引(暗号資産先物・オプションを2026年初頭から24時間365日取引可能に)、FanDuelとの合弁事業などの戦略施策を推進しています。
  • 競合との差別化: Intercontinental Exchange(ICE)、FMX、Eurexなどの競合に対し、米国債先物・株価指数先物で圧倒的なシェアを持つ世界最大のデリバティブ取引所として差別化。規制産業・寡占市場・高い参入障壁により、競争優位性を維持しています。
  • 財務・配当の実績: 2024年は過去最高の年間平均取引量2650万枚、売上61億ドル、調整後純利益・EPSを記録。2025年Q1・Q2も記録的な売上(Q1:16億ドル、Q2:17億ドル)とADV(Q1:2980万枚、Q2:3020万枚)を達成し、全資産クラスで二桁成長を実現しました。
  • リスク要因: 市場ボラティリティの低下による取引量減少、FMXなど新規競合の参入によるシェア侵食、2025年Q3は総先物ADVが前年同期比10%減少予想(金利10%減、株式15%減、エネルギー11%減、FX 23%減)などが挙げられます。

(執筆時点: 2025年10月)

1. なぜCMEグループ(CME)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

CMEグループは、以下3つの成長戦略を推進しています:

1. UST清算承認と新たな収益源の確保
UST清算(証券清算)の承認申請が最終段階にあり、承認されれば取引活動が増加し、新たな収益源を確保できます。BrokerTec Chicago立ち上げにより米国債現物市場でのシェア改善を図り、清算ビジネスの拡大を目指しています(出典: CME Group Outlook for 2025)。

2. OSSTRA売却による株主還元強化
OSSTRA(金利指標ビジネス)売却で税引き後10億ドル超の資金調達を見込み、自社株買いまたは増配に充当する計画です。この売却により、株主還元を強化し、EPSの成長を加速させることが期待されています。

3. リテール顧客セグメントの拡大
FanDuelとの合弁事業で取引所ベースのイベント契約プラットフォームを立ち上げ、個人投資家層を拡大。Robinhoodとのパートナーシップで先物取引にアクセスし、リテール顧客セグメントが最速成長(新規リテールトレーダー数56%増)を牽引しています。Micros(小口先物)のADVは410万枚の記録を達成し、個人投資家の参入が加速しています(出典: CME Group Q2 2025 All-Time Record Revenue)。

(2) 注目テーマ(24/7取引・Google Cloudパートナーシップ・リテールトレーダー拡大)

投資家が注目するキーワードは以下の通りです:

  • 24/7取引(暗号資産先物・オプションを2026年初頭から24時間365日取引可能に): 暗号資産市場の拡大に対応し、個人投資家の利便性を向上
  • Google Cloudパートナーシップ: 2021年に10億ドルの戦略提携を締結し、イリノイ州オーロラにプライベートクラウド地域と超低遅延施設を構築。取引インフラの近代化を推進
  • リテールトレーダー拡大: Micros ADV 410万枚の記録達成、個人投資家が最速成長セグメント。RobinhoodやFanDuelとの提携により、新規顧客層を開拓

(3) 投資家の関心・懸念点

関心: 14年連続増配を誇る配当貴族候補として、安定した配当成長と高い利益率(調整後純利益率60%超)が魅力です。アナリスト12名のコンセンサスレーティングは「中程度の買い」(買い6、保有4、売り2)で、平均目標株価284.92ドル(204~313ドルのレンジ)と評価されています。2024年は過去最高の年間平均取引量2650万枚、売上61億ドル、調整後純利益・EPSを記録し、2025年Q1・Q2も記録的な業績を達成しました。

懸念: 2025年Q3は総先物ADVが前年同期比10%減少見込み(Q2の16%増から一転)で、金利先物10%減、株式先物15%減、エネルギー11%減、FX先物23%減と全資産クラスで取引量減少が予想される短期的な逆風に直面しています。FMXなどの新規競合が2年・5年米国債先物市場に参入し、CMEのコア商品で市場シェアを侵食するリスクが顕在化している点も懸念材料です(出典: CME Group's SWOT analysis: stock outlook amid market volatility and strategic moves)。

2. CMEグループの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業(デリバティブ取引所運営・金利先物・株価指数先物・エネルギー先物等)

CMEグループは、以下の主力事業を展開しています:

  1. デリバティブ取引所運営: CME(Chicago Mercantile Exchange)、CBOT(Chicago Board of Trade)、NYMEX(New York Mercantile Exchange)、COMEX(Commodity Exchange)の4つの主要取引所を運営。全主要資産クラス(金利、株式、エネルギー、農産物、金属、FX)でグローバルベンチマーク商品を提供。
  2. 清算サービス: CME Clearingを通じて、取引の決済を保証し、カウンターパーティリスクを軽減。清算手数料も重要な収益源。
  3. データサービス: FedWatch(金利先物市場のデータを基にFRBの政策金利変更の織り込み度を算出・公表するツール)など、市場データの提供。

これらの事業により、取引量に応じた手数料収入で安定成長を実現しています。

(2) セクター・業種の説明(Financials - Capital Markets)

CMEグループは、Financials(金融)セクターのCapital Markets(資本市場)業種に属しています。デリバティブ取引所は規制産業・寡占市場・高い参入障壁により、競争優位性が高く、景気後退期でもボラティリティ上昇により取引量が増加する傾向があります。金融インフラとして、グローバル経済のリスク管理を支える重要な役割を担っています。

(3) ビジネスモデルの特徴(取引量に応じた手数料収入、高い利益率)

CMEグループのビジネスモデルの特徴は、以下の通りです:

  • 取引量に応じた手数料収入: 取引量(ADV: Average Daily Volume)が増えれば増えるほど、手数料収入が増加。ボラティリティ上昇局面では取引量が急増し、収益が大幅に伸びる
  • 高い利益率: 固定費が低く、変動費も限定的なため、調整後純利益率は60%超と非常に高い。規模の経済が効いており、取引量増加が利益率向上に直結
  • 寡占市場: 米国債先物・株価指数先物(S&P 500、Nasdaq 100等)で圧倒的なシェアを持ち、競合が限定的。高い参入障壁により、新規参入が困難

Google Cloudとの戦略提携により、取引インフラの近代化とコスト削減を進めており、長期的な競争力強化を図っています。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業(Intercontinental Exchange、FMX、Eurex等)

CMEグループの主要競合企業は以下の通りです:

  1. Intercontinental Exchange(ICE): NYSE(ニューヨーク証券取引所)を運営し、エネルギー・農産物先物でも競合。原油先物(WTI、Brent)で強い
  2. FMX: 新規参入の競合で、2年・5年米国債先物市場でCMEのシェアを侵食しつつある
  3. Eurex: 欧州最大のデリバティブ取引所(ドイツ取引所グループ傘下)。欧州金利先物・株価指数先物で強い

これらの競合に対し、CMEは米国債先物・株価指数先物で圧倒的なシェアを維持していますが、FMXの参入により市場シェアを失うリスクが顕在化しています。

(2) 競合優位性(世界最大のデリバティブ取引所、全資産クラスでのベンチマーク商品)

CMEグループの競合優位性は以下の点にあります:

  • 世界最大のデリバティブ取引所: 2024年の年間平均取引量2650万枚と、圧倒的な規模を誇る
  • 全資産クラスでのベンチマーク商品: 米国債先物(10年・5年・2年)、株価指数先物(S&P 500、Nasdaq 100、Dow Jones)、エネルギー先物(原油WTI、天然ガス)、FX先物(ユーロ/ドル、円/ドル)など、主要な資産クラスでベンチマークとなる商品を提供
  • 規制産業・寡占市場・高い参入障壁: 金融規制により新規参入が困難で、既存プレイヤーが有利。ネットワーク効果により、流動性が高い取引所に取引が集中

Google Cloudとのパートナーシップにより、超低遅延施設を構築し、アルゴリズム取引や高頻度取引(HFT)のニーズに対応しています。

(3) 市場でのポジショニング(米国債先物・株価指数先物で圧倒的シェア)

CMEグループは、米国債先物・株価指数先物で圧倒的なシェアを持ち、グローバルな金融インフラの中核を担っています。FedWatch(CMEグループが提供する、金利先物市場のデータを基にFRBの政策金利変更の織り込み度を算出・公表するツール)は、市場参加者にとって必須の情報源となっており、ブランド力も非常に高いです。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移(2025年Q2の記録的業績含む)

CMEグループの売上高・利益は、取引量の増加により堅調に推移しています。以下は最新の業績データです(出典: CME Group Inc. 10-K 2024, SEC EDGAR、およびCME Group Q2 2025 All-Time Record Revenue):

2025年Q2決算(2025年7月発表):

  • 売上: 17億ドル(前年同期比10%増)、過去最高
  • ADV(平均日次取引量): 3020万枚(16%増)、過去最高
  • 調整後純利益: 11億ドル
  • 希薄化後EPS: 2.96ドル
  • 新規リテールトレーダー数: 56%増
  • Micros ADV: 410万枚の記録

2025年Q1決算(2025年4月発表):

  • 売上: 16億ドル、過去最高
  • ADV: 2980万枚、過去最高
  • 全資産クラスで二桁成長を実現

長期財務推移(年次):

年度 売上高(億ドル) 調整後純利益(億ドル) ADV(万枚/日)
2020 48.9 29.3 1,910
2021 49.5 30.1 1,850
2022 56.0 34.8 2,200
2023 58.5 36.2 2,350
2024 61.0 37.5 2,650

売上は着実に成長しており、調整後純利益率は60%超と非常に高い水準を維持しています。

(2) 配当履歴(14年連続増配の配当貴族候補)

CMEグループは、14年連続増配を続けており、配当貴族(25年以上連続増配)の候補として注目されています:

  • 配当利回り: 約2.0~2.5%(執筆時点、Yahoo Financeより)
  • 配当性向: 50~60%程度で推移(適正水準)
  • 配当成長: 過去5年で年率8~10%程度の増配を継続

配当は四半期ごとに支払われ、安定したインカムゲインが期待できます。OSSTRA売却(10億ドル超)により、増配余地が拡大する可能性があります。

(3) 財務健全性(高い利益率、強固なキャッシュフロー)

CMEグループの財務健全性は以下の通りです:

  • 調整後純利益率: 60%超と非常に高い水準を維持
  • フリーキャッシュフロー(FCF): 年間約30~40億ドルと豊富
  • 株主還元: 配当と自社株買いを合わせて年間約30~40億ドル規模の株主還元を実施
  • 負債: 投資適格級の格付けを維持しており、財務レバレッジは適正水準

FCFが豊富なため、配当の持続可能性は非常に高いと言えます。Google Cloudへの移行に伴う変動費増加が懸念されますが、長期的にはコスト削減効果が期待されます。

※2025年10月時点のデータです。最新情報はCME Group Inc.公式IRページをご確認ください。
(出典: CME Group Inc. 10-K 2024, SEC EDGAR)

5. リスク要因

(1) 事業リスク(市場ボラティリティ低下、競合参入によるシェア侵食、2025年Q3の取引量減少予想)

CMEグループは、以下の事業リスクに直面しています:

市場ボラティリティの低下
取引量は市場ボラティリティに大きく依存しており、ボラティリティが低下すると取引量が減少し、手数料収入が大幅に減少するリスクがあります。2025年Q3は総先物ADVが前年同期比10%減少見込み(Q2の16%増から一転)で、金利先物10%減、株式先物15%減、エネルギー11%減、FX先物23%減と全資産クラスで取引量減少が予想されています。

競合参入によるシェア侵食
FMXなどの新規競合が2年・5年米国債先物市場に参入し、CMEのコア商品で市場シェアを侵食するリスクが顕在化しています。競争激化により、手数料引き下げ圧力が高まる可能性があります。

内部化による取引フロー減少
大手金融機関が自社内で取引を決済する「内部化」により、CMEを経由しない取引が増加し、取引量が減少するリスクがあります。

(2) 市場環境リスク(為替、規制変更、取引税導入リスク)

為替リスク
日本人投資家にとって、為替レート(USD/JPY)の変動は重要なリスクです。円高になれば、円換算での配当額や投資元本が減少します。為替手数料(片道0.25円程度)も考慮が必要です。

規制変更
デリバティブ取引所は規制産業であり、規制変更(マージン要件の引き上げ、ポジション制限の強化等)により取引量が減少するリスクがあります。

取引税導入リスク
金融取引税(FTT: Financial Transaction Tax)が導入されれば、取引コストが上昇し、取引量が大幅に減少する可能性があります。

(3) 規制・競争リスク(FMXなど新規競合の参入、内部化による取引フロー減少)

FMXなど新規競合の参入
FMXは2年・5年米国債先物市場でCMEのシェアを侵食しつつあり、今後も競争が激化する見込みです。CMEが手数料引き下げで対抗すれば、利益率が低下するリスクがあります。

内部化による取引フロー減少
大手金融機関が自社内で取引を決済する「内部化」が進めば、CMEの取引量が減少し、手数料収入が減少します。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み(世界最大のデリバティブ取引所、高い利益率、14年連続増配)

CMEグループの強みは以下の3点です:

  1. 世界最大のデリバティブ取引所: 2024年の年間平均取引量2650万枚、米国債先物・株価指数先物で圧倒的なシェアを持つ
  2. 高い利益率: 調整後純利益率60%超と非常に高く、豊富なフリーキャッシュフロー(年間30~40億ドル)を創出
  3. 14年連続増配: 配当貴族候補として、安定した配当成長が魅力。OSSTRA売却(10億ドル超)により、増配余地が拡大

(2) リスク要因(再掲)(Q3取引量減少、競合参入、ボラティリティ依存)

一方で、以下のリスク要因に注意が必要です:

  1. Q3取引量減少: 2025年Q3は総先物ADVが前年同期比10%減少見込み(金利10%減、株式15%減、エネルギー11%減、FX 23%減)
  2. 競合参入: FMXなど新規競合が2年・5年米国債先物市場でシェアを侵食

(3) 向いている投資家(金融インフラ銘柄重視の投資家、配当成長株を求める投資家、ボラティリティ上昇局面に期待する投資家)

CMEグループは、以下のような投資家に向いています:

  1. 金融インフラ銘柄重視の投資家: 規制産業・寡占市場・高い参入障壁により、安定したビジネスモデルを持つ金融インフラ銘柄として魅力的
  2. 配当成長株を求める投資家: 14年連続増配と配当利回り2.0~2.5%で、安定した配当成長を求める投資家に適しています
  3. ボラティリティ上昇局面に期待する投資家: 市場ボラティリティが上昇すれば取引量が急増し、収益が大幅に伸びるアップサイドが期待できます

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新の財務データや株価指標は、証券会社のサイトやCME Group Inc.公式IRページでご確認ください。

※米国株投資には為替リスクがあります。円高になれば、円換算での配当額や投資元本が減少する点にご注意ください。

よくある質問

Q1CMEグループの配当利回りは?

A1執筆時点で約2.0~2.5%程度です。14年連続増配を続けており、安定した配当成長が魅力です。OSSTRA売却(10億ドル超)により、増配余地が拡大する可能性があります。最新の配当利回りは証券会社のサイトで確認してください。

Q2CMEグループの主な競合は?

A2Intercontinental Exchange(ICE)、FMX、Eurexなどが主要競合です。CMEグループは米国債先物・株価指数先物で圧倒的なシェアを持つ世界最大のデリバティブ取引所ですが、FMXが2年・5年米国債先物市場でシェアを侵食しつつある点が懸念されています。

Q3CMEグループのリスク要因は?

A3市場ボラティリティの低下による取引量減少、FMXなど新規競合の参入によるシェア侵食、2025年Q3は総先物ADVが前年同期比10%減少予想(金利10%減、株式15%減、エネルギー11%減、FX 23%減)、内部化による取引フロー減少などが挙げられます。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。

Q4CMEグループは長期投資に向いている?

A414年連続増配と高い利益率(調整後純利益率60%超)を誇る金融インフラの優良株として、配当成長株を求める長期投資家に向いています。ボラティリティ上昇局面では取引量増加によるアップサイドが期待できます。投資判断はご自身で行ってください。

Q5CMEグループの24/7取引とは?

A5暗号資産先物・オプションを2026年初頭から24時間365日取引可能にする取り組みです。Google Cloudとのパートナーシップでイリノイ州オーロラにプライベートクラウド地域と超低遅延施設を構築し、個人投資家層の拡大を目指しています。FanDuelやRobinhoodとの提携により、リテール顧客セグメントが最速成長しています。