S&P500

ビアトリス (VTRS)

Viatris Inc

0. この記事でわかること

本記事では、ビアトリス(VTRS)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: パイプライン強化とR&D投資拡大、眼科フランチャイズ拡大、事業簡素化の完了により成長を目指しています
  • 事業内容と成長戦略: ジェネリック医薬品・バイオシミラー・眼科領域を中心に、165か国以上でグローバル展開する製薬大手です
  • 競合との差別化: 複雑ジェネリック医薬品・バイオシミラー開発に注力し、Teva、Sandoz等の競合と差別化を図っています
  • 財務・配当の実績: 2025年Q2では予想を上回る好決算(EPS 0.62ドル)を達成し、配当利回り約4%で株主還元を継続しています
  • リスク要因: インド・インドール施設の規制問題、臨床試験失敗リスク、のれん減損計上などが懸念材料です

1. なぜビアトリス(VTRS)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

ビアトリスは2025年以降、以下3つの成長戦略を推進しています:

パイプライン強化とR&D投資拡大 2025年にR&D支出を1億ドル超増額し、複雑かつ革新的製品の開発に注力しています。2025年に4.5-5.5億ドルの新製品収益を目標としており、6つのPhase 3試験のうち5つで良好な結果を得ています。2026年には複数製品(EFFEXOR、XULANE低用量、眼科製品等)の上市を控えており、ジェネリック医薬品からの脱却を図っています。

眼科フランチャイズの拡大 Oyster Point Pharma(最大7.5億ドル)とFamy Life Sciences買収により、眼科領域への集中投資を進めています。2028年までに眼科事業で10億ドルの売上を計画しており、成長の柱として期待されています。

事業簡素化の完了(フェーズ1) OTC事業、女性ヘルスケア、インドAPI事業を合計36億ドルで売却し、従業員6,000人削減、10億ドルのシナジー実現を3年以内に達成しました。フェーズ1(事業簡素化)は完了し、フェーズ2(眼科・複雑ジェネリック成長)が進行中です。

(2) 注目テーマ(複雑ジェネリック・バイオシミラー・眼科領域)

投資家が注目するテーマは以下3つです:

  • 複雑ジェネリック医薬品: 製造難易度の高いジェネリック医薬品で競合他社との差別化を図っています
  • バイオシミラー開発: 先行バイオ医薬品と高度に類似した生物学的製剤の開発を進めています
  • 眼科領域への集中: 買収により眼科フランチャイズを強化し、2028年までに10億ドル売上を目指しています

(3) 投資家の関心・懸念点

ビアトリスは2025年Q2で予想上回る好決算(EPS 0.62ドル vs 予想0.55ドル)により株価が+3.09%上昇しました。一方、Q4 2024では決算ミス(EPS 0.54ドル vs 予想0.58ドル)により株価が-16.95%暴落しており、決算の振れ幅が大きい点が懸念材料です。

アナリストの評価は「Hold」、平均目標株価11.50ドル(上昇余地15.81%)となっています。インド・インドール施設の規制問題(売上影響5億ドル)が重石となる一方、2026年の新製品上市が期待されており、今後の四半期決算とFDA警告レター解除が注目されます。

2. ビアトリスの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業

ビアトリスは以下3つの事業を主力としています:

ジェネリック医薬品 特許切れ医薬品の低価格版を製造・販売しており、世界165か国以上でグローバル展開しています。ジェネリック医薬品大手として安定したキャッシュフローを持ち、配当と自社株買いによる株主還元を継続しています。

バイオシミラー 先行バイオ医薬品と高度に類似した生物学的製剤の開発を進めています。バイオシミラーは複雑ジェネリック医薬品よりも製造難易度が高く、競合優位性を持つ分野です。

眼科領域 Oyster Point PharmaとFamy Life Sciences買収により、眼科フランチャイズを強化しています。2028年までに眼科事業で10億ドルの売上を計画しており、成長の柱として期待されています。

(2) セクター・業種の説明

ビアトリスはHealth Careセクター、Pharmaceuticals業種に属します。製薬業界は以下の特徴があります:

  • 規制リスク: FDA(米国食品医薬品局)の承認が必要であり、規制違反により売上が大幅減少する可能性があります
  • 特許切れリスク: 主力製品の特許切れにより、ジェネリック医薬品メーカーとの競争が激化します
  • R&D投資: 新薬開発には多額の研究開発費が必要であり、臨床試験失敗リスクが常に存在します

ビアトリスは2020年11月にMylan(ジェネリック医薬品大手)とUpjohn(Pfizer旧部門)の合併により誕生しました。社名はラテン語「via(道)」と「tris(3つ)」に由来し、アクセス、革新、信頼の3つの目的を表しています。

(3) ビジネスモデルの特徴

ビアトリスのビジネスモデルは以下の特徴があります:

グローバル展開 165か国以上で事業を展開しており、欧州と大中華圏が成長を牽引しています。2025年Q2では中国事業が+9%成長し、資産売却調整後の営業収益成長+3%を達成しました。

多様なポートフォリオ ジェネリック医薬品、ブランド医薬品、バイオシミラーの多様なポートフォリオを持ち、特定製品への依存度を下げています。

事業簡素化とシナジー実現 OTC事業、女性ヘルスケア、インドAPI事業を合計36億ドルで売却し、従業員6,000人削減、10億ドルのシナジー実現を3年以内に達成しました。フェーズ1(事業簡素化)は完了し、フェーズ2(眼科・複雑ジェネリック成長)が進行中です。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業

ジェネリック医薬品市場における主要競合は以下3社です:

Teva Pharmaceutical(イスラエル) ジェネリック医薬品世界最大手であり、グローバル市場でビアトリスと競合しています。ただし、Tevaは負債問題と事業再編により苦戦しています。

Sandoz(スイス) Novartisから分離した旧部門であり、バイオシミラーとジェネリック医薬品を主力としています。欧州市場でビアトリスと競合しています。

Amneal Pharmaceuticals(米国) 複雑ジェネリック医薬品に注力しており、米国市場でビアトリスと競合しています。

(2) 競合優位性

ビアトリスの競合優位性は以下3つです:

複雑ジェネリック医薬品への注力 製造難易度の高い複雑ジェネリック医薬品に注力しており、競合他社との差別化を図っています。2025年にR&D支出を1億ドル超増額し、2026年に複数製品の上市を控えています。

眼科フランチャイズの拡大 Oyster Point PharmaとFamy Life Sciences買収により、眼科領域への集中投資を進めています。2028年までに眼科事業で10億ドルの売上を計画しており、成長の柱として期待されています。

グローバル展開とシナジー実現 165か国以上で事業を展開しており、MylanとUpjohnの合併によるシナジー実現(10億ドル)を3年以内に達成しました。事業簡素化により、成長領域への集中投資が可能になりました。

(3) 市場でのポジショニング

ビアトリスは2020年米国大企業フォーチュン500ランキングで254位にランクインしており、ジェネリック医薬品大手としてグローバル市場での地位を確立しています。アナリストの評価は「Hold」であり、安定性と成長性のバランスを重視する投資家に向いています。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移

以下は2025年Q1および2025年Q2の四半期業績です(2025年10月時点):

項目 2025年Q1 2025年Q2 前年同期比(Q2)
売上高 32.5億ドル 35.7億ドル +3%(資産売却調整後)
調整後EPS 0.50ドル 0.62ドル -(前年同期比-25%)
フリーキャッシュフロー -(未公表) -(未公表) -

2025年Q1では売上32.5億ドル(資産売却調整後-2%)、調整後EPS 0.50ドル(前年同期比-25%)と苦戦しましたが、Q2では予想上回る好決算(EPS 0.62ドル vs 予想0.55ドル)により株価が+3.09%上昇しました。

2025年通期ガイダンス:

  • 売上高: 135-140億ドル
  • 調整後EPS: 2.16-2.30ドル
  • 自社株買い: 5-6.5億ドル

(出典: Viatris Inc Q1/Q2 2025 Investor Relations, SEC EDGAR)

(2) 配当履歴

ビアトリスの配当利回りは約4.0%程度(2025年時点)です。ジェネリック医薬品大手として安定したキャッシュフローを持ち、配当と自社株買い(2025年は5-6.5億ドル計画)による株主還元を実施しています。

2025年Q2では6.3億ドル超の株主還元(自社株買い3.5億ドル含む)を実施しており、配当継続の姿勢を示しています。

日本人投資家向け注意点: 米国株配当は米国で10%源泉徴収されます。NISA口座でも米国10%源泉徴収は免除されないため、配当利回りは実質的に約3.6%(10%源泉徴収後)となります。特定口座(源泉徴収あり)の場合、米国10%源泉徴収後、日本で20.315%課税されるため、外国税額控除の活用を検討してください。

(3) 財務健全性

のれん減損計上 2025年Q1に29億ドルの非現金のれん減損を計上しました。これは事業不確実性と地政学リスクを反映したものであり、株主資本が減少しています。

自己資本比率 事業売却(合計36億ドル)により財務体質を改善しており、自社株買い(5-6.5億ドル)を計画しています。ただし、のれん減損計上により自己資本比率は低下しています。

有利子負債 事業売却により有利子負債を削減しており、フリーキャッシュフローの改善が期待されています。

5. リスク要因

(1) 事業リスク

インド・インドール施設の規制問題 FDA警告レターと輸入禁止により、2025年売上が約5億ドル、調整後EBITDAが3.85億ドル減少する見込みです。FDA警告レター解除まで米国ジェネリック市場での制約が継続します。

臨床試験失敗と決算ミス 眼科治療薬MR-139が後期試験で主要評価項目未達となり、Q4 2024でEPS予想未達(0.54ドル vs 0.58ドル予想)により株価が16.95%暴落しました。6つのPhase 3試験のうち5つで良好な結果を得ていますが、臨床試験失敗リスクは常に存在します。

のれん減損計上 29億ドルの非現金のれん減損計上は事業不確実性と地政学リスクを反映しており、株主資本が減少しています。

(2) 市場環境リスク

為替リスク 165か国以上でグローバル展開しているため、為替変動の影響を受けます。特に米ドル安円高局面では円ベースでの受取配当額が減少します。為替レート変動により円ベースでの受取配当額は変動するため、長期投資では為替リスクを考慮してください。

関税・貿易政策の不確実性 2025年ガイダンスに関税影響を除外しており、関税・貿易政策の変更により売上が減少する可能性があります。

(3) 規制・競争リスク

FDA規制リスク インド・インドール施設の規制問題に見られるように、FDA規制違反により売上が大幅減少する可能性があります。FDA警告レター解除まで米国ジェネリック市場での制約が継続します。

集団訴訟リスク 証券詐欺疑惑により投資家が損失を被った可能性があり、集団訴訟リスクが存在します。

ジェネリック医薬品市場の価格競争 ジェネリック医薬品市場は価格競争が激しく、利益率が低下する可能性があります。複雑ジェネリック医薬品とバイオシミラーへの注力により差別化を図っていますが、競合との競争は継続します。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み

パイプライン強化とR&D投資拡大 6つのPhase 3試験のうち5つで良好な結果を得ており、2026年に複数製品(EFFEXOR、XULANE低用量、眼科製品等)の上市を控えています。2025年にR&D支出を1億ドル超増額し、複雑ジェネリック医薬品とバイオシミラー開発に注力しています。

眼科フランチャイズ拡大 Oyster Point PharmaとFamy Life Sciences買収により、2028年までに眼科事業で10億ドルの売上を計画しています。眼科領域への集中投資が成長の柱として期待されています。

事業簡素化の完了とシナジー実現 OTC事業、女性ヘルスケア、インドAPI事業を合計36億ドルで売却し、従業員6,000人削減、10億ドルのシナジー実現を3年以内に達成しました。フェーズ1(事業簡素化)は完了し、フェーズ2(眼科・複雑ジェネリック成長)が進行中です。

(2) リスク要因(再掲)

インド・インドール施設の規制問題 FDA警告レターと輸入禁止により、2025年売上が約5億ドル、調整後EBITDAが3.85億ドル減少する見込みです。

臨床試験失敗リスク 眼科治療薬MR-139の後期試験失敗により株価が暴落した事例があり、臨床試験失敗リスクは常に存在します。

(3) 向いている投資家のタイプ

配当重視の長期投資家 配当利回り約4%(米国10%源泉徴収前)と安定したキャッシュフローを持ち、配当継続の姿勢を示しています。配当重視の長期投資家に向いています。

成長戦略を評価する投資家 眼科フランチャイズ拡大(2028年までに10億ドル売上目標)と事業簡素化(フェーズ1完了、10億ドルのシナジー実現)が成長を牽引します。成長戦略を評価する投資家に向いています。

規制リスクを許容できる投資家 インド・インドール施設の規制問題が継続中であり、FDA警告レター解除まで米国ジェネリック市場での制約が継続します。規制リスクを許容できる投資家に向いています。

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新情報はビアトリス公式IRページおよびSEC EDGARをご確認ください。

Q: ビアトリスの配当利回りは?

A: 配当利回りは約4.0%程度(2025年時点)です。ジェネリック医薬品大手として安定したキャッシュフローを持ち、配当と自社株買い(2025年は5-6.5億ドル計画)による株主還元を実施しています。ただし、米国株配当は米国で10%源泉徴収されるため、実質的な配当利回りは約3.6%となります。NISA口座でも米国10%源泉徴収は免除されないため、特定口座の場合は外国税額控除の活用を検討してください。

Q: ビアトリスの主な競合は?

A: ジェネリック医薬品市場における主要競合として、Teva Pharmaceutical(イスラエル)、Sandoz(スイス)、Amneal Pharmaceuticals(米国)があります。ビアトリスは2020年にMylanとUpjohn(Pfizer旧部門)が合併して誕生し、複雑ジェネリック医薬品・バイオシミラー・眼科領域で差別化を図っています。競合優位性は、製造難易度の高い複雑ジェネリック医薬品への注力、眼科フランチャイズの拡大(2028年までに10億ドル売上目標)、グローバル展開とシナジー実現(10億ドル)の3つです。

Q: ビアトリスのリスク要因は?

A: インド・インドール施設の規制問題(売上影響5億ドル、EBITDA影響3.85億ドル)、眼科治療薬MR-139の後期試験失敗、Q4 2024決算ミスによる株価16.95%暴落、29億ドルの非現金のれん減損計上、集団訴訟リスクが主な懸念です。FDA警告レター解除まで米国ジェネリック市場での制約が継続します。また、ジェネリック医薬品市場は価格競争が激しく、利益率が低下する可能性があります。詳細はリスク要因セクションを参照してください。

Q: ビアトリスは長期投資に向いている?

A: 6つのPhase 3試験のうち5つで良好な結果を得ており、2026年に複数製品(EFFEXOR、XULANE低用量、眼科製品等)の上市を控えています。眼科フランチャイズ拡大(2028年までに10億ドル売上目標)と事業簡素化(フェーズ1完了、10億ドルのシナジー実現)が成長を牽引します。配当利回り約4%と安定性を重視する長期投資家に向いていますが、インド・インドール施設の規制問題やのれん減損計上などのリスクには注意が必要です。投資判断はご自身でご確認ください。

よくある質問

Q1ビアトリスの配当利回りは?

A1配当利回りは約4.0%程度(2025年時点)です。ジェネリック医薬品大手として安定したキャッシュフローを持ち、配当と自社株買い(2025年は5-6.5億ドル計画)による株主還元を実施しています。ただし、米国株配当は米国で10%源泉徴収されるため、実質的な配当利回りは約3.6%となります。NISA口座でも米国10%源泉徴収は免除されないため、特定口座の場合は外国税額控除の活用を検討してください。

Q2ビアトリスの主な競合は?

A2ジェネリック医薬品市場における主要競合として、Teva Pharmaceutical(イスラエル)、Sandoz(スイス)、Amneal Pharmaceuticals(米国)があります。ビアトリスは2020年にMylanとUpjohn(Pfizer旧部門)が合併して誕生し、複雑ジェネリック医薬品・バイオシミラー・眼科領域で差別化を図っています。競合優位性は、製造難易度の高い複雑ジェネリック医薬品への注力、眼科フランチャイズの拡大(2028年までに10億ドル売上目標)、グローバル展開とシナジー実現(10億ドル)の3つです。

Q3ビアトリスのリスク要因は?

A3インド・インドール施設の規制問題(売上影響5億ドル、EBITDA影響3.85億ドル)、眼科治療薬MR-139の後期試験失敗、Q4 2024決算ミスによる株価16.95%暴落、29億ドルの非現金のれん減損計上、集団訴訟リスクが主な懸念です。FDA警告レター解除まで米国ジェネリック市場での制約が継続します。また、ジェネリック医薬品市場は価格競争が激しく、利益率が低下する可能性があります。詳細はリスク要因セクションを参照してください。

Q4ビアトリスは長期投資に向いている?

A46つのPhase 3試験のうち5つで良好な結果を得ており、2026年に複数製品(EFFEXOR、XULANE低用量、眼科製品等)の上市を控えています。眼科フランチャイズ拡大(2028年までに10億ドル売上目標)と事業簡素化(フェーズ1完了、10億ドルのシナジー実現)が成長を牽引します。配当利回り約4%と安定性を重視する長期投資家に向いていますが、インド・インドール施設の規制問題やのれん減損計上などのリスクには注意が必要です。投資判断はご自身でご確認ください。