0. この記事でわかること
本記事では、テラダイン(TER)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: AI半導体テスト市場でのリーダーシップ、HBM4やカスタムASICテストでの大型受注、ロボティクス部門での定期収益拡大、フォトニクス技術の強化により、2025年度も成長軌道を維持しています。
- 事業内容と成長戦略: 半導体テスト装置(ATE)とタスク自動化ロボティクスの2本柱で事業展開。AI半導体、協働ロボット、フォトニクス技術に注力し、中長期的な成長を目指しています。
- 競合との差別化: アドバンテスト(日本)と世界シェアを二分する半導体テスト市場のリーダー。HBM4やカスタムASICテストでの技術優位性と、協働ロボット事業の多角化で差別化しています。
- 財務・配当の実績: 2025年Q2は売上6.52億ドル、EPS 0.57ドルと予想上回る。粗利率56.5-57.5%の高収益性を維持。配当利回りは約0.7%程度です。
- リスク要因: 半導体サイクルへの高い感応度、産業ロボット市場の回復遅延、Wi-Fi 7立ち上がり遅延、リーダーシップ移行期の不確実性に注意が必要です。
(約250字)
1. なぜテラダイン(TER)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
テラダインは、以下の3つの戦略で成長を加速させています:
AI半導体テスト市場でのリーダーシップ強化
HBM4(High Bandwidth Memory)の性能テストで主要DRAMメーカーから大型受注を獲得しました。AI・データセンター向けの高性能メモリテストでは、世界でテストできる企業が限られており、同社は技術的優位性を確立しています。ロボティクス部門の拡大
グローバル自動車メーカーから過去最大規模の受注を獲得し、協働ロボット(Universal Robots)と自律走行搬送ロボット(MiR)の販売が拡大しています。ソフトウェア・サービスの定期収益モデルを推進し、安定的な収益基盤を構築しています。フォトニクス技術の強化
2025年5月にQuantifi Photonicsを買収し、次世代データセンター向けフォトニック集積回路テストに参入しました。光技術を活用した高速データ通信テストの需要に対応し、製品ポートフォリオを拡充しています。
(2) 注目テーマ(AI半導体テスト・協働ロボット・フォトニクス)
テラダインは、以下の長期成長トレンドに注力しています:
- AI半導体テスト(ASIC、HBM4): AI処理に必要な高性能半導体のテスト需要が急増しています。HBM4やカスタムASICテストで主要顧客(Apple、TSMCなど)から大型受注を獲得しています。
- 協働ロボット(Universal Robots)と自律走行搬送ロボット(MiR): 製造業の自動化ニーズに対応し、協働ロボットと搬送ロボットの販売が拡大しています。グローバル自動車メーカーからの大型受注が成長を牽引しています。
- 次世代データセンター向けフォトニクス技術: 光技術を活用した高速データ通信テストの需要に対応し、Quantifi Photonics買収で技術基盤を強化しました。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家は、テラダインの長期成長ポテンシャルに注目していますが、同時に以下の懸念も抱いています:
- 成長期待: 2025年Q2には売上6.52億ドル、EPS 0.57ドルと予想を上回り、株価は20%急騰しました。アナリストの平均目標株価は136ドル(+24%上昇余地)で、EPS成長率は年21.89%と業界平均(11.03%)を大きく上回ります。
- 半導体サイクルの変動: 半導体業界は景気循環性が高く、需要の波により業績が大きく変動します。同社の業績も半導体サイクルの影響を強く受けます。
- 産業ロボット市場の回復遅延: Wi-Fi 7の立ち上がり遅延によるワイヤレステスト事業の不振や、産業オートメーション・ロボティクス市場の継続的な弱さが懸念されています。
- リーダーシップ移行期の不確実性: Rick Burns氏の退任とShannon Poulin氏への経営移行が市場の不確実性を生んでいます。
(約850字)
2. テラダインの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業
テラダインは、以下の2つの主力事業で構成されています:
半導体テスト(ATE: Automated Test Equipment)
半導体チップの性能・品質を自動検査する装置を提供しています。SOC(システムオンチップ)、メモリ、アナログ/ミックスドシグナルの3分野で、世界でも最先端半導体をテストできる2社のうちの1社です。AppleやTSMCなど主要チップメーカーとの強固なパートナーシップを築いています。タスク自動化ロボティクス
協働ロボット(Universal Robots)と自律走行搬送ロボット(MiR)を提供しています。2015年にUniversal Robots、2018年にMiRを買収し、製造業の自動化ニーズに対応しています。ソフトウェア・サービスの定期収益モデルを推進し、安定的な収益基盤を構築しています。
(2) セクター・業種の説明
テラダインは、情報技術セクター(Information Technology)、**半導体・半導体製造装置業種(Semiconductors & Semiconductor Equipment)**に分類されます。
半導体テスト装置は、半導体製造プロセスの最終工程で使われる重要な装置です。チップの性能や品質を検査し、不良品を除外することで、スマートフォン、自動車、データセンターなど、あらゆる電子機器の信頼性を保証しています。AI・5G・EVの普及により、半導体テスト装置の需要が拡大しています。
(3) ビジネスモデルの特徴
テラダインのビジネスモデルには、以下の特徴があります:
- 高技術力と市場シェア: 世界でも最先端半導体をテストできる2社のうちの1社であり、アドバンテストと世界シェアを二分しています。HBM4やカスタムASICテストでの技術優位性を確立しています。
- 主要顧客との長期的なパートナーシップ: Apple、TSMC、主要DRAMメーカーなど、世界トップクラスのチップメーカーとの強固な関係を築いています。
- M&Aによる事業多角化: 2015年にUniversal Robots、2018年にMiR、2025年にQuantifi Photonicsを買収し、半導体テスト以外の事業領域に進出しています。
- ファブライト経営: 自社製造設備を最小限に抑え、外部委託で資産効率を高める経営戦略を採用しています。
- 景気サイクルへの感応度: 半導体業界は景気循環性が高く、業績も半導体サイクルの影響を強く受けます。
(約800字)
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業
テラダインの主要競合企業は以下の通りです:
- アドバンテスト(Advantest、日本): 半導体テスト装置の世界最大手。テラダインと世界シェアを二分しています。メモリテスト、SOCテストで強みを持ちます。
- Cohu(米国): アナログ/ミックスドシグナルテスト、ハンドラー(搬送装置)で競合しています。
- LTX-Credence(Xcerra、米国): アナログ/ミックスドシグナルテストで競合していましたが、2018年にCohuに買収されました。
(2) 競合優位性
テラダインは、以下の点で競合他社と差別化しています:
HBM4やカスタムASICテストでの技術優位性
AI・データセンター向けの高性能メモリ(HBM4)やカスタムASICのテストでは、世界でテストできる企業が限られており、同社は技術的優位性を確立しています。主要DRAMメーカーやApple、TSMCなどから大型受注を獲得しています。協働ロボット事業の多角化
半導体テスト以外に、協働ロボット(Universal Robots)と自律走行搬送ロボット(MiR)を提供しており、製造業の自動化ニーズに対応しています。ソフトウェア・サービスの定期収益モデルを推進し、安定的な収益基盤を構築しています。フォトニクス技術の強化
2025年5月にQuantifi Photonicsを買収し、次世代データセンター向けフォトニック集積回路テストに参入しました。光技術を活用した高速データ通信テストの需要に対応し、製品ポートフォリオを拡充しています。ファブライト経営による資産効率化
自社製造設備を最小限に抑え、外部委託で資産効率を高める経営戦略を採用しています。これにより、設備投資を抑え、高い粗利率(56.5-57.5%)を維持しています。
(3) 市場でのポジショニング
テラダインは、世界でも最先端半導体をテストできる2社のうちの1社として、以下の市場で強いポジションを確立しています:
- AI半導体テスト市場: HBM4やカスタムASICテストで主要顧客から大型受注を獲得しており、AI・データセンター向けの高性能半導体テスト市場でリーダーシップを握っています。
- 協働ロボット市場: Universal Robotsは協働ロボット市場で高いシェアを持ち、グローバル自動車メーカーからの大型受注が成長を牽引しています。
- フォトニクステスト市場: Quantifi Photonics買収により、次世代データセンター向けフォトニック集積回路テスト市場に参入し、競争力を強化しました。
Morningstarは同社を「ワイドモート(広い堀)」企業と評価しており、競争優位性の持続性が高いと分析しています。
(約850字)
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移
テラダインの売上高と利益は、以下のように推移しています(2025年度Q2時点):
項目 | 2025年Q2実績 | 2025年Q3予想 |
---|---|---|
売上高 | 6.52億ドル | 7.1-7.7億ドル |
EPS | 0.57ドル | 0.69-0.87ドル |
粗利率 | 約56-57% | 56.5-57.5% |
2025年Q2は予想を上回る業績を報告し、株価は20%急騰しました。2024年通年では、売上5%成長、フリーキャッシュフロー4.7億ドル超、EPS 10%増を達成しました。
粗利率は56.5-57.5%と高収益性を維持しており、業界トップクラスの水準です。
(出典: Teradyne Investor Relations - Q2 2025 Earnings, 2025年7月発表)
(2) 配当履歴
テラダインの配当に関する情報は以下の通りです(2024年末時点):
- 配当利回り: 約0.7%程度
- 株主還元方針: 配当よりも自社株買いを優先しています。2026年末までの自社株買い枠を4億ドルから10億ドルに拡大しました。
- 配当の安定性: 安定的な配当を維持しつつ、自社株買いで株主還元を強化する方針です。
配当利回りは低めですが、自社株買いを積極的に実施しており、総合的な株主還元は充実しています。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はTeradyne公式IRページをご確認ください。
(3) 財務健全性
テラダインの財務健全性は以下の通りです:
- フリーキャッシュフロー: 2024年通年で4.7億ドル超を達成。安定的な現金創出力を示しています。
- 株主還元: 2026年末までの自社株買い枠を10億ドルに拡大し、積極的な株主還元を実施しています。
- ROE(自己資本利益率): 5.11%(2024年12月期)。ファブライト経営により資産効率を高めています。
財務基盤は安定しており、成長投資(M&A)と株主還元を両立できる体制を維持しています。
(出典: Teradyne 10-K Annual Report 2024, SEC EDGAR)
(約700字)
5. リスク要因
(1) 事業リスク
テラダインの主な事業リスクは以下の通りです:
半導体サイクルへの高い感応度
半導体業界は景気循環性が高く、需要の波により業績が大きく変動します。同社の業績も半導体サイクルの影響を強く受けるため、景気後退時には売上と利益が減少する可能性があります。産業ロボット市場の回復遅延
産業オートメーション・ロボティクス分野の継続的な弱さが懸念されています。グローバル自動車メーカーからの大型受注はあるものの、市場全体の回復が遅れると業績に影響を及ぼします。Wi-Fi 7立ち上がり遅延によるワイヤレステスト低迷
Wi-Fi 7の立ち上がりが遅れており、ワイヤレステスト事業が不振です。新技術の普及が遅れると、テスト装置の需要も減少します。技術変化と商品化リスク
半導体業界では、技術革新のスピードが速く、競合他社が新技術を投入すると市場シェアを失うリスクがあります。HBM4やカスタムASICテストでの技術優位性を維持できない場合、成長機会を逃す可能性があります。
(2) 市場環境リスク
テラダインは、以下の市場環境リスクにさらされています:
景気サイクルの影響
半導体や産業機器の需要は景気に左右されやすく、景気後退時には売上が減少します。同社の業績も景気サイクルの影響を受けやすい傾向があります。金利の上昇
金利が上昇すると、企業の設備投資が減少し、半導体テスト装置や産業ロボットの需要が減少する可能性があります。為替リスク
テラダインはグローバルに事業を展開しているため、為替レートの変動が業績に影響を及ぼします。特に、日本人投資家にとっては、ドル円レートの変動が投資リターンに大きく影響します。円高が進むと、ドル建て株価が上昇しても円換算での利益が減少する可能性があります。
(3) 規制・競争リスク
テラダインは、以下の規制・競争リスクに直面しています:
競争の激化
アドバンテストやCohuなどの競合他社が新技術や低価格製品を投入すると、市場シェアを失うリスクがあります。特に、中国企業などの低価格競合が参入すると、価格競争が激化する可能性があります。リーダーシップ移行期の不確実性
Rick Burns氏の退任とShannon Poulin氏への経営移行が市場の不確実性を生んでいます。新経営陣が成長戦略を成功裏に実行できるかどうかが注目されています。顧客の集中リスク
Apple、TSMC、主要DRAMメーカーなど、大手顧客との取引が多いため、主要顧客との取引が減少すると業績に影響を及ぼします。
(約850字)
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
テラダインの強みは以下の3点です:
AI半導体テスト市場でのリーダーシップ
HBM4やカスタムASICテストで主要顧客から大型受注を獲得しており、AI・データセンター向けの高性能半導体テスト市場でリーダーシップを握っています。アナリストのEPS成長率予想は年21.89%と業界平均(11.03%)を大きく上回ります。協働ロボット事業の多角化と定期収益モデル
Universal RobotsとMiRの2つのロボット事業で、製造業の自動化ニーズに対応しています。ソフトウェア・サービスの定期収益モデルを推進し、安定的な収益基盤を構築しています。高収益性と積極的な株主還元
粗利率56.5-57.5%の高収益性を維持しており、2026年末までの自社株買い枠を10億ドルに拡大しました。フリーキャッシュフロー4.7億ドル超(2024年)の安定的な現金創出力を示しています。
(2) リスク要因(再掲)
テラダインのリスク要因は以下の2点です:
半導体サイクルへの高い感応度
半導体業界は景気循環性が高く、需要の波により業績が大きく変動します。景気後退時には売上と利益が減少する可能性があります。産業ロボット市場の回復遅延とリーダーシップ移行期の不確実性
産業オートメーション・ロボティクス市場の継続的な弱さや、Rick Burns氏の退任による経営移行が市場の不確実性を生んでいます。
(3) 向いている投資家
テラダインは、以下のような投資家に向いています:
AI半導体・データセンターの長期成長を信じる投資家
同社は、AI半導体テスト市場でリーダーシップを握っており、中長期的な成長が見込まれます。EPS成長率21.89%の高成長を評価できることが前提です。半導体サイクルの変動を許容できる投資家
半導体業界は景気循環性が高いため、短期的な業績変動を許容できる投資家に向いています。多角化戦略を評価できる投資家
協働ロボット事業やフォトニクス技術への進出により、半導体テスト以外の事業領域にも進出しています。M&Aによる多角化戦略を評価できる投資家に適しています。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身の責任で行ってください。最新の財務データや市場動向は、Teradyne公式IRページや証券会社の情報をご確認ください。
(約750字)
Q: テラダインの配当利回りは?
A: 約0.7%程度です(2024年末時点)。配当利回りは低めですが、自社株買いを積極的に実施しており、総合的な株主還元は充実しています。2026年末までの自社株買い枠を4億ドルから10億ドルに拡大しました。配当よりも自社株買いを優先する方針を採用しています。
Q: テラダインの主な競合は?
A: 主な競合は、アドバンテスト(Advantest、日本)、Cohu(米国)、LTX-Credence(Xcerra、米国、2018年にCohuに買収)などです。アドバンテストとは世界シェアを二分しており、特にメモリテスト、SOCテストで競合しています。テラダインは、HBM4やカスタムASICテストでの技術優位性と、協働ロボット事業の多角化で差別化しています。
Q: テラダインのリスク要因は?
A: 主なリスク要因は、半導体サイクルへの高い感応度、産業ロボット市場の回復遅延、Wi-Fi 7立ち上がり遅延によるワイヤレステスト低迷、リーダーシップ移行期の不確実性です。半導体業界は景気循環性が高く、需要の波により業績が大きく変動します。Rick Burns氏の退任とShannon Poulin氏への経営移行が市場の不確実性を生んでいます。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。
Q: テラダインは長期投資に向いている?
A: AI半導体・データセンターの長期成長を信じ、半導体サイクルの変動を許容できる投資家に向いています。同社は、AI半導体テスト市場でリーダーシップを握っており、アナリストのEPS成長率予想は年21.89%と業界平均(11.03%)を大きく上回ります。ただし、半導体サイクルへの高い感応度を許容できることが前提です。短期的な業績変動よりも、長期的な成長ポテンシャルに注目する投資家に適しています。投資判断はご自身で行ってください。