0. この記事でわかること
本記事では、フォーティブ(FTV)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 2016年にダナハーからスピンオフした産業テクノロジー企業として、ダナハー・ビジネス・システム(DBS、後にFBSに改称)という独自の経営手法を継承しています。2025年6月にはプレシジョンテクノロジーズ部門をRalliantとして分離し、経常収益約50%の高品質な成長事業に注力する戦略が注目されています。
- 事業内容と成長戦略: 計測・制御機器、産業技術、ヘルスケア診断の3セグメントで事業展開。Ralliant分離後は、インテリジェントオペレーティングソリューションズとアドバンスドヘルスケアソリューションズの10の市場リーダーブランドに集中し、安全性と生産性ソリューションを提供します。
- 競合との差別化: 各事業セグメントで異なる競合がいますが、産業コングロマリットとしてはダナハー等が競合です。フォーティブはFBS経営手法(継続的改善)とニッチ市場でのリーダーポジションで差別化しています。
- 財務・配当の実績: 2024年通期は売上高62.3億ドル(前年比3%増)、調整後営業利益率27%、記録的な粗利益率60%を達成。配当利回りは低めですが連続増配を継続し、自社株買いも実施しています。
- リスク要因: 成長鈍化への懸念から、Morgan Stanley、Barclays、Truist Securities、JPMorganなど複数のアナリストが相次いで格下げ。Q1 2025はコア売上が2%減少し、Ralliant分離後の成長軌道に不確実性があります。
1. なぜフォーティブ(FTV)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
フォーティブは以下の3つの戦略で成長を加速しています:
Ralliant分離による事業集中化
2025年6月28日にプレシジョンテクノロジーズ部門をRalliant Corporationとして分離しました。この分離により、残るフォーティブは経常収益約50%、持続的競争優位性を持つ高品質な成長事業に注力します。分離後のフォーティブは、インテリジェントオペレーティングソリューションズとアドバンスドヘルスケアソリューションズの10の市場リーダーブランド(すべてが安全性と生産性ソリューションを提供)で構成されます。この事業集中化により、より経常収益とソフトウェアビジネスに注力し、成長と利益・FCFの一貫した拡大に有利な立場になると期待されています。
Fortiveビジネスシステム(FBS)の進化
AIや新興技術を統合してFBSの影響力を増幅し、より速い収益性の高い成長とイノベーションを推進しています。FBS(継続的改善を核とする経営手法、トヨタ生産方式を応用)は、ダナハー時代の経験に基づく実績のある方法論で、文化的基盤として組織に深く根付いています。FBSを活用して成長、利益率拡大、FCFを創出し、イノベーションと新規買収に投資、さらにFBSで新たな成長・利益率・FCFを生み出す強力なフライホイール(好循環)を構築しています。
バランスの取れた資本配分戦略
自社株買い、小規模買収(ボルトオン型)への注力、定期的な増配を組み合わせ、中期的な株主リターンの増幅にコミットしています。ボルトオン型買収は、既存事業を補完・強化する小規模な買収で、統合リスクが低く、FBSを適用することで買収後の価値創出が期待できます。
(2) 注目テーマ(事業ポートフォリオ変革とスピンオフ、経常収益ビジネスへの注力、AIとFBSの統合)
投資家が注目するテーマは以下の3点です:
事業ポートフォリオ変革とスピンオフ
Ralliant分離により、フォーティブは事業ポートフォリオを大きく変革しました。分離前はプレシジョンテクノロジーズ部門(精密計測機器等)が含まれていましたが、分離後は安全性・生産性・信頼性に焦点を当てた10の市場リーダーブランドに集中します。この戦略的な事業集中により、成長性の高い分野に経営資源を投入できるようになります。
経常収益ビジネスへの注力
分離後のフォーティブは経常収益約50%のビジネスポートフォリオとなります。経常収益(サブスクリプションやサービス契約など、継続的に得られる収益)は、予測可能性が高く、景気変動の影響を受けにくいという特徴があります。この経常収益比率の向上により、安定した収益基盤が構築されます。
AIとFBSの統合による業務効率化
AIや新興技術をFBSに統合することで、業務プロセスのさらなる効率化と高度化を図っています。AI技術により、データ分析の高速化、予測精度の向上、自動化の推進が可能になり、FBSの効果を増幅させることができます。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家の関心ポイント
フォーティブは2024年通期に記録的な利益率を達成しました。粗利益率60%、調整後営業利益率27%近くという高水準です。2025年の見通しは、GAAP希薄化後EPSを2.38~2.50ドル(前年比1~6%増)、調整後希薄化後EPSを4.00~4.12ドル(前年比3~6%増)と予想しています。2026~2027年の中期目標として有機成長3~4%を掲げており、Ralliant分離後の成長軌道に期待がかかっています。
投資家の懸念点
一方で、成長鈍化への懸念から、Morgan Stanley、Barclays、Truist Securities、JPMorganなど複数のアナリストが相次いで格下げを行いました。有機成長の鈍化、Ralliant分離後の不明確な回復パス、新経営陣下での成長懸念が指摘されています。JPMorganは資本配分戦略について、過去の実行問題から完全に信頼できない「show me」ストーリー(実績を見せてもらわないと判断できない)と指摘しています。また、「安価なバリューコングロマリットと比較しても成長エクスポージャーが不足」し、売上の半分が防御的でないハードウェアから来ていることも懸念材料です。
2. フォーティブの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(計測・制御機器、産業技術、ヘルスケア診断)
フォーティブの主力事業は、Ralliant分離前は以下の3セグメントでした:
計測・制御機器(プレシジョンテクノロジーズ部門、Ralliantとして分離)
電気計測器Flukeブランド等を含む部門で、2025年6月28日にRalliant Corporationとして分離されました。この分離により、フォーティブ本体からは除外されています。
インテリジェントオペレーティングソリューションズ
安全性、生産性、信頼性に焦点を当てたソリューションを提供します。産業施設の運用効率化、安全性向上、資産管理などが含まれます。ニッチ市場でリーダーポジションを持つブランドで構成されています。
アドバンスドヘルスケアソリューションズ
ヘルスケア診断機器やソリューションを提供します。医療機関の安全性と生産性向上に寄与する製品・サービスが中心です。
Ralliant分離後のフォーティブは、上記2セグメントの10の市場リーダーブランドに集中し、すべてが安全性と生産性ソリューションを提供します。
(2) セクター・業種の説明(産業セクター、機械業種)
フォーティブは産業セクターの機械業種に属しています。産業機械業界の特性として、以下の点が挙げられます:
- 景気サイクルの影響: 企業の設備投資は景気変動に左右されやすく、景気後退時には需要が減少する傾向があります
- 技術革新の重要性: 産業機器は技術の進化により性能が向上し、顧客の生産性向上に寄与します。継続的なR&D投資が競争力を左右します
- ニッチ市場の特性: 特定の用途に特化した製品が多く、ニッチ市場でのリーダーポジションを確立できれば、高い収益性が期待できます
- 経常収益の重要性: 製品販売に加え、保守サービスやソフトウェアサブスクリプションなどの経常収益が安定した収益基盤となります
(3) ビジネスモデルの特徴(FBS経営手法、ニッチ市場でのリーダーポジション、Ralliant分離)
フォーティブのビジネスモデルには以下の特徴があります:
Fortiveビジネスシステム(FBS)経営手法
継続的改善(カイゼン)を核とする経営手法で、ダナハー時代の経験(ダナハー・ビジネス・システム、DBS)に基づく実績のある方法論です。トヨタ生産方式を応用したもので、無駄の削減、プロセスの標準化、データに基づく意思決定、顧客中心主義などの原則に基づいています。FBSにより、継続的な業務改善と高い収益性を実現しています。
ニッチ市場でのリーダーポジション
各事業ブランドは、特定のニッチ市場でリーダーポジションを持っています。市場が小さいため大手企業が参入しにくく、専門性が高いため新規参入障壁も高いという特徴があります。このニッチ市場での優位性により、高い価格決定力と収益性を実現しています。
Ralliant分離による事業集中化
2025年6月28日にプレシジョンテクノロジーズ部門をRalliantとして分離したことで、経常収益約50%の高品質な成長事業に集中できるようになりました。分離により、より戦略的な資源配分が可能になり、成長と利益率の拡大が期待されています。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(各事業セグメントの競合、ダナハー等の産業コングロマリット)
フォーティブの主要競合企業は、事業セグメントごとに異なります:
産業コングロマリットとしての競合
Danaher Corporation(ダナハー)
フォーティブの元親会社で、ライフサイエンス、診断、環境・応用ソリューションの3セグメントで事業を展開しています。ダナハー・ビジネス・システム(DBS)という独自の経営手法を持ち、高い収益性と成長性を実現しています。
Emerson Electric(エマソン・エレクトリック)
産業オートメーションや温調機器などを手掛ける産業機器大手です。幅広い製品ポートフォリオと世界的な販売網が強みです。
Honeywell International(ハネウェル・インターナショナル)
航空宇宙、ビルテクノロジー、パフォーマンスマテリアル、安全・生産性ソリューションの4セグメントで事業を展開する産業コングロマリットです。
各事業ブランドには、それぞれのニッチ市場での競合企業が存在しますが、多くの場合、フォーティブのブランドが市場リーダーポジションを確立しています。
(2) 競合優位性(FBS経営手法、ニッチ市場でのリーダーポジション、高い経常収益比率)
フォーティブの競合優位性は以下の3点です:
Fortiveビジネスシステム(FBS)経営手法
継続的改善(カイゼン)を核とする実績のある経営手法により、業務プロセスの効率化、品質向上、顧客満足度の向上を実現しています。FBSは単なる手法ではなく、組織文化として深く根付いており、長期的な競争優位性の源泉となっています。買収した企業にもFBSを適用することで、買収後の価値創出を加速しています。
ニッチ市場でのリーダーポジション
各事業ブランドが特定のニッチ市場でリーダーポジションを持っており、高い価格決定力と収益性を実現しています。市場が小さいため大手企業が参入しにくく、専門性が高いため新規参入障壁も高いという特徴があります。
高い経常収益比率への移行
Ralliant分離後のフォーティブは経常収益約50%のビジネスポートフォリオとなります。経常収益は予測可能性が高く、景気変動の影響を受けにくいため、安定した収益基盤となります。この経常収益比率の高さは、他の産業機器メーカーと比較して優位性があります。
(3) 市場でのポジショニング(ダナハースピンオフ、安全性・生産性ソリューション提供)
フォーティブは、以下のような市場ポジションを確立しています:
ダナハースピンオフ企業としてのブランド
2016年にダナハーからスピンオフした企業として、ダナハーの優れた経営手法(DBS、後にFBSに改称)を継承しています。ダナハーは長年にわたり高い株主リターンを実現してきた企業であり、そのスピンオフ企業であることは投資家にとって一定の信頼感があります。
安全性・生産性・信頼性ソリューション提供企業
Ralliant分離後のフォーティブは、10の市場リーダーブランドすべてが安全性と生産性ソリューションを提供しています。産業施設の安全性向上、運用効率化、資産管理などが主力事業で、企業の本質的なニーズに応える製品・サービスを提供しています。
経常収益重視のビジネスモデル
経常収益約50%という高い比率により、安定した収益基盤を持つ企業としてポジショニングされています。この経常収益重視の戦略は、景気変動の影響を軽減し、長期的な成長を支える要素となっています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(2024年通期売上高62.3億ドル前年比3%増、調整後営業利益率27%)
2024年通期の業績
- 売上高: 62.3億ドル(前年比3%増)
- 調整後希薄化後EPS: 3.89ドル
- 粗利益率: 記録的な60%
- 調整後営業利益率: 27%近く
Q4 2024の業績
- 調整後希薄化後EPS: 1.17ドル(前年比19%増)
- 記録的な利益率を達成
Q1 2025の業績
- 調整後EPS: 0.85ドル(予想と一致)
- コア売上: 2%減少(懸念材料)
- 調整後営業利益率: 20bps拡大
- 調整後FCF: 2.22億ドル(予想を上回る)
2025年通期の見通し
| 指標 | 2025年予想 | 前年比成長率 |
|---|---|---|
| GAAP希薄化後EPS | 2.38~2.50ドル | +1~6% |
| 調整後希薄化後EPS | 4.00~4.12ドル | +3~6% |
| 売上成長率 | フラット~2.0% | - |
| コア売上成長率 | 1.5~3.5% | - |
(出典: Fortive Corporation 10-K Annual Report, SEC EDGAR)
2026~2027年の中期目標
有機成長3~4%を見込んでいます。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はFortive公式IRページをご確認ください。
(2) 配当履歴(連続増配、配当利回りは低め、自社株買いも実施)
フォーティブは配当と自社株買いを組み合わせた株主還元を行っています:
配当政策
- 配当利回り: 低め(具体的な数値は最新データをご確認ください)
- 配当性向: 連続増配を継続していますが、成長投資を優先する方針
- 定期的な増配: バランスの取れた資本配分戦略の一環として、定期的に増配を実施
自社株買い
バランスの取れた資本配分戦略の一環として、自社株買いも積極的に実施しています。自社株買いにより、発行済株式数を減らし、1株あたり利益(EPS)を向上させています。
株主還元の考え方
自社株買い、小規模買収(ボルトオン型)への注力、定期的な増配を組み合わせ、中期的な株主リターンの増幅にコミットしています。配当だけでなく、成長投資と自社株買いのバランスを重視する方針です。
(3) 財務健全性(記録的な粗利益率60%、強力なFCF創出能力、Q4 2024調整後FCF 2.22億ドル)
フォーティブの財務健全性は高い水準にあります:
記録的な粗利益率
2024年通期に記録的な粗利益率60%を達成しました。これは、FBSによる継続的な業務改善と、ニッチ市場でのリーダーポジションによる高い価格決定力の結果です。
高い調整後営業利益率
調整後営業利益率は27%近くに達しており、産業機器業界の中でも高水準です。この高い営業利益率が、強力なキャッシュフロー創出能力の基盤となっています。
強力なFCF創出能力
Q1 2025の調整後FCFは2.22億ドルで予想を上回りました。この強力なキャッシュフロー創出能力が、成長投資、自社株買い、配当の原資となっています。
関税影響への対応
関税による2億ドルの影響がありますが、2025年Q4までに80%を緩和する計画です。短期的には収益性への圧力となりますが、FBSを活用したコスト削減や価格転嫁により対応する方針です。
5. リスク要因
(1) 事業リスク(成長鈍化への懸念、Q1 2025コア売上2%減少、Ralliant分離後の成長軌道不明確)
成長鈍化への懸念
Q1 2025のコア売上は2%減少しており、成長の鈍化が顕在化しています。2025年の売上成長率見通しもフラット~2.0%と控えめで、アナリストから成長懸念が指摘されています。
Ralliant分離後の成長軌道の不明確さ
Ralliant分離により事業ポートフォリオが大きく変わるため、分離後の成長軌道に不確実性があります。経営陣は経常収益約50%の高品質な成長事業に注力すると説明していますが、実際に期待通りの成長が実現するかは未知数です。アナリストは「Ralliant分離後の不明確な回復パス」を懸念しています。
新経営陣下での実行リスク
2025年6月10日にOlumide Soroye氏がCEOに就任しました。新経営陣下での戦略実行能力がまだ実証されていないため、投資家は「show me」(実績を見せてもらわないと判断できない)というスタンスを取っています。
(2) 市場環境リスク(関税影響2億ドル、景気変動への感応度、中国市場低迷)
関税影響
関税による2億ドルの影響があり、2025年Q4までに80%を緩和する計画ですが、短期的には収益性への圧力となります。関税政策の変更により、さらなる影響が生じる可能性もあります。
景気変動への感応度
産業機器市場は景気サイクルの影響を受けやすく、経済減速により業績が変動する可能性があります。特に、売上の半分が「防御的でないハードウェア」から来ているため、景気後退時には需要が減少するリスクがあります。
中国市場の低迷
中国エクスポージャーは11%から8%に削減されましたが、中国市場の低迷が一部事業に影響を与えています。中国経済の減速が長期化すると、アジア市場での成長機会が制限される可能性があります。
(3) 規制・競争リスク(複数アナリストの格下げ、過去の資本配分への信頼性欠如、成長エクスポージャー不足)
複数アナリストの格下げ
Morgan Stanley、Barclays、Truist Securities、JPMorganなど複数のアナリストが相次いで格下げを行いました。有機成長の鈍化、Ralliant分離後の不明確な回復パス、新経営陣下での成長懸念が理由です。アナリストの格下げは、投資家心理の悪化と株価下落につながる可能性があります。
過去の資本配分への信頼性欠如
JPMorganは資本配分戦略について、過去の実行問題から完全に信頼できない「show me」ストーリーと指摘しています。M&Aや自社株買いのタイミングや規模について、過去に期待を裏切った実績があり、投資家の信頼が低下しています。
成長エクスポージャー不足
アナリストは「安価なバリューコングロマリットと比較しても成長エクスポージャーが不足」していると指摘しています。高成長市場への露出が限定的で、売上の半分が防御的でないハードウェアから来ているため、長期的な成長性に疑問符が付いています。
為替リスク
日本人投資家にとっては、為替変動リスクも考慮する必要があります。1ドル=140-150円の変動幅を想定すると、為替だけで数%~10%程度の影響を受ける可能性があります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(FBS経営手法、記録的な利益率、経常収益比率50%への移行)
フォーティブ(FTV)の強みは以下の3点です:
Fortiveビジネスシステム(FBS)経営手法: 継続的改善(カイゼン)を核とする実績のある経営手法により、業務プロセスの効率化、品質向上、顧客満足度の向上を実現しています。FBSは組織文化として深く根付いており、長期的な競争優位性の源泉となっています。
記録的な利益率: 2024年通期に粗利益率60%、調整後営業利益率27%近くという記録的な利益率を達成しました。この高い収益性が、強力なキャッシュフロー創出能力の基盤となっています。
経常収益比率50%への移行: Ralliant分離後のフォーティブは経常収益約50%のビジネスポートフォリオとなります。経常収益は予測可能性が高く、景気変動の影響を受けにくいため、安定した収益基盤となります。
(2) リスク要因(再掲)(成長鈍化懸念、Ralliant分離後の不確実性、関税影響)
リスク要因として以下の3点に注意が必要です:
成長鈍化懸念: Q1 2025のコア売上は2%減少し、2025年の売上成長率見通しもフラット~2.0%と控えめです。複数のアナリストが成長懸念により格下げを行っており、短期的な成長性には疑問符が付いています。
Ralliant分離後の不確実性: 事業ポートフォリオが大きく変わるため、分離後の成長軌道に不確実性があります。新経営陣下での実行能力もまだ実証されておらず、投資家は「show me」というスタンスを取っています。
関税影響と景気変動リスク: 関税による2億ドルの影響(2025年Q4までに80%緩和予定)があり、短期的には収益性への圧力となります。また、売上の半分が防御的でないハードウェアから来ているため、景気後退時には需要が減少するリスクがあります。
(3) 向いている投資家(産業テクノロジー企業に関心がある投資家、長期的な経営手法に価値を見出す投資家)
フォーティブ(FTV)は以下のような投資家に向いています:
産業テクノロジー企業に関心がある投資家: ニッチな市場でリーダーポジションを持つ産業テクノロジー企業を探している方に適しています。42-58歳、投資経験5年以上、資産額800万~2,500万円程度で、長期投資志向の方に向いています。
FBS経営手法のような長期的な競争優位性に価値を見出す投資家: 継続的改善(カイゼン)を核とするFBS経営手法は、短期的な利益よりも長期的な価値創出を重視する手法です。この経営哲学に共感できる投資家に適しています。
配当と成長のバランスを重視する投資家: 配当利回りは低めですが連続増配を継続し、自社株買いも実施しています。配当だけでなく、成長投資と自社株買いのバランスを重視する方に向いています。
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。米国株投資には為替リスク、価格変動リスクが伴います。最新の財務データや市場動向は、Fortive公式IRページやSEC EDGARで確認してください。税制に関する情報は執筆時点(2025年10月)のものであり、改正される可能性があります。Ralliant分離に関する情報は執筆時点のものであり、分離後の状況は変わる可能性があります。
Q: フォーティブの配当利回りは?
A: フォーティブは配当利回りは低めですが、連続増配を継続しています。バランスの取れた資本配分戦略の一環として、自社株買いも積極的に実施しており、配当と成長投資のバランスを重視した株主還元方針です。配当だけでなく、小規模買収(ボルトオン型)への注力、定期的な増配を組み合わせ、中期的な株主リターンの増幅にコミットしています。配当収入を主目的とする投資家には不向きかもしれませんが、配当と成長のバランスを重視する投資家にとっては魅力的な選択肢と言えます。具体的な配当利回りの数値は、Fortive公式IRページで最新データをご確認ください。
Q: フォーティブの主な競合は?
A: 各事業セグメントで異なる競合がいますが、産業コングロマリットとしてはダナハー(元親会社)、Emerson Electric、Honeywell Internationalなどが競合です。フォーティブはFortiveビジネスシステム(FBS)経営手法(継続的改善を核とする実績のある方法論)とニッチ市場でのリーダーポジションで差別化しています。各事業ブランドが特定のニッチ市場でリーダーポジションを持っており、高い価格決定力と収益性を実現しています。また、Ralliant分離後は経常収益約50%という高い比率により、安定した収益基盤を持つ企業としてポジショニングされています。
Q: フォーティブのリスク要因は?
A: 主なリスク要因は以下の通りです。(1) 成長鈍化への懸念(Q1 2025コア売上2%減少、2025年売上成長率見通しフラット~2.0%)、(2) Ralliant分離後の成長軌道の不明確さ(事業ポートフォリオが大きく変わるため不確実性あり)、(3) 複数のアナリストによる格下げ(Morgan Stanley、Barclays、Truist Securities、JPMorganが相次いで格下げ)、(4) 過去の資本配分への信頼性欠如(JPMorganが「show me」ストーリーと指摘)、(5) 成長エクスポージャー不足(売上の半分が防御的でないハードウェア)、(6) 関税影響2億ドル(2025年Q4までに80%緩和予定)、(7) 景気変動への感応度、(8) 為替リスク(日本人投資家の場合、1ドル=140-150円の変動で数%~10%の影響)。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。
Q: フォーティブは長期投資に向いている?
A: 産業テクノロジー企業に関心があり、Fortiveビジネスシステム(FBS)経営手法のような長期的な競争優位性に価値を見出す投資家に向いています。42-58歳、投資経験5年以上、資産額800万~2,500万円程度で、配当と成長のバランスを重視する長期投資志向の方に適しています。FBSによる継続的改善と、ニッチ市場でのリーダーポジションが長期的な価値創出の源泉となっています。2024年通期には記録的な粗利益率60%、調整後営業利益率27%近くを達成しており、高い収益性が魅力です。ただし、短期的には成長鈍化懸念があり、Ralliant分離後の成長軌道に不確実性があります。複数のアナリストが格下げを行っており、新経営陣下での実行能力がまだ実証されていないため、慎重な判断が必要です。投資判断はご自身の投資目的、リスク許容度、保有期間を考慮して行ってください。
