0. この記事でわかること
本記事では、エベレスト・グループ(EG)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: ハードマーケット継続で高収益、1-Renewal戦略でポートフォリオ最適化、年率ROE約20%を達成
- 事業内容と成長戦略: 再保険・保険の二本柱で大規模災害リスクを引き受ける専門性、国際事業拡大と低マージン事業からの撤退
- 競合との差別化: Munich Re、Swiss Reなどグローバル大手との比較、再保険セグメントでコンバインドレシオ85.6%の高効率
- 財務・配当の実績: 2025年第2四半期の業績ハイライト、再保険vs保険セグメントの収益構造
- リスク要因: 17億ドルのカジュアルティ準備金積み増しによる大幅損失、保険セグメントの苦戦、巨大災害リスク
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1. なぜエベレスト・グループ(EG)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
エベレスト・グループは、再保険・保険業界でグローバルなリーダー的地位を築いていますが、2025年に入り大胆なポートフォリオ最適化戦略を進めています。
1-Renewal戦略(2025年第3四半期完了予定)
低マージン事業(医療ストップロス等)から撤退し、北米保険ポートフォリオを精錬する戦略です。短期的には収益の足かせとなっていますが、長期的には保険セグメント全体の収益性向上に寄与すると期待されています。(出典: Investing.com Earnings Call Transcript Q2 2025)
国際保険事業の拡大
国際事業は好調な技術的マージンを達成しており、規模拡大により経費率が低下しています。プロパティ・特殊保険分野での資本展開を優先し、高いリスク調整後リターンを追求する方針です。
米国カジュアルティ・ポートフォリオの改善(2025年第3四半期完了予定)
カジュアルティ事業の成長機会を見込む一方、17億ドルの責任準備金積み増しで財務基盤を強化しました。この大規模な準備金積み増しは2024年第4四半期に投資家の信頼を一時的に損ねましたが、長期的な財務健全性を重視した意思決定と言えます。
(2) 注目テーマ(再保険プライシング・パワー・ポートフォリオ最適化・国際事業拡大)
再保険プライシング・パワー
再保険業界は現在、ハードマーケット(保険料率上昇局面)が継続しています。大規模自然災害(ハリケーン、地震等)の頻発により、再保険会社は保険料率を引き上げる交渉力を持っており、エベレスト・グループも高収益を実現しています。2025年第2四半期の再保険セグメントでは、引受利益4.36億ドル、コンバインドレシオ85.6%を記録しました。(出典: Yahoo Finance Q2 2025 Earnings Call Highlights)
ポートフォリオ最適化
1-Renewal戦略により、収益性の低い事業から撤退し、資本効率の高い事業領域に集中する方針です。これにより、短期的には総保険料が減少する可能性がありますが、中長期的には利益率の向上が見込まれます。
国際事業拡大
エベレスト・グループは、米国・バミューダに加え、アイルランド、カナダ、シンガポール、英国等でグローバル展開しています。国際保険事業の拡大により、地域分散と収益源の多様化を進めています。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家の関心
- 年率ROE約20%: 2025年第2四半期の純営業利益7.34億ドル、年率換算ROE19.6%は高い資本効率を示しています。
- 自社株買い再開: 2025年第4四半期から自社株買いを再開予定で、財務力への自信を示しています。
- アナリスト評価: 12アナリストの平均評価は「買い」で、12ヶ月目標株価385.42ドル(現在比9.35%上昇)とされています。(出典: StockAnalysis.com Forecast)
投資家の懸念
- 準備金・プライシング動向への懸念: 2024年第4四半期にEPSマイナス18.39ドル(前年同期25.18ドルから急減)を記録し、17億ドルの米国カジュアルティ準備金積み増しが投資家の信頼を損ねました。(出典: Seeking Alpha "Everest Group: Progress Despite Pricing Fears")
- 保険セグメントの苦戦: Raymond JamesとMorgan Stanleyは成長懸念から格下げしており、保険セグメントの業績不振が継続しています。
2. エベレスト・グループの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業
エベレスト・グループは、再保険と保険の二本柱で事業を展開しています。
再保険事業(主力)
保険会社が自社のリスクを他の保険会社(再保険会社)に移転する仕組みです。エベレスト・グループは、大規模災害リスク(ハリケーン、地震、洪水等)を引き受ける専門性を持ち、グローバル再保険市場でトップクラスのシェアを誇ります。2025年第2四半期の再保険セグメントは、引受利益4.36億ドル、コンバインドレシオ85.6%と高い収益性を維持しています。
保険事業
直接保険として、プロパティ(財産)・カジュアルティ(賠償責任)・特殊保険ソリューションを多国籍企業や中規模商業顧客に提供しています。ただし、2025年第2四半期では引受損失1,800万ドル、コンバインドレシオ102%と苦戦しており、1-Renewal戦略により低マージン事業からの撤退を進めています。
投資運用事業
保険料収入を運用し、投資運用益を得ています。再保険・保険ビジネスは、保険料を先に受け取り、将来の保険金支払いまで時間があるため、その間に投資運用することで追加収益を生み出すビジネスモデルです。
(2) セクター・業種の説明
セクター: Financials(金融)
金融セクターは、銀行、保険、証券、資産運用等を含む業種群です。景気変動や金利動向に敏感で、経済サイクルの影響を受けやすい特性があります。
業種: Insurance(保険)
保険業界は、損害保険、生命保険、再保険に大別されます。エベレスト・グループは、再保険と損害保険(プロパティ・カジュアルティ)に特化しています。再保険業界は、大規模自然災害の頻発により、保険料率が上昇するハードマーケットと、競争激化で料率が下がるソフトマーケットを繰り返す特性があります。現在はハードマーケットが継続しており、再保険会社にとって収益機会が高まっています。
(3) ビジネスモデルの特徴
「保険の保険」としての再保険
保険会社は、大規模災害が発生すると巨額の保険金を支払う必要があります。そのリスクを分散するため、再保険会社に保険料を支払い、リスクの一部を移転します。エベレスト・グループは、この再保険ビジネスで高い専門性を持ち、リスク評価・引受能力に強みがあります。
ハード・ソフトサイクルの影響
再保険業界は、大規模災害が多発するとハードマーケット(保険料率上昇)となり、再保険会社の収益性が向上します。一方、災害が少ない時期はソフトマーケット(料率低下・競争激化)となり、収益性が低下します。エベレスト・グループは、ポートフォリオ最適化とリスク管理により、サイクルの変動を乗り越える戦略を採っています。
投資運用益との二本柱
保険料収入を債券・株式・オルタナティブ投資等で運用し、投資運用益を得ることで、引受利益と合わせた二本柱の収益構造を構築しています。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業
エベレスト・グループの主要競合は、グローバル再保険大手3社です。
Munich Re(ミュンヘン再保険)
ドイツに本社を置く世界最大級の再保険会社。時価総額・総保険料で業界トップクラスです。
Swiss Re(スイス再保険)
スイスに本社を置く再保険大手。グローバル展開と多様な再保険商品で知られています。
Hannover Re(ハノーバー再保険)
ドイツに本社を置く再保険会社。Munich Reに次ぐ欧州の再保険大手です。
これらの競合他社と比較すると、エベレスト・グループは規模では劣るものの、コンバインドレシオ85.6%(2025年第2四半期)という高い収益性を誇ります。
(2) 競合優位性
再保険セグメントの高収益性
2025年第2四半期の再保険セグメントで、コンバインドレシオ85.6%を達成しています。コンバインドレシオとは、(損害率+事業費率)の合計で、100%未満であれば引受利益が出ていることを示します。85.6%は業界内でも優秀な水準です。
ポートフォリオ最適化戦略
1-Renewal戦略により、低マージン事業から撤退し、高収益事業に資本を集中させる方針です。短期的には総保険料が減少しても、中長期的には利益率が向上する見込みです。
グローバル展開
米国・バミューダ・アイルランド・カナダ・シンガポール・英国等でグローバル展開しており、地域分散によりリスクを軽減しています。
(3) 市場でのポジショニング
エベレスト・グループは、時価総額では上記3社に劣るものの、再保険セグメントでの収益性では高い水準を維持しています。特に、ハードマーケットが継続する現在の環境下では、プライシング・パワーを活かした高収益を実現しています。一方、保険セグメントの苦戦が課題であり、1-Renewal戦略による改善が注目されています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移
2025年第2四半期の業績ハイライト(出典: Yahoo Finance Q2 2025 Earnings Call Highlights)
- 純営業利益: 7.34億ドル
- 年率換算ROE: 19.6%
- 再保険セグメント: 引受利益4.36億ドル、コンバインドレシオ85.6%
- 保険セグメント: 引受損失1,800万ドル、コンバインドレシオ102%、総保険料14億ドル(前年同期比1.5%減)
2024年第4四半期の業績(出典: Seeking Alpha "Everest Group: Progress Despite Pricing Fears")
- EPS: マイナス18.39ドル(前年同期25.18ドルから急減)
- カジュアルティ準備金積み増し: 17億ドル
この大幅な損失は、将来の保険金支払いに備えた責任準備金の積み増しによるもので、一時的な会計上の損失です。ただし、投資家の信頼を一時的に損ね、株価がアンダーパフォームする要因となりました。
(2) 配当履歴
配当実績については、公開情報が限定的ですが、保険・再保険業界は一般的に安定配当を重視する傾向があります。最新の決算資料(10-K、10-Q)や公式IRページで配当方針を確認することをお勧めします。(出典: Everest Group Ltd Investor Relations)
(3) 財務健全性
自社株買い再開予定
2025年第4四半期から自社株買いを再開する予定です。これは、カジュアルティ準備金積み増し後も財務力に自信があることを示しています。(出典: Investing.com Earnings Call Transcript Q2 2025)
ROE約20%の高効率
2025年第2四半期の年率換算ROE19.6%は、金融業界では高い水準です。資本効率の良い経営が評価されています。
1-Renewal戦略完了後の収益性向上
2025年第3四半期に1-Renewal戦略が完了予定で、低マージン事業からの撤退により、保険セグメント全体の収益性向上が期待されています。
5. リスク要因
(1) 事業リスク
カジュアルティ準備金不足による大幅損失
2024年第4四半期にEPSマイナス18.39ドル(前年同期25.18ドルから急減)を記録しました。17億ドルの米国カジュアルティ準備金積み増しが投資家の信頼を損ねた要因です。今後も準備金の見直しにより、業績が変動するリスクがあります。
保険セグメントの業績不振
2025年第2四半期で引受損失1,800万ドル、コンバインドレシオ102%(再保険85.6%と対照的)となっており、保険総保険料も前年同期比1.5%減の14億ドルに縮小しています。1-Renewal戦略による改善が遅れた場合、成長に懸念が生じる可能性があります。
巨大災害リスク
再保険ビジネスの性質上、ハリケーン、地震、洪水等の大規模自然災害が発生すると、巨額の保険金支払いが必要となり、四半期業績が大きく変動します。気候変動により、自然災害の頻度・規模が増大するリスクがあります。
(2) 市場環境リスク
ハード・ソフトサイクルの変動
現在はハードマーケット(保険料率上昇局面)が継続していますが、将来的にソフトマーケット(競争激化・料率低下)に転じた場合、再保険セグメントの収益性が低下するリスクがあります。
金利動向
保険料を債券等で運用するため、金利動向が投資運用益に影響します。金利低下局面では運用益が減少し、総合的な収益性が低下する可能性があります。
為替リスク
日本人投資家にとって、ドル建て資産であるため、為替レートの変動により円ベースでの株価・配当受取額が大きく変動します。円高局面では円ベース評価額が減少し、円安局面では増加します。(執筆時点: 2025年10月、1ドル=140-160円のレンジを想定)
(3) 規制・競争リスク
規制強化
保険・再保険業界は、各国の金融規制当局による資本規制・リスク管理規制の対象です。規制強化により、資本コストが上昇したり、事業運営に制約が生じるリスクがあります。
競争激化
再保険業界は、Munich Re、Swiss Re、Hannover Re等のグローバル大手との競争が激しく、ソフトマーケット局面では価格競争により収益性が低下するリスクがあります。
アナリスト格下げ
Raymond JamesとMorgan Stanleyは成長懸念から格下げしており、保険セグメントの改善が遅れた場合、さらなる格下げのリスクがあります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
再保険セグメントの高収益性
2025年第2四半期で引受利益4.36億ドル、コンバインドレシオ85.6%、年率ROE約20%を達成しています。ハードマーケット継続下では、プライシング・パワーを活かした高収益が見込めます。
ポートフォリオ最適化戦略
1-Renewal戦略により、低マージン事業から撤退し、高収益事業に資本を集中させる方針です。2025年第3四半期完了後は、保険セグメントの収益性向上が期待されます。
自社株買い再開予定
2025年第4四半期から自社株買いを再開予定で、財務力への自信を示しています。株主還元に積極的な姿勢が評価されます。
(2) リスク要因(再掲・要約)
カジュアルティ準備金積み増しによる大幅損失
2024年第4四半期にEPSマイナス18.39ドルを記録し、投資家の信頼を一時的に損ねました。今後も準備金の見直しにより業績が変動するリスクがあります。
巨大災害リスク
大規模自然災害の発生により、四半期業績が大きく変動する可能性があります。気候変動により、災害リスクが増大する懸念があります。
(3) 向いている投資家のタイプ
リスク許容度の高い投資家
再保険ビジネスは、巨大災害リスクにより業績が変動しやすいため、短期的な変動に耐えられるリスク許容度の高い投資家に向いています。
金融セクターの専門知識がある投資家
再保険ビジネスモデル、コンバインドレシオ、ハード・ソフトサイクル等の業界特性を理解できる投資家に適しています。
長期投資志向の投資家
1-Renewal戦略の完了後、中長期的な収益性向上を見込める投資家に向いています。短期的な業績変動を乗り越え、5年以上の長期保有を前提とする投資家に適しています。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身の責任で行ってください。最新の財務データ、税率、為替レート等は、公式IRページや国税庁等の一次情報源をご確認ください。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はEverest Group Ltd公式IRページ(https://investors.everestglobal.com/)をご確認ください。
Q: エベレスト・グループの配当利回りは?
A: 配当実績については公開情報が限定的ですが、保険・再保険業界は一般的に安定配当を重視する傾向があります。最新の決算資料(10-K、10-Q)や公式IRページで配当方針・配当履歴を確認してください。(出典: Everest Group Ltd Investor Relations)
Q: エベレスト・グループの主な競合は?
A: Munich Re(ミュンヘン再保険)、Swiss Re(スイス再保険)、Hannover Re(ハノーバー再保険)などグローバル再保険大手が主要競合です。エベレスト・グループは規模では劣るものの、再保険セグメントでコンバインドレシオ85.6%(2025年第2四半期)と高い収益性を維持しています。
Q: エベレスト・グループのリスク要因は?
A: 主なリスクは以下の通りです:(1)17億ドルのカジュアルティ準備金積み増しによる大幅損失(2024年第4四半期でEPSマイナス18.39ドル)、(2)保険セグメントの業績不振(コンバインドレシオ102%、総保険料前年同期比1.5%減)、(3)巨大災害リスク(ハリケーン、地震等により四半期業績が大きく変動)。詳細は本文「5. リスク要因」を参照してください。
Q: エベレスト・グループは長期投資に向いている?
A: 再保険セグメントで年率ROE約20%を達成し、1-Renewal戦略でポートフォリオ最適化を進めています。ハードマーケット継続なら高収益が見込めますが、巨大災害リスクもあり、リスク許容度の高い投資家・長期投資志向の投資家に向いています。短期的な業績変動を乗り越え、5年以上の長期保有を前提とする場合に検討価値があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。
Q: 再保険とは?
A: 再保険とは、保険会社が自社のリスクを他の保険会社(再保険会社)に移転する仕組みで、「保険の保険」とも呼ばれます。大規模災害が発生すると保険会社は巨額の保険金を支払う必要がありますが、再保険を活用することでリスクを分散できます。エベレスト・グループは、大規模災害リスクを引き受ける専門性を持ち、グローバル再保険市場でトップクラスのシェアを誇ります。
