0. この記事でわかること
本記事では、コインベース・グローバル(COIN)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 米国最大級の暗号資産取引所。USDC成長(前年比84%増)、29億ドルのDeribit買収、国際展開の加速
- 事業内容と成長戦略: ビットコイン・イーサリアム等の売買手数料が主要収益源。ステーブルコイン決済、デリバティブ取引、機関投資家向けインフラが成長ドライバー
- 競合との差別化: Binance、Kraken等と比較した米国最大手としての規制対応力、創業以来ハッキング被害ゼロのセキュリティ
- 財務・配当の実績: 2024年通期売上66億ドル(前年比2倍超)、純利益26億ドル。無配当で株価成長を重視
- リスク要因: 暗号資産市場の高ボラティリティ、規制の不透明性(SEC訴訟)、インサイダー取引176件すべて売却
暗号資産市場への「間接投資」手段として注目されるコインベース・グローバル。2024年に売上66億ドル、純利益26億ドルを達成し、強固な財務基盤を確立しました。GENIUS法によるステーブルコイン規制の整備、Deribit買収によるデリバティブ市場への参入、国際展開の加速により、成長機会が広がっています。しかし、暗号資産価格との相関が極めて高く、市場ボラティリティと規制リスクには特に注意が必要です。本記事では、成長戦略とリスク要因の両面を詳しく解説します。
1. なぜコインベース・グローバル(COIN)が注目されているのか
コインベース・グローバルは、米国最大級の暗号資産取引所として、世界100ヶ国以上で事業を展開し、ユーザー数6,800万人超を抱えています。暗号資産価格との相関が極めて高く、ビットコイン価格が上昇すると取引高・手数料収入が急増する一方、下落局面では赤字転落リスクもあります。ハイリスク・ハイリターンの成長株として、暗号資産市場への「間接投資」手段と位置づけられています。
(1) 成長戦略の3つのポイント
コインベース・グローバルの成長戦略は、以下の3つの柱で構成されています。
まず、国際展開の加速です。G20の83%が暗号資産規制を明確化する中、フェーズIIとして国際市場への戦略的拡張を推進しています。先物商品を15から106に増加させ、平均日次取引高が6200%増加しました。規制が整備された市場では、機関投資家の参入が進み、取引量の大幅増加が見込まれます。
次に、USDC(ステーブルコイン)の成長です。2025年のUSDC市場規模は前年比84%増を記録し、GENIUS法の制定により、USDCの採用が加速しています。Circle社との収益配分契約からさらなる収益が見込まれ、Shopify/Stripeとの提携により34か国の数百万の加盟店がUSDC決済を受け入れ可能になります。
最後に、機関投資家向けサービスの強化です。アジアを中心に機関投資家向けの信頼性の高い商品需要が急増しており、29億ドルでDeribitを買収し、年間1兆ドルの取引量を持つオプション市場のリーダーシップを獲得しました。300億ドルの建玉を確保し、暗号資産デリバティブ市場で主導的地位を確立しています。
(出典: An update to Coinbase's global scale to go broad and deep, Coinbase Blog; Coinbase outlines 2025 priorities with focus on USDC growth and international expansion, Seeking Alpha)
(2) 注目テーマ(ステーブルコイン・デリバティブ・国際展開)
投資家が注目するテーマとして、**ステーブルコインと決済(USDC × Shopify/Stripe提携により、34か国の数百万の加盟店がUSDC決済を受け入れ可能に)**が挙げられます。GENIUS法によりステーブルコインに初の連邦規制枠組みが整備され、USDCの採用が加速する見込みです。
また、**暗号資産デリバティブ(永久先物・オプション取引の拡大。Deribit買収により300億ドルの建玉を確保)**も重要なテーマです。機関投資家の参入により、デリバティブ取引が急増しており、コインベースはこの市場で主導的地位を確立しています。
さらに、**機関投資家向けインフラ(COIN50インデックスの開発、規制対応の高度なカストディサービス)**も注目されています。機関投資家は規制対応力とセキュリティを重視するため、創業以来ハッキング被害ゼロのコインベースが選ばれています。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家の関心は、暗号資産市場への間接投資手段としての魅力に集中しています。ビットコイン・イーサリアムを直接購入するリスクを避け、規制された米国上場企業への投資により、暗号資産市場の成長を享受できます。アナリストコンセンサスは「買い」で、平均目標株価は358.59ドル(最高510ドル、最低185ドル)です。
一方で、懸念点も深刻です。最大の懸念は、暗号資産市場の高いボラティリティです。仮想通貨市場は歴史的に長期の低価格・低取引量期間があり、コインベースの収益が大きく変動するリスクがあります。2025年Q2は予想未達(売上15億ドル vs 予想15.9億ドル、EPS 0.12ドル vs 予想1.51ドル)で、取引高が前四半期比39.7%減となりました。
また、規制の不透明性とインサイダー取引への懸念も深刻です。過去6か月の役員・幹部の取引176件がすべて売却(購入0件)であり、投資家の不安材料となっています。また、SEC(米国証券取引委員会)との訴訟も進行中で、未登録証券取引として暗号資産の一部が規制対象となる可能性があります。
(出典: After Earnings, Is Coinbase Stock a Buy, a Sell, or Fairly Valued?, Morningstar)
2. コインベース・グローバルの事業内容・成長戦略
コインベース・グローバルは、消費者、機関投資家、開発者の3つの顧客セグメントに製品・サービスを提供しています。ビットコイン・イーサリアム等の売買手数料が主要収益源で、暗号資産価格の変動に業績が直結します。
(1) 主力事業
コインベース・グローバルの事業は、大きく3つのセグメントに分かれています。
まず、消費者向け取引プラットフォームです。個人投資家向けに暗号資産の売買サービスを提供し、取引手数料が主要収益源です。ユーザー数6,800万人超を抱え、創業以来ハッキング被害ゼロの強固なセキュリティ対策が強みです。
次に、機関投資家向けサービスです。カストディ(暗号資産の保管・管理)、プライムブローカレッジ、デリバティブ取引を提供しています。Deribit買収により、年間1兆ドルの取引量を持つオプション市場のリーダーシップを獲得しました。
最後に、**開発者向けプラットフォーム(Base)**です。イーサリアムのレイヤー2ブロックチェーンで、低コスト・高速な取引を実現します。開発者がDApps(分散型アプリケーション)を構築できるインフラを提供し、エコシステムの拡大を図っています。
(出典: コインベース・グローバル(みんかぶ))
(2) セクター・業種の説明
コインベース・グローバルは、金融(Financials)セクターの**資本市場(Capital Markets)**に分類されます。暗号資産取引所として、個人・機関投資家に売買の場を提供し、取引手数料を主要収益源としています。
(3) ビジネスモデルの特徴
コインベース・グローバルのビジネスモデルは、取引手数料依存型が特徴です。暗号資産価格が上昇すると取引高が増加し、手数料収入が急増します。一方、価格下落局面では取引量が激減し、赤字転落のリスクがあります。
また、規制対応力とセキュリティも重要な特徴です。米国最大手として、FTX破綻後も信頼性を維持し、創業以来ハッキング被害ゼロの実績があります。
さらに、垂直統合戦略も進めています。取引所だけでなく、カストディ、デリバティブ、ステーブルコイン(USDC)、開発者向けプラットフォーム(Base)まで、暗号資産エコシステム全体をカバーしています。
(出典: Coinbase Global Inc (COIN) Q4 2024 Earnings Call Highlights, Yahoo Finance)
3. 競合との差別化
暗号資産取引所市場は、Binance、Kraken、Gemini等の競合が存在します。コインベース・グローバルは米国最大手として、規制対応力とセキュリティで差別化を図っています。
(1) 主要競合企業
コインベース・グローバルの主要競合企業として、Binance、Kraken、Gemini等が挙げられます。
(2) 競合優位性
コインベース・グローバルの競合優位性は、米国最大手としての規制対応力、創業以来ハッキング被害ゼロのセキュリティ、機関投資家向けインフラ(Deribit買収により年間1兆ドルの取引量)です。
(3) 市場でのポジショニング
コインベース・グローバルは、米国最大手の暗号資産取引所として市場でポジショニングされています。
4. 財務・配当の実績
コインベース・グローバルの財務実績は、暗号資産価格の変動に大きく影響されます。2024年に売上66億ドル、純利益26億ドルを達成し、強固な財務基盤を確立しました。
(1) 売上高・利益の推移
2024年通期売上は66億ドル(前年比2倍超)、純利益は26億ドルでした。Q4純利益は13億ドルで、調整後EBITDA 33億ドルを達成し、2年連続で黒字を記録しました。
(2) 配当履歴
無配当です。利益を事業拡大(国際展開・M&A・インフラ投資)に再投資する方針で、配当よりも株価成長を重視する銘柄です。
(3) 財務健全性
調整後EBITDA 33億ドルで、財務健全性は良好です。2年連続で黒字を達成し、キャッシュフローは安定しています。
5. リスク要因
コインベース・グローバルへの投資には、暗号資産市場特有のリスクが存在します。
(1) 事業リスク
暗号資産市場の高ボラティリティ(Q2取引高が前四半期比39.7%減)、インサイダー取引176件すべて売却(過去6か月、購入0件)が懸念材料です。
(2) 市場環境リスク
規制の不透明性(SEC訴訟、未登録証券取引の可能性)、為替リスク(無配当のため株価変動のみ)が重要です。
(3) 規制・競争リスク
SEC訴訟リスク、競合との手数料競争(利益率低下)、ステーブルコイン規制の影響が懸念材料です。
6. まとめ:投資判断のポイント
コインベース・グローバルは、暗号資産市場への「間接投資」としてハイリスク・ハイリターンの成長株です。
(1) この銘柄の強み
GENIUS法によるステーブルコイン規制整備、Deribit買収(年間1兆ドルの取引量)、国際展開の加速が強みです。
(2) リスク要因(再掲)
暗号資産市場の高ボラティリティ、規制の不透明性、インサイダー取引176件すべて売却が懸念材料です。
(3) 向いている投資家
暗号資産市場の成長に賭けるハイリスク許容度の投資家、ステーブルコイン・デリバティブの成長機会を狙う投資家に向いています。
※本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言を行うものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はCoinbase公式IRページをご確認ください。
