S&P500

モンデリーズ・インターナショナル (MDLZ)

Mondelez International Inc

0. この記事でわかること

本記事では、モンデリーズ・インターナショナル(MDLZ)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: 世界最大のスナック菓子メーカー(オレオ・リッツ等)として、チョコレート・ビスケットで売上の90%を占める戦略へのポートフォリオ再編、デジタルコマースに10億ドル超投資、新興市場10万店舗以上への出店加速
  • 事業内容と成長戦略: 4つの戦略柱(成長・実行・文化・サステナビリティ)を軸に、970億ドル規模のケーキ・ペストリー市場への戦略的買収、2030年までにデジタル売上20%目標(2021年は6%)を推進
  • 競合との差別化: Nestlé、General Mills(GIS)、Kelloggと競合する中で、世界第2位の製菓会社として、オレオ・リッツなどグローバルブランドと「Big & Small」戦略(グローバル規模とローカル機敏性の両立)で差別化
  • 財務・配当の実績: 2024年売上1.2%増、オーガニック売上4.3%成長、フリーキャッシュフロー35億ドル、株主還元47億ドル(自社株買い+配当)、配当貴族候補として継続的な配当成長が期待される
  • リスク要因: カカオ価格の前例のないインフレにより2025年調整後EPS約10%減少見込み(売上5%成長見込みにもかかわらず)、健康志向による需要変化、先進国市場の縮小、ロシア・ウクライナ戦争による地政学的リスク、ESG報告基準の進化によるコスト増

(277字)

1. なぜモンデリーズ・インターナショナル(MDLZ)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

モンデリーズ・インターナショナルは、世界最大のスナック菓子メーカーとして、以下の3つの成長戦略を推進しています。

① ポートフォリオ再編とケーキ・ペストリー市場への拡大

長期的にチョコレートとビスケット(ベイクドスナック含む)で売上の90%を占める戦略へのポートフォリオ再編を進めています。非中核事業を整理し、パワーブランド(オレオ・リッツ・キャドバリーなど)に経営資源を集中投下することで、営業利益率は年々上昇しています。

さらに、970億ドル規模のケーキ・ペストリー市場での機会を強化しています。同社は既に20億ドル事業で世界第3位のポジションを確立しており、戦略的買収、販売網拡大、マーケティング強化を通じて市場シェアを拡大する計画です。

② デジタルコマースに10億ドル超を投資

デジタルコマースリーダーを目指し、10億ドル超を投資しています。2030年までにデジタルチャネルから売上の20%を目指す目標を掲げています(2021年は6%)。パーソナライゼーション(顧客一人ひとりに合わせた商品提案)や顧客中心主義を重視し、デジタル変革を加速させています。

③ 新興市場10万店舗以上への出店加速

新興市場では10万店舗以上への出店を加速しています。地域優先オペレーティングモデルを強化し、M&A(企業買収・合併)によって地理的空白を埋める戦略を採用しています。新興市場では2桁成長を伴う堅調なバランスを維持しており、先進国市場の縮小を補う成長ドライバーとなっています。

(2) 注目テーマ(デジタルコマース・ケーキ市場・新興市場)

投資家が注目するキーワードとして、以下の3つが挙げられます。

  • デジタルコマース・パーソナライゼーション・顧客中心主義: デジタルチャネルから売上の20%を目指す目標(2030年)により、オンライン販売の拡大とデータ活用による顧客体験向上を推進。
  • ケーキ・ペストリー市場拡大・戦略的買収: 970億ドル規模のケーキ・ペストリー市場での機会を強化し、戦略的買収により市場シェアを拡大。
  • 新興市場・地域優先オペレーティングモデル・サステナビリティ: 新興市場での2桁成長、地域ごとのニーズに応じた機敏な事業運営、サステナビリティを第4の戦略柱として格上げ(2022年)。

(3) 投資家の関心・懸念点

投資家の関心は、ディフェンシブな生活必需品セクターでの安定配当と新興市場での成長性にあります。2024年通年でオーガニック売上4.3%成長、フリーキャッシュフロー35億ドルを創出し、株主還元47億ドル(自社株買い+配当)を実施しました。配当貴族候補として、継続的な配当成長が期待されています。

一方で、懸念点も存在します。カカオ価格の劇的上昇が最大の懸念です。2025年通期で調整後EPS約10%減少見込み(カカオコストインフレが主因)となっており、オーガニック売上約5%成長を見込むにもかかわらず、収益が圧迫される見通しです。同社はヘッジと価格転嫁で対応していますが、欧州を中心に価格転嫁が必要な状況です。

また、健康志向の高まりによる需要変化も懸念されています。先進国市場では菓子業界が縮小傾向にあり、同社は日本市場に照準を合わせた革新的製品開発力や優れたマーケティングでイノベーションに取り組み、市場シェアを伸ばしていますが、長期的には健康志向への対応が不可欠です。

アナリスト評価では、19人のコンセンサス評価「買い」、平均目標株価71.68ドル(14.74%上昇余地)とポジティブな評価が多く見られます。成長戦略を強力に実行しながら前例のないカカオコストインフレを乗り越え、Q1で堅調な成果を上げたことが評価されています。

2. モンデリーズ・インターナショナルの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業(チョコレート・ビスケット・ベイクドスナック)

モンデリーズ・インターナショナルは、世界第2位の製菓会社として、150以上の国・地域で販売しています。主力事業は以下の3つです。

① チョコレート

キャドバリー、ミルカ、トブラローネなどのグローバルブランドを展開しています。チョコレート事業は同社の主力事業の一つで、新興市場での成長が著しいです。2025年Q1では、強力な価格戦略によりオーガニック売上3.1%成長を牽引しました。

② ビスケット

オレオ、リッツ、ベルビータなどのグローバルブランドを展開しています。オレオは世界で最も売れているクッキーブランドの一つで、日本市場でも高い認知度があります。ビスケット事業は、チョコレートと並ぶ主力事業で、長期的に売上の90%を占める戦略の中核を担っています。

③ ベイクドスナック

チョコレートとビスケット以外のスナック菓子を含むカテゴリーです。同社は非中核事業を整理し、パワーブランドに集中することで、営業利益率を年々向上させています。

④ 4つの戦略的優先事項

モンデリーズは4つの戦略的優先事項を掲げています。

  • 成長: グローバル・ローカルブランドへの投資
  • 実行: マーケティング・営業能力強化
  • 文化: 多様で才能ある人材の確保
  • サステナビリティ: 2022年に第4の柱として格上げ

サステナビリティを第4の柱として格上げしたことは、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する投資家から評価されています。

(2) セクター・業種の説明(生活必需品・食品)

モンデリーズは生活必需品セクター(Consumer Staples)の食品業種(Food Products)に属しています。生活必需品セクターは景気後退期でも需要が安定しやすく、ディフェンシブ(防御的)な性格を持つため、安定配当を求める投資家に人気があります。

食品業種の特徴は、原材料価格の変動(カカオ・小麦・砂糖など)が収益に直接影響することです。モンデリーズは価格転嫁力(値上げを受け入れてもらえる力)とブランド力で原材料コストを吸収していますが、2025年はカカオ価格の急騰により収益が圧迫される見通しです。

また、健康志向の高まりにより、先進国市場では菓子業界が縮小傾向にあります。モンデリーズは新興市場での成長と、ケーキ・ペストリー市場への拡大により、先進国市場の縮小を補う戦略を採用しています。

(3) ビジネスモデルの特徴(パワーブランド戦略・Big&Small)

モンデリーズのビジネスモデルの最大の特徴は、パワーブランド戦略と「Big & Small」戦略です。

① パワーブランド戦略

パワーブランド戦略とは、主力ブランドに経営資源を集中投下し、非中核事業を整理する経営手法です。モンデリーズは2012年に米クラフトフーズが北米食品部門をスピンオフし、既存事業がモンデリーズとしてリブランディングされました。製品ポートフォリオを成長著しいお菓子と市場に絞り、資金・資源を集中することで、営業利益率は年々上昇しています。

② 「Big & Small」戦略

「Big & Small」戦略とは、グローバル展開企業の規模や各国ラーニングの強みを活かしつつ、ローカル顧客インサイト理解を基盤にした機敏・柔軟なマーケティング展開を行う戦略です。グローバルブランド(オレオ・リッツ等)の規模を活かしながら、地域ごとのニーズに応じた製品開発・マーケティングを行うことで、競合他社に対する優位性を確立しています。

日本市場に照準を合わせた革新的製品開発力や優れたマーケティングでイノベーションに取り組み、市場縮小傾向の菓子業界でシェアを伸ばし続けています。

③ 企業の歴史

2012年10月1日にクラフトフーズが北米食品部門をクラフトフーズとしてスピンオフし、グローバル部門が社名変更してモンデリーズが誕生しました。その前には英大手キャドバリーを買収し、世界有数の菓子メーカーに躍進しました。2012年独立後は世界第2位の製菓会社として、150以上の国・地域で販売しています。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業(Nestlé・General Mills・Kellogg)

モンデリーズの主要競合企業は以下の3社です。

① Nestlé(ネスレ、非米国企業)

世界第1位の食品・飲料企業で、モンデリーズの最大の競合です。ネスレはチョコレート(キットカット等)、菓子、飲料(ネスカフェ等)、ペットフード、乳製品など、幅広い製品ポートフォリオを持っています。ネスレはスイスの企業で、米国市場ではモンデリーズと激しく競合しています。

② General Mills(GIS、ジェネラルミルズ)

米国の大手食品メーカーで、シリアル(チェリオス等)、スナック、ヨーグルト、ペットフードなどを展開しています。モンデリーズとは、スナック市場で競合しています。

③ Kellogg(ケロッグ、分社化)

米国の大手シリアル・スナック菓子メーカーでしたが、2023年に3社に分社化されました(WK Kellogg Co:シリアル、Kellanova:スナック・植物性食品、Calorie Brands:北米冷凍食品)。モンデリーズとは、スナック市場で競合しています。

これらの競合企業と比較すると、モンデリーズは世界第2位の製菓会社として、チョコレート・ビスケット・ベイクドスナックに特化し、新興市場での成長を重視している点が特徴です。

(2) 競合優位性(オレオ・リッツ等グローバルブランド・新興市場展開)

モンデリーズの競合優位性は、以下の3点に集約されます。

① オレオ・リッツ等グローバルブランドの強さ

オレオは世界で最も売れているクッキーブランドの一つで、日本市場でも高い認知度があります。リッツも同様に、グローバルで高いブランド力を持っています。これらのグローバルブランドは、価格転嫁力(値上げを受け入れてもらえる力)とブランドロイヤルティ(ブランドへの忠誠心)により、競合他社に対する優位性を確立しています。

② 新興市場での10万店舗以上への出店加速

新興市場では10万店舗以上への出店を加速しています。先進国市場では菓子業界が縮小傾向にある中、新興市場では2桁成長を伴う堅調なバランスを維持しています。地域優先オペレーティングモデルを強化し、M&Aによって地理的空白を埋める戦略を採用しています。

③ 「Big & Small」戦略によるグローバル規模とローカル機敏性の両立

グローバル展開企業の規模や各国ラーニングの強みを活かしつつ、ローカル顧客インサイト理解を基盤にした機敏・柔軟なマーケティング展開を行う「Big & Small」戦略により、競合他社に対する優位性を確立しています。日本市場に照準を合わせた革新的製品開発力や優れたマーケティングでイノベーションに取り組み、市場縮小傾向の菓子業界でシェアを伸ばし続けています。

(3) 市場でのポジショニング(世界第2位の製菓会社)

モンデリーズは世界第2位の製菓会社として、150以上の国・地域で販売しています。世界第1位はNestlé(非米国企業)、第3位はモンデリーズとされています(情報源により異なる)。

市場でのポジショニングとしては、以下の点が挙げられます。

  • チョコレート・ビスケット特化: 長期的にチョコレートとビスケット(ベイクドスナック含む)で売上の90%を占める戦略へのポートフォリオ再編により、非中核事業を整理し、主力事業に集中。
  • 新興市場での成長: 先進国市場の縮小を補うため、新興市場で2桁成長を目指す戦略。
  • デジタルコマース投資: 2030年までにデジタル売上20%目標(2021年は6%)により、オンライン販売の拡大を推進。

これらの戦略により、モンデリーズは世界第2位の製菓会社としてのポジションを維持しつつ、成長を加速させる計画です。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移(2024年売上1.2%増・オーガニック4.3%成長)

モンデリーズの財務実績は以下の通りです(2024年通年)。

項目 2024年 成長率
売上高 - +1.2%
オーガニック売上成長 - +4.3%
フリーキャッシュフロー 35億ドル -
株主還元 47億ドル -

※出典: Mondelez International IR発表(2024年決算)、SEC EDGAR

オーガニック売上成長とは、買収・売却・為替の影響を除いた実質的な売上成長率を指します。2024年は売上高が1.2%増にとどまったものの、オーガニック売上は4.3%成長しました。これは、為替の影響が売上高に対してマイナスに働いたことを示しています。

2025年Q1の実績

  • オーガニック売上: 3.1%成長(価格戦略6.6%ポイント寄与)
  • フリーキャッシュフロー: 8億ドル創出
  • 新興市場: 10万店舗以上に出店拡大

2025年の見通し

  • オーガニック売上: 約5%成長
  • 調整後EPS: 約10%減少(カカオコストインフレが主因)
  • フリーキャッシュフロー: 30億ドル超

2025年はオーガニック売上約5%成長を見込むにもかかわらず、カカオ価格の急騰により調整後EPS約10%減少が見込まれます。同社はヘッジと価格転嫁で対応していますが、短期的には収益が圧迫される見通しです。

※2025年10月時点のデータです。最新情報はMondelez International公式IRページをご確認ください。

(2) 配当履歴(配当貴族候補・株主還元47億ドル)

モンデリーズは株主還元を重視しており、配当継続と自社株買いを実施しています。

2024年の株主還元

  • 株主還元: 47億ドル(自社株買い+配当)

配当貴族候補として、継続的な配当成長が期待されています。配当貴族とは、25年以上連続で配当を増やし続けている企業を指し、S&P500の中で約65社が該当します。モンデリーズは2012年独立後、配当を継続的に増やしており、配当貴族候補として注目されています。

配当利回りの詳細は公式IRページや証券会社の株価情報でご確認ください。

配当の税金に関する注意

米国株の配当には、米国で10%の源泉徴収が行われ、さらに日本でも20.315%の課税が行われます(二重課税)。ただし、確定申告で外国税額控除を申請することで、二重課税の一部を軽減できます。詳細は国税庁「外国税額控除」ページをご確認ください。

NISA口座で保有する場合、日本での課税は非課税となりますが、米国での10%源泉徴収は免除されません。成長投資枠は年間240万円まで非課税で投資可能です。

(3) 財務健全性(FCF 35億ドル・2025年見込み30億ドル超)

モンデリーズの財務健全性は以下の指標で評価できます。

① フリーキャッシュフロー(FCF)

2024年にフリーキャッシュフロー35億ドルを創出しました。2025年にはフリーキャッシュフロー30億ドル超を見込んでいます。フリーキャッシュフローは、営業キャッシュフローから設備投資を差し引いた金額で、企業が自由に使える現金を示します。モンデリーズは高いフリーキャッシュフロー創出力を持ち、配当・自社株買い・成長投資に振り向けることができます。

② 営業利益率

詳細な営業利益率は10-K年次報告書(SEC EDGAR)で確認できます。非中核事業を整理しパワーブランドに集中することで、営業利益率は年々上昇しています。

③ 自己資本比率・有利子負債

詳細な財務指標は10-K年次報告書(SEC EDGAR)で確認できます。生活必需品セクターの大手企業として、財務的な健全性は高いと考えられますが、最新の財務データは公式IR資料でご確認ください。

(出典: Mondelez International 10-K 2024, SEC EDGAR)

5. リスク要因

(1) 事業リスク(カカオ価格急騰・原材料インフレ)

モンデリーズの最大のリスクは、カカオ価格の急騰による収益圧迫です。2025年通期で調整後EPS約10%減少見込み(カカオコストインフレが主因)となっており、オーガニック売上約5%成長を見込むにもかかわらず、収益が圧迫される見通しです。

① カカオ価格の急騰

カカオ価格は前例のないインフレを記録しており、同社はヘッジ(先物取引による価格固定)と価格転嫁で対応していますが、欧州を中心に価格転嫁が必要な状況です。カカオ価格の急騰の背景には、気候変動による生産国(西アフリカ等)の不作、需要増加などがあります。

② 小麦・エネルギー商品市場の混乱

ロシア・ウクライナ戦争により、小麦・エネルギー商品市場が混乱し、サプライチェーン混乱とインフレに寄与しています。モンデリーズはビスケット事業で小麦を大量に使用しているため、小麦価格の上昇も収益に影響します。

③ 価格転嫁の限界

同社は価格戦略により2025年Q1で価格6.6%ポイント寄与しましたが、価格転嫁には限界があります。過度な値上げは消費者離れを招き、市場シェアを失うリスクがあります。

(2) 市場環境リスク(健康志向・先進国市場縮小・ロシア戦争)

モンデリーズは市場環境リスクも抱えています。

① 健康志向の高まり

先進国市場では健康志向の高まりにより、菓子業界が縮小傾向にあります。モンデリーズは日本市場に照準を合わせた革新的製品開発力や優れたマーケティングでイノベーションに取り組み、市場シェアを伸ばしていますが、長期的には健康志向への対応(低糖質・低カロリー商品の開発等)が不可欠です。

② 先進国市場の縮小

先進国市場では菓子業界が縮小傾向にあり、モンデリーズは新興市場での成長により先進国市場の縮小を補う戦略を採用しています。ただし、新興市場は為替リスク、地政学的リスク、規制リスクが高いため、慎重な事業運営が求められます。

③ ロシア・ウクライナ戦争による地政学的リスク

ロシア・ウクライナ戦争により、小麦・エネルギー商品市場が混乱し、サプライチェーン混乱とインフレに寄与しています。また、ロシア市場での事業運営にも影響が出ています。

(3) 規制・競争リスク(ESG報告基準・価格転嫁の限界)

モンデリーズは規制リスクも抱えています。

① ESG報告基準の進化によるコスト・時間負担増加

ESG(環境・社会・ガバナンス)報告基準の進化により、コスト・時間負担が増加しています。モンデリーズは2022年にサステナビリティを第4の戦略柱として格上げしましたが、ESG報告基準の進化に対応するには、追加のコスト・時間が必要です。

② 価格転嫁の限界

同社は価格戦略により2025年Q1で価格6.6%ポイント寄与しましたが、価格転嫁には限界があります。過度な値上げは消費者離れを招き、市場シェアを失うリスクがあります。

③ 競争リスク

Nestlé、General Mills、Kelloggなどの競合企業と激しく競合しています。デジタルコマース投資10億ドル超、新興市場10万店舗以上への出店加速などにより、競合他社に対する優位性を確立していますが、競争環境は厳しいです。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み(ポートフォリオ再編・デジタル投資10億ドル・新興市場10万店舗)

モンデリーズの強みは以下の3点です。

① ポートフォリオ再編とパワーブランド戦略

長期的にチョコレートとビスケット(ベイクドスナック含む)で売上の90%を占める戦略へのポートフォリオ再編により、非中核事業を整理し、主力事業に集中しています。オレオ・リッツ・キャドバリーなどのグローバルブランドの強さにより、価格転嫁力とブランドロイヤルティを確立しています。

② デジタルコマース投資10億ドル超

デジタルコマースリーダーを目指し、10億ドル超を投資しています。2030年までにデジタルチャネルから売上の20%を目指す目標を掲げており(2021年は6%)、オンライン販売の拡大とデータ活用による顧客体験向上を推進しています。

③ 新興市場10万店舗以上への出店加速

新興市場では10万店舗以上への出店を加速しており、2桁成長を伴う堅調なバランスを維持しています。先進国市場の縮小を補う成長ドライバーとなっています。

(2) リスク要因(再掲)

モンデリーズのリスク要因は以下の2点です。

① カカオ価格の急騰による収益圧迫

2025年通期で調整後EPS約10%減少見込み(カカオコストインフレが主因)となっており、オーガニック売上約5%成長を見込むにもかかわらず、収益が圧迫される見通しです。同社はヘッジと価格転嫁で対応していますが、短期的には収益が圧迫されます。

② 健康志向の高まりと先進国市場の縮小

先進国市場では健康志向の高まりにより、菓子業界が縮小傾向にあります。長期的には健康志向への対応(低糖質・低カロリー商品の開発等)が不可欠です。

(3) 向いている投資家(ディフェンシブ志向・配当成長重視・新興市場成長期待)

モンデリーズは以下のような投資家に向いています。

① ディフェンシブ志向の投資家

生活必需品セクター(Consumer Staples)は景気後退期でも需要が安定しやすく、ディフェンシブ(防御的)な性格を持つため、安定配当を求める投資家に適しています。

② 配当成長重視の投資家

配当貴族候補として、継続的な配当成長が期待されています。2024年に株主還元47億ドル(自社株買い+配当)を実施しており、株主還元に積極的です。

③ 新興市場成長期待の投資家

新興市場では2桁成長を伴う堅調なバランスを維持しており、先進国市場の縮小を補う成長ドライバーとなっています。新興市場での成長を期待する投資家に適しています。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。財務データは最新決算(10-K、10-Q、IR発表)でご確認ください。税率・NISA制度は改正の可能性があるため、最新情報は国税庁・金融庁の公式サイトでご確認ください。為替レート変動により円換算の配当・株価が大きく変動するリスクがあります。

Q: モンデリーズ・インターナショナルの配当利回りは?

A: モンデリーズは2024年に47億ドルを株主還元(自社株買い+配当)しています。配当貴族候補として、継続的な配当成長が期待されています。配当利回りの詳細は公式IRページや証券会社の株価情報でご確認ください。米国株の配当には米国で10%の源泉徴収が行われ、さらに日本でも20.315%の課税が行われます(二重課税)。確定申告で外国税額控除を申請することで、二重課税の一部を軽減できます。

Q: モンデリーズ・インターナショナルの主な競合は?

A: Nestlé、General Mills(GIS)、Kelloggが主要競合です。モンデリーズは世界第2位の製菓会社で、オレオ・リッツなどグローバルブランドと新興市場展開で差別化を図っています。世界第1位はNestlé(非米国企業)です。競合との差別化ポイントは、チョコレート・ビスケット特化のポートフォリオ再編、デジタルコマース投資10億ドル超(2030年までにデジタル売上20%目標)、新興市場10万店舗以上への出店加速です。

Q: モンデリーズ・インターナショナルのリスク要因は?

A: 主なリスク要因は、カカオ価格の急騰により2025年調整後EPS約10%減少見込み、健康志向による需要変化、先進国市場の縮小、ロシア・ウクライナ戦争による地政学的リスク、ESG報告基準の進化によるコスト増です。2025年はオーガニック売上約5%成長を見込むにもかかわらず、カカオコストインフレにより収益が圧迫される見通しです。詳細は本文の「5. リスク要因」セクションを参照してください。

Q: モンデリーズ・インターナショナルは長期投資に向いている?

A: 生活必需品セクターでディフェンシブ、新興市場で2桁成長、デジタルコマース投資10億ドル超、2030年までにデジタル売上20%目標など、配当成長と新興市場成長を重視する長期投資家に向いています。配当貴族候補として、継続的な配当成長が期待されています。ただし、カカオ価格の急騰により2025年調整後EPS約10%減少見込みのため、短期的には収益が圧迫される見通しです。長期的には価格転嫁とポートフォリオ最適化でコスト吸収を図る計画です。投資判断はご自身でご検討ください。

Q: カカオ価格急騰はいつまで続く?

A: 2025年はカカオコストインフレにより調整後EPS約10%減少見込みですが、同社はヘッジ(先物取引による価格固定)と価格転嫁で対応しています。カカオ価格の急騰の背景には、気候変動による生産国(西アフリカ等)の不作、需要増加などがあります。長期的には価格転嫁とポートフォリオ最適化(チョコレート・ビスケット・ケーキ市場でのリーダーシップ強化)でコスト吸収を図る計画です。詳細は本文の「5. リスク要因」セクションを参照してください。

よくある質問

Q1モンデリーズ・インターナショナルの配当利回りは?

A1モンデリーズは2024年に47億ドルを株主還元(自社株買い+配当)しています。配当貴族候補として、継続的な配当成長が期待されています。配当利回りの詳細は公式IRページや証券会社の株価情報でご確認ください。米国株の配当には米国で10%の源泉徴収が行われ、さらに日本でも20.315%の課税が行われます(二重課税)。確定申告で外国税額控除を申請することで、二重課税の一部を軽減できます。

Q2モンデリーズ・インターナショナルの主な競合は?

A2Nestlé、General Mills(GIS)、Kelloggが主要競合です。モンデリーズは世界第2位の製菓会社で、オレオ・リッツなどグローバルブランドと新興市場展開で差別化を図っています。世界第1位はNestlé(非米国企業)です。競合との差別化ポイントは、チョコレート・ビスケット特化のポートフォリオ再編、デジタルコマース投資10億ドル超(2030年までにデジタル売上20%目標)、新興市場10万店舗以上への出店加速です。

Q3モンデリーズ・インターナショナルのリスク要因は?

A3主なリスク要因は、カカオ価格の急騰により2025年調整後EPS約10%減少見込み、健康志向による需要変化、先進国市場の縮小、ロシア・ウクライナ戦争による地政学的リスク、ESG報告基準の進化によるコスト増です。2025年はオーガニック売上約5%成長を見込むにもかかわらず、カカオコストインフレにより収益が圧迫される見通しです。詳細は本文の「5. リスク要因」セクションを参照してください。

Q4モンデリーズ・インターナショナルは長期投資に向いている?

A4生活必需品セクターでディフェンシブ、新興市場で2桁成長、デジタルコマース投資10億ドル超、2030年までにデジタル売上20%目標など、配当成長と新興市場成長を重視する長期投資家に向いています。配当貴族候補として、継続的な配当成長が期待されています。ただし、カカオ価格の急騰により2025年調整後EPS約10%減少見込みのため、短期的には収益が圧迫される見通しです。長期的には価格転嫁とポートフォリオ最適化でコスト吸収を図る計画です。投資判断はご自身でご検討ください。

Q5カカオ価格急騰はいつまで続く?

A52025年はカカオコストインフレにより調整後EPS約10%減少見込みですが、同社はヘッジ(先物取引による価格固定)と価格転嫁で対応しています。カカオ価格の急騰の背景には、気候変動による生産国(西アフリカ等)の不作、需要増加などがあります。長期的には価格転嫁とポートフォリオ最適化(チョコレート・ビスケット・ケーキ市場でのリーダーシップ強化)でコスト吸収を図る計画です。詳細は本文の「5. リスク要因」セクションを参照してください。