0. この記事でわかること
本記事では、T.ロウ・プライス・グループ(TROW)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 37年連続増配を続ける配当貴族銘柄として、安定配当と配当成長の両立を目指す投資家から注目。ETF事業を大幅拡大し、2025年上半期に60億ドル超の純流入を獲得。ゴールドマン・サックスとの戦略提携により、退職者・富裕層向けの新たな収益源を確保。
- 事業内容と成長戦略: アクティブ運用に強みを持つ資産運用会社。運用資産は1.77兆ドル(2025年9月末時点)で、ターゲットデートファンド(退職者向け)が業界トップクラスの純流入(年163億ドル)を誇る。経費成長率を一桁台前半に抑制し、収益性を改善。
- 競合との差別化: BlackRock、Vanguard、Fidelityなどの大手資産運用会社に対し、アクティブ運用と長期投資家向けのミューチュアルファンドで差別化。ターゲットデートファンドでの強みが顕著。
- 財務・配当の実績: 2025年Q2のEPSは2.24ドル(予想を上回る)。37年連続増配を続け、配当利回りは株価により変動するが、安定配当が特徴。
- リスク要因: 資金流出の継続(2025年9月は20億ドルの純流出、四半期累計で79億ドルの流出)、手数料圧縮圧力(パッシブ運用への移行)、運用成績不振。
※本記事は2025年10月時点の情報に基づいています。投資判断は自己責任で行ってください。
1. なぜT.ロウ・プライス・グループ(TROW)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
T.ロウ・プライス・グループは、資産運用業界の老舗として、以下3つの成長戦略で投資家の注目を集めています。
ETF事業を大幅拡大し、60億ドル超の純流入を獲得
同社は、2025年上半期にETF事業で60億ドル超の純流入を獲得し、運用資産は162億ドルに到達しました。24本のETF商品ラインナップを拡充し、さらに8本の新規戦略を申請中です。従来はアクティブ運用のミューチュアルファンド(投資信託)が主力でしたが、低コストのETFへの需要拡大に対応し、商品ラインナップを多様化しています。ゴールドマン・サックスとの戦略提携により新たな収益源を確保
2025年9月にゴールドマン・サックスとの戦略提携を発表し、退職者・富裕層向けに公開・非公開市場を組み合わせた多様な投資ソリューションを提供します。この提携により、従来の公開株式・債券ファンドに加え、プライベート・エクイティやヘッジファンドなどのオルタナティブ資産へのアクセスを提供し、新たな収益源を確保しています。2026年・2027年の経費成長率を一桁台前半に抑制し、収益性を改善
同社は、2026年・2027年の経費成長率を一桁台前半に抑制し、収益成長と連動させることで収益性を改善する方針です。2025年の調整後経費成長率は2~4%に抑制しており、効率化を進めています。2025年7月には全社的な人員削減を実施し、コスト削減を加速しています。
(2) 注目テーマ(ETF事業拡大・AI活用・ターゲットデートファンド)
アクティブ運用からETFへの商品ラインナップ拡大
資産運用業界では、近年、低コストのパッシブ運用(インデックスファンド・ETF)への資金シフトが加速しています。T.ロウ・プライスは、従来のアクティブ運用のミューチュアルファンドに加え、ETF商品ラインナップを大幅に拡充し、顧客の多様なニーズに対応しています。
AI活用による運用効率化(リサーチ・ポートフォリオ構築・オペレーション)
T.ロウ・プライスは、AI活用により運用効率化を進めています。リサーチ(企業分析)、ポートフォリオ構築(銘柄選別)、オペレーション(バックオフィス業務)でAIツールを活用し、コスト削減と運用成績向上を図っています。
退職者向けターゲットデートファンド(業界トップクラスの純流入163億ドル/年)
ターゲットデートファンドは、退職予定年に応じて自動的に資産配分を調整する退職者向けファンドです。T.ロウ・プライスは、このカテゴリーで業界トップクラスの純流入(年163億ドル)を誇り、同社の強みとなっています。米国では、401(k)(企業型確定拠出年金)でのターゲットデートファンドの利用が拡大しており、同社は高い市場シェアを維持しています。
(3) 投資家の関心・懸念点
関心点
- 37年連続増配: 配当貴族銘柄(S&P500配当貴族指数構成銘柄)として、37年連続増配を続けており、安定配当と配当成長の両立が投資家から高く評価されています。
- ターゲットデートファンドの強み: 業界トップクラスの純流入(年163億ドル)を誇り、退職者向けファンド市場での強いポジションが評価されています。
- ETF事業の成長: 2025年上半期に60億ドル超の純流入を獲得し、商品ラインナップを拡充しています。
- 経費削減による収益性改善: 2025年の調整後経費成長率は2~4%に抑制し、効率化を進めています。
懸念点
- 資金流出の継続: 2025年9月は20億ドルの純流出、四半期累計で79億ドルの流出となっています。アクティブ運用からパッシブ運用への資金シフトが続いており、運用資産の減少が懸念されています。
- 手数料圧縮圧力: 低コストのインデックスファンド・ETFとの競争により、手数料率が低下し、収益見通しが悪化しています。
- 運用成績不振: アクティブ運用の運用成績がベンチマーク(市場平均)を下回るファンドがあり、今後の成長を抑制する要因となっています。
- アナリストの評価: アナリスト12名のコンセンサス評価は「売り」で、平均目標株価102.75ドル(現在価格から2%下落見込み)となっています(2025年10月時点)。
2. T.ロウ・プライス・グループの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業
T.ロウ・プライス・グループは、アクティブ運用に強みを持つ資産運用会社です。主力事業は以下の3つです。
ミューチュアルファンド(投資信託)事業
長期投資家向けのアクティブ運用ミューチュアルファンドが主力商品です。株式ファンド、債券ファンド、バランスファンド、ターゲットデートファンドなど、多様な商品ラインナップを提供しています。ETF(上場投資信託)事業
2025年上半期に60億ドル超の純流入を獲得し、運用資産は162億ドルに到達しました。24本のETF商品ラインナップを拡充し、さらに8本の新規戦略を申請中です。機関投資家向け運用事業
年金基金、財団、富裕層向けの運用サービスを提供しています。公開株式・債券ファンドに加え、プライベート・エクイティやヘッジファンドなどのオルタナティブ資産への投資サービスも展開しています。
(2) セクター・業種の説明
セクター: Financials(金融)
金融セクターは、銀行、保険、証券、資産運用などの金融サービスを提供する企業群です。T.ロウ・プライスは資産運用会社として、顧客から預かった資産を運用し、手数料収入を得るビジネスモデルです。
業種: Capital Markets(資本市場)
この業種には、資産運用会社、投資銀行、証券会社などが含まれます。T.ロウ・プライスは、アクティブ運用に特化した資産運用会社として、長期投資家向けのミューチュアルファンドを主力商品としています。
(3) ビジネスモデルの特徴
手数料収入ベースのビジネスモデル
T.ロウ・プライスの収益は、運用資産(AUM: Assets Under Management)に対する手数料で構成されています。運用資産が増加すれば手数料収入が増加し、運用資産が減少すれば手数料収入が減少します。運用資産は、以下の2つの要因で変動します。
- 市場環境: 株式市場・債券市場の価格変動により、運用資産の時価評価額が変動します。市場が上昇すれば運用資産が増加し、市場が下落すれば運用資産が減少します。
- 純流入/流出: 顧客からの新規投資額から解約額を差し引いた金額(純流入)が、運用資産の増減に影響します。近年は、アクティブ運用からパッシブ運用への資金シフトにより、純流出が続いています。
アクティブ運用に集中する戦略的決定
T.ロウ・プライスは、パッシブ運用(インデックスファンド)への大規模参入を見送り、アクティブ運用に集中する戦略的決定を行っています。アクティブ運用は、ファンドマネージャーが銘柄選別を行い、ベンチマーク(市場平均)を上回る運用成績を目指すもので、パッシブ運用よりも手数料率が高いことが特徴です。
ゴールドマン・サックスとの戦略提携
2025年9月にゴールドマン・サックスとの戦略提携を発表し、退職者・富裕層向けに公開・非公開市場を組み合わせた多様な投資ソリューションを提供します。この提携により、従来の公開株式・債券ファンドに加え、プライベート・エクイティやヘッジファンドなどのオルタナティブ資産へのアクセスを提供し、新たな収益源を確保しています。
成長戦略の詳細展開
T.ロウ・プライスの成長戦略は、以下の3つの柱で構成されています。
- 商品ラインナップの多様化: ETF商品ラインナップを拡充し、低コストの商品を提供することで、パッシブ運用への資金シフトに対応します。
- 運用効率化: AI活用により、リサーチ・ポートフォリオ構築・オペレーションの効率化を進め、コスト削減と運用成績向上を図ります。
- 新たな収益源の確保: ゴールドマン・サックスとの戦略提携により、オルタナティブ資産への投資サービスを拡充し、富裕層・機関投資家向けの収益を拡大します。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業
T.ロウ・プライス・グループの主要競合企業は、以下の大手資産運用会社3社です。
BlackRock(ブラックロック)
運用資産約10兆ドルの世界最大の資産運用会社。iSharesブランドのETFで圧倒的なシェアを持つ。パッシブ運用に強みを持つ。Vanguard(バンガード)
運用資産約8兆ドルの世界第2位の資産運用会社。低コストのインデックスファンド・ETFで高い評価を得ている。顧客所有の企業形態(非公開)が特徴。Fidelity(フィデリティ)
運用資産約4兆ドルの大手資産運用会社。ミューチュアルファンド、ETF、証券サービスを幅広く展開。アクティブ運用とパッシブ運用の両方に強みを持つ。
(2) 競合優位性
T.ロウ・プライスは、以下の3点で競合との差別化を実現しています。
アクティブ運用と長期投資家向けのミューチュアルファンド
T.ロウ・プライスは、アクティブ運用に特化し、長期投資家向けのミューチュアルファンドを主力商品としています。BlackRockやVanguardはパッシブ運用に強みを持つ一方、T.ロウ・プライスはアクティブ運用での専門性と運用実績で差別化しています。ターゲットデートファンドでの強み
T.ロウ・プライスは、退職者向けターゲットデートファンドで業界トップクラスの純流入(年163億ドル)を誇り、米国の401(k)市場で高いシェアを維持しています。退職者向けファンド市場での強いポジションが、同社の安定収益源となっています。長期投資哲学と顧客との信頼関係
T.ロウ・プライスは、長期投資哲学を掲げ、短期的な市場変動に左右されない運用方針を貫いています。顧客との長期的な信頼関係を重視し、運用成績の一貫性と透明性を提供しています。
(3) 市場でのポジショニング
アクティブ運用に特化した資産運用会社
T.ロウ・プライスは、アクティブ運用に特化した資産運用会社として、市場でのポジショニングを確立しています。BlackRockやVanguardがパッシブ運用で市場を席巻する中、T.ロウ・プライスはアクティブ運用での専門性と運用実績で差別化しています。
ターゲットデートファンド市場でのリーダー
T.ロウ・プライスは、退職者向けターゲットデートファンド市場でリーディングポジションを確立しており、米国の401(k)市場で高いシェアを維持しています。この市場は、ベビーブーム世代の退職により今後も拡大が見込まれ、同社の安定収益源となっています。
株価パフォーマンス
T.ロウ・プライスの株価は、2024年に約5%下落し、市場平均(S&P500は約25%上昇)を大きくアンダーパフォームしました。資金流出と手数料圧縮により、投資家の評価が低下しています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移
以下は、T.ロウ・プライス・グループの過去5年間の財務データです(出典: T. Rowe Price Group, Inc. 公式IR、SEC EDGAR)。
年度 | 運用資産(兆ドル) | 純収益(十億ドル) | 調整後EPS(ドル) |
---|---|---|---|
2020 | 1.47 | 6.21 | 10.43 |
2021 | 1.69 | 7.67 | 12.75 |
2022 | 1.28 | 6.28 | 9.89 |
2023 | 1.56 | 6.54 | 10.12 |
2024 | 1.71 | 6.89 | 10.45 |
2025年の業績ハイライト(直近)
- 2025年Q1: EPS 2.23ドル(予想2.12ドルを上回る)、純収益18億ドル、ARR 22.6億ドル
- 2025年Q2: EPS 2.24ドル(予想を上回る)、純収益18億ドル
- 2025年9月末: 運用資産1.77兆ドル、純流出20億ドル(四半期累計で79億ドルの流出)
純流入の内訳(2025年Q1)
- ターゲットデートファンド: 63億ドルの純流入
- 債券ファンド: 54億ドルの純流入
- ETF: 32.6億ドルの純流入
※2025年10月時点のデータです。最新情報はT. Rowe Price Group, Inc.公式IRページをご確認ください。
(出典: T. Rowe Price Group, Inc. 10-K 2024, SEC EDGAR)
(2) 配当履歴
配当の推移
T.ロウ・プライスは、37年連続増配を続ける配当貴族銘柄です。過去の配当履歴は以下の通りです。
年度 | 年間配当(ドル) | 前年比増配率(%) |
---|---|---|
2020 | 4.08 | +9.1 |
2021 | 4.40 | +7.8 |
2022 | 4.68 | +6.4 |
2023 | 4.92 | +5.1 |
2024 | 5.16 | +4.9 |
配当利回り
配当利回りは株価により変動しますが、2025年10月時点の株価(約105ドル前後)では、配当利回りは約5.0%程度となっています(株価により変動するため、最新データをご確認ください)。
配当性向
T.ロウ・プライスの配当性向(配当÷純利益)は約50-60%で、利益の半分程度を配当に充て、残りを自社株買いと事業投資に振り向けています。
連続増配年数
37年連続増配を続けており、S&P500配当貴族指数の構成銘柄となっています。配当貴族銘柄は、25年以上連続増配を続ける銘柄で、安定配当と配当成長の両立が評価されています。
自社株買い
T.ロウ・プライスは、配当に加えて自社株買いを実施しており、株主還元を強化しています。
(3) 財務健全性
自己資本比率
2024年末時点の自己資本比率は約60%で、財務健全性は良好です。
フリーキャッシュフロー(FCF)
2024年のFCFは約20億ドルで、配当・自社株買い・事業投資に充当しています。手数料収入ベースのビジネスモデルにより、安定したキャッシュフローを確保しています。
有利子負債
2024年末時点の有利子負債は約10億ドルと低水準で、財務レバレッジは低く、財務健全性は良好です。
格付け
S&Pの格付けはA(高い信用力)で、財務健全性は一定水準を維持しています。
5. リスク要因
(1) 事業リスク
資金流出の継続
2025年9月は20億ドルの純流出、四半期累計で79億ドルの流出となっています。アクティブ運用からパッシブ運用への資金シフトが続いており、運用資産の減少が懸念されています。資金流出が継続すれば、手数料収入が減少し、業績に影響を与える可能性があります。
手数料圧縮圧力(パッシブ運用への移行)
低コストのインデックスファンド・ETFとの競争により、手数料率が低下し、収益見通しが悪化しています。アクティブ運用の手数料率は0.5~1.0%程度ですが、パッシブ運用のETFは0.1%未満の手数料率で提供されており、顧客の低コスト志向が強まっています。
運用成績不振
アクティブ運用の運用成績がベンチマーク(市場平均)を下回るファンドがあり、今後の成長を抑制する要因となっています。運用成績が悪化すれば、顧客の解約が増加し、資金流出が加速する可能性があります。
人員削減による組織力低下
2025年7月に全社的な人員削減を実施しており、短期的にはコスト削減効果がありますが、長期的には組織力の低下やモチベーション低下のリスクがあります。
(2) 市場環境リスク
株式市場・債券市場の下落
T.ロウ・プライスの運用資産は、株式市場・債券市場の価格変動により時価評価額が変動します。市場が下落すれば運用資産が減少し、手数料収入が減少します。
金利環境の変化
金利上昇により、債券ファンドの運用成績が悪化する可能性があります。また、金利上昇により、株式市場が下落し、運用資産が減少するリスクがあります。
為替リスク(日本人投資家向け)
日本人投資家にとって、為替リスクは重要な要素です。米ドル建ての配当・株価は、円高・円安により円ベースのリターンが大きく変動します。為替ヘッジ手段(為替予約、外貨建てMMF等)を検討することも選択肢の一つです。
(3) 規制・競争リスク
競合との競争激化
BlackRock、Vanguard、Fidelity等の大手資産運用会社との競争が激化しており、顧客獲得競争が厳しくなっています。特に、低コストのパッシブ運用への資金シフトが続いており、アクティブ運用に特化したT.ロウ・プライスには逆風が吹いています。
規制強化
資産運用業界は、SEC(米国証券取引委員会)による規制強化の対象となる可能性があります。手数料開示の厳格化、利益相反の排除、フィデューシャリー・デューティ(受託者責任)の強化などが議論されており、規制強化によりコスト増加やビジネスモデルの変更を迫られる可能性があります。
ESG投資の台頭
ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が台頭しており、投資家のESG要求が高まっています。T.ロウ・プライスは、ESG投資商品を拡充していますが、競合との差別化が難しくなる可能性があります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
37年連続増配を続ける配当貴族銘柄
T.ロウ・プライスは、37年連続増配を続ける配当貴族銘柄として、安定配当と配当成長の両立を実現しています。配当利回りは約5.0%(2025年10月時点)で、高配当銘柄として投資家から評価されています。ターゲットデートファンドでの強み
退職者向けターゲットデートファンドで業界トップクラスの純流入(年163億ドル)を誇り、米国の401(k)市場で高いシェアを維持しています。この市場は、ベビーブーム世代の退職により今後も拡大が見込まれ、同社の安定収益源となっています。長期投資哲学と顧客との信頼関係
長期投資哲学を掲げ、短期的な市場変動に左右されない運用方針を貫いています。顧客との長期的な信頼関係を重視し、運用成績の一貫性と透明性を提供しています。
(2) リスク要因(再掲)
資金流出の継続と手数料圧縮圧力
2025年9月は20億ドルの純流出、四半期累計で79億ドルの流出となっています。アクティブ運用からパッシブ運用への資金シフトが続いており、手数料圧縮圧力により収益見通しが悪化しています。運用成績不振と競合との競争激化
アクティブ運用の運用成績がベンチマーク(市場平均)を下回るファンドがあり、今後の成長を抑制する要因となっています。BlackRock、Vanguard、Fidelity等の大手資産運用会社との競争が激化しており、顧客獲得競争が厳しくなっています。
(3) 向いている投資家
安定配当と配当成長を重視する投資家
37年連続増配を続ける配当貴族銘柄として、安定配当と配当成長の両立を目指す投資家に向いています。配当利回りは約5.0%(2025年10月時点)で、高配当銘柄として魅力的です。アクティブ運用の価値を信じる長期投資家
パッシブ運用への資金シフトが続く中、アクティブ運用の価値を信じる長期投資家に向いています。T.ロウ・プライスは、アクティブ運用での専門性と運用実績で差別化しており、長期投資哲学を掲げています。資産運用業界のリーディングカンパニーに投資したい投資家
運用資産1.77兆ドル(2025年9月末時点)の資産運用業界のリーディングカンパニーとして、長期的な事業基盤を評価した上で投資判断を行う投資家に向いています。
免責事項
本記事は、T.ロウ・プライス・グループ(TROW)に関する情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨・投資助言ではありません。投資判断は、ご自身の責任で最新の財務データ・市場環境を確認の上、行ってください。米国株投資には、為替リスク、税金(外国税額控除)、手数料等が伴います。詳細は、証券会社の公式サイトや金融庁のNISA制度ガイドをご確認ください。
Q: T.ロウ・プライス・グループの配当利回りは?
A: T.ロウ・プライスは37年連続増配を続ける配当貴族銘柄です。配当利回りは株価により変動しますが、2025年10月時点の株価(約105ドル前後)では約5.0%程度となっています。過去5年間の年間配当は、2020年4.08ドル、2021年4.40ドル、2022年4.68ドル、2023年4.92ドル、2024年5.16ドルと、毎年増配を続けています。配当性向は約50-60%で、利益の半分程度を配当に充て、残りを自社株買いと事業投資に振り向けています。最新の配当利回りは、Yahoo FinanceやBloomberg等の金融情報サイトでご確認ください。
Q: T.ロウ・プライス・グループの主な競合は?
A: BlackRock、Vanguard、Fidelityなどの大手資産運用会社が主要競合です。T.ロウ・プライスはアクティブ運用に強みを持ち、長期投資家向けのミューチュアルファンドで差別化しています。BlackRockやVanguardはパッシブ運用(インデックスファンド・ETF)に強みを持つ一方、T.ロウ・プライスはアクティブ運用での専門性と運用実績で差別化しています。また、退職者向けターゲットデートファンドで業界トップクラスの純流入(年163億ドル)を誇り、この市場での強みが顕著です。
Q: T.ロウ・プライス・グループのリスク要因は?
A: 主なリスク要因は以下の通りです。
- 資金流出の継続: 2025年9月は20億ドルの純流出、四半期累計で79億ドルの流出となっています。アクティブ運用からパッシブ運用への資金シフトが続いており、運用資産の減少が懸念されています。
- 手数料圧縮圧力: 低コストのインデックスファンド・ETFとの競争により、手数料率が低下し、収益見通しが悪化しています。
- 運用成績不振: アクティブ運用の運用成績がベンチマーク(市場平均)を下回るファンドがあり、今後の成長を抑制する要因となっています。
- 市場環境の変動: 株式市場・債券市場の下落により、運用資産が減少し、手数料収入が減少するリスクがあります。
詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。
Q: T.ロウ・プライス・グループは長期投資に向いている?
A: 安定配当と配当成長を重視する投資家に向いています。37年連続増配の実績があり、配当利回りは約5.0%(2025年10月時点)と高い水準です。ただし、以下の点を理解した上で投資判断を行ってください。
- 資金流出の継続: アクティブ運用からパッシブ運用への資金シフトが続いており、短期的には厳しい環境です。資金流出が継続すれば、手数料収入が減少し、業績に影響を与える可能性があります。
- 手数料圧縮圧力: 低コストのパッシブ運用との競争により、手数料率が低下しています。
- 長期的な事業基盤: ターゲットデートファンドでの強みや長期投資哲学により、長期的な事業基盤は健全です。短期的な課題を克服できれば、長期投資に向いた銘柄と言えます。
投資判断は、ご自身の投資目的・リスク許容度に応じて行ってください。
Q: T.ロウ・プライス・グループのターゲットデートファンドとは?
A: ターゲットデートファンドは、退職予定年に応じて自動的に資産配分を調整する退職者向けファンドです。例えば、「2050年ターゲットデートファンド」は、2050年に退職予定の投資家向けに、若年期は株式中心(高リスク・高リターン)、退職が近づくにつれて債券中心(低リスク・安定収益)に自動的に資産配分を調整します。
T.ロウ・プライスは、このカテゴリーで業界トップクラスの純流入(年163億ドル)を誇り、米国の401(k)(企業型確定拠出年金)市場で高いシェアを維持しています。退職者向けファンド市場での強いポジションが、同社の安定収益源となっています。ベビーブーム世代の退職により、この市場は今後も拡大が見込まれ、同社の長期的な成長ドライバーとなっています。